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神経症・心身症 1 |
神経症・心身症 |
| 自律神経失調症という病名を聞いたことがあるでしょうか。最近では特に珍しい病名ではなくなっきたのでどこかで耳にしたことがあるかもしれません。症状自体はさまざまで、疲労・体がだるい・よく眠れない・頭痛・肩こり・めまい・動悸・息切れ・便秘・下痢・腹痛・不安・冷え性・多汗(たかん)などなど、この他にもいろいろな訴えあります。こうした全身的な体の不調を訴えて内科に受診されると、こういう病気だと診断されることが多いと思います。 症状を見てカンのよい方はすでに首をひねっているかもしれません。いったいどこが病気になったらこんなにあちこちに症状が出るのでしょう。これらがなぜ一つの病気としてまとめられているのでしょうか。 私たちは現代の非常に進んだ医療の中で病気が刻々と克服され続けていることを知っています。だから、上に書いたようなどこででも聞くようなありふれた症状についてはすでに解明されていると思いがちなのですが、実をいうと医療の中にはまだわからないこともたくさんあるのです。この自律神経失調症のもその一つです。身体のあちこちを検査して、それでも病気の原因となる部分がどこにも見つからない、身体の中に特別な異常がないのに症状だけはいろいろある。そういうときにこのような診断がつけられるのです。自律神経とは身体のさまざまな働きを調整している神経のことなのですが、そこに特別な異常があるというわけではありません。 さらにもう一つタブロイドのコーナーで「犬恐怖」のたとえ話をしました。幼い頃に犬に噛みつかれてから犬が怖くなって、近づくのも嫌だというものです。普段はよいのですが、この人が仕事上の理由でどうしても犬に接しなければならなくなったときには困ったことになるという話しでした。「犬恐怖」自体は精神的なものですが、そのためにつらい日々が続くと身体にも様々な異常が現れてくることは想像にかたくないでしょう。夜眠れなくなってきたり、おなかが痛くなってきたり、微熱が何日も続いたりということはわりとよくある話しだと思います。これがひどくなると抑うつ的な気持ちになったり、出社拒否になったりする事さえあります。 この二つの例に共通しているのは、もともと身体の方には異常らしい異常などないということです。自律神経失調症も多くの場合は生活上のストレスや精神的な疲労などが主要な原因であることが多く、薬などを飲んで一時的に楽になっても、経過としては原因となるストレスが解消されるまで慢性的にその症状を抱えて暮らしているというのが平均的な姿だと思います。 最近は「ストレスの時代」とよく言われているので、二つの例のように精神的な問題が身体に影響を与えるといっても、それほど不思議ではなくなりました。自律神経失調症も犬恐怖も自分でそれなりに我慢ができたり、上手にやりくりして生活できているのであれば、「心の病」ということを特に考える必要はないでしょう。しかし、それが日常のかなりの部分に影響を及ぼすようになってくると、そうも言っていられません。ひどくなれば生活上の問題や精神的な問題、あるいは自分の性格についても考えていく必要さえ出てきます。 このような身体的な問題でも生活上の問題でも「心」ということを中心に考えていかないと問題の解決が得られないような状態を広く神経症・心身症と呼んでいます。自律神経失調症は内科的な視点でその問題をとらえたときにつく診断名であって、精神科では神経症という診断名になる、というくらいに考えてもらってもよいかもしれません。現代では心と身体が密接に結びついていて、相互に影響を及ぼしているということははっきりとわかってきましたが、それに対する取り組みはまだ様々な角度から考えていかなねばならない段階にあるのです。統合失調症やうつ病が脳の働きの問題としての理解が進んできていることはお話ししましたが、神経症や心身症、あるいは「うつ状態」といったものは「心」というものとの結びつきが強く、それゆえにより人間的な悩みや葛藤を抱えた状態にあると言うことができるでしょう。 |
| (1999/7/16記) |