1番ホーム036

心も風邪をひく


表紙へ 新着へ 目次

ここで興味を持たれ、さらに深く知識を深めたいと思われた方は、
より専門のホームページか、専門書籍等をごらんになられることをお薦めします。
ライン1

アルコール依存症 4

症状

 前回は実際の流れにそってアルコール依存症の引き起こす問題を見てみました。実は前回の話は何かを強調した特別な話ではなく、アルコール依存症の人、ほとんど全てに共通する話なのです。
 今回はもう少しその中で何があったのかを整理してみましょう。

1,お金の問題
 一見なさそうで、必ずあるのがこの問題です。お酒を飲むということには、ギャンブルなどを含めた「遊び」と強いつながりがあります。アルコールは気分を高揚させる作用があるので何かにつけて飲み・使うというのが、スタイルになりやすいのです。
 また、お酒自体は安くなって身近なものになっているせいか、若い人でアルコール依存症にかかる人が増えているという問題もあります。

2,家庭の問題
 酒によって家庭は次第に置き去りになりますが、それを何とかしようとする家族の努力と本人の闘いが始まってきます。家族は酒を取り上げようとしますが、本人は家族にばれないように飲もうとするわけです。それで「隠れ飲み」というようなこと出てきます。散歩に行くといっては外で飲んできたり、家のあちこちに酒を隠して人目を気にしては口をつけて過ごしているというのは珍しくありません。
 アルコール依存症には常にお酒を飲んでいる「連続飲酒」という状態と、ある期間はやめるが、飲み始めると大量に飲んでしまう「山型飲酒」という状態があります。「山型飲酒」はともすると家族にも本人にもわかりにくく、その中で家族の関係をゆっくりと変えていくものです。

3,暴力 
 最近、新聞などでドメスティック・バイオレンス(DV)という見出しがよくでてきます。これは家庭内の暴力でも、夫婦間の、一般には男性から女性への暴力を指すものです。「俺の稼いだ金で飲んで何が悪いんだ」というのが、アルコール依存症者の口にするセリフですが、その裏には自分が酒を飲むために家族が犠牲を払うのは当たり前だ、という自分勝手な理屈が存在しています。酒を飲ませないように、あるいは生活を守ろうとする妻から、もっとも早く自分の欲求を満たす手段として暴力はよく出てくるものです。これは夫婦ゲンかと呼べるものではありません。暴力のはじまりは、現実的にアルコール依存の深刻さを象徴するものです。

4,仕事上、社会的な問題
 日本の社会は古くから飲酒に対して寛大な国であると言われています。よくよく社会のあり方を見ると何かにつけて、酒の席が用意されていることが少なくありません。私の田舎などでは家に大工や庭師などの人が入れば、お昼には一杯ぐらい出すというのが礼儀のようなものでした。旅行で電車やバスに乗れば片手にはビールを持っているのが自然だという人は相当いるのではないでしょうか。こうしたことは日本の社会に深く根づいています。
 しかし、最近はそうも言っていられません。職場で一杯やっていれば当然注意されますし、昼間からお酒のにおいをさせている人を信頼することもできません。欧米の社会では、こうしたことにすごく敏感になっていますし、日本もどんどんとそうなってきています。まして、警察沙汰になってくれば会社が自分をかばってくれるということはありません。
 仕事が無くなるとアルコール依存症は歯止めを失い、一気に深まる傾向にあります。

5,子育て、教育上の問題
 このことはあとから詳しくやりますが、お酒ばかり飲んでだらしない父親の姿や、酒の上での約束をいつもホゴにしてしまう態度は、多くの問題につながっています。夫婦ゲンカや離婚も子供の心に傷を残すことになるのは当たり前のことです。

6,身体的な問題
 お酒で一番影響を受ける身体の部分は、お酒の分解をする肝臓です。肝臓は内科などでは「沈黙の臓器」と呼ばれているもので、かゆいとか痛いとかという感覚器がありません。外から見てわかるような黄疸(おうだん 身体に黄色い部分が出てくる症状)が生じてくる段階では命にも関わってきます。ですから、アルコール依存症は他の薬物依存症と同様に、死に向かう進行性の病気だということができるのです。

 しかし、アルコール依存症そのものは脳の病気であることを忘れてはいけません。依存は脳の働きによって引き起こされているのです。このためお酒が身体から切れてくるといわゆる禁断症状というものが出てきます。本人に自覚があるのは、肝臓よりもむしろこちらの方だと思います。多くの人はまず手のふるえを感じるからです。酒を補給すると震えが止まるので、一安心します。そして、今度はその心配や不安から酒が手放せなくなるのです。前回あげた幻視もよく見られるものです。このことは脳の異常をはっきりと示しているわけですが、幻視や幻聴は本人にとっては現実と同じ体験なので、半信半疑のままで済ますことも多いようです。禁断症状は数日で消えてしまうこともあって、その恐ろしさを忘れるとまた飲んでしまうのです。

(2000/1/22記)
上へ

ライン2

表紙へ 2番ホーム 待合室 伝言板 タブロイド
注意書 スタッフルーム

メールご意見・ご感想はこちらまで