本の密林・探検日記


3月26日

美輪明宏について知りたい

留学生がその名前を口にした時、内心少々葛藤があった。
わたしは舞台が好きで、美輪明宏が主演の舞台「黒蜥蜴」も観たことがある。あの舞台の素晴らしさを語りたい衝動はあるが、そんな私的な情報を利用者に与えるわけにはいかない。
客観的な情報を教えなければと考えつつ、自伝『紫の履歴書』が刊行されていること、また他にも著作があることを伝える。ただし、専門外の本ばかりなので、公立図書館に行くことを勧める。
まもなく、自伝を読んだことを報告してくれた。ほんとは、生の舞台も観たほうがいいのだろうが、時期的にそれは無理な注文だった。

ところで、美輪明宏はデビュー当時の名前が違うのをご存知だろうか?
たとえば、最近説明してきた国会図書館の「件名」だが、「美輪明宏」を件名にいれて検索してもヒットはしない。
関連図書が存在しないからではない。件名が、デビュー当時の「丸山明宏」になっているのだ。だから、「丸山明宏」で検索しさえすれば、『紫の履歴書』もヒットする。
これが、国会図書館の件名を利用するにあたっての注意点のひとつだろう。
昭和10年生まれのわたしの母にしてみれば、「美輪明宏」といわれるとあまりピンとこず、「丸山明宏」といわれるとわかるらしい。
だが、若い年代の方、これから調べようという方は、件名に「美輪明宏」と入れて出てこなければ、伝記・研究書はないものと思って諦めてしまうかもしれない。
特定の人物を調べる時は、その人物に別名がないか、人名辞典のたぐいで基礎調査してから、資料収集に取り掛かるべきではないかと思う。
(女性著者の場合、結婚後、姓が変わる場合もある。女性研究者にとっては、自分の業績にかかわることで切実な問題だろう。こんなところにも、夫婦別姓問題は波及してくる)
また、都立図書館のデータベースの場合は、人名の件名を統一する方式ではなく、別名もリンクする方式を基本的に採用しているようなので、参考になると思う。
「美輪明宏」を「件名」に入れて検索すると、改名後の『紫の履歴書』がヒットし、そのデータ中の人名典拠IDをクリックすると、「丸山明宏」の情報がある。
今度は「丸山明宏」を「件名」に入れて検索すると、改名前の本がヒットした。

もっと、使いやすくなっていたのが、「ジンギスカン」だ。「ジンギスカン」は、データベース検索する時、いつも面倒な思いをする人物である。
「ジンギスカン」「チンギスハン」「チンギス ハーン」「成吉思汗」「Chinghis Khan」と様様な名前で作成されたデータが存在しているからだ。
データベースによっては、これらすべてをひとつずつ入れて検索しないと、情報が得られないものがある。
都立図書館のデータは、リンク方式で、この問題を解決しようとしているようだ。
たとえば、都立図書館の詳細検索の件名に「ジンギスカン」と入れて検索してみる。と、3件の資料を呼び出すことができた。このうちの1つのデータの詳細を見る。そして、個人件名典拠IDをクリックすると別名の情報を表示し、同時にそれらを件名に持つ27件の情報を呼び出してくれた。
件名の知識がない一般の方にも、少々手間がかかるが、これなら利用しやすいのでないだろうか。

ちなみに、国会図書館の件名ではもちろん統一した形となっている。「ジンギスカン」の統一形は「太祖(1162〜1227 元)」だ。これを話すと、たいがいの人は「それはいったい誰のことなんだ」と怪訝そうな顔をする。だが、しかたない。そう決まっているのだ。で、「件名」の説明にもあるが、件名中の西暦年は無視するそうなので、これで検索したい時は、「太祖」と「元」でAND検索するといいだろう。
さらに付け加えると、「ヌルハチ」の場合は「太祖」と「清」でAND検索する。
件名さえ知っていれば、一回件名で検索しただけで情報を得ることができる。
状況によって、どちらかの方式を選んでいけばよいのではないかと思う。

追記:必ずしも成功するとはかぎらないが、「書名検索」欄に、調べたい人物の名前を入れてみる方法もある。『宮沢賢治研究』といったように、書名中に名前が入っている場合もあるからだ。
ただし、書名中に名前が入っている場合ばかりではないので、積極的におすすめはしない。都立や国会など件名検索がちゃんと機能しているデータベースなら、無用な方式である。


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