物語029

 
僕の、私の、
車窓

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人生の意味が何であるかなんて誰も知らない。
ここにあるのはただガタゴト生きる人の、がたごと物語。

ライン1

約束

ひびき 女性 29才
2002年、私は30歳になる。
諦めていた子供も、二人目を授かる予定。
そして今まで、食べるに困る事はないまま、生きてくる事が出来た。

20歳の冬、私は中絶をした。
結婚していて、子供を育てるくらいの生活の余裕もあった。
でも、私には母親になる勇気がなかった。
まともに社会に出ることがないまま結婚し、これから仕事をしたり、
色々とやりたい事があった。
子供がいてもやる気さえあれば出来ると言われるかもしれないが、
まさに寝る間も惜しまなければ、難しい事の方が多い。
そして、「子供を産まなければ・・・」と考えるかもしれない
未来の自分を想像し、子供に対してそんな思いを持ちたくないという理由から、
中絶をする事を選んだ。
術後の経過があまり良くなかった為、その後自分が母親になる事を諦めて生きてきた。
ただ、その子に一つだけ約束をした。
「お母さん、幸せに生きるから。誰にどう思われても、
自分が幸せだと思うように生きるから。」と。

25歳の冬、結局夫と離婚をした。
一緒にいても、二人とも幸せではないという答えを、二人で出した。
相手を嫌いになる前に離婚し、よき友人でいようと話し合った。
だから、離婚をしても一緒に遊んだり、前夫の母親が亡くなった時も葬儀に行き、
お互い色々と相談したり、友人としての付き合いが続いた。
その前夫と、離婚の時に約束をした。
「お互い、幸せになる。」と。

ふと、その約束を思い返した。
忘れていたわけではないのだが、改めて考えてみた。
私の幸せってなんだろう?
全く諦めていた母親になる事が出来たし、色々な人にお世話になりながらでも、
食べていくくらいの事は出来ている。
それも2年以上も自分で働かずに。
食べるものもままならない人から見たら、それだけで幸せだろう。
自分でも有り難い事だと思っている。

でも今の私は、あの子にも前夫にも胸を張って「幸せだ」と言える自信がない。
幸せが何かすら見失っている気がする。
見つめ直そう。もう一度。今の自分を。このまま30歳を迎えるわけにはいかない。
約束を守れるように・・・

「約束、守れていなくてごめんね。」

2002/1/5記

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