物語021

 
僕の、私の、
車窓

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人生の意味が何であるかなんて誰も知らない。
ここにあるのはただガタゴト生きる人の、がたごと物語。

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宙ぶらりんの私

まーふぃー 女性 25歳
25歳。今年で26歳。
勤めていた会社を辞めて2ヶ月。
無職。
病名は「境界性人格障害」

高校生の時に心の病になった。
大学入ってすぐ、不登校になった。
留年して、病院に通いつめて、どうにか治した。

就職活動もうまく行き、地方から東京の大きな会社に
就職できることになった。
もう心の病とは無縁だな、と思っていた。

仕事は激務だった。
ろくに寝ている時間もなく働き続けた。
けれどそれでよかった。いらないことを考える暇も無かったから。

ある日、抜擢を受けた。
私よりずっとレベルの高い大学を出ている同期から
ひどい意地悪をされた。

疲れきって、薬で自殺を図った。
とりあえず休職をして、地元に帰った。
また医者に通う生活がはじまった。

もう、仕事は嫌だと思った。
大好きな人と二人で暮らしたい、そう思った。

ところが、結婚したいと言ったとたん、
もともと仲の悪かった母が、毎日のように私に当り散らした。
生まなきゃよかったと言われた。
自殺を図るような、心の病の娘はいらない、結婚なんて
家の恥になるからさせない、と言われた。

焦って私は、主治医を押し切って復職した。
お金を貯めて、家族と縁を切って、あの人と暮らすんだ、と。
母には別れた、と嘘をついて、また東京に戻った。

出社しようとすると、めまい、吐き気、体が震える、過呼吸という
症状が出始めた。
会社で倒れたこともある。

どうしてこんな目に遭うの?と
いつも思っていた。
大好きな人にも当り散らしてしまった。
そして、地元で知り合った別の男に走ってしまった。

どんどんすさんでいく私を、父が助けてくれた。
仕事をやめて帰ってくるように、と。
実家に帰りたくないなら、少しは仕送りするから、
父の勤務先の近くにアパートを借りて住んでもいい、と言ってくれた。

そして私は仕事を辞め、地元に帰った。
しばらく休養した後、派遣社員として働き始めた。

新しい男に遊ばれていた、とわかったのは
もう冬も終わりの頃だった。
新しい職場の人間関係もしっくりいかず、私はまた絶望のどん底に
落とされてしまった。

ある日の会社帰り、電車に乗ってても涙がぽろぽろこぼれてきて
止まらなかった。
結婚の約束をしたことがある、元の恋人のところに電話した。
「もう嫌だ…今夜一人で居たら死んじゃうからそっちに行かせて」
気がつくと、私は新幹線のホームにいた。
一時間半後。彼は駅まで迎えに来てくれた。
黙って話を聞いてくれて、私が落ち着いたので寝ようかという
話になったら、彼は未使用の歯みがきセットをくれた。
「多分、何も持ってきてないだろうからと思って…。」
涙がとまらなかった。

その優しさを支えに一生懸命頑張ったけれど、
やっぱり「働く」ことに対するアレルギーは
全く収まらず、会社に行くのが辛くてたまらなかった。

また薬を大量に飲んだ。
目が覚めたら、彼が枕もとで心配そうに私を見ていた。
覚えていないのだけれど、彼に「薬を飲んだ」と電話したらしい。
それで仕事を休んで来てくれたのだ。新幹線に乗って。

無職に戻らざるを得なくなった。
退職金も使い果たしたし、働かなきゃいけないんだろうけど、
全く働く意欲がわかない。
求人雑誌を見ても、辛かった日々がフラッシュバックして、
応募しようという気になれない。
父が送ってくるお金でどうにか暮らしている。
とてもじゃないけれど結婚どころではない。
お金はないし、母がいるかぎりまっとうな結婚はできないし。

宙ぶらりんのまま、無為に日だけが過ぎてゆく…。

2001/5/19記

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