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心も風邪をひく


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神経症・心身症 6

PTSDを背負った子供たちの援助

 神経症には不安神経症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の他にもいろいろなものがあるのですが、この問題を何回かあつかってきましたのでここで一度PTSDを背負った子供に対する援助ということについて触れておこうと思います。

 心的外傷後ストレス障害はこれまで見てきたとおり、その根本に精神的な強いショックや大事なものを不意に失った喪失体験を抱えています。現実的にあらわれてくるいくつもの症状は、これらが形を変えて現れてきているものです。よって、心的外傷後ストレス障害を癒すためには、この大本の問題をよく考えていく必要があります。

 人間はつらい体験を早く忘れたい、認めたくないと言う気持ちを誰もが持っています。しかし、この気持ちが過剰すぎて本当に悲しいことをちゃんと悲しめない、怒りたいことを怒れない、楽しいことを楽しめない、叫びたいことを叫べないという状況になったときに心に影が生まれて、バランスを崩すのです。もちろん、むやみやたらに泣いたり怒ったりすることは現実的にはできませんし、楽しさを押しつけても解決しません。それをいかにうまく、その子にあった形で発散するかということが大事なわけです。一般にカウンセリングなどは基本的に秘密厳守の閉じた世界を用意することで何を言っても、してもかまわないという約束をして、心の奥に溜まっているものを吐き出しやすくしているものです。
 子供の場合は特に自分をコントロールする力も、すべも知らないことが多いので、よけいにこうしたストレスを溜め込んでしまうことがあります。大人の側がそれを十分に理解して、その悲しみを受け止めていく必要があるわけです。

 ここでは日本小児精神医学研究会がそのためにあげた具体的な提案をいくつか紹介することにします。

T
(1)スキンシップをよくとり、話しをよくする。乳幼児にはよく話しかける。
(2)子供の感情を表現させる。手紙や日記が役立つこともある。
(3)取り残されているような感じを与えない。
(4)絵や遊びなど言葉以外の表現方法も与えてみる。

U
(1)子供を一人にしない
(2)家族内でもいらだちの解消を工夫し、子供を守る姿勢を示す。
(3)安心できるような言動をする。愛情を言葉にして表す。
(4)その出来事がその子のせいでないこと、また夜尿やどもりなどの症状が出ていてもそれが恥ずかしいことではないことを説明する。

V
(1)いたずらがきをしたり、はしゃげる空間を作る。
(2)大人と一緒に手伝いをさせ、達成感を築く
(3)ほめる。

W
(1)音を小さくする。静かな落ち着いた環境を作る。
(2)子供どうして十分遊べる環境を作る工夫をする。

さらに、
 フラッシュバックでパニックになったとき
(1)あわてない、怒らない。
(2)刺激になったものを除去する。
(3)必要なら抱きしめるなどして安心感を与える。
(4)少しよくなったり、過去と現実との違いがわかるように声をかける。
(5)よくあることで本人がおかしくなったわけではないことを話す。

 身体的な症状があるとき
(1)否定しない、無理強いしない、苦痛を認める。
(2)おなかをさするなどのスキンシップを与える。
(3)悪くなるものでないことを伝え、安心させる。
(4)できるだけ感情を表現させる方法を考える。
(5)ストレスになっていることを探し、対応策を共に考える。

 肉親や親の死という喪失体験があるとき
(1)死を確認する行動や儀式への参加を制止しない方がよい。ただし、本人の恐怖が強く、嫌がる場合は無理強いする必要はない。
(2)大人の方が死に関する会話をさけるようにしない。
(3)年齢に応じた死の説明をする。
(4)子供のせいではないことを十分に説明する。
(5)残された家族や周囲の大人たちの精神的立ち直りを早める努力をする。

 というふうにその対応を上げています。よく見てもらえばわかりますが、こうした子供たちを援助する上で目標とされていることは、以下のようなものです。

・その子供(人)にとって、安心して信頼できる人間関係をまず作る。
・子供の心が耐えられる形で、心的外傷や喪失体験、さらにそれにともなうさまざまな感情を表現させることで、心の中を整理し、新しい環境
・新しい自分を受け入れていけるように支える。

 これらの注意点はこれから見ていくその他の神経症についても基本的に変わるものではありません。大人の場合であっても目指す目標は同じです。子供は子供の、大人は大人の世界をもって、その苦しみに耐えようとします。心的外傷後ストレス障害や神経症といわれるものは、その方法が少し不器用だったに過ぎないのです。
 阪神淡路大震災は大人の方たちにも当然重い悲しみを残しました。実は直接被害にあわれた方以外にも、救済に行った各地の消防団やボランティアの方々、またその後の子供たちと触れあった学校の先生方の中にもあまりに悲惨な状況に心を痛めて、同じような病気になられた方がたくさんいらっしゃいました。人間の強さ、弱さを一口に表現することはできません。心の病についても同じです。心の病を考えるとき、そこにあるのはいつも科学としての病気ということより、そこに生きる生身の人間らしさではないかと私は思っています。

※PTSDに関しては「災害時のメンタルヘルス」(日本小児精神医学会編)より抜粋させていただきました。
(1999/8/20記)
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