ワタベ流の五つの彫り方

5.重ね彫り

逆レリーフの、より写実な表現として考えられた技法ですが、写実なガラス彫刻には必要な技術の一つです。花を例にして、どういう技法なのかを説明してみましょう。

花びらと花びらの重なり、花と葉の重なり、このように、「物」は重なりでできています。
その重なりをどう自然にガラスという限られた空間に表現するかが、ガラス彫刻の難しさ、面白さですね。
では、「物」の重なりについて少し説明しましょう。

花と葉を例にします。花と葉の間には空間があります。その空間を考えずに今までのガラス彫刻は技法を作り出してきました。重ね彫りとはその空間を意識し、表現する技法です。簡単に言いますと、花と葉の間に隙間がある、その隙間も含めて彫刻して表現するということです。

【彫り方】
斜めに食い込ませて彫るのと、重ね彫りは全く違います。
ゴムを右にして鋭角に砂を生地に当てれば、食い込ませて彫る事は簡単にできます。ただし、意味無く鋭角に砂を当てた線は、強ばり(角ばり)、自然界にある優しいラインに対して、この強ばったラインは不自然に見えます。
重ね彫り彫刻をするには、まずモチーフの花びらをよく観察することです。
花びらや葉は薄く、1oも厚みはありませんが、存在感はとても強いものです。
これをそのままサンドブラストで表現すると、薄く彫っただけでは存在感が無く、深く彫ると動物的なふくらみになってしまいます。

重ね彫りは、ノズルから出る砂の1/5だけをガラスに当てるように彫り、わざとゴムに砂の4/5を当てて、少量の砂でガラスを彫ることにより、薄く、鋭く彫る事ができます。
これで花びらの先端に薄さ感は出ますが、自分が描く花びらのイメージに近づけるためには、最初に彫った部分に何度か砂を当てる必要があります。砂を当てる度に度に狙いが少しづつずれていくと、先端がどんどん膨らんで分厚くなってしまいます。
砂を当てる部分はとても限られている為、多少でも狙いが狂うと失敗になる、息を止めて彫刻するようなとても緊張感のある仕事です。時間にすると、沈め彫りの5倍ぐらいの時間がかかります。

まずは、重ね彫りをした部分に影ができるのを目安に彫っていきましょう。
マスクを剥がすと影が無くなってしまうのは、マスクのすぐ下のガラスの表面を削っているだけなので、失敗です。

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