| 2003年 7月20日 |
市立図書館の蔵書検索で、『ハリー・ポッターと賢者の石』を探したが出てこない。 |
これは、近所に住む友人からの問い。
茶のみ話の中で出てきた。
ベストセラーの本といえど、そろそろ、借りられるのではないかと思って、地元の図書館で検索してみたが、ヒットするのは洋書ばかりだったという。
あるはずなのに検索で出ないから不思議でしかたない。あなたなら理由がわかるのでは? ということだった。
そこで、どういう検索方法をとったか詳しい事情を聞いてみた。
「書名検索のところに、ハリーポッターといれて検索したの。それだったら、賢者の石以外のシリーズも出るでしょ? それに原作だけでなく、関連本もあったら読みたいし」というので、検索してみる。
地元の図書館は、数ヶ月前から、インターネットを利用して蔵書検索できるようになった。
それを友人に説明しながら、目の前で行う。
確かに出ない。出るのは、洋書と関連本が数冊。目的の静山社発行のものがひとつも出ないのだ。
そこで、著者名検索欄で検索しなおすことにした。
検索語を「ローリング」にして検索してみると、日本語翻訳のシリーズ本が出た。データは存在するのだ。
では、なぜ、先程の書名検索では出なかったのか?
もしやと思って、「ハリー・ポッター」で、書名検索しなおしてみる。
耳で聞けば、一単語のようだが、これは人名である。ハリーが名前。ポッターが姓。
実際、本を見れば「・」という記号がしっかりあるはずだ。
思ったとおり、賢者の石も秘密の部屋も、関連本も出てくる出てくる。
画面を見た友人が、不思議そうな顔をする。
「この蔵書検索は、記号を含めて本に書いてあるままの単語でしか検索してくれないシステムらしいよ」とわたしがいうと、友人は「そんなこと気にして検索しないよ」という。
その場にいた他の友人も「・なんてわざわざいれないよ、わたしも。ハリーポッターで検索する」という。
そうだろうなとわたしも思う。
検索しやすさを考えれば、記号を含まない検索語でも、ヒットする方がよい。
実際、最近の図書館の蔵書検索では、検索語を「ハリーポッター」「ハリー・ポッター」のいずれにしても、ヒットする場合がほとんどである。
ちなみに我が市に隣接したふたつの市の図書館の蔵書検索で同様の検索してみたところ、両館とも記号の有無に関係なく、まったく同じデータを呼びだすことができた。
「なぜ、うちの市ではダメなの!?」と叫びたい気持ちになっても仕方ないだろう。
だが、理由は、おおよそ推測できる。
「それだけ我が市の図書館運営費は削られているのかもしれない」ということだ。
書名中の記号の問題に対応するには主に二通りの方法が考えられる。
ひとつは、検索に利用される情報群の中では、記号は機械的に落とす、つまり無効化させるようにあらかじめ仕組んでおく。検索語の中に記号が入力されても、実際の検索時には落とす。
そして、記号のないもの同士を比べて、合致したものがヒット情報となる方法だ。
もうひとつは、元データ作成時に情報作成者が”気をつけてコツコツと手作業で記号無しの情報も付け加える”方法である。
わたしは、十年ほど、複数の図書館の蔵書検索のための元情報を作成する仕事をしていた。
コンピュータの能力が高くない時代、その”コツコツと記号なしの分も含めて、データ入力用の元原稿を書く”という作業をしていた人間である。
コンピュータ用データベース作成の現場から離れて少したつが、あちこちインターネットを利用して検索した感触では、後者の”コツコツ方式”が今でも現役のようである。
検索しやすいデータを作成するためには、気をつけなければいけない問題が山程あるが、書名中の記号の問題もそのひとつである。
データ作成のための仕様書には、必ず、記号の扱いはどうするかという記述があったくらいだ。 (複数の館のデータ作成を経験したが、館によって使用しているシステムが異なる場合も多く、仕様書も館ごとに作成しなおしたりした)
たとえば、この本の場合。
画面に表示される書名情報は↓だけだが。
ハリー・ポッターと賢者の石
検索に利用される書名の情報群には、基本的に↓のようなものが入る。
ハリー ・ ポッター と 賢者 の 石 ハリー ・ ポッター ト ケンジャ ノ イシ
で、さらに、もう一工夫して、↓のように記号のない情報も付け加えておけば、「ハリー・ポッター」「ハリーポッター」のいずれの語で利用者が検索しても見つけ出してくれるというわけである。
ハリー ポッター と 賢者 の 石 ハリー ポッター ト ケンジャ ノ イシ
ちょっとした手間だが、手間は手間である。
検索しやすいデータベースを構築する場合、費用がかさんでいくのは、その手間のためともいえる。
たとえ機械的に記号を落とすようにするにしても、それだけシステムの能力が必要であり、これも費用の問題にかかってくる。
また、検索者の気持ちにたってシステムを構築しようという考えがなくては、その必要性に気づかないだろう。そして、それに気づくのは、長く利用者と接した経験のあるベテランの図書館職員だと思う。
運営費が削られた図書館では、検索用の元データに、手間のかかった高価なものを用意できない。
もしくは、高価なシステムを入れることができない。
はたまた、手間をかける人間、手間に気づくベテラン職員を配置する人件費を捻出できないという事態に陥るという可能性がでてくる。
その結果、蔵書検索システムにも影響を与えることになりかねないのである。
かなり長いこと、この業界にいるので、時に、絶句してしまうような蔵書検索システムや、穴だらけのデータに遭遇することもある。
それは、今回のようなケースが、まだ、かわいいと思えるぐらいの凄まじいものばかりだ。
そうした信じがたいデータベースができあがってしまった裏側には、必ずといっていいほど、お金の問題や図書館業務への無理解があった。
日本では、残念ながら現場(図書館)が意見をいっても、なかなか予算がおりてこないらしい。
利用者側(市民)からの要望、つまり「使いづらい」という苦情を自治体側にした方が効果的だという。
なので、この件について、わたしは、蔵書検索システムの改善を市に対してお願いしてみた。
質問をしてきた友人にも、「検索できなかったら、恥ずかしがらず、面倒がらずにその場で聞いた方がいいよ」と話した。
そういった実際の意見を集約すれば、お金を出す側を説得しやすいのではないかと思う。
図書館は、地域の貴重な共有財産だと思います。
よりよい図書館にするには、「地域が育てていく」という気持ちがあってもよいのではないでしょうか。
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