『最後のシ者』異伝
作:gazelle
ネルフ本部。
「碇、セントラルドグマへのセキュリティはこんなにもろいものだったか?」
頭を抱える冬月。
「相手はプロトカルチャーの格闘技を継承した戦士だ」
当たり前のように言うゲンドウ。
「エヴァンゲリオン弐号機と…パターン青、使徒です!」
マヤの報告は、非常事態ではあるが十分に考えられたことだ。
「現在エヴァ初号機と龍虎王、真ゲッター、マジンカイザーが…もう二つ高速で使徒を追う物体を発見!! データ照合完了、ドモン=カッシュに衝撃のアルベルトです!」
だが、日向マコトの報告には一同がげんなりした。
「またややこしいのが…」
何せ使徒と生身で戦える、エヴァンゲリオンの存在を真っ向から否定しかねない危うい存在だ。
「ドモン?!」
アルベルトと拳を交えながら防壁をぶち破って行くドモンに、タスクはコックピットからずり落ちそうになるほど驚いた。
「ゴッドガンダムは?!」
レオナの驚きぶりも似たようなものだ。
「置いてきた! 衝撃のアルベルトを相手にモビルファイターを出すのは、かえって得策じゃないからな!」
確かにゴッドガンダムで戦うとドモンは攻撃を当てにくくなり、アルベルトは当てやすくなるが…
「お、俺でさえ龍王破山剣で切り払いながら進んでると言うのに…」
真ゲッターはストナーサンシャイン、マジンカイザーはファイヤーブラスターで防壁を壊しながら進んでいる。
が、ドモンとアルベルトはたった一拳で防壁を粉砕していた。
「だから今川監督作品って!」
怒るミサト。
「待っていたよ、シンジくん。その後ろの人たちも……『縁』だね。あなたとまた会うなんて」
カヲルはドモンの方を見て問う。
「俺は使徒に知り合いはいないぞ」
「そうだろうね、僕の方で見たような気がするだけだから」
カヲルが遠い目をする。
はるか昔、宇宙怪獣の来襲を受けた地球。
「タブリス、それは何だ?」
シュウジ=クロスはカヲルの手にしていたメモリープレートに目をやった。
「『愛・おぼえていますか』ですけど…」
「音楽か! いい心がけだ! いま補完計画とやらで生き延びようとしている連中は、生きるのに必要なものしか持っておらん。一人ぐらい、お前のような者がいなくてはな」
シュウジはカヲルの頭を撫でた。
「武骨な俺が後世に残して行ける『生きた証』はそうないが…そうだ! 師匠、俺達の技をすべてタブリスに見てもらいましょう!」
ドモンは智拳印を組み、明鏡止水の境地に至って全身から金色の光を放つ。
「ふむ、ワシもヒトに自慢できるものと言えば、この拳しかないからな…」
シュウジが両拳を腰のあたりまで引き、やはり金色の光を放つ。
「ドモンさん、シュウジさん、本当に宇宙怪獣と戦うつもりなんですか?」
彼我の圧倒的すぎる戦力差を考えるに、戦いを挑む者に待ちうけるのは死しかない。
「聡明なお前にしては聞くも愚かなことを言う。ドモンの言う通り、ワシらが伝えていけるものはこの拳しかない。今から我々の編み出した拳技全てをデータ化して送ろう。タブリス、使徒とやらになる前にデータをこの星のどこかに隠してはくれぬか?」
真剣なシュウジを見てカヲルは首を横に振ることなどできなかった。
「我らのこの拳、『流派東方不敗』と名づけよう。これを引き継ぐ戦士は、きっと再度来襲するであろう怪獣どもと戦う勇者の役に立とう」
拳聖と言われるシュウジの言葉には、とてつもない重みがあった。
「ヒトとしての営みを捨ててまで種の存続を考えるゲンドウ=イカリも、無謀にも戦いを挑む俺達も、奴らの災いを退けて生き延びると言う願いは同じだ。そして、それは幻ではない!」
ドモンが締めくくる。
「シュウジ殿、ドモン、ここにいたか。そろそろ行くぞ」
アルベルトがやって来て、二人に声をかけた。
「シンジくん、君たちは生き延びなければならない。ヒトが生き残るか、使徒が生き残るか。僕は死すべき定めの存在、僕にとって生と死は等価値なんだよ」
カヲルの言葉に、ドモンとアルベルトが目をむく。
「小僧! 貴様は間違っている!」
びしっ! とアルベルトがカヲルに指を突きつける。
ドモン:俺達もお前も天然自然から生まれたもの、言わば地球の一部!
アルベルト:母なる大地より生まれしもの、すべてになすべきことがある!
ドモン:それを忘れて、貴様一人死によって逃れようなど…
ドモンとアルベルトが呼吸を合わせる。
「愚の骨頂!!!」
カヲルは鉄槌で後頭部を打たれたような衝撃を受けた。
「いいよ。この僕を死の淵から引き戻すのなら、それだけの生命の光を見せて欲しい」
カヲルの身体が拳から光り出す。流派東方不敗の源流の拳を、彼ははっきり覚えている。
「言われるまでもない!」
ドモンの全身が光る。
「己の存在が人類の運命を決するほど大きな物だと思っている。その思いあがり、我が衝撃で打ち砕いてくれる!」
アルベルトが赤と黒の竜巻と化す。
「レイ、死と再生の儀式を拒んできた者の末裔だ。対処は任す」
やや遅れてセントラルドグマに向かっていた綾波レイに、ゲンドウは無情に言い放つ。
「はい」
アルベルトの前に零号機を引き連れたレイが立つ。
「ドモン=カッシュ、無理に私に合わせることはない。ここが見せ場だ」
アルベルトにドモンがうなずき、光を放ちつつドモンは右手を上げる。
パチンっ!
「出ろおぉぉっ! ガンダアアァァァムっ!!」
ドモンがセントラルドグマの床をぶち破って現れたゴッドガンダムに飛びこむ。ナノマシンのスーツが、彼を包む。
ドモン・アルベルト:ガンダムファイト!!
カヲル・レイ:レディー・ゴーっ!!
「かつてゼントラーディ・メルトランディ、そして我らゼ・バルマリィ帝国にも与しなかった、超古代の戦士集団が編み出した拳を極めた者だ。彼らだけは何としても処分せよ」
ユーゼス=ゴッツォがシロッコに命じる。
「はっ」
シロッコが刺客を放つべく命令を発しようとしたとき。
「あの戦いの意味がわからねえ奴は引っ込んでもらおう! たとえそれがあんたでもな!」
ヤザン=ゲーブルがシロッコを睨みつける。
「君にはわかると言うのかね? 説明できるのなら聞こう」
「魂で語り合ってるのに理屈で説明できるか! ネルフとやらには俺が行く! 他の奴は手出し無用だ!」
止める間もなくヤザンはハンブラビでジュピトリスを飛び出した。
「お供します!」
そのそばに、サラ=ザビアロフのメッサーラが続く。
「お前さんにもわかるか! あの戦いが!」
ヤザンが嬉しそうに言うと、サラが力強くうなずく。
「ほう、敵にもドモン達の戦いを見たい奴がいたとはね」
イサム=ダイソンのYF−19が並ぶ。
「あれが、俺達が求めていた本当のファイトだ!」
カヲルとドモン、アルベルトとレイの神拳の応酬に、タスクも思わず手に汗握ってしまう。
「シンプルなだけに一手で仕留める豪拳が多いな!」
本来、生身で宇宙怪獣を倒してきた戦士が用いた流派東方不敗。歴史を重ねるうちにさまざまに追加された手を繰り出すドモンと、原初の東方流派の力強さを見せつけるカヲル。 汎用兵器のエヴァで戦うカヲルに対し、格闘専用機のゴッドガンダムで戦っていなければ、ドモンがパワーで押されているところだ。
「早いね、動作の最適化がなされている。でも、いつまで持つかな?」
「これが…ヒトとシトの差か!」
使徒であるだけにカヲルは全く疲れを見せない。だが、ドモンのほうは少し疲労の色が見える。
「貴様、その拳をどこで知った?!」
アルベルトの衝撃と、レイの衝撃が真っ向からぶつかる。
「もしもの時はゼーレと戦うために、超古代種族の戦闘データをレイに与えたことは隠していた。だがもう、その必要もない」
ゲンドウは誰にともなく言う。
誰よりも補完計画を阻止する資格のある者たちが来たからだ。
いかなる形になるかはわからないが、人類補完計画は間違いなく阻止される。
ドモン:超級!
カヲル:覇王!
ドモン:電!
カヲル:影!
ドモン・カヲル:だああぁぁぁんっ!!
渦巻く闘気の塊がぶつかり合う。T−LINKや真ゲッター・マジンカイザーを介して、タスク達は辛うじて拳の応酬を目で追っている。
BF団本部『バベルの塔・イミテーション』。
「アルベルトに加勢する。止めても無駄だぞ、孔明」
意外なことに、策士・孔明は樊瑞に黙ってうなずくのみであった。
十傑集の主だった面々が、銀鈴ことファルメールの兄であるエマニエルこと幻夜の力を借り、セントラルドグマにテレポートした。
「確かにドモンには秘拳がある。だが、見たところ実力は伯仲しておる。秘拳を繰り出すにはカヲルとやらに隙を作らねばならん」
いつの間にかセントラルドグマに来ていたマスターアジアが策を練る。
「東方不敗マスターアジア、そのことなら当方の軍師から妙策を授かってきた」
樊瑞は孔明から預かった大きなトランクを、マスターアジアに見せた。開ける前から間断なく放たれる駄目なエネルギーに、マスターアジアが身震いする。
「こっ、これは……!」
十傑集、そしてマスターアジアが見た物とは?!
「ドモン=カッシュ! 我々も応援するぞ!」
シュタイナー=ハーディの声にドモン達が振り向く。
そこに展開されていたのは…
フリル満点のドレス・網タイツ・ハイヒールで完全武装したオヤヂ達の、男気に満ちたラインダンス。
「誘おう(いざなおう)! 世界の果てへ!」
猛スピードで走るオープンカーの上で、白いスーツの胸元をはだけるヘンケン艦長。
誘わないでください。
エマ=シーンがひどい頭痛に悩まされたことは言うまでもない。
「ムフウウゥゥゥッ!!」
そして、ビキニパンツ一丁でポージングをキメるグローバル・タシロ両艦長&ギャリソン。
漢の魅力大暴走、狼藉三昧の汗臭い空間が、セントラルドグマに展開されていた。
さしものカヲルとレイも動きを止める。
ヤザン:今だ!!
タスク:ドモン!!
イサム:とどめを!!
サラ:刺して下さい!!
「私の闘気、存分に使え!」
アルベルトの闘気が、ドモンに吸いこまれる。
ドモン:我らのこの手が!
タスク:真っ赤に燃える!
ヤザン:未来をつかめと!
イサム:轟き叫ぶ!
サラ:シャッフル同盟が奥義!
全員:シャッフルエキストラヒーリングフォーメーション!!
巨大な拳がカヲルとレイを包み、消えた。
「カヲルくんっ!」
エヴァ初号機の手が、カヲルに差し伸べられる。
「君は、生きていていいんだ。そして、僕も生きていていいんだね…」
バルディエルと同様に浄化されたカヲルは初号機の掌の上で、感慨深げにエントリープラグの奥のシンジを見つめる。
「ドモン=カッシュ、人類補完計画の阻止を感謝しておこう」
力なく座り込んでいたレイを助け起こしつつ、ゲンドウが言う。
「碇司令……珍しいな。あんたが礼を言うなんて」
同じことを破嵐万丈に言われた、とゲンドウが苦笑した。
「碇、我々にはまだなすべきことがある」
冬月がゆっくりとセントラルドグマに入ってきた。
「さしあたって…アレを何とかせねばな」
アルベルトが苦虫を噛み潰した顔で指した先では…
まだオヤヂ空間が展開されていた。
END
注:サラ=ザビアロフは、ドモン達の先代のシャッフル戦士のブラックジョーカー(トリス=スルゲイレフ)と声が同じ(CV:水谷優子)です。
ヘンケン艦長は『少女革命ウテナ(TV版)』の鳳暁生(おおとり・あきお)と声が同じ(CV:小杉十郎太)です。
シャッフルエキストラヒーリングフォーメーションは、ボンボンのコミック版でチボデー=クロケットらのDG細胞を浄化した技です。
スパロボのページ・目次へ