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心も風邪をひく


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アルコール依存症 15

治療とAA・12のステップ
 アルコール依存症について、現在のところ有効な薬というものはまだ開発されていません。つまり「飲みたくなる」という脳の働きに歯止めをかけるものないのです。現在、アルコール依存症に対して使われる薬は抗酒剤と言われるものです。これはアルコールに対する身体の耐性を弱めて、酔いやすくする作用があります。薬を使って身体の中のアルコールを分解する酵素の働きを弱めてしまうのです。するとどういうことになるかというと、それまで酒に強く飲んでも飲んでも平気だったのに、急に酔っぱらって気持ち悪くなったり、心臓がバクバク激しく打ったり、目の前がクラクラしたりします。死にそうなぐらいになったという人もあるくらいです。アルコールというのはもともと人間の身体にはないものです。だから、飲むと酔っぱらって、普通の状態ではなくなるのです。抗酒剤は分解酵素の働きが弱い人と同じ状態にしてしまおうとするものです。抗酒剤を飲んでいると、こうしたことが起こるので怖くてアルコールが飲めなくなる、アルコールがやめられる、という論法になります。

 しかし、実際はそれでどうかというと決定的な問題は抗酒剤を本人が飲まなければ意味がないということです。日常の中ではずっと監視しているわけにもいかず、結局は本人まかせとなります。本人に黙ってお味噌汁などに入れて飲ませても、アルコールを飲むと、それがバレますので、家族にその怒りをぶちまけて元の木阿弥になります。アルコールに対するイタチゴッコから抗酒剤に対するイタチゴッコに変わるだけです。結局、抗酒剤は本人がお酒をやめる決心をして、万が一お酒が飲みたくなったときの歯止めの1つとして利用するというのが現実になります。
 抗酒剤で一般的なのはシアナマイドというもので、効果が約1日ですので毎朝飲むようにします。ノックビンといわれるものは効果が1ヶ月ほど持続しますが、効き始めるのに時間がかかります。どちらも主治医とよく相談して利用するものです。

 精神科の治療にはこの他にもいろいろな療法がありますが、前回にも書いたとおり、これがよいと言い切れるだけの治療法はなかなかありません。AAや断酒会は当事者による当事者の会なのですが、実はもっとも治療効果を上げていると言われているのが、この会なのです。アルコール依存症者に必要なのは医者ではなく、こうした自分と同じ状況に立つ仲間たちのようです。

 アルコール依存症の治療においてはアルコールによって自分の生活や家族の暮らしがいかに犠牲になっているか自覚することが出発点だと書きました。本当に飲むか飲まないかはやはり本人次第で決めるしかないのです。本人がアルコールを飲んでいるともうどうにもならないと感じることを「底つき体験」といいます。「底」にいたらず、まだ何とかなるさと甘えがあれば、また飲むようになるでしょう。家族自身も「底」をつくまで辛抱しなければなりません。これが自立に向かうための出発点です。

 AAには断酒にいたる12のステップがあるといいます。
 1, 我々はアルコールに対して無力であり、生きていくことがどうにもならなくなったことを認めた。
 2, 我々は自分より偉大な力が、我々を正気に戻してくれると信じるようになった。
 3, 我々の意志と命の方向を変え、自分で理解している神、ハイヤー・パワーの配慮にゆだねることを決心した。
 4, 探し求め、恐れることなく、生き方の棚卸し表を作った。
 5, 神に対し、自分自身に対し、もう一人の人間に対し、自分の誤りの正確な本質を認めた。
 6, これらの性格上の欠点全て取り除くことを神にゆだねる心の準備が完全にできた。
 7, 自分の短所を変えてくださいと謙虚に神に求めた。
 8, 我々が傷つけた全ての人々の表を作り、その全ての人たちに埋め合わせをする気持ちになった。
 9, その人たち、または他の人々を傷つけない限り、機会あるたびに直接埋め合わせをした。
10, 自分の生き方の棚卸しを実行し続け、誤ったときは素直に認めた。
11, 自分で理解している神との意識的触れあいを深めるために神の意志を知り、それだけを行っていく力を祈りと黙想によって求めた。
12, これらのステップを経た結果、霊的に目覚め、この話をアルコール依存症者に伝え、また自分のあらゆることにこの原理を実践するように努力した。

 ここには神やハイヤー・パワーなどという言葉が出てきますが、ここで大事なのは自立するということは自己中心的、自分勝手であることではないということです。神やハイヤー・パワーを自分の上に置くことで、常に謙虚に自分の存在をただ一個の人間として受け入れようというのです。アルコール依存症になるとこれができなくなります。アルコールには気分を高揚させる働きがあり、自分が世の中の中心であるかのような気分にさせるのです。そして、アルコールを飲むために全てを犠牲にすることもいとわなかったのです。自分がアルコール依存症に勝てないことを認め、失敗や誤りを振り返り、その穴埋めを周りの人たちに行って、再びアルコール漬けの自分に戻らないことが、アルコール依存症から回復し、一人の信頼できる人間になるということなのです。アルコールを切ることは、自分の人生や家族を取り戻すことです。アルコール依存症を一つの病気として治療が必要なのはそのためなのです。
(2000/4/14記)
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