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心も風邪をひく


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躁うつ病 3

 躁とうつの様相

 躁もうつも、統合失調症に比べるとかなり理解しやすいものです。しかし、そのためにかえって見過ごしやすい問題もあります。いくつかの注意点をあげてみます。

 まず、躁状態はその特徴だけを見れば、「なるほどわかった」という気持ちになりますが、実際にはその人と接してもよくわからないことが多いものです。なぜなら、躁状態の人はどう見ても苦しんではいないからです。とても元気で、ニコニコして、パワーがみなぎっています。
 躁状態が問題になるのは実際に何かをしたときです。サラ金での借金や車やバイクでの暴走、飲酒、過剰な夜遊び、頻繁な旅行などです。何かがあってから問題になります。本人は気がつきません。躁状態も私たち自身一度や二度は経験したことがあるはずです。たとえば、学生時代などに徹夜したときのことを思い出してみてください。夜中ずっと起きていると、ふだんならつまらないことが、なぜかバカみたいにおもしろかったり、変に元気にはしゃいだりすることがあります。僕たちは「ナチュラル・ハイ」と呼んだりしていました。このときは明らかに「躁状態」に入っています。本人は楽しいばかりで異常などは感じません。しかし、夜に書いた手紙ほど恥ずかしいものはないでしょう。あれは何か違っていたのだとあとから気がつくものです。この躁状態は睡眠をとらないことが脳の働きに影響を与えて起こるもので、一度寝てしまえばもとに戻ります。躁状態もうつと同じように珍しいことではないのです。躁状態への変化は日常の行動を見ているとわかります。家族は一度経験するとコリますが、本人を止めるのはやはり厄介な問題と言えます。

 一方のうつも実は本人には気がつきにくいものです。自分のしんどさ、つらさに気がついている人は、むしろ、うつからの快復に向かいはじめた人と言えます。自分の状態に自覚が持てるということは、少し落ち着いて物事が見えてきた証拠だからです。
 では、うつの真っ只中というのはどういう状態でしょうか。普通イメージされるのは悲しみのどん底にあって、落ち込んでいる人の姿でしょう。 しかし、そうでない場合もたくさんあるのです。僕はうつ状態の中に「イライラして何も手につかない」「焦る、自分で何もかもしようとする」ということも入れておきました。うつ状態の人は自分の失敗やいたらなさということをすごく意識しているので、それを取り戻そうと必死になっていることがよくあります。明らかに自分の限界を超え、社会的にも関係がない問題でさえ、自分の責任だと感じています。そんなときは落ち込んでいる暇はないのです。いろんなことをやろうとします。しかし、自分の範囲の問題を越えていることも多いので、現実的にはどうしようもなく、それがまた本人を焦らせ、苦しめることになります。これがうつの堂々巡りの構造です。本人は一生懸命です。うつの人は落ち込んで沈んでいると思われがちですが、本当は焦っていて、ジタバタ・ドタバタしているものなのです。
 うつの人に「ガンバレ」と励ましてはいけないということをよく言います。一見すると不思議なことです。落ち込んで苦労している人を見たら誰でも励ましたくなるのが人情です。しかし、「ガンバレ」という一言はプレッシャーにもなるのです。本人は一生懸命です。これじゃぁダメだ、もっとガンバらなくては、周りの人に心配をかけてはいけない、もっとしっかりしなくてはいけないという気持ちが、どんどんその人を追い込んでいきます。うつの人の堂々巡りをどこでどうやって止めるのかが、いつも課題になることです。本当に落ち込んで生も根も尽き果てた状態というのは、こうした激しい時期を通り過ぎたあとにくるものです。

 躁もうつも一般に広く行きっている分だけ、その重さという点では非常に広い範囲で考えておく必要があります。私たちは誰でも躁状態やうつ状態になったことがあるはずです。しかし、病気というのはまた違ったものです。最近では軽いうつ状態が慢性的に持続するような人が目につきます。もし、うつ状態を何度も繰り返しやすかったり、長期化する傾向が見られるのであれば、怖がらずに一度専門家の判断をあおいでみる必要があるかもしれません。

(1999/6/18記)
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