物語003

 
僕の、私の、
車窓

表紙へ 待合室へ 目次 次ページへ

人生の意味が何であるかなんて誰も知らない。
ここにあるのはただガタゴト生きる人の、がたごと物語。

ライン1

大学生だった頃

うに 21才
軽い登校拒否を重ねて義務教育を終え、
授業をさぼって公園で本を読むのが楽しみだった高校生活も終え、
なんとか大学生になったのは1997年の春。
純情を絵に描いたような恋も、実家も卒業して、私は川崎で一人暮しを始めた。
昔から引越し・転校を繰り返してきたせいか、
新しい街への期待も地元を離れたくないという気持ちも今更なく、
第二志望への補欠入学のため大学生活に希望も持たず、
平坦な気持ちのまま滑り出した春だった。

すぐに彼ができた。
今思えば、やはり一人暮しが寂しかったのかもしれない。
いつも一緒にいたかった。
顔ばかり良くて、我が儘で根気がなくてお金にいい加減な男だった。

友達はできなかった。
入学したての頃、みんなは友達を作ろうと必死になっていて、
面白くもない話に笑い合ったり、揃って同じサークルに入ったりしていたので、
私はつい言ってしまった。
「みんな、必死で探り合ってるね。」
そんな私に友達はできなかった。

友達のいない大学には、どんどん行かなくなっていった。
行っても誰とも話さない、出なかった授業のノートを見せてくれる人もいない。
授業はつまらない、誰も真剣に聞いていない。
こんな所にこの先4年もいたくないと思った。
親から電話がかかってくる度、申しわけなくてたまらなかった。
心配かけまいと嘘もついた。

話をする相手は彼だけで、ただ彼と一緒にいたかったのに、
待ち合わせをしても彼はいつも何時間も遅れて来る。
それでも私は、馬鹿みたいに何時間でも待っていた。
待っていれば来ると信じていたから。
でも真夏のあるとき、彼は来なかった。電話にも出ない。どうしていいのかわからなくなって、彼の友達に電話をした。その人は20分で来てくれて、泣きそうな私を連れて遊びに行き、笑顔にしてくれた。それが今付き合っている彼だ。

夏が終わり前期の試験が始まっても、私はやっぱりほとんど学校に行かなかった。試験を受けないまま単位をいくつも落とし、4年で卒業できないことは確実になっていた。
次のページへ

上へ 次ページへ

ライン2


表紙へ 1番ホーム 2番ホーム 待合室へ 伝言板 タブロイド
注意書 スタッフルーム

メールご意見・ご感想はこちらまで