トピックス009

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 文部省は先日、全国の各中学校にスクールカウンセラーを導入することを検討すると発表しました。文部省はここ数年、子供たちへの心の教育というテーマを掲げ、知識偏重の教育を改める必要があると認識すると同時に、学校という場に心の問題の専門家を置くことを真剣に考えています。先の事柄に対する具体的な提案の一つがここにあります。
 
 実はアメリカではこうしたことも当たり前の事柄になっています。州によって多少制度の違いはありますが、学校には教科を教える教師の他にさまざまな専門家が加わって、子供たちのフォローをしようとしています。例えば先にあげた悩みを聞いたりカウンセリングを行うスクールカウンセラー(スクールサイコロジスト)はもちろん、さまざまなグループ活動や社会活動をともにしたり、進路相談や親からの相談を受けて社会的な視野に立って指導をするガイダンスカウンセラー、外国語を話す子供のためのバイリンガル教師や授業を助けるための通訳及び補助スタッフ、家庭内の様々な問題について相談を受けるソーシャルワーカー、身体障害があればそれに応じた訓練・指導を行う作業療法士や理学療法士、不登校であっても家庭教師を派遣したり、周辺機関との調整をしたりするための専門家もいます。もちろん、こうした専門のスタッフが必要なのはそれだけ多くの問題を抱えていることでもあるのですが、子供たちに取り組む姿勢という点で考えると、日本の現状とは大きな違いがあると思います。日本では数も決して多くない先生方が、これらのさまざまな役割を兼務せざるを得ない状況にあるのです。

 これには子供たちへの教育という考え方にも違いがあるせいかもしれません。アメリカでは教育ということを単に知識を教えるということだけではなく、次の社会の担い手として、社会の一員として認められる存在になるように育てることを考えているようです。そのために必要だと思えるスタッフをそろえ、学校の機能を充実させることは社会の責任であると思っています。そのかわり、親に対しても、子供本人に対してもそのために努力するように求めています。「不登校」に対する考え方はいろいろありますが、アメリカでは「不登校」をただ見ているだけの親は子供に教育を受けさせる義務を怠っているとして処罰されます。本人についても教育を受ける義務を怠っていると思われます。もし、学校に行けないのなら、その時は本人も親もそれぞれに応じた方法を使って、再び学校行けるようになることを考える、そのかわり、そのために必要な専門スタッフは社会が用意するという考え方です。

 アメリカのやり方が全てよいというのではありません。よく知られているとおり、アメリカの少年犯罪は日本の比ではありません。ただ、日本の教育のあり方は、根本からやはり見直していく姿勢は必要だと思うのです。専門のスタッフを要すれば費用もそれなりにかかります。これは子供たちに対する社会の取り組む姿勢の問題に他ならないのです。私の知る限り、日本の多くの先生方は、さまざまな批判を受けながら本当によくがんばっていると思っています。

 「子供たちの心が荒れている」「子供たちがわからない」と嘆くことは簡単です。しかし、それだけでは何も変わりません。文部省は5月18日、「学級崩壊」についての実態調査の中で、教師がまず子供に向き合う姿勢を変えることが必要であり、教育の責任について親の問題にも触れました。子供たちの問題は、子供だけの問題ではないのです。私たち大人自身が、きちんと善悪を判断し、身をもって人間社会で求められていることは何なのか示していく姿勢こそ、本来の教育だろうと感じます。

追記
 この記事を掲載した、その当日(5月19日)。文部省は財政の負担が大きいことを背景に、現在の40人学級を維持したまま、教科別に非常勤の教員を増員して対応するという考えを明らかにしました。「教科別」というのは英語・算数・理科などの教科を示しているようです。こうした政策が口では「心の教育」を主張しながら、現実には知育以外にはお金はかけられないという「大人の論理」として動いているのではないかと気になります。私が言いたかったことは、こうした考えの大人たちが、本当に今いろいろな悩みを持っている子供たちに真剣に向き合う姿勢が持てるのかということに他ならないのですが。
春の木
(2000/5/19記)
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