
| ここで興味を持たれ、さらに深く知識を深めたいと思われた方は、 より専門のホームページか、専門書籍等をごらんになられることをお薦めします。 |
アルコール依存症 16 |
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| 予後 | |
| アルコール依存症は他の精神科の病気と同じようにどこからが病気で、どこからが病気でないかということが判断できないために、家族がギリギリの段階になるまで見過ごされがちです(当の本人はまず病気だということを受け入れられません)。アルコールは現在、たばこと並んで、もっとも私たちの身近にある依存性をもった物質です。そして、その結果、人生という代償を払うことになることもあまり知られていません。上手に飲めば百薬の長といわれるお酒も、この病気になれば人生を食いつぶす毒でしかないのです。 アルコール依存症に必要なのは断酒です。一口でもアルコールを口にすれば、脳が刺激を受け、再び強烈な飲酒欲求が起こりはじめるからです。しばらくはちびちびと続いても、いずれ元の状態に戻ります。これは酒をやめて10年たっても20年たっても同じことが起こります。これを「フラッシュバック」と言います。一気に過去に引き戻されるということです。脳に形成されたアルコール依存症の部分は活動を停止しているだけなのです。このことのもう一つの影響としては「ドライドランク」というものがあります。酒はやめているはずなのに、急に禁断症状に似たイライラ感や焦燥感が増えてきて、落ち着かず気持ちが不安定になるのです。周りの人に当たり散らすようなこともあります。これはしばらくすると落ち着きます。断酒して1ヶ月目くらいに出やすいようですが、そのあとにも時々出てきます。アルコール依存症自体の治療ができない現在では、この病気をいかに沈めておくかが課題なのです。AAや断酒会はやめ続けるためにこそ、その役割があります アルコール依存症の治療ははっきりしています。アルコールを身体に入れないことです。幻視や幻聴をともなうひどい禁断症状も数日でとれますし、脳梗塞などの他の疾患をともなってなければ知的機能も少しずつ回復していきます。つまり、アルコールさえ飲まなければ、普通の状態に戻れるのです。普通の状態にあることは病気ではないということです。理屈としての治療がこれほど明確な病気は他になく、またその実現がこれほど困難な病気もないと言えるほどです。 アルコール依存症の治療率は2〜3割程度ではないかと言われます。これはもっとも治療効果の高いと言われるAAや断酒会に継続参加している人のものです。その他の多くの人たちは、自分がアルコール依存症であることが認められれば、飲んだりやめたりということで、入退院を繰り返したりしながらも暮らしていきます。しかし、残念ながら死ぬまで飲み続ける人がいるのも現状です。 家庭の回復はさまざまです。アルコール依存症になるには時間がかかるので子供たちが独立してしまう家も多く、離婚することも解決の一つであることも書きました。家庭内別居も珍しくありません。最近は酒代がだいぶやすくなりましたので、外で飲み歩くタイプの人でなければ、妻の収入でやりくりできる家も多くあります。アルコール依存症は身体的にもいろいろな病気を併発しますが、心が切れていればそのような心配もしないものです。アルコール依存症の本当に悲しい側面がここにあります。 ただ、家族がこの病気を共に治療していこうとする協力者であることは、本人にとってもこれほど心強いものはないはずです。本人が立ち直れれば、家族の関係も自然と変わってくるものです。AAや断酒会に出席すること自体、本人が行おうとしなければ継続はしません。アルコールをやめることは、実はこの「行おうとする」気持ちに支えられています。この気持ちを持てるようになれば道は開けてきます。ここでも無理矢理、説得してAAや断酒会に行かせても効果は薄いのです。「アルコール依存症」という病気に本人も家族も飲み込まれてしまわないように、共同戦線をはれる関係になれれば、これまでの飲む者と飲ませたくない者の対立関係が変わってきます。家族もこれで変化の糸口がつかめてきます。 アルコール依存症と他の問題との関連も話しておきましょう。アルコール依存症はうつととても関係があります。アルコールの作用がうつの気持ちを切り替えるのに有効だからです。うつの人が酒に頼っているうちに、アルコール依存症になったという人は少なくありません。さらに、この逆のパターンもあるのです。アルコール依存症は多くの物を失います。アルコールのせいであることは本人も薄々わかっています。しかし、酒はやめられない。AAや断酒会に入っても何度も再飲酒を繰り返していく。当然、自己嫌悪におちいります。この気持ちに負けて自殺に向かう人も多いのです。AAや断酒会を自己評価の場ではなく、苦労する仲間の集いであることを謙虚に認められれば、多くの仲間が気持ちを支えてくれます。苦労はみな同じだからです。 同じように不眠やストレスが原因でアルコールに入っていく人もいます。眠るために飲んでいたのが、飲まないと眠れない、落ち着かないというように変わっていきます。すでに精神的な依存が始まっているのがわかります。中には同時に睡眠薬や安定剤を使ったりしていて、他の薬物にも依存が起きている人もいます。アルコールを含め薬物への依存が強くなってくると、身体にはそれなりの耐性ができて、ますます強いものが欲しくなるものです。それを治療するために病院にかかっても、今度は薬物療法が難しくなります。薬への依存がある以上、薬を使うことはできるだけひかえたいわけです。不眠やイライラ感と戦うのはまた辛いことになります。 アルコール依存症になるのに10年かかるという簡単な基準をあげましたが、現在ではこのスピードも速いようです。かつてはアルコール依存症になるのは40〜50代以降の方でした。しかし、最近は20代後半〜30代の人も多く見ます。お酒が安くなり、身近になったせいでしょう。同じように女性のアルコール依存症者の方も増えています。キッチンドランカーというよりは、若い男性と同じように酒に触れる機会が増えているせいだと思います。生活が均一化してきた現代では、生活習慣からくる病気の男女差も少なくなっているのです。 アルコール依存症にもっとも必要なことは予防に他なりません。週に2日ほどの休肝日を作って、量にも注意していれば依存症にはなりにくいのです。アルコール依存症に興味があり、ここまで読まれた方はどうぞ生活を振り返ってみてください。もし、それができないようでしたら、それはすでに依存症が始まっているのかもしれないのです。 |
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| (2000/4/21記) |