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心も風邪をひく


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アルコール依存症 3

人生という代償

 アルコール依存症はお酒をやめれない、本人にとってはお酒が飲みたくて仕方がないという状態になるために多くの犠牲を払います。時間の流れ追いながらこの病気によって何が起こるのか整理していくことにしましょう。これらがアルコール依存症が引き起こす症状と言うことになります。

 多くはまず本人も家族も気づかぬうちから少しずつ相互の交流が減り、関係が変わっていきます。もしかしたら、すでに父親は会社から帰ってきて飲んで寝るだけ、あるいはいつも飲んで帰ってくるので家ではもう寝るだけの生活になっているかも知れません。妻とも子供とも話す時間はほとんどありません。次第に家族関係は母と子を中心にして動いていくようになっていきます。それが当たり前のようになるのです。日曜日になると午前中から一杯やって、夫としても父親としてもだらしなくなります。

 家の外でも問題は出てきます。いきなり高額の請求書が送られてきたり、月末に知らない集金がきたりします。警察から呼び出されては本人を引き取りにいき、迷惑をかけた人やお店にも行って頭を下げて回るようなことも起こってくるでしょう。家族の中でもケンカが増え、そのうち夫は手をあげるようにもなってきます。暴力は一度始まると、だんだん繰り返されるようになるものです。家庭の雰囲気は以前にも増して険悪になっていきます。

 妻と子の結びつきはいっそう強くなり、飲んで暴れるばかりの夫は孤立していきます。家族の相談事はすでにできません。父親は話を聞いてるようで、すぐに忘れ、そのくせ自分勝手なことを押しつけるので、もう当てにはならないからです。子供は学校のことも、将来のことも相談する気持ちにはなれません。母親は父親の悪口を子供にこぼしているかもしれません。夫はますます家に帰りにくくなり、お金が足りなくなると生活費さえも持っていってしまいます。夫がサラ金に手を出していることもありますし、妻の方が生活費をサラ金から借りていることも珍しくありません。それ以前に実家や兄弟などには返す当てのない借金を申し入れているでしょう。

 子供の気持ちは二通りにわかれます。母親を助け家を守らねばならないと一生懸命になっていくタイプと一日でも早く家を出てその生活から開放されたいと思うタイプです。父親の評判は近所でも学校でも知れわたっており、それで馬鹿にされたり、いじめられることもあります。子供は家庭のことをひた隠しにしていくか、逆にその不満を社会にぶつけいわゆる非行に走ってしまうこともあります。母親もいよいよ離婚を考えるようになります。離婚は今では特別なことではありません。女性の職場も増えています。決心がつけば離婚は一つの答えになります。

 夫の酒は会社でも問題になり、リストラの対象になるでしょう。すぐには解雇されなくとも会社での居場所はなくなっていきます。本人は酒を飲んだ方が仕事がはかどると思っているので、そうした会社の対応に不満がたまり、上司とのケンカの末、売り言葉に買い言葉で首の皮一枚で残っていた会社も自ら辞めてしまいます。

 仕事がなくなると毎日が日曜日なので、朝から飲んでしまいます。家庭は日中もこの夫から解放されなくなります。お金がなくなると妻の働いているパート先まで来てお小遣いをせびったり、妻には内緒でその会社から前借りしたりすることもあります。妻は夫から酒を取り上げようとしますが、夫はありとあらゆるところに酒瓶を隠し、いろんな手だてで飲むようになります。このイタチゴッコは繰り返されるばかりです。

 とうとう離婚されると本人は一人になります。子供たちはとうの昔に寄りつかなくなっています。ご飯を作るのも後片づけをするのも面倒なので、とりあえず一杯やって、それが食事代わりになります。会社に勤めていたときの健康診断で肝臓が悪いから酒をつつしむように言われていても、おかまいなしで日々酒びたりの毎日がこれでやってくることになります。運転免許も飲酒運転で取り上げられていて、再就職の当てもありません。

 ある晩いつものように飲んでいると気分が悪くなって動けなくなります。もう何日もまともなご飯は食べていません。のどが渇いて渇いて、水がたまらなく欲しくなります。路上でうずくまっていると誰かが救急車を呼んでくれて、病院に運ばれます。検査の結果、肝臓に障害があることがわかります。とりあえず点滴などをして本人が快復するのを待つしかありません。翌日の朝には本人も元気を取り戻してくるでしょう。さすがに本人もこのことに驚いています。医者の指示に従ってもうしばらく様子を見ることになります。しかし、その晩、病室には数え切れないほどのゴキブリが入ってきて、大騒ぎになります。入院のために身体からアルコールが切れてきて、禁断症状の幻視が見え始めたのです。病院中で大騒ぎをする本人を医者や看護婦が押さえつけ、鎮静剤を打って、そのまま彼は精神病院に送られてきます。そこで彼は自分がアルコール依存症という病気にかかっていることを、はじめて知らされることになります。

(2000/1/13記)
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