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心も風邪をひく


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アルコール依存症 5

離脱症状(禁断症状)

 アルコール依存症の中でもっとも病気らしく見えるものといえば禁断症状といわれているものでしょう。医学的には離脱症状と言います。離脱症状が起こるようになってきたということは身体的な依存が存在していることを示すものです。アルコールが体の中にない状態に対して、これらの症状は起こってくるからです。

離脱症状には早期離脱症状と言われるものと後期離脱症状と言われものがあります。早期離脱症状はアルコールが身体から切れて数時間ほどで出てくるものです。代表的なものは手の震えなどがまずそうです。これは人によりますが、大きくはっきりとわかる人もいれば、鉛筆を持つとうまく字が書けなかったり、本人にだけにしかわからないくらいの小さいものもあります。手の震えが原因でおちょこでは酒が飲めず、ぐい飲みやコップなどに変えてしまう場合もあるほどです。それ以外ではひどく汗をかいたり、眠れなくなったり、吐き気があったりします。主に身体機能の調節がアンバランスになっていくような状態が出てきます。

アルコールはそもそも大脳の神経を抑制するように作用するものです。これによって普段は理性などで抑えられていたもののタガがゆるんで、陽気になったり、うさ晴らしができたりするわけです。しかし、これは脳や身体にとってみれば本来の機能を薬物によって強制的な狂わせていることに他なりません。アルコールを長期に多量にとっていると脳や身体の方がバランスをとろうとして、その状態に合わせるようになります。それが急にアルコールのない状態になるために、今度は逆にその影響がでてしまうと考えればわかりやすいかもしれません。そのため身体の調整をしている自律神経機能や脳の働きにアンバランスが生じるのです。

後期離脱症状というのはこの脳の働きのアンバランスを中心にした症状を指します。アルコールが切れて2〜3日ぐらいして現れてきます。脳の働きの狂いを一番象徴的に表すのが幻視・幻聴というものです。アルコール依存症では幻視(現実にはないものが見える)、特に虫や小動物など小さいものがちらちらと見えることが多いと言われています。統合失調症では幻聴の方が多いようです。しかし、中には人が見えて話しかけられたとか、壁から人が入ってきて引っ張られたとか、相当に生々しく大きな体験をした人もいますので、やはり強い影響を受けていると考える方が適切だと思います。こうした症状をせん妄とも言います。

幻視の以外で注意が必要なのは意識を失ってしまうようなけいれん発作が起こる人がいることです。これはアルコール性てんかんと言われるもので、実際にはこの離脱期の間に1度か2度あるかどうかというものですが、倒れたりしますとケガをしたり事故にあったりしますので注意がいります。

また、こうした特殊な症状だけでなく、アルコールが抜けてしばらくの間は脳の働きがうまくないので、現実感が損なわれて、日付や時間がわからなくなったり、すぐに物忘れをしたり、計算や字を書くなどのことがうまくできなくなったりします。こうしたものはアルコールを切ってもしばらく残ってしまうのです。

離脱症状についていろいろ書きましたが、幻視やアルコール性てんかんやそのほかのささいな自律神経の異常からくる症状などは数日の間に現れて、またすぐに消えてしまうのが普通です。よって、幻視やアルコール性てんかんなど、一見重そうに見える症状でもあとに残りませんので、それ以後の治療の必要はありません。人によっては手の震えや現実感の喪失、記憶力の低下が数ヶ月ぐらい残る人もいるようですが、それらも少しずつ快復していきます。このことはアルコール依存症という病気の明るい側面でもあります。

ただし、長期のアルコール飲酒によって引き起こされた脳血栓(のうけっせん)やコルサコフ症候群、糖尿病など、実際の脳障害が起こった場合は当然その症状や後遺症が残ります。離脱症状自体も本人にはかなり苦しいものですが、それ以外の病気をも併発しやすい状態になっていることにも注意が必要なのです。

(2000/1/28記)
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