物語050

 
僕の、私の、
車窓

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人生の意味が何であるかなんて誰も知らない。
ここにあるのはただガタゴト生きる人の、がたごと物語。

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わたしが壊れた日

しおり 女性 37才
地元を離れ仕事を探し一人暮らしを始めて5年…色々な事があった。それは私の許容範囲を超えていて、
私は少しずつ壊れかけていた。
それでも生活のために無理して笑顔を作って仕事に行く。周りの期待に応えて頑張って仕事をする。
帰ってくるとグッタリしてぬけがらになっていた。寂しくて不安で死んでしまいたかった。
また今日も眠れない。空が白々する頃に眠りにつき、1〜2時間寝てまた仕事に行く。
そんな毎日の繰り返し。私は何のために生きているんだろう?

あなたと出会ったのはそんな頃…最初は楽しかった。二人でいるとなんでも今までとは違って見えた。
私が作った晩御飯を一緒に食べる。川辺のサイクリングロードを一緒に自転車で走る。
そんなことに幸せを感じてた。こんな日がずうっと続けばいいと思ってた。

2ヵ月…あなたといても寂しいと感じるようになった。あなたは言った。「縛られるのは嫌いだ…」と。
バツイチのあなたは前の奥さんが浮気をして、それが許せなくて離婚したって言ってたね。
結婚しても縛られるのが嫌で、毎日のように会社の同僚と飲みに行ってたって。
私には奥さんの寂しさがよく分かったの。結婚したのはなんのため?
いつも一緒にいたかったからだとあなたは言ってたけど…。
飲みには行ってたけど男同士だし、別に浮気してたわけじゃない!だから彼女のしたことが許せなかった…って。
彼女は寂しさに耐えられなくて、他の人に埋めてもらってしまったんだと思う…って私が言ったら
「お前もそうするの?」って…そんなこと言ってるんじゃない、あなたは分かろうとしてくれなかったね。

私は色々な事でだんだんあなたを責めるようになった。追い詰めるようになった。
あなたといても不安で寂しくてたまらなかったから…。
「お前は俺が自分の思い通りにならないからイライラしてるんだ…」って。そうかもしれない。
私はあなたに何を求めていたんだろうか?壊れかけた心をあなたに治して欲しかったのだろうか?
それでも「一緒に暮らそう」と言ってくれたあなたに、私は返事ができなかった。

どんどん酷くなる症状…不安、孤独感、イライラ、不眠、憂鬱、死にたいって毎日思ってた。
どうすればいいのか分からなかった。もうだめ。あなたに聞いて欲しかった。

「今日じゃないと話せない」と思った日。
私は遅番の仕事を早退した。電話をしても出ない。何度目かで電源を切られた。何故?
なにかあったのかと心配であなたの部屋まで行ってみた。車がない。いない…。
自分の部屋に戻って電話をかける。つながらない。いても立ってもいられない。
もう一度あなたの部屋へ車を走らせた。あなたの車が停まっていた。ピンポーン…出てこない。
何度もチャイムを押し続ける。気が狂ったように…。いるのなら早く出てきて!
私の頭の中はパニックになっていた。何も考えられない。自分が自分ではないような感じ。
しばらくしてあなたは怖い顔をして出てきた。「今日は帰ってくれ」……「?」
「昔の彼女がきてる。だんながノイローゼで入院してて、家族から離婚するように言われて悩んでる。
彼女もノイローゼになりそうでチャイムの音に怯えてる。今は放っておけないから…」……「?」
「でも何もしないから…ただ一緒にいるだけだから。彼女が落ち着いたら送ってく。
明日電話する、きちんとわけを話すから」…そんなこと聞いてない。聞きたくない。
一緒にいて欲しいのはわ・た・し…何も言えない。言葉にならない。身体の力が抜けて行く。

どうやって運転したのか覚えていない。夜中の2時…帰りの車の中で私は壊れた。
2003/4/26記

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