ささいな恐怖


さびれた村からの便り

(史上最小のクトゥルー神話賞応募作)


 や。このハガキは届いているかな?
 今どき、携帯も圏外で、ネット環境もない地域があるとは思わなかったよ。このハガキを投函するため、山を下りてこの集落まで戻ってきた。(驚くじゃないか。ここまで来ないと、ポストもないんだ)このハガキを投函したら、また例の村に戻る。
 前に話したように、この村がある山の頂上には、けっこう立派な神社があって、その境内の中央には、でかい環状列石がある。奇妙な組み合わせだと思う。何が臭うのか、境内には、いつも変な臭いが漂っている。表現しがたいひどい臭いだ。おっと。先に言っておくが、堆肥の臭いじゃないぜ。笑
 村の人ははっきりとは言わないが、この村では何か変わったものを信仰の対象にしているらしい。よくわからないんだが、いわゆる「神様」ではないようだ。
 そして、実はここからが重要なんだが、このハガキが届くぐらいの頃(いくらなんでも3日もあれば届くと思う。笑)に、30年に一度開催される大きな祭りがあるらしい。この村で信仰されている「神様」をお迎えする秘祭なんだそうだ。
 大ネタを持って帰るから、編集長に乞うご期待と伝えておいてくれ。笑






 ──私は、今朝届いたオカルト・ライターの友人からのハガキを手に持ち、呆然とテレビニュースを眺めていた。
 友人が滞在していた村が、爆裂噴火によって壊滅した、とニュースは伝えていた。砂山の頂上を手ですくったように、ごっそりとなくなったという。
 この惨禍を友人の言う「秘祭」と結びつけるのは、我ながら無茶な連想だとは思う。だが、壊滅の原因が爆裂噴火のはずはない。あの地域には火山帯は通っていないのだ。


ささいな恐怖