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アルコール依存症 1 |
アルコール依存症という病気 |
| お酒というのは太古の歴史からあるもので、その存在が人間の生活に深く浸透していることは言うまでもありません。その種類も数多く、楽しみ方もまた様々です。適度な飲酒は健康にも良いということはよく知られています。しかし、一方で酒の重要な成分であるアルコールには「依存性」があって、時に深く悲しい事態を引き起こす病気につながっていることはあまり知られていません。 アルコール依存症という病気があまり注目されないのは、単なる「大酒飲み」や「酒乱」と混同され、本来の問題が見いだしにくいという点にあるかもしれません。アルコール中毒、いわゆる「アル中」という言葉も、むしろ、そうした「飲んべえ」をひやかすために使われることが多いと思います。そのなかで病気としてのアルコール依存症というのはいったいどういうことを言うのでしょうか。 アルコール依存症のもっとも中心的な問題は「お酒がやめられない」という事実にあります。生活とお酒が切り離せないだけではなく、お酒がないと落ち着かずひどくお酒が飲みたい欲求を持ったり、お酒で失敗していることが続いているにもかかわらず、お酒をやめてしまうことができないというような状態を指します。アルコール依存症かどうか心配になって3日ほど飲まないことに満足して、また毎日飲み始めるようなら、それを「やめた」とは言いません。その3日はやめないために無理して作った3日であって、本当に「やめた」のではないからです。 医学の中で「依存」ということをいうときは2種類の意味があります。ひとつは精神的依存というもので、私たちが普通に感じている人や何かに頼りたい、あるいは何かに支えられていると感じるレベルのものから、その人無しではいられない、その物が無いと不安で落ち着かないというレベルものまで、基本的にはその人の人生や体験などと感情とが結びついて生まれるものがあります。もうひとつは身体的・生理的依存というもので、これはある種の薬物などが脳に影響して引き起こされる、強い精神的依存を含んだ依存状態があります。 一般に身体的・生理的な依存を引き起こす薬物の代表的なものとしては覚醒剤や大麻、コカイン、シンナーなどがありますが、アルコールはその中でももっとも身近にある薬物として知られてきています。これらの薬物は使用を中断すると禁断症状(離脱症状)を引き起こしますが、それは身体的・生理的依存が成立していることを示すサインでもあります。これらの薬物は多くの場合、精神的依存を求める心のすき間から忍び寄るものであり、気分の高揚感や幻覚作用を引き起こすことで、一時的な満足を与えますが、その代償として身体や脳に強い影響を与える作用を持っているのです。最初は心さみしい・何か物足りないという動機でも、やがて精神的な依存性が強くなるとそれを求める回数が増え、日常化し、さらに身体的・生理的依存が始まると禁断症状によって手や身体が震える・イライラする・汗をかく・不安になるなどの状態が起こり、それを止めるためにも薬物の常習が必要となって、また依存性を増すという限りない悪循環におちいるものです。 それではこのようなアルコール依存症と「大酒飲み」「飲んべえ」の区別は実際どうつければよいのでしょうか。3日の我慢でダメなら1週間飲まなかったらよいのでしょうか。禁断症状が出なければ大丈夫なのでしょうか。実はアルコール依存症も残念ながら、これまで見てきた統合失調症や神経症などと同じように、脳や身体の検査から明確に病気の状態だと判断できるほどに医学は進んでいないのです。そうやって見分けることはできません。しかし、アルコール依存症の本当の問題を考えるとき、それはあまり重要でないのかもしれません。なぜなら、アルコール依存症の問題もまた、先の病気と同じように、家族や社会との関係の中で問題が起こってくるものだからです。 次回はアルコール依存症の判定基準などに触れながら、もう少しその特徴を見ていくことにしたいと思います。 |
| (1999/12/17記) |