『シベリア超特急』
 駄作の道に踏み込んで日の浅い私が批評できる作品ではない。
 が、しかし。私が行く道を後から続く者があるかもしれないのであえて書く。

 貴方が映画に興味があるか、昔の金曜ロードショーを見ていたならば、水野晴郎と言う漢を知らないと言うことはないかと思う。
 その彼が、監督・脚本・作詞など、ジャッキー=チェンばりの活躍をするのが『シベリア超特急』だ。

 どんな話かと言うと。
「ボルシチは、結構、うまかったぞ」(棒読み)
 と、のたまう迷探偵・山下奉文陸軍大将(水野晴郎)。列車の中で終始寝ているとしか思えないこの漢が(映画の最後のNG集では本当に居眠りしていた)、密室の車両の中で次々と乗客が消えて行く怪事件を見事に解決する。
 解決の糸口になるような報告は、部下や同行する外交官の青年からほとんど聞かされていないと思えたのだが。
「9号室だ!」
 いきなり言われても困る。

 この映画には彼の決め台詞、『いやー、映画って、本当に面白いですねー』を真実にするための粋な小細工が各所に施されている。
 車輪がありそうに思えないシベリア超特急。
 いきなり説明的な台詞をかます車掌(しかも客室と客室がつながっている、などの重要な情報に限って教えない)。しかもこの車掌、かたせ梨乃と西洋系の女優が入れ替わっても気づかない。
「この列車に当たる風は強い」(山下大将談)
 と言う理屈でことごとく列車に引っかかる重要な証拠。
 これ以上は実際に目で見て笑っていただきたいので説明は避けるが、アラは探す気にならなくともいくらでも見つかることだろう。と言うよりはアラしかない。

「騙したのではない、心に語りかけたのだ」(山下大将談)

 この台詞は犯人への台詞ではなく、ついうっかりこの映画をまともなサスペンスと思って見た、観客に向けたメッセージのはずだ。

 さて、邦画の駄作の規範となるべきこの映画、何が恐ろしいかと言うと2000年秋公開を目指して2作目が作られているのだ。

『シベリア超特急2・満州怨霊編』。

 山下大将が満州で1泊し、その折に巻き込まれた難事件を解決するらしい。
 元気がないと言われる邦画に、様々な意味で活気を与えてくれる一本になるであろうことを期待しつつ、とりあえずこの批評を書くキーを打つ手を止める。


付記 シベリア超特急1完全版鑑賞 於 2001年1月12日 新宿シネマカリテ

 当初、シベ超不完全版だけをビデオで見ていた私には、実に腑に落ちない点があった。
『Mike Miznoは本当に初めから我々をコメディで笑殺するつもりだったのか? はたまた真面目にサスペンスを作るつもりだったのか?』
 この疑問はしつこくしつこく、私の脳裏にこびりついていた。

 2000年。札幌からわざわざ盛岡まで出向き、シベ超2を劇場で金払って観た最初の百数十人の一人となる。

 2001年。札幌からわざわざ今度は東京まで出向き、シベ超2を本公開の初日初回で見た最初の百数十人の一人となるべく東京へ。

 シベ超2東京公開前日。
 私はシネマカリテにいた。シベ超2前夜祭という触れ込みのイベントに参加するために。
 そして、アレを観た。

 残念ながら、御大との盟約により内容についてはあまり話せない。ネタばれOKならば、当方HPよりリンクを張っている『シベリンク』を巡り、その凄惨な内容について知っていただきたい。

 確信した。
 まぎれもなく、御大は我々を笑殺するつもりでアレを作ったのだ。
 でなければどうしてああも絶妙なギャグのタイミングで、かたせ梨乃の回転倒れの映像を使い回すことができようか?!
『やっぱり、現実は、映画のようにはいかないか』
 とほがらかにこってりとした晴郎スマイルでシメをかますことができようか?!

 狙って作ったのでなかったのであれば、彼は珍妙なる映画の神の生まれ変わりであろう。

 ともあれ、私の拙い映画鑑賞歴の中で、シベ超1完全版は『マイベストコメディ』賞に輝いた。もっとも、私がシベ超シリーズ以外に映画館で見たコメディは、『ホットショット2』『オースティンパワーズ・デラックス』『裸の銃を持つ逃亡者』ぐらいなのだが。

 私は不幸にして、日本人が作った映画でこれ以上に笑える映画を観たことがない。

 笑う門には福来る。日本が不況や荒廃する青少年の心理などの諸問題を乗り越えるには、とりあえず皆を笑わすしかない、と私は0.1ミリくらい真面目に考えている。
 Mikeの後に続けとか、できもしない無茶は言わない。が、日本でももっと最初から最後まで、涙が止まらないないほど笑える映画を作ってはくれまいか。

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