トピックス004

駅売りタブロイド


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ここは「駅売りタブロイド」。心の話には不透明で不確かな話も、矛盾だらけの話もたくさんあります。
ここでは独断や偏見が混ざることを承知でそんな話をあつかっていきましょう。
よって、ここでの記事には特にご注意ください。読まれた方のご批判・ご意見・ご感想をお待ちしております。
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悲観と楽観の狭間

 今年の巨人は弱い。悲しいくらい弱い。負けると思いつつもやっぱり期待して、テレビの前に僕はいる。そのテレビの野球中継を見ていて、解説者の中からおもしろい話が出た。ピッチャーの性格とバッターの性格ということについてだ。ピッチャーは自分が打たれた場面のことをよく覚えていて、バッターは自分が打ったことばかり覚えているという。その逆はあまりないそうだ。つまり、ピッチャーは悪いことばかりが頭に残り、バッターは良かったことばかりが頭に残るということだ。そんなものなのだろうか。
 将来のことを考えるとき、悪い結果に結びつけて考える人を悲観主義者という。逆に良い結果に結びつけて考える人を楽観主義者という。「主義者」というよりは、そういう「傾向がある」「質(たち)である」とでも言った方がいいんだろうか。そうするとピッチャーは悲観的な人が多くて、バッターは楽観的な人が多いというわけだ。職業と性格の話をすれば、鶏と卵の話と同じで、どっちが先かよくわからないけれど、これはおもしろい話だと思った。

 ピッチャーの仕事は打たれないことだ。自分の投げた玉が、バットに邪魔されず、常にキャッチャーミットに収まることが理想である。もし、打たれれば「やられた!」と思い、それからは背中にランナーをおいてピンチの場面を投げ続けねばならない。打たれるたびに危機が広がり、自分自身が追い込まれていく。「ピッチャーがゲームを作る」というとおり、ピッチャーはマウンドの上で一人でゲームの責任を背負うことになる。
 一方のバッターは打つことが仕事だ。やってきたボールを、すべて前に打ち返していくことが理想である。しかし、この辺からピッチャーとバッターの違いが出てくる。バッターにはチャンスが多いのだ。2ストライク3ボールとその次の玉までの間に打てばよい。フォアボールを選ぶこともできる。「すべて」を打ち返していく必要はない。バッターは自分の打席を凡退して「やられた!」と感じても、ピンチが続くこともない。次のバッターに変わるれば責任を交代できるし、イニングが変わってしまうこともあるからである。しかも、バッターの評価である打率を見ると平均は2割の中盤ぐらいになる。4打席に一回打てればバッターとしては平均的な評価を得られるのだ。バッターにとって他の3回の失敗は当たり前のことなのである。成功し続けていくことを求められるピッチャーと失敗するのが当たり前のバッター。この立場の違いが悲観と楽観を分けているのかもしれない。

 心理学の世界にも悲観と楽観の話題がある。フロイトとユングである。名前ぐらいはどこかで聞いたことがあるでしょう。どちらも心理学の世界を作り上げた代表的な存在だ。この二人の学説が基本となって、今日の心理学は発展してきてきた。そして、この二人の学説にはそれぞれの抱えた人生観がかなり反映さていると言われている。つまり、フロイトは悲観的で、ユングは楽観的だというのである。
簡単な解説でしかないが、フロイトは心に受けた傷(トラウマ)が原因となって、それが自分の人生や性格に影響し、時には足が動かなくなったり声が出なくなったりするのだということを考えた。そして、その心の痛みを乗り越えたときに病気は治っていくとした。フロイトにとっての人生は、つらい現実とそれを乗り越えようとする人間の勇気の連続と映ったのかもしれない。
 一方のユングは病気と言われる状態を含め、人生の辛いこと悲しいことも自分の人生の大きな輪の一部であって、自分がより成長するために訪れた試練のように考えた。自分にとって悪いと一見思えることも、ちゃんと自分の中に位置づけることができれば、それは自分自身をより豊かにすることができるきっかけであったと言えるのである。ユングにとっての人生は、より良い自分になっていくための可能性に満ちた道と映ったのかもしれない。
 この話はちょっと単純化しすぎているけれど、二人の人生観と学説の違いをわずか数行で(ピッチャーとバッターの話より短く…)いうとこんなふうに見ることもできる。今のところ心の世界に答えはないので、僕のような心理士もだいたいどちらかに傾倒して物事を考える。この点日本人は要領がよいので、両者の良いところをとって進めていくことができる。欧米に行くとやはりどちらか自分の立場をはっきりしろと迫られるようだ。受診する側も自分の人生観にあった治療者を選びたいという積極的な気持ちを持っている。
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