メールマガジン「裏庭文庫」サンプル誌

以下のようなメールマガジンが配信されます。
細かい形式は変更になることがありますが、基本はこのようなものです。



 ★裏庭文庫★                  NO・001創刊号
    
    あなたに銀乃のJUNE小説をお届けします。
    裏庭でこっそり楽しんで頂けると幸いです。

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■こんにちは&はじめまして!
 銀乃東風(ぎんのとんぷう)です。
 この度は、メールマガジン「裏庭文庫」ご購読の登録をして下さいまして、
 ありがとうございました。
 これから不定期ではありますが、楽しんで頂けるJUNE小説をお届けしたいと
 思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

■既に銀乃をご存知の方もいらっしゃると思いますが、今回初めてお会いした
 方々の為に、短く紹介させて頂きます。
   
   ・銀乃東風(天秤座A型の女)
   ・個人サークル「ぺんたごん」にて細々と同人活動中。
   ・これまでにJUNE小説を15冊発行(2000年8月現在)
   ・HP「銀乃の小部屋」「銀乃の大部屋」運営。
   ・メールグループ「東風通信」管理人。
   ・JUNE小説と並んで、声優さん(男性)大好き。

■それでは、創刊号のご案内をさせて頂きます。
 どういうもので創刊を飾ろう?と、実はそれなりに悩んだのですが、
 今、一番自分の中で気になっている作品「咬ませ犬」から書かせて
 頂くことにしました。このお話は、現在2巻まで発行していて、
 次の3巻で完結する予定です(只今、執筆中)
 この「裏庭文庫」では、未発表のものだけをお届けするシステムなので、
 今回の「咬ませ犬」は新作番外編となります。
 静夜は、関東一円に勢力を誇る暴力団組織の三男。容姿に恵まれていて、
 他人を寄せ付けない独特の雰囲気を持った少年です。
 その静夜の側には、まるで犬のように従う耀司がいます。
 そして二人を複雑な思いで見守るのは、組の若頭尾崎。  
 静夜と耀司は主従関係だけではなく、不思議な信頼関係も深めます。
 身も心も従わせる静夜。身も心も従う耀司。
 極道社会が背景となっていますが、ベースはどこまでもJUNEです。

 ひとときの間、お楽しみ下さい…。

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□□□□□      雪の契り         
                   「咬ませ犬」より □□□□□
                              
雨宮家の門をくぐった黒塗りのベンツは、なだらかなスロープをゆっくりと
上がって行くと、数人の若い男たちが待つ正面玄関前に停まった。
装甲車並みの強度を誇る特別仕様のドアから降り立ったのは、関東黒竜会最高
幹部の一人、尾崎仁だった。
スラリとした体に、ダークスーツが嫌味なくらい似合っている。
しかし、外見はどこかのエリート商社マンのようだが、その鋭い目付きには隠
し切れない極道の証しが光っていた。
部屋住みの若い連中が頭を下げる中、尾崎は軽い足取りで屋敷の中に入った。
若くして最高幹部の一人として君臨する尾崎は、部屋住みの若い男たちの憧れ
の的であり、自分の将来を映す鏡のような存在だった。
ああなりたい…尾崎さんのような極道になりたい…。
それが、まだ幼さの残る部屋住みたちの見果てぬ夢であった。
「耀司は?」
尾崎の声は決して威圧的ではなく、むしろ穏やかな人間性を表しているような
落ち着いた響きを持っていた。
「はい。離れで若に付いています」
一人の若者が上気した面持ちで答えた。
同じ代紋の元に身を寄せる者同士は、言うなれば身内ということになるが、
それでも尾崎クラスの幹部に声を掛けてもらう機会は、極めて少ない。
若者が一瞬にして舞い上がるのも無理はなかった。
尾崎は離れを目指して、日本庭園に面した長い廊下を歩いていた。
屋敷の主である関東黒竜会会長の雨宮修造は、他の幹部たちと神戸の関係組織
での盃に出席していて不在だった。
尾崎にはその間、黒竜会本家の留守を任されるという責任があった。
日本家屋の長い渡り廊下が、離れの洋館へと続く…。
その一画は、雨宮修造の三男静夜の住居だった。
尾崎は静夜の部屋の前に立ち止まると、ドアをノックした。
「尾崎です」
少しして中から静夜の返事が聞こえたので、尾崎はドアを開いた。
部屋の中央に鎮座する天蓋付きのベッドには、静夜が横になっていた。
「お加減が悪いと聞きましたので…」
尾崎は真っ直ぐに静夜の傍らに進んだ。
そう言われた静夜は、少し煩わしそうに眉間にシワを寄せ、
「オーバーだな。ただの風邪じゃないか」と言い返した。
尾崎ほどの大人を前にしても、静夜の態度はこうだった。
黙っているとため息が出るほど美しい顔立ちをしているのに、その口を吐いて
出るのは人を寄せ付けない冷たい言葉ばかりなのだ。
「風邪でもこじらせると恐いですからね」
尾崎もその辺りは心得ていて、大人の男らしくサラリと受け流している。
「耀司」
尾崎はベッドの足元に立っている耀司に声を掛けた。
「はい」
耀司はやわらかな声で返事をすると、一歩前へ進み出た。
静夜と同い年の耀司だが、それまでの生活が彼に大人並みの落ち着きを与えて
いるようだった。
「お前が付いていながら何だ」
「すみません。俺の不注意です」
耀司は深々と頭を下げ、静夜の健康管理を怠ったことを詫びた。
「耀司には関係ない。自分の体は自分で責任を持つ」
ベッドの中から静夜が口を挟んだ。
「俺はもう中学生なんだ。いつまでも子供扱いするな」
だが、その口ぶりが子供だった。
尾崎はクスッと口元を緩めると、静夜の額にそっと手の平を乗せた。
「何だよッ」
尾崎の行動に反発しながらも、静夜は大人しく額を触られていた。
「少し熱がありますね。医者を呼びましょうか?」
「薬を飲んで寝ていれば治る。もう俺に構うな」
静夜は尾崎の手を払い除けるように、プイと体ごと横を向いてしまった。
「私が構いたいんですよ」
尾崎は微笑みを浮べたまま静夜の髪を撫でると、その手をゆっくりと引いた。
「何か私にして欲しいことはありますか?」
「ないよ」
静夜は照れ隠しのように素っ気無く答えた。
「では、何かありましたらいつでも電話を入れて下さい。私はどこにいても
飛んで来ますから…」
そうして尾崎は、再び耀司に振り返った。
「しっかり看病してろよ」
「はい。分かっています」
耀司は尾崎を真っ直ぐに見上げ、大きく頷いた。
自分の立場を常にわきまえ、それでも決して卑屈にならない真摯な瞳だった。
「それじゃ静夜さん…失礼します」
尾崎は何も答えてくれない静夜の背中に一礼すると、そっと部屋を後にした。
(今年から中学生…。ますます亡くなった姐さんに似て来たな)
来た廊下を戻りながら、尾崎はふとそんなことを考えていた。
尾崎にとって唯一忘れられない女性が、静夜の母親華江であった。
まだ幼さが残る横顔…屈託のない笑顔…そして何よりも美しさの中に強さを
秘めた女性だった。
「尾崎…静夜のこと、お願いやで」
関西なまりも抜けないうちに、華江は尾崎に静夜の行く末を託して逝った。
主人である雨宮修造のことも、組のことも口にせず、ただ母を失う静夜の
ことだけを言い残して…。
(あれから7年…)
尾崎の脳裏には、あの時の華江のすがり付くような顔が鮮明に残っていた。
彼にとっては忘れたくても忘れられない、辛いワンシーンだった。
いや、静夜という生き写しのような少年がいるから、余計忘れられないのかも
知れない。
静夜の外見は、不思議なくらい母親に似ていた。
父親である修造の重厚な面影も、それを連想させる雰囲気など微塵も無い。
まるで、華江が髪を短くして佇んでいるような錯覚を見る者に与えるのだ。
(やはり年頃だな。去年は俺に甘えていたものだが…)
子供が成長する過程に必ず待っている、大人へのちょっとした反発。
いつまでも子供扱いされることを嫌い、わざと突っ張ってしまうのは、あの
静夜でさえも通る道なのだろう。
見守る尾崎としては、嬉しいような淋しいような複雑な気持ちだった。
尾崎は来た時と同じように、若い連中に見送られてベンツに乗り込んだ。
「歌舞伎町の事務所に行ってくれ」
後部シートに背中を沈めると、尾崎はいつもの極道の顔に戻っていた…。


「あの…何か飲み物でも持って来ましょうか?」
尾崎がいなくなると、耀司は静夜の背中に向かって声を掛けた。
だが静夜はまったくの無反応で、耀司の言葉を無視している。
耀司がここに引き取られたのは、静夜が母親を亡くしてから間もなくだった。
父親の修造は三人目の女を妻として迎えたのだが、その女は静夜の新しい母
としての器量は持っていなかった。
当然、静夜は幼いながらも反発し、新しい妻はそれを叱りたくても周囲の目が
あって叱れない。その不満が修造へと向けられる。修造にすれば、そんな些細
なことで煩わされたくはない。
ならば、静夜の側に何をされても言いなりになる者を置いておけばいい。
犬を一匹増やしたと思えば、安いものだ。
静夜のわがままをすべて受け入れて、決して反発しない従順な人間。
それが身寄りのない耀司に与えられた仕事だった。
「若…?」
返事をしてもらえないのはよくあることだったが、体調を崩している時だから
ちょっとしたことにも気を配ることが大切だ。
耀司は反対側にそっと回り込むと、静夜の顔を覗き見た。
伏せられた長いまつ毛、ツンとした形の良い鼻、半開きのふくよかな唇、
キメの細かい抜けるような白い肌。
あどけない寝顔に、耀司は思わず息を飲んで見惚れてしまった。
同じ男でありながら、なぜこうもきれいな顔をしているのか…?
耀司は時々そんなことを思うようになっていた。
この屋敷に引き取られてから、常に静夜の側にいて命令に従って来た。
いきなり殴られたことも、理不尽な苛めに遭ったことも、それこそ数え切れな
いくらい体験して来た。
最初はその度に戸惑ったり、不安で泣きそうになったりもしたが、不思議と
静夜の側から逃げたいとは思わなかった。
それは、静夜が時々ふと見せる優しい一面に、耀司が惹かれていったからで
ある。
自分が耀司に冷たく当たることはあっても、他人がそうすることはどういう訳
か許せないらしくて、学校で耀司がからかわれたりすると、必ず静夜が激怒し
て相手を屈服させていたのだ。
そういう時の静夜は、一人も身内のいない耀司にとって、限りなく身近で頼も
しい人間に思えるものだった。
そして一緒に過ごすようになって後、静夜はある行為をして耀司を驚かせ、
同時に無垢な少年を虜にしていったのである。
それは今も続いている行為だった。
耀司はそれを思い出しながら、そっと頬を赤くしていた。
一番最初、驚いて拒否することが出来なかったのは、まだ何も分からない
小学校の低学年の時だった。
(あの時以来、俺はこの人と…)
それがどういう行為なのか、耀司にも薄々分かるようになるのに時間はそう
掛からなかった。
静夜がどうしてそんなことを自分にするのか、耀司には理解出来なかったが、
そんな疑問もいつの間にかどこかへ消えてしまっていた。
静夜がそうしたいから、している…。
理由なんて、それで十分だった。
最初の頃は、まるで人肌が恋しいかのように抱き合っていただけだったが、
それはすぐにお互いの性器をまさぐるという行為に変わっていった。
まだ芽吹いていないお互いのものに触れ、本能が命ずるままに快感を貪ること
に没頭する日々…。
その日から、二人は共通の秘密を抱えるようになったのだ。
耀司は微かな寝息を繰り返す静夜を見つめ、遠い昔を思い出していた。
この人のこんな無邪気な寝顔も、冷たく突き放す口調も、どうしてこんなに
いとおしいのだろうか?
耀司はそっと静夜の髪に指を伸ばした。
自分のような黒髪と違い、静夜の髪は細くて真っ直ぐな栗色で、つい触って
みたくなるような光沢を持っていた。
(俺はこの人と、一体どこに行こうとしているんだろう…?)
中学生になって9ヶ月。
二人の秘密の行為も、夏休みの頃からどこか様子が変わって来ていた。
何かが違う。
お互いの性器をまさぐって、出したいものを出すだけの行為は、それはそれで
満足を得るものに違いなかったが、どこかが違うのだ。
それが何なのか?
漠然とした疑問が、不完全燃焼となって二人を追い詰めようとしていた。


「耀司…」
ベッドの足元で椅子に座って待機していた耀司は、いつの間にかウトウトと
居眠りをしていたが、静夜の呼ぶ声にハッと気付き、慌てて立ち上がった。
「あ、はい」
駆け寄ると、静夜は幾分すっきりした顔付きで目を開けている。
少し眠ったのが良かったのかも知れない。
「気分はどうですか?」
「うん…。少しお腹が空いた」
「じゃあ食事を持って来ます」
静夜の回復ぶりに、耀司はホッと胸を撫で下ろした。静夜に何かあれば、それ
はすべて自分の責任となるのだから。
耀司はすぐに部屋を出て食事を取りに行こうとした。
「耀司」
再び、後ろから静夜が呼んだ。
「はい?」
ドアノブに手を掛けたまま振り返ると、上体を起した静夜が抑揚のない声で
こう告げた。
「食事の後で、体を拭いてくれ…」
耀司はドキリと心臓を跳ね上げた。
見慣れている筈の静夜の顔に、見たこともない妖艶な色が添えられているよう
な気がしたのである…。


                            <つづく>

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■最後まで目を通して下さって、ありがとうございました。
 この続きは次回の配信にてお楽しみ下さい。
 また、本編の「咬ませ犬」は、只今最終の3巻を執筆中です。
 静夜・耀司・尾崎の詳しいお話は、既刊誌でお読み頂けます。
 その他の発行本の詳しい内容も、HP「銀乃の小部屋」にてご案内させて
 もらっています。
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