本の密林・探検日記


2001年1月8日

『腸内菌の世界』という本を探している。

絶版本で版元にもない。どうしたら、入手できるか?

以前から、絶版本を探すのは大変な作業だった。
専門家や小説家であれば、懇意にしている専門書店に探してもらったり、古書店ごとに出版する「古書目録」を手がかりにすることも可能かもしれない。
が、一般人は足を棒にして、古書店を一軒一軒めぐるという方法が主流だった(いまでも?)と思う。
専門書は、専門書店で購入するのが早道の場合がある。
その専門書店の情報が網羅的に掲載されているのが、東京都内にかぎるが、『東京ブックマップ』だ。
一昨年までは、わたしはこの本の情報を基本にして利用者にご案内をしていた。
が、昨年から、新たな探索ルートも利用するようになった。インターネット古書店だ。
しかし、残念ながら、ネット古書店はまだ黎明期の感じがする。
理由は、書籍検索のデータベースとして使用するには、現時点(2001年1月)では心許ない出来のように思えるからだ。
書籍検索専門のデータベースに比べて、「検索速度」「データの精度」という点で、問題が見える。
曖昧検索などという技はまだまだ発展途上で、データに誤字脱字があれば、検索してもヒットはしない。
にもかかわらず、ほんの少し、古書店のデータベースを利用しただけで、いくつもデータの不備を見つけた。主なものは漢字の間違いだ(たぶん、変換ミスだと思う)。
古書店のデータは、公的なものではないので、仕方のないことかもしれない。
たぶん、データベースの構築費をあまりかけなかったんだろう。
数人の知人にこのサイトを紹介したところ、見つからないといわれ、改めてわたしが検索しなおすと発見できるなんてことがよくあった。
もちろん私は知りうる様々な方策を試す。しかし、一般の人が捜し物に行き着きにくいデータでは、本末転倒のような気がする。
さて、愚痴ばかりいってもしょうがない。
不完全なものでも、活用する道はある。
いま現在のデータは完全ではないことを踏まえて検索することだ。

以下、とりあえず基本は3点。

  1. 古書のデータベースを利用する前に、探索本のできるだけ詳しい、信憑性のある情報を得ておく。

  2. 書名検索でヒットしなかったから、著者名検索でヒットしなかったからと、1回で諦めない。 書名が駄目なら著者名でもう一度、逆に著者名で駄目なら書名でもう一度検索しなおす。

  3. 書名検索にすべての言葉は入れない(書名中に「」・など記号が入っている場合の救済処置があまりとられていないようなので)。


この他に、変換ミスを起こしやすい単語は、間違った単語でも検索してみるという荒技もあるが、これはよほど時間的金銭的余裕がないと無理だろう。
では、そのデータベースを利用して、今回のお題に挑戦してみよう。




『腸内菌の世界』という本を探している。絶版本で版元にもない。どうしたら、入手できるか?


先に述べた基本に添って検索してみる。
まずは、信頼性の高い「国立国会図書館(以下、「国会」)か「東京都立図書館(以下、「都立」)の蔵書検索を利用して、もう少し情報を確認する。
ここで確認すると、もしも、新しく改訂版が出ていた場合、その情報を得ることができる(「国会」には国内で発行される本のほとんどが集められるようになっている)。
専門書の場合、時に、新しいものの方が重要になることもある。それが確認できた時点で、古書の探索が打ち切られることもあるだろう。
さて検索してみたところ以下のような情報が得られた。


   書名:腸内菌の世界
   著者:光岡知足
   発行年:1980年
   出版者:叢文社

新しい版は出ていないようだ。
ついでに、現実に流通ルートにのっていないかも確認したが、やはり在庫はなく、取り寄せも厳しいとあった(利用した新刊web書店は紀伊国屋。URLは「便利なサイト&参考図書情報」参照)。 ここまで、下調査したうえで、古書店のデータベースに接続。
私がよく利用するのは「ブックタウン神田」だ。(URLは「便利なサイト&参考図書情報」参照)。
これ以外のものは、検索速度が遅かったり、専門書の情報が少ないように感じた。だからといって、「ブックタウン神田」が完璧というわけでもない。
まず書名の一部、「腸内菌」を入れて検索。書名すべてを入れないのは、先に説明したとおり。
ありがたいことに無事ヒットした。書名、著者とも合致していた。
が、発行年は昭和59年(1984年)となっていた。版ちがいだろうか? しかし、「国会」のデータにはなかった。
推測すると、この『腸内菌の世界』という本は1980年に発行されたものが売り切れ、そのあと増刷され、この古書店に置いてある本は、1984年に増刷されたものだと考えられる。
つまり、刷り違いの本なのだ。
図書館のデータベースの多くは、こういった場合、発行年の情報を「1980年」とする。
内容がまったく変わらず、ただ刷り直した本なら、1980年の本であろうと1984年の本だろうと、利用するのに差し障りはないだろう。
が、もし、1980年に一度発行したものの、状況などが変化し、本の内容に手を加えた上で、1984年に発行したのなら、意味は違ってくる。その場合は、「第2版」とか「改訂版」といった版の違いを明記し、発行年は「1984年」とするのが、図書館業界では常識だ。この基本を無視すると、本の「同定」という作業に差し障りが生じるので、大方の出版社でも同じようだ。
だが、これは出版業界の一部では、知られていないのか、無視されているのかわからないが(それとも見解の相違なのか?)、通用しないことがたまにある。
また、ややこしいことに、版は同じとしているのに、刷りによって内容を変えてしまう商業出版社もある(このあたりを説明しはじめると、かなり長くなってしまうので、今回は割愛するが、版と刷は本来意味が違うこと、でも混同して使用している出版社があることだけ覚えておいてほしい。最良の道は、版の最初の年と、その本自体の刷りを併記することだと思うが、現状では無理だろう)。
だからこそ、「国会」や「都立」で、下調べすることをお勧めするのである。

さて、下準備のおかげで、『腸内菌の世界』という本は過去1冊しか出版されていないらしいことがわかっているので、発行年の情報が「?」でも、 今回ヒットした本は、目当ての本だと断定ができた。
「ブックタウン神田」では、本が置いてある古書店の場所はもちろん、売値も確認できる。ものによっては、web上で注文してしまうこともできるが、相手は古本。
新刊書と異なり、状態も気になるところだ。また、「ブックタウン神田」のデータは、「古書目録」の情報を入力したものなので、更新に疑問があり、すでに売れてしまった可能性もある。
わたしは、近日中に自分で赴くことを前提に、古書店に電話で確認して、あれば取りおきしてもらう方法をお勧めする。
本の状態、内容(版や刷りも)を確認し、納得して購入するためには、面倒だが、この方法が確実だと思う。
さて、これまでの手順で、この質問をされた方は、無事『腸内菌の世界』(しかも美本!)を手に入れることができた。

最後に、お願いがあります。
もし、今回、わたしが紹介した方法で、神田の古書店に赴く方がいらしたら、ぜひ、検索した本のwebページをプリントアウトして持っていらしてください。そして、古書店の方にさりげなく、webで探したことを伝えてください。
今回の質問者の方が出向いた店では、『腸内菌の世界』の情報をwebで得たことに驚いていたらしいのです。データベースを作成しておきながら、その効用に懐疑的なのかもしれません。
しかし、客にとって、古書検索のデータベースはとても重要であることを、店の方に理解してもらえれば(つまり「客が呼べる」とわかってもらう)、データベース構築に力を入れる気持ちになってくれるかもしれません。
そしてそれは、こうしたデータベースをさらに使いやすいものに育てていくことにつながると思うのです。


便利なサイト&参考図書情報へ(絶版本を探す)

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