| 『決戦! 聖アー・バー・エー』 |
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作:gazelle
聖アー・バー・エー。
「いいかげん、乳離れしなきゃな」
碇シンジは、エヴァンゲリオン初号機のコックピットから降り、大地に立った。
その目がぎらりと光る。
「馬鹿な、この大怪球にたった一人で挑むと言うのか!」
幻夜が目を見張る。
シンジの、軽いシャドーボクシング。
腕をほぐすために拳を繰り出しているだけなのに、衝撃波が大怪球を揺らす。ステップを交えつつ、二度、三度。
「惚れるなよ、アスカ」
シンジが後ろに控えるエヴァ弐号機を見て親指を立てる。
「な、ななな何言ってんのよ! …カッコいいじゃない、バカシンジ…」
アスカが真っ赤になる。
「中条長官から教わった、命を賭けたファイナルブロウを放つ! 今俺に惚れたら、アスカは一生行かず後家だぜ」
シンジの身体が天高く舞う。
「ええっ?! 待ちなさいよ! せっかくこのアスカ様がちょっぴり見なおしてやったって言うのに、勝ち逃げなんてずるいじゃないのよ!」
涙を撒き散らしてアスカが叫ぶ。
「アディオス」
シンジが投げキッス一つ残して、天に舞う。目指すは大怪球!
「そうはいかんな」
素晴らしきヒィッツカラルドが、シンジの眼前に突如姿を現す。彼の手から繰り出されるカマイタチに、シンジが真っ二つにされるとロンド=ベル隊の全員が思った。
「命を賭けるのは、カッコいいけどカッコ悪いわ」
綾波の手の錆びた刀が、ヒィッツのカマイタチを弾く。肉片になったのは、ヒィッツカラルドの方であった。再び綾波の背の鞘に、刀が戻る。
「リリンが生き残るか、僕らが生き残るか…決着をつけよう、シンジ君」
渚カヲルことビッグファイアが、ガルーダから地面に飛び降り、華麗に着地した。
「さがっていろ、綾波」
1歩踏み出そうとするレイを、シンジが止める。
「僕のこの手が真っ赤に燃える! 未来を断てと轟き叫ぶ!!」
カヲルの手が闘気を集める。
「馬鹿な! あれは! 東方流派が最終奥義、『石破天驚拳』!!」
驚愕のドモン。
「ムゲゾルバドスめ、密かに東方流派のデータを集めておったのか!」
舌打ちするマスターアジア。
「東方不敗直伝の拳か…恐いな…」
言葉とは裏腹に、シンジの目が輝く。シャッフル同盟や国際警察機構のメンバーについうっかりもまれてしまったシンジは、こんな絶体絶命のピンチにも…
ニヤリと笑うのだ。
「この勝負、勝てば間違いなく俺の拳が歴史を変える。ゾクゾクするよ」
シンジの全身から、闘気が溢れ出す。
「犠牲なしに世界は変えられない。だけど、それを覆すことができるのは…シンジ君、君だ」
「任せろ、大作」
腕の砕けたジャイアントロボの傍らに力なく横たわる草間大作にも、シンジは親指を立ててみせた。血が目に入ってシンジがどこにいるかよく見えなかったが、今のシンジを包む熱い闘気ははっきりと感じ取れる。
「あんな子供一人に、私の復讐を止めさせはせん!」
幻夜が大怪球からレーザーを撃つ。
「無粋はよせ」
アルベルトが衝撃波を放って止める。
「アルベルト殿! BF団を裏切るのか!」
「お前を裏切る分にはどうと言うこともない。ムゲゾルバドスの走狗に成り下がり、地球を静止させてレジスタンスの壊滅を図るなど、この『衝撃のアルベルト』到底承服できるものではない! 宿敵戴宗亡き今、BF団に未練などあろうか」
言い切るアルベルトを見て、諸葛孔明は苦り切った顔をした。
『幻夜、遠慮は無用だ。国際警察機構とその仲間ごと、アルベルトを討て』
「わかりました」
レーザーの銃口が、今度はアルベルトの方を向く。
「だったら俺達に力を貸してくれ」
戴宗がそう言ったので、アルベルトは義眼でない方の目をこすった。よく見れば、ドモンであった。
「戴宗はあの大怪球のために死んだようなものだからな。いいだろう!」
ドモン:超級!
アルベルト:覇王!
ドモン&アルベルト:電・影・だああああああぁんっ!!!
ドモン:行くぞっ!
アルベルト:うむ!
闘気の渦をまとったドモンが飛ぶ。
「石破! 天驚拳!!!」
巨大な闘気の手がシンジに迫る。
「俺は、今までの碇シンジじゃないんだ!!!」
シンジの渾身のストレートが飛ぶ。
巻き起こる、爆炎一つ。
「シンジっ!!」
叫ぶアスカとミサト。
「ドモンっ!!」
レインとアレンビーも叫ぶ。
「俺はここだっ!」
シンジはリーンホースJrの甲板の上で、カヲルを抱きかかえて立っていた。
「強くなった…君は……人類に…最初から補完なんて必要なかったのかも…知れないね…」
とつぶやいて、カヲルはシンジの腕の中で息絶えた。
「今頃、気づいたのか」
シンジの頬を、涙がつたい落ちた。
「ヒイィィト! エンドっ!!!」
さらに大爆発。炎の中から、ゆっくりとドモンが現れる。
「わからずやの兄貴に、真相を教えてやれ」
銀鈴の前に幻夜を置き、ドモンは天を見上げた。
「来いっ! 風雲再起!!」
シンジはエヴァ初号機に戻り、白いモビルホースにまたがる。カヲルの遺体は、リーンホースに預けた。
「シンジ! それは俺のだ!」
「堅いこと言いっこなしですよ、ドモンさん! 残るはムゲの本隊のみ! 行こうか、風雲再起」
ドモンに背を向け、エヴァ初号機はあっと言う間に駆け去った。最も、ゴッドガンダムは自力で大気圏突破が可能だ。すぐに後を追っている。
ネルフ本部。
「碇、宇宙には行かないのか?」
と言う冬月に、
「問題ない、後は勝報を待つだけだ」
ゲンドウは顔の前で手を組んだまま言った。いつも通りに見えるが、心なしか嬉しそうだ。
「行きますか、我々も」
中条長官は、東方不敗に言う。
「まだまだあやつらにばかり活躍はさせん」
東方不敗が、マスターガンダムに乗りこむ。
「ロボ、宇宙へ行こう! そして、みんなと一緒に生きて帰ってこよう!」
決然と言う大作。後に、その場にいあわせたレジスタンスのメンバーの誰もが、ロボがうなずいたのを見たと言う。
最後の戦いに向かう戦士たちの中に、希望を捨てた者は皆無だった。
End