物語004

 
僕の、私の、
車窓

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人生の意味が何であるかなんて誰も知らない。
ここにあるのはただガタゴト生きる人の、がたごと物語。

ライン1

センティフォリア

JoanofArc 四半世紀歳 男性
あなたとの出逢いは、水の中でした
ゴーグル越しのあなたは、霞んで見えました
ゴーグルをはずしてみるあなたは、輝いていました
あなたの笑顔は、かけがえない
 はじめて話をしたとき、明るくて、ひとあたりがやさしく、まっすぐ人を見つめ、いっしょにいて気持ちのいい人だなと思った。そして、何度か顔を合わす機会があって、話をしているうちに、彼女は、本当なら他人には話し難い事を少しずつ話した。話を聞いている僕は、なにに対してか分からない怒りがこみ上げてきた。それと、なぜ僕に話をしたのかと考えると、懸命に生きようとしている彼女の心が愛おしかった。しかし、僕がその時一番強く感じていたのは、怖れだった。僕との出逢いが、彼女にどんな影響を与えるのか。

 彼女は、携帯の番号を書いた紙をくれた。よかったらかけてくださいと。携帯の番号を教えるのは、やはり怖かっただろうし、勇気のいることだったろう。僕は、逃げてはいけないと思った。ここで背を向けたら絶対後悔する。こんなに、ひかえめに、だけど自分をさらけ出している彼女と粗暴に付き合うことは出来ない。

 あるときから、彼女との距離が離れていることを感じた。会っていても僕の目と合わせようとせず、一人で何か考えているようだった。僕は、彼女の話を聞くことを大事にしていた。彼女の言う事に、嫉妬や苛立ちや本心を抑えてでも、我慢して聞く事が、今の彼女に対してなによりも大切だと思っていた。だけど、彼女に孤独感を感じさせるだけだった。

 彼女は、「今を大切に」とよく言っていた。後になって後悔するかもしれないけど、いま自分の気持ちにすなおになることが大切だと。でも、いま僕は我慢しなければと思っていた。後できっといいことがあると思っていた。それは、彼女も我慢するということが、分かっていなかった。

 僕は、人と付き合う事は、まんざらでもないと思えるきっかけになれたらと思っていた。しかし、いまは彼女が手にとりたかったことは、本当は簡単なことだったと思えてしかたがない。

かならずあなたのまわりにたくさん素敵なことが咲く
<追記>
 題名のセンティフォリアは、バラの名前です。香水の原料になるバラです。現在、香水の原料になるバラは、世界に二種しかないそうです。そして、バラは、彼女が好きな花です。
(2000/4/7記)

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