| 災害の悲しみを乗り越えるために | ||
| 災害と心の健康について | ||
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| 突然にやってくる災害は天災、人災にかかわらず、まさに衝撃的な出来事であり、私たちの心に大きな悲しみを残すものです。しかし、この悲しみの中でも日々の暮らしはやってきます。一度起こってしまったことを巻き戻すことも引き戻すこともできない。それが災害のもたらすもう一つの側面なのだと思います。そのために災害時の心の変化や健康について知っていることは大事なことでしょう。自分には関係ないと思われる方も、一度は目を通してみてください。 | ||
| ☆ 災害は特別な出来事です |
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| 災害には地震や火事などの天災などだけではなく、事故のような人災もあります。災害とは日常の平穏を突き破る異常な事態であって、被害にあわれた方だけでなく、その周囲の人に対しても多くの苦痛と悲しみを残すものです。これはそもそもが特別な非常事態なので、特別に考えることが必要です。 |
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| ☆ 急性ストレス反応 |
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| こうした特別な状態の中では強いストレスがかかるのは当たり前のことです。そして、そのために精神的、身体的、あるいは生活に一時的な変化が起こります。これは異常なことではなく、ごく当たり前に起こるものです。どんなことが起こるか次にあげてみました。 ・ 悲しみに、自然と涙が出てくる。淋しい気分。漠然とした落ち込み。時には声を出して泣き叫ぶこともある。 ・ 誰とも話したくないという気持ちになったり、逆に誰かと話したくてたまらなくなる。 ・ やり場のない気持ち、はけ口のない気持ち。何をやってもすっきりしない。 物事が進まないで押さえつけられている気持ち。いわゆる欲求不満状態が続く。 ・ 腹が立ってくる、イライラして怒りっぽくなる。人や物に当たったり、じっとしていられない気持ちになる。 ・ ああすればよかった、こうしておいたらよかったと悔しみ、自分を責める。同じことばかりが頭に浮かぶ。 ・ 何をしても無駄だと考えたり、すねたり、自暴自棄な考え方になる。 ・ 眠りにくい。眠っても浅い。すぐに目が覚めてしまう。悪夢にうなされる。寝汗をかく。 ・ 食べてもこなれない。胃がもたれる。食欲がない。吐き気がする。胃が痛む。便秘や下痢をする。 ・ 頭痛がする。頭がズキズキしたり、ドーンと重い。集中力がなく、何をしてもその気になれない。 ・ 何でもない、自分は平静だと過度に自分を押さえる。自分は健康だ、心配ないと強く思う。 助けは必要ないとかたくなになる。 ・ 何をしてたかわからないなどの物忘れが多くなる。ぼーっとしてしまう。 ・ お酒やたばこの量が増える。 これらは事故の強いショックだけでなく、そのあとのさまざまなストレス(たとえばマスコミの取材や混乱の中の学校生活など・・・二次ストレスといいます)によっても引き起こされます。もちろん被害当事者やその御家族だけでなく、すべての関係者の方が強いストレスの中にいると考えられます。 ですが、まず大切な点はこのような非常事態ストレスによる反応は一過性のものであり、また当たり前に起こるごく人間的な反応であるということです。これらは病気でも、異常でもありません。心の健康的な反応なのです。こうした自然な反応を「急性ストレス反応」といいます。 |
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| ☆ つらい時間を生きていくために |
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| さあ、ここまで読まれた方は少し深呼吸をしてみましょう。両手を頭の上までグッとあげて、背筋を伸ばしてみましょう。身体が縮こまっていませんか。肩を上げ下げして、肩の力を抜いてみましょう。 それではこのつらい時間をどう過ごしていけばいいのか、少し考えてみます。 |
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| @悲しいものは、悲しい |
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| 心をいやすということは、決して悲しみを取り除くことではありません。そんなことは誰にもできないのです。悲しいことは悲しい。それはとても大切なことです。悲しいと言いましょう。つらいと言いましょう。悲しいと、つらいと言える場所を探しましょう。感じたことを口に出すと少し楽になります。そして、何度も話しながら、少しずつ自分の体験としてこの出来事を整理していきましょう。 |
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| A身体も心も少し休みましょう |
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| 強いストレスを受けると身も心も強い緊張状態に入ります。ずっと緊張しているので、自分が疲れているのかどうかよくわからなくなります。自分では疲れていないと思っても、休みを取りましょう。忙しくてもいつもの定期的な休みは断らないようにしましょう。 |
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| Bまずは普段の生活を大切にしましょう |
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| 事件の直後は生活が大きく変わりますが、徐々に生活は落ち着いていきます。そうしたら特別なことよりも、まずは毎日の暮らしを大切にしていきましょう。起床や食事の時間、服装・身だしなみ(入浴・歯磨き・お化粧)、仕事・学校・家事など、普通のことを普通にしていきましょう。そうすると普通のことと特別なことが少しずつ分かれていきます。ただ、これもかたくなにならないように、ゆとりを持つことが大事です。 |
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| C栄養をとり、リラックスできるものを見つけましょう。 |
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| 身体が回復してくるとゆとりが生まれます。栄養のあるものを食べましょう。食べたら、身体を動かしましょう。強い緊張は身体を固くします。体操や散歩をするのもよいことです。趣味を持っている方はそれをしてみましょう。わずかな時間でも生活の中に取り入れていくことが大事です。 |
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| D表現できるものを探してみる |
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| つらい出来事のあとにはうまく言葉にならないけれど、何か重たいものが、常にのしかかっているような感じが生じたりします。こういうときはまだ自分の中に何かが残っているのです。それらは自分の中に閉じこめず、他のエネルギーに変えて発散できるものを探してみることも大事です。何でもかまいません。絵を描いたり、俳句を詠んだり、スポーツをしたり、地域や学校の集まりなど今まで出ていなかったものに出てみたりするのも、気分を変えるのによいかもしれません。 |
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| E家族の時間を大事にする |
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| つらい体験のあとは一人になりたいときもあります。これも大事なことです。でも、少し落ち着いてきたら家族や友達と過ごす時間も大事にしましょう。お互いが、それぞれで悲しみを持つのではなく、みんなでその出来事を分け持ちましょう。家族として、友達として、その体験を一緒に乗り越える仲間です。つらい体験の話題も、無理のない範囲でかまいませんから、避けずに話していきましょう。お互いに悲しみを分け合えるのが家族であり、友達です。 また、悲しみの癒えるスピードはそれぞれ違うものです。お互いの気持ちが違っても、それを認めてあげてください。悲しみを乗り越える道はたくさんあり、それぞれに違うものです。その人なりの道を探せるようにしていきまょう。 |
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| Fそれでも解決できないことがあるときは |
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| 非常事態ストレスは時間とともに軽くなり、徐々に普段の生活がまた戻ってくるのが普通です。しかし、大きなストレスのために生活そのものが変わったり、強いショックで心に大きな傷ができることも不思議なことではありません。もし、身体の症状がひどく出ていたり、不眠や気分の落ち込み、イライラが長く続くようでしたら、病院などへの受診も必要です。病院でもらうお薬には心身のバランスをとるものがあります。薬などを利用してよりすみやかに自分の生活を取り戻すことも大切なことです。 |
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| ☆ つらいときでも注意しておくこと |
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| 強いストレスの中ではさまざまな点でバランスが崩れますので、何が起きても不思議ではありません。ただ、以下のことには少し気をつけておいてもよいかもしれません。 ・ 親しい人たちと会うのを避ける。部屋に閉じこもって誰にも会おうとしない。 いつもより極端に言葉が少ない。目をあわそうとしない。 ・ 趣味やレジャー、自分の楽しみの量を極端に減らす。 ・ 生活が崩れていく。身だしなみを気にしなくなる。昼夜逆転したり、食事のバランスが悪くなる。 ・ 必要以上に自分を責めたり、自他に厳しいことを求める。実現不可能な過大な思いを強く抱き続ける。 ・ 安易な答えを探して、物事を簡単にすませてしまう。気持ちが固くなり、感情が乏しくなる。 ・ 人生の上の重大な決断や進路の変更など大切な決断を急ぐ。焦って何かしなければと仕事を積み上げる。 ・ アルコールやカフェイン飲料を多量に飲む。お菓子などばかり食べて、食事をとらない。 こうしたことがすぐに悪いわけではありません。あまりに長く続いたり、心身共に負担が大きと思ったら注意してください。 |
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| ☆ 心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは |
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| 新聞やテレビでは心的外傷後ストレス障害(PTSD)というものをよく紹介していますが、緊急事態ストレスというものは特別なものではなく、それによっていろいろなことが起こる当たり前の状態です。そのことをまず確認してください。 その上で心的外傷後ストレス障害というものを紹介しますと、これは先に見たような急性ストレス反応の状態が強く長く続いて、自然と回復するはずのものが、思うように回復していかないときのことです。症状は先に見てきたものと同じなのですが、いつまでもその状態なので、なかなか新しい生活が始められません。多くの場合は、心のことというよりは身体の症状が残ったり、生活のバランスが取り戻せないでズルズルと過ごすようになります。こうなると一人で解決をするにも、限界があります。無理をしないで病院などに相談するのも大切なことです。あなたが悲しみに苦しめられて生活することを誰も望んではいません。悲しむことと、新しい生活を始めることはわけて考えていいことなのです。 |
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| ☆ 家族、教師、友達、関係者など援助される方へ |
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| 強い悲しみやショックな出来事の中で我慢は強さを表すものではありません。悲しいことが悲しいと言えるように、つらいことがつらいと言えるように、気持ちを吐き出せる場所であってください。もちろん、無理に話す必要はありません。本人が話したいときには話をとめず、できるだけの範囲でいいですから、ゆっくりと話を聞いてあげてください。 災害は多くの場合が理不尽なものであって、怒りやいらだちがあっても特別なことではありません。考え方が良いとか悪いとかとは批判したり、修正したりせずに、まずは本人の思いを聞きましょう。 話をするときは「がんばって」と無理に励ましたり、「あの人に比べれば」と誰か悲しみの大きさを比べたりしないでください。「あのときああすればよかった」「これからこうなれば」といった過去の出来事や無理な期待を言うのもよいことではありません。つらい人を見るとついこうしたことを言いたくなりますが、本人はつらい体験を十分にがんばって耐えていますし、悲しみを何かに置き換えることもできません。この大きな出来事を自分の人生の一つとして感じられることで、新しい生活につながります。 もし、話ができなくても一緒の時間を作ってください。一緒にご飯を食べたり、夕方の時間をともに過ごしてみましょう。そして、できたら、家族として、教師として、友達として、この悲しい出来事をともに体験した一人の仲間として、あなたの思いも話してみてください。 |
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| 言葉だけでは気持ちは晴れません。ゆとりが出てきたら家族や友達でたまったものを吐き出せるようにガス抜きをすることも大切です。常識に縛られる必要はありません。 悲しみの癒えるスピードは人それぞれです。それぞれのテンポ、それぞれの方法を大切にしてあげてください。 |
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| つらい出来事は変えられません。その人はまだ悲しみの中にいるかもしれません。無理に励ましたり、楽しいことを用意しても心の準備ができていないこともあります。そうするよりは、まずあなたが毎日の暮らしの中からささやかな感謝を見つけていきましょう。言葉にする必要もありません。その気持ちが、雰囲気が安らぎを作ります。周りの人にゆとりがないと状況は変わりません。まずは自分のゆとりを探しましょう。大きな災害や事故のなかでは当事者や直接の関係者だけではなくて、あなた自身も大きなストレスの中にいるということを忘れないでください。 |
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| 相手を思い、いたわる気持ちは大切なことです。でも、その気持ちが大きくなり過ぎて自分自身もストレスによって強い影響を受け、同じような状態になります。一緒に暮らす家族はもちろんですが、災害や事故の処理にあたられた警察官や消防士、避難所の運営などをされた方々やボランティアの方々、さらには治療に携われた医師や福祉関係者の方々まで、いろいろな影響を受けていきます。ですから自分が直接の当事者でなくても、先に挙げたような工夫をしておくことが大事なことです。自分が何もかもやらなければならないというような、過剰な責任感を持たず、自分の範囲を確認して、他の人と協力するようにしましょう。自分に休みを与えることも大事です。 |
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| そもそもこうした唐突な事故に完璧な対応はありません。多くの問題はジリジリとしか動かず、それに対する気持ちの方が強く激しくなりがちです。関係する機関が多くなるとさらにこうしたことが起こりやすくなります。その意味でも柔軟な気持ちを持つことを大切にしましょう。臨機応変に頭を切り換えていくことも必要です。 |
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| 先に挙げたように、不眠や生活リズムのズレ、アルコールなどの多量摂取、人付き合いが面倒になるなどがバロメーターです。 |
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| 同じように同僚や近くの仲間に話をしましょう。これは自分だけではなく、お互いの問題です。そうすることで客観的に自分を見てもらえることにもなります。 |
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| 阪神大震災の時も実は当事者以外の援助に行かれた方が、あとからストレス症状に悩まされるということが多発しました。今回の事件のような大きなストレスが去ったあとに、元気が出なくなったり、生活のバランスが崩れてしまうということもあります。一生懸命がんばってきたあとに起こるのが「燃え尽き症候群」です。もし、そうした状態が続いてきたら、やはり一度病院などに受診してみてください。 |
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| ☆ 最後に |
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| その災害の大小にかかわらず、災害や事故というものはそれぞれの心に大きな悲しみを生むものです。そのあとでは気持ちの中にも、生活の中にもさまざまな変化を残します。それは本当に悲しい出来事です。しかし、どんなにつらくてもこの出来事を消すことはできません。多くの人にはこのことが一生影響し続けることも確かです。残された私たちにできることは、この体験を自分の人生の一つの出来事として、これからの新しい生活にどう結びつけていくかということです。それはもちろん簡単なことではないと思いますし、時間もかかることです。あわてる必要も、急ぐ必要もありません。まして、正しい答えもありません。私たちはこの大きな悲しみが、次の悲しみにつながらず、新しい生活に向かえることを、願っております。 |
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