
| ここで紹介される医療の取り組みはある病院の一例をあげたものです。 また、紹介する病院と「待合室」の物語に直接的な関係はありません。 |
デイケアの利用 |
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| 統合失調症をはじめいくつかの病気は、残念ながらいまだに十分な治療ができず、回復と再発を繰り返しながら、あるいは再発防止のために社会生活に相応の制限を受けながら暮らしている方が非常にたくさんおられます。タブロイドで書いた「温室の花」では、さらに日本の精神科の歴史と現状について触れました。日本ではようやく最近になって、こうした方々に障害者としての保障を認め、病院に収容する歴史から、よりオープンに社会との接点を意識した援助のあり方を模索しはじめたところです。 現在、日本の精神医学界はこうした変化の中にいます。厚生省は入院医療費の削減と社会的入院といわれる実態の解消を目指して、いろいろな社会復帰施設を増やしていく計画を立てています。その代表と言えるものが、前回紹介した「デイケア」というものです。 「デイケア」とは要するに地域の中で必要なケアを受けることによって、自宅を基本に、療養生活が行えるようにしていったり、就労などに向かう援助をしようとする考え方です。最近は在宅老人介護の問題もあって、こうした名前の施設はよく耳にされることも多いと思います。これを日中だけでなく、夕方から夜間にかけて行おうとするものは「ナイトケア」と呼ばれています。昼と夜では求められるものが違いますが、援助の考え方は同じです。日常の暮らしの中で対応できるものは、そこで対応しよう、地域の中に医療や福祉をもっと当たり前に置いておこうというものです。 前回紹介したとおりデイケアには保健所が行っているものと病院が行っているものと大きく分けて2種類あります。 保健所は厚生省の考えを実践して、最近全ての保健所でデイケアを行うようになりましたが、もちろんこれまで通り地域の健康保険に関することを幅広くやっていますので、場所によっては片手間の仕事でしか開けていないところもあります。しかし、保健所は日本の各地にあって、デイケアの絶対数が足りない日本の現状では、これも重要な役割をしています。 一方、病院で開いている場合は保健所よりは回数も多く、より積極的な活動が期待できます。保健所は基本的に無料ですが、病院では医療費もとるので、その分はスタッフの数や施設の大きさ,充実度もよいところが多いと思います。ただ、それでも内容はそれぞれの施設で格差は大きいようです。今後はデイケアの利用度が高まっていくでしょうが、今はまだ病院も様子を見ている段階の場所が多いからです。 そこでデイケアの利用について一つの目安を持っているのはよいことだろうと思います。実は一口にデイケアと言っても、内容と言いますか、運営の方向性というものを、いくつかの種類に分けて考えることができるのです。そのことを知っておくと、そのデイケアが今の自分に必要かどうか、どう役立てられるのかということが判断しやすいかもしれません。 デイケアには現在4つほどのタイプがあるのではないかと言われています。 1,治療型 2,訓練型 3,生活支援型 4,憩いの場型 などというものです。 1番ホームで病気の説明などをしていますが、統合失調症などは病気によって、生活エネルギーそのものが減少して生活がうまく行かないということがあります。神経症などでも人間関係や社会との接点がつかめずに苦しんでいることは珍しくありません。デイケアのグループ活動を通して、こうした点の改善に向けていこうという積極的な視点を持つのが「治療型」と言えます。というと、大変そうですが、実はがんばるだけではなく上手に息抜きをすることやバランスよく付き合い、活動できることが重要だという人も案外おられるのです。 「訓練型」はもう少し上のステップと考えていいかもしれません。ある程度病状の安定した方が、就労に向けて何かの技術を身につけたり、練習をすることを中心にしています。これももちろん幅はあって、まず毎日朝遅れずに通所できることを目標にする人から、木工や洋裁、印刷、英会話、パソコン、ワープロなど何か身につけたいという人までおられます。中には地域の作業所などと関連して、実際にそこで働けるように技術を身に付けようとする人もおられます。最近はデイケアもいろいろな設備を持ったところが増えていて、これも利用する側にとっては魅力の一つになると思います。作業訓練だけでなく、職場での人間関係作りやストレスへの対処法なども重要な側面です。 「生活支援型」は仕事というよりも暮らしに注目したものです。心の病が起こるとさまざまなことが大きく変わってくる場合があります。収入源となる仕事のこともそうですが、家族関係や今後の暮らし方についても、本人をはじめ家族にとっても大きな問題です。新しい暮らしをまず落ち着かせなければ先には進めません。デイケア内の活動だけでなく、ケースワーカーをはじめスタッフが家庭の日常を含めて支援しようとする姿勢の強いデイケアです。料理教室などの家事や生活に必要な知恵、家族関係の調整なども大事なことです。 最後の「憩いの場型」というのはどうでしょう。心の病も身体の病気と同じようにある程度の症状がおさまって家庭での生活ができるようになっても仕事に行くのが難しかったり、再発のおそれがあって無理のできない生活になる人もいます。ただ、そうした場合でも一日中家にいるばかりの生活では、本人も家族も消極的な生活になるばかりです。回復の過程にあわせて、それなりの生活を見つけていくことも大切です。「憩いの場型」のデイケアは特別な目標に向かっていくというよりも、長い人生の暮らしの中で、状況の似た人がよりあって、交流を持っていける場所としての働きを考えているところです。喫茶店風に仲間が気楽に出入りしているところや、趣味のサークルのように活動しているところもあります。「生活支援型」と共通する部分も多いのですが、長期的な視点で安定した生活を持続させることに意識があります。 デイケアは先にも書いたように基本的には、日中みんなが寄り集まって活動するところですので、こうしたことが明確に分かれているわけではありません。むしろ、こうしたいろいろな要素を複合して活動しているところが多いと思います。大事なのは本人がデイケアを利用するときにどういう目的で利用し、何を期待していくかということです。デイケアに参加するときはそうした点を主治医やスタッフとよく話し合うことが大切なことでしょう。いずれ就労をするために手に職を付けたいという人が、「憩いの場型」のデイケアに行けばなかなか前に進まず意味がありませんし、逆に生活がまだ不安定な状況で「訓練型」のデイケアに行けばしんどいことが増すばかりです。また、同じデイケアに通っていても、それぞれ目標は違っているかもしれません。デイケアのよいところはそうした違う状況の人たちが集まって、情報の交換をしたり、話し合えたりするところにもあります。お互いに影響を請け合いながら、それぞれの目的に合わせて利用するのがよいのだと思います。 デイケアの紹介をしましたが、実際にはまだどうしても数が少なくて、こうした状況に合わせた利用が可能かというとなかなかそうできないというのが実状であると言えます。設備の点でいうと保健所で開設するものは「訓練型」にはなりにくいですし、病院でも「生活支援型」のように家庭や地域に入って行くにはまだまだスタッフが少なすぎます。こうした状況もあって、最近は本人たちを含め家族会やボランティアグループとで共同でこうした日中集える場所を作ろうという動きもあります。「憩いの場型」のデイケアは生活に密着していて、長期に利用できることが必要ですので、家族会やボランティアグループの支援によって自らの場所を作っていくということは、とてもよいことだと思います。生活の場を自分たちで作るということは、間違いなく自立的な生活をすることに他なりません。これは身体障害者の方々の中ではだいぶ進んでいるのですが、精神科を中心とした世界では社会に出て仲間と交流することに消極的になりやすいせいか、まだまだ不十分なところです。デイケアの目的が、病気を持っていても病院から離れて自らの地域で暮らすことにあるのですから、今後こうしたことが伸びることを期待せずにはおれません。デイケアというものを広く知ってもらって、積極的に生活に取り入れて欲しいと思っております。 |
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| (2000/4/28記) |