エリア88
ジャンル 横スクロールシューティング
メーカー カプコン
発売年 1989


キャラゲー

 既存の人気コミックやTVアニメのキャラクタをフィーチャーしたゲームをキャラクタゲーム、略してキャラゲーと呼ぶ。この言葉、ク○ゲーと並んでゲームの蔑称に用いられることが多い。多くのキャラクタ版権を所有し、多数の作品をリリースしてきたバンダイ社がキャラゲーの老舗として知られるが、同社のずさんな仕事ぶりがキャラゲーのイメージを落としてしまったせいだ。原作のキャラクタ人気に依存するあまり、作り込みの甘い作品を連発したのだ。なまじ原作の人気が高いおかげで、そのクオリティには見合わぬ売り上げを記録していたのもやっかいなところであった。
 しかし、高い志と技術力を有するメーカーがキャラゲーを手掛けると、原作の人気と作品の完成度の相乗効果によって真の意味でのヒット作が生まれることになる。ここに紹介する『エリア88』もそんな作品の一つで、CPシステムの成功でノリに乗っていたカプコンが人気コミックを見事にゲーム化させたものである。

中東の地で燃えさかる戦いの炎

 中東の小国アスラン。ここでは、政府軍と反政府軍とに分かれた泥沼のような内戦が続いていた。エリア88は最前線中の最前線であり、反政府軍に対して最も大きな打撃を与えている政府軍側の作戦基地である。だが、ここに駐屯している戦闘員たちはアスラン人ではない。命知らずの外人部隊(エトランゼ)、金で雇われた傭兵たちだ。生きて再び滑走路を踏める運は全てアラーの神まかせ。地獄の悪魔と手を取った男たちが明日をも知れぬ闘いに明け暮れていた…。
 そんな男たちの人間模様と、アスランの内戦に乗じて世界大戦勃発を企むプロジェクト4の陰謀などを絡めて描いた人気コミック『エリア88』。金で命のやり取りをするハードボイルドな傭兵の世界を、カプコンは横スクロールシューティングという形でゲーム化してみせた。

低難度

 コインを投入しスタートボタンを押すと、どの機体で出撃するのか選択する画面になる。ショットの連射速度に優れるF-20タイガーシャーク(風間真)、幅の広いショットを持つF-14トムキャット(ミッキー・サイモン)、前方への通常ショットと同時に地上へのガトリング砲も発射するA-10サンダーボルト(グレッグ・ゲイツ)の3機種から好みの機体を選択可能だ。一般的にはミッキーのトムキャットが人気機種であったが、十分にパワーアップするとシンのタイガーシャークの連射性能のアドバンテージが顕著になってくる。グレッグのA-10は対地攻撃能力に優れるが単独で運用するのは難しく、もっぱら二人同時プレイ時に使用されることが多かったようだ。
 機体の選択を済ませるとブリーフィング画面となり、基地指令のサキからそのステージでの任務が伝えられる。このあたりの雰囲気はまさに原作そのもの。気分はもう外人部隊の戦闘機乗りだ。
 ミッションブリーフィングに続いて現れるのはハンガー。そこには、トイレットペーパーから核弾頭の部品まで、エリア88の台所を一手に引き受けている武器商人のマッコイじいさんがいる。外人部隊のゴロツキどもの生命線だ。ここでは、原作同様にマッコイじいさんから武器を購入することができる。エリア88の傭兵たちは敵機を撃墜することでサラリーを得ているが、ゲーム中でも原作同様に軍資金を稼ぐ。プレイ中に敵機を撃墜すると、スコアとは別に賞金が加算されるようになっているのだ。使用する機体によって購入できる武器や価格に多少の違いがあり、A-10では対地攻撃用のナパームなどがより安価に多く搭載できたり、F-14ではAAMを多く装備できたりすることがある。
 マッコイじいさんから武器の購入を済ませたらいよいよミッションスタートだ。内容的には至極オーソドックスな横スクロールシューティングで、パワーアップのシステムもカプセルをひたすら集めてショットパワーを上げていくだけの実に単純なもの。残機制ではなくライフ制を採用しているのがシューティングにしては珍しいが、これにより一撃食らった程度では動揺することのない屈強な外人部隊の闘いぶりをだれもが体験できるようになっている。
 シューティングの難易度がインフレ化の兆しを見せ始めていた時期の作品だが、『エリア88』の難易度は比較的低く抑えられていた。派手なパワーアップなどはないものの、敵の卑怯な攻撃などもなく、アドリブでも十分対応可能なゲーム展開は誰にでも気軽に、そして何度もコインを投入させた。比較的簡単にパターン化できるボス戦も一般層に受け入れやすかったのだろう。それゆえにゲームの深みという点では多少の不満が残るのも事実であったのだが…。
 低難度ということはワンコインで長く遊べるということでもあり、金のない学生が集まるロケでは特に人気を博していたようだ。オペレータ側にしてみればあまり気分の良いものではないかもしれないが、プレイヤー側、特に学生にとっては「長く遊べる」ということも良いゲームのバロメーターであり、結果として多くのクレジットを落としていくこととなった。そしてオペレータとプレイヤーの利害は一致し、『エリア88』はロングランヒットとなったのである。
 リーズナブルな難易度ゆえワンコインクリアを果たしたプレイヤーも多かった。自力でクリアできたゲームは記憶に残る。名作と呼べるほどの完成度を持っていたとはいえぬ本作だが、多くのプレイヤーたちの心に残る作品となった。

2001 2/9


●コラム:外人部隊とは?

 アフリカや中東の小国では民族間の争い等が絶えず、戦争の火種がそこかしこに転がっている。そして、国が貧乏なのにもかかわらず、やむなく戦争状態に突入してしまうことがままある。
 一旦戦争が始まると兵器を用いた戦闘が始まるわけだが、その兵器を運用するのは人間であり、戦闘員の手配という問題が生じる。歩兵部隊ならまだどうにかなる。しかし、戦闘機乗りはどうだろう? パイロットを養成するにはそれ相応の設備が必要になるし、最低でも8年間という時間と金がかかる。そこで、即戦力となる兵員を他国から金で雇うのである。傭兵の編入とは人間の命を雇い入れる行為なわけで彼らに支払われる給料の額は相当なものになるのだが、それでも一からパイロットを養成するよりはずっと安上がりなのである。ま、実際に空軍で外人部隊を使用している国があるかどうかは定かではないが。
 原作のエリア88に集まっている外人部隊は文字通り一騎当千、腕っこき中の腕っこきと言われる連中ばかりで、外部にも様々な噂とともに評判が伝わっている。いわく、背中に目がついている、ミサイルよけの魔法を使う、血管にジェット燃料が流れている、心臓がビス止めだ、などである。最新鋭機を一機買うくらいなら、彼らを雇ってF-4にでも乗せておいたほうがよっぽど良い買い物であるとも言われている。


●スクリーンショット

大和航空の練習生だったシン、米海軍出身のミッキー、デンマーク空軍を除隊した後亡命者の逃がし屋をやっていたグレッグ。外人部隊には様々な過去を持つ男たちが集う。だが、それを自ら話そうとする者も、他人に問いかける者もいない。なぜなら、彼らは明日を信じず、“今”に生きる傭兵なのだから…。


司令官、サキ・ヴァシュタール。
自らもイスラエルのIAI社製デルタ翼機クフィルを駆る一流のパイロットで、金で動く外人部隊のゴロツキどもの心をもつかむカリスマ性を有する。
残念ながらゲーム中ではその勇姿を拝むことはできない。


マッコイじいさん。
ドル袋のペインティングを大きく施したC-130を駆使してあらゆるルートから武器を仕入れてくる。
「金さえ積んでくれりゃ、クレムリンだって引っ張ってくる」と豪語しているが、実際、中東くんだりまで最新鋭のF-14やA-10、配備前のF-20といった機体をチョロまかしてきた手腕には誰もが一目置いている。


ステージ5の砂漠ステージは原作の雰囲気を最も感じさせるステージだ。
左の写真はシンやミッキーも撃墜された対空地雷。ゲーム中ではこの攻撃をかわすのはそう難しくない。
右はボスの地上空母。原作では序盤における最大の敵で多くの戦死者を出し、グレッグにA-10の購入を決意させたのは印象深い。
ゲームに登場するものはパターンを見切ってしまえば単なるザコ。


旅客機に仕掛けられた爆弾を処理する特殊任務。
原作ではサキ本人も旅客機に搭乗しており、彼を狙った暗殺計画であった。
ゲームでは敵戦闘機の妨害があるが、クフィルに乗る必要もなければ背面飛行の必要もない。


原作では、最終決戦を生き残りながら戦士たちのことごとくが悲運な死を遂げるのだが、ゲームではご覧のとおりのハッピーエンド。
原作を知る者にとっては、シン、ミッキー、グレッグのランデヴー飛行は涙なくしては見られない。
実際、僕は原作での彼らの散り際を思い出して泣いた。
「痛いさ…。でもおじちゃんは強いんだ…」
「最後の最後でバーナーノズル復活よ…。まったく世話焼かせやがるぜ…このドラ猫め!」
今思い出してもすぐ泣ける。グスッ…。



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