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心も風邪をひく


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神経症・心身症 13

ストレスと健康

 前回、ストレスは平静の状態を基準にして、そこから変化する度合いによって、ストレスの重さが変わってくるという話しをしました。だから、日常のありとあらゆる場面は、どれもみなそれなりのストレスを持っていると言えるわけです。
 ストレスというと一般的には邪魔者としてのイメージか強いのですが、こうして考えるとストレスというものが生きていくことそのものとすごく結びついていることがわかります。もともと人間は日常にいろいろな変化をつけることで、精神面でも身体面でも健康を保てるようにできています。一見何事もなく平穏な毎日というのも、実は生活や仕事の変化(ストレス)と心身のバランスがとれている状態をいうのです。趣味や道楽にエネルギーをつぎ込むことは、実際はそれにかかるストレスも大きいのですが、その疲れが心地よい状態だからこそ、その他のさまざまな疲れやストレスをほぐし、全体的にバランスをとって健康を保つ働きになります。本来の健康はストレスを無くすということではなくて、生活全体でバランスのとれたストレス状態にしていくということなのです。

 それではストレスが原因で健康を害するときということについて考えてみましょう。ストレスによって起こるバランスの崩れというのはどういう状態なのでしょうか。
 最近は研究が進んできて、ストレスによるさまざまな影響が指摘されてきています。まず有名なのはセリエという人が唱えた学説です。セリエはストレスがかかるときというのは人間にとって多かれ少なかれ興奮状態に入って、何らかの活動・緊張状態になると考えました。先の通り、人間の生活には適度な刺激が必要なので、これ自体は問題がないわけですが、この状態が強く長く続きすぎれば、当然肉体的にも精神的にも疲れが生じてきて無理が生じてしまうということを考えたのです。彼はこれを心や筋肉の問題ではなく、身体機能の調節をしている自律神経系に起こる生理的な反応として理解しようとしたところに特徴があります。自律神経系はホルモンと密接な関係がありますので、この働きのバランスが崩れると身体のさまざまな部分に不調が生じやすくなるというのです。これを一般適応症候群といいます。

 さらに最近では免疫系との関係も注目されています。免疫とはさまざまな病原菌から身を守るために、私たちが持っている身体的な防衛システムのことです。例えば、カゼのウィルスは空気に混じって簡単に私たちの体の中に入ってくることができますが、そういうときには私たちの身体はすみやかにそのウィルスの侵入を察知して、それが広がらないように「抗体」というものを出しています。抗体は風邪のウィルスを見つけると攻撃を加えて、すぐに退治してしまいます。これは心とか意識には関係なく、身体が勝手に対処してくれる機能です。このような働きのおかげで、私たちの健康は常に維持されています。しかし、ストレスが強くかかるとこの身体防衛機能もバランスを崩しやすくなることがわかってきました。このため本当は攻撃する必要のない自分の身体の一部を攻撃してしまったり、逆に攻撃の必要な相手に攻撃をしなかったりということが起こってくるようです。前者の場合は自己免疫疾患と呼ばれる病気にかかりやすく、後者の場合は感染症に弱くなります。

 このようにストレスが過剰になると、単なる疲れなどということ以上に身体的にも影響が出てしまうことが、いろいろな角度からの研究でわかってきました。これらの研究はまだ残念ながら、いますぐ治療に役立てられているというほどではありませんが、今後の研究によって、さらにこうした関係が理解されていくのではないかと期待されています。
(1999/10/29記)
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