シベリア超特急2
─あるいは『盛岡への道』─

文:gazelle

 10月20日・札幌駅。
 バイトの土曜出勤を蹴ってまで私は札幌から盛岡まで出向き、邦画屈指の怪作『シベリア超特急(以下シベ超)』のシリーズ2作目を見に行くためにこの駅に降り立った。
 同行者は私が主催するよろずゲームサークル『サークルゴールデンハーベスト』の仲間で、てえつう氏・MJ大尽氏・順順女史の3人。

 出立の前に近くのヨドバシカメラに出向き、カメラを物色。デジカメはMJ大尽氏が持ってくるので、携行に便利なポラロイドカメラ『ヒッパレーJOYCAM』を購入。サイズこそコンパクトだが、旅行先で撮った写真をすぐ見られる利点は大きい。

 てえつう氏とともに21:56札幌発青森行きの『急行はまなす』に乗り込む。後から順順女史とMJ大尽氏が乗り込んでくる。MJ大尽提供のビールなど飲みつつ、シベ超1や非拘束方式の選挙などについて語った後、就寝。

 眠れなかった。

 はまなすの座席は深く倒すことができて眠ることはできるものの、揺れがダイレクトにくるわ狭いわお尻がむれるわでどうにも性に合わない。

 『眠らずに無事シベ超を鑑賞できるのだろうか?』と不安になる私をよそに(後に大いに杞憂であったことを身をもって知ることになるが)、はまなすは青森駅のホームに滑り込む。

 青森で『特急はつかり2号』に乗り換える。朝焼けの中、メンソレータムの香りがする飲み物『ルートビア』で乾杯、無事本土上陸を祝う。

 10月21日7時55分、盛岡到着。駅のそば屋にて『めかぶそば』を食し(実はこの後、朝食:そば 昼食:冷麺 夕食:わんこそば 翌朝食兼昼食:ラーメン(プラスチャーハン) 夕食:うどん(プラスミニ牛丼) と5食を麺系で過ごした)、市内を歩く。

 9時ごろ、上映場所の中劇2に到着。『ガイドブックにゲーセン載せてどうするよ?』等さんざんからかいのネタにしてきたCLUB SEGA盛岡の上の階にあり、思わず苦笑い。

 映画館のすぐ近くのミスタードーナツで時間をつぶす。
「他に誰も客がいなくてMikeに飲みに誘われたらどうしよう?」
 などの憶測が飛び交う。みちのくミステリー映画祭のスタッフも来ていた。

 9:30ごろ、映画館へ。われわれが来てすぐの時には、他の客はまだ数人。
 ちょっぴり引いてしまった私は、皆に真ん中の席を勧める。

 以下、例によって例のごとくツッコミどころ満載なのだが…残念ながら現時点ではネタバレを避けねばならない。
 また、シベ超は1度観ただけで説明しきれるものでないことは、『1』をご覧になった方々ならご理解いただけると思う。

 が、Mikeが映画を通して放つ殺気の10分の1も伝えられないのは承知で筆を取る。

 シベリア超特急2。
 かねてからの情報どおり、『シベリア』も『超特急』も出てこない。前作で主人公の山下奉文大将(Mike Miznoこと水野晴郎)が、シベリア超特急を下車したからである。

 まず舞台となった日光『石亭』こと『菊富士ホテル』が映ったとき、非常時の避難口を示す印が窓にそのままになっているので一笑い入れておく。
 そもそもホテルの内装等に手を入れた様子がないので(フロントだけは変えたようだが)、予算は推定3億と聞いているがいったいどこに使ったのだろう?と思ってしまう。

 演技のほうはほとんどの俳優が半ばやけになったかのような熱演で頑張っているが、台詞回しと相まって、絶妙に珍妙な空気を醸し出している。

 簡単に言うと、草笛光子一人勝ち。

 無理のあるチャイナドレス姿を見て、『昔はさぞや……』と言う感じの退廃的な演技をするのかと思いきや、火曜サスペンス劇場・土曜ワイド劇場に出てきそうなおばさんになってしまっている。主役以外で唯一彼女の演技に食われなさそうな長門裕之は、被害者役のため早々に退場してしまう。

 とにかく。

 ……なんと言ったらいいのだろう?

 謎解きのシーンは巧妙なトリックを鮮やかに解き明かすと言うより、後から取ってつけたような説明での強引なうっちゃり(最もそう言い切れるほど私は推理物に慣れ親しんでいないが)。
 セットはホテルそのまま。
 俳優達の切れ味鋭い豪快な学芸会っぷり。

 正直、終始笑っていた。

 さて、最高のワンシーン。
 某がモーゼルミリタリーを山下大将に向ける! 大将ピンチ!

 かちっ!

 佐伯大尉「私が空砲に入れ替えておきました」

 大将「ばかもん!」

 (えっ? と言いたげな佐伯大尉)

 大将(にっこり笑い)「おかげで命拾いしたじゃないか」

 会場大爆笑。それか! 他にいうべきことはいろいろあろうにそう来るか!

 そして、オチ。
 そんなに和やかに終わってしまうのか……大将大ピンチだったと言うのに。

 では、評価を。
 『予算が増えたらしいからまともな映画にするのか』とか、『2作目のジンクスで箸にも棒にもかからない中途半端な作品になったのでは』などと言う危惧はまったく不要だった。
 今回もMikeパワーに死角なし!
 心に訴えかける痛快無比な駄目映画(誉め言葉)だ。安心して涙が出るほど笑ってほしい。
 盛岡まで来た甲斐があった。

 それにしても、超特急ならぬ新幹線の遅れで上映後に挨拶となったMikeの、なんと生き生きとしていたことか!
 3作目はインディジョーンズばりの冒険映画にしたいと語る彼の顔には、齢七十だと言うのに微塵も老いがない。

 そして新作の構想を聞く竹田高利(佐伯大尉役)の、『マジかよ……』と言いたげな表情!
 忘れられないものになるだろう。

 Mikeの情熱に当てられて胸いっぱいお腹いっぱいながらも、劇場を後にして近くの『食道園』にて冷麺を食す。本場の冷麺は札幌で売られているものより味はあっさり。その分スープの奥のコクやら何やらがわかりやすい。適度な麺の歯ごたえもよい。

 市内を練り歩き、せんべいを買い(『白沢せんべい店』で買った『激辛せんべい』で、後日のた打ち回るほど辛さにやられたことを記しておく)、地酒を買い、ほとんどの主要都市にありそうなドトールコーヒーで小休止。思わず盛岡のオタク御用達らしい本屋に立ち寄ってしまうのはご愛嬌。

 苦言が一つ。唯一見つけたネットカフェ、今時一時間¥900は高いと思う。

 わんこそばの店『直利庵』で106杯を平らげ、腹ごなしに歩いて盛岡駅へ。『スーパーはつかり23号』に乗り、青森へ。

 さらば盛岡。シベ超2ほどに珍妙な映画を公開するなら、また映画祭に来てもいい。

 青森〜札幌はまたも『急行はまなす』。ただし今度はカーペットカー。安心して爆睡する。

 無論、来年1月東京に行く。できればシベ超2の初日初回を見て、シベ超1のDVDも販売されていれば入手したい。


付記 シベリア超特急2 ─3度目の観賞─ 於 スガイディノス・ディノスシネマ(札幌市白石区)

 私のシベ超2に関する旅は、ここでひとまず終焉です。盛岡での初公開。怒涛の東京公開。そして、自陣にて迎え撃つこのたびの札幌公開。
 長くも、決して退屈することのない旅でありました。
 Mike Mizno監督、どこまでも美味しい人です。
 いやその……ねえ。
 劇場から現れて、次の回の放映&舞台挨拶を待つ特濃の観客達の拍手喝采を受けて……トイレに入っていったのですから。
 日本に映画監督は大勢いても、トイレに入るところで拍手された監督はそうおりますまい。

 そして舞台挨拶。
「『シベリア超特急2』が東京で公開されたとき、わざわざ北海道から飛行機で5人も来てくれて……」
 覚えていたですか! 思わず手を上げましたよ! えーと、連れの3人の盛岡行きをそそのかしたのは私です。しかも東京へはご指摘のとおり1人増やして乗り込みました。
 東京・大阪の各友人と待ち合わせ、最後は御大の車に万歳三唱までかましたうちの1人でもあります。

 今回もこんな名作を一人で見るのではなく巻き添え食らわせ……いやいや、多くの人に知ってもらおうと思っておりました。
 で、友人のたくたく氏がお金がないというのに拉致して、もとい誘ってローソンチケットを買って渡し、犠牲者を増やし、もとい宣伝に一役買わせていただきました。
 それもこれも、御大に次も反戦思想とネタに満ちた怪作を、つつがなく仕上げて欲しいと思えばこそ!

 ともあれ、札幌の観客は最初に御大が『笑うところでは笑い、戦争の悲惨さを訴えるところではそれを感じ取って欲しい』と言うようなことで念押ししたので、ピンポイントで笑いが入っております。
 そんなこんなで3回目の観賞にして、やっと御大がモーゼルミリタリーを手にしてのたまう迷台詞(盛岡では自分が笑いすぎて聞き逃し、東京では他の観客の笑い声でかき消された)、
『やめたー』
 を聞き、のた打ち回るほど爆笑させていただきました。

 さて、とんでもない情報を入手しました。
 シベ超マニアの皆さん、転げ回るほど喜んでください。
 各会場で売られたシベ超3のストーリー、まともに映画化するとお金がかかるので、それは4に回して3は現代と戦中のストーリーが同時に進行する新しいストーリーになるそうです。
 監督、シナリオ構想を1作分増やしてるですよ! もうドキドキですよ!

 洒落抜きで監督の長寿を願って止みません。
 3作目はたとえ初公開が沖縄であろうと駆けつける所存です。

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