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心も風邪をひく


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統合失調症 7

 陰性症状

 病気としての奇妙さは陽性症状に代表されますが、いざ治療や社会復帰の話にはいると陰性症状と言われるものが大きな意味を持ってきます。陰性症状とは症状自体に明らかな特殊性がなく、一見すると普通誰もが体験するような取り立てて特徴のないことでありながら、平均してみるとやはり統合失調症者に共通して生じてくる行動的な特徴のことです。つまり、「生活意欲の減退」がそれにあたります。

 もっともわかりやすい減退は「自閉」と言うことでょう。トイレと食事以外は自室からほとんど出ることがなく、閉じこもって社会や他者との交流がなくなってしまうようなことです。学校や仕事に行かなくなり、自分の気に入ったことだけをしているということもあります。
 「感情鈍麻(かんじょうどんま)」といって表情の変化が無くなって、誰が話しかけても「うん」「はい」としか言わなくなったり、言葉をほとんどしゃべらなくなったりすることもあります。何に対しても反応がなく、笑顔がほとんど見られない。家族が心配していろいろ言うと急に爆発的な興奮することがあることもあるけれど、おしなべてエネルギーが低下していたり、感情のバランスが悪い状態にあります。
 極端になると朝起きるエネルギーが出てこないのでそのまま寝て一日過ごしたり、顔や歯をみがいたり、お風呂にはいることもおっくうでやめてしまう人もいます。服を着替えず、いつも同じ物を着ていることもよくあることです。昼夜が逆転して、夜中になるとゴソゴソと何かを始めたりする人もいます。

 統合失調症と知能には直接的な関連はないと言われていますが、こうした状態の影響は受けてしまいます。たとえば注意・集中力が持続しないために一定のことが長く続けられないことがあります。同じ理由で計算力や思考力も鈍ります。自閉的な状態になると周囲への関心が乏しいために世の中の情報についていけなかったり、他者との協調性がとれないことも出てきます。現実的に見ると会社や学校で一人だけ浮いてしまっているのに、本人は何とも感じなかったり、あるいは意識は全く別なことを考えていたりするので、お互いの溝は深まるばかりです。このようなことが続けば本人の問題だけでなく、社会的な責任が十分に果たせないという二次的な問題につながってしまうのです。

 こうして一つ一つをあらためて見るとかなり特徴的なように見えますが、実際には日々の暮らしの中にまぎれて、病気の問題なのか、その日の体調の問題なのか、あるいはそういう個性なのか判断がつきにくいものです。私たちの暮らしを振り返ってもたまの休みをゴロゴロ寝て過ごしたり、パジャマのままで一日いたりするのが特別なことでないように、学校や仕事に行く必要がない暮らしでは、これらの問題は目だっては見えないのです。これらが社会復帰の問題と関係があるのは、いざ学校や仕事に戻ろうとするときになって、はじめてなかなか生活の建て直しができない事態に気がつくからです。幻聴や妄想はほとんどなくなっているけれど、この陰性症状の部分を解決できないために、現実的な社会復帰ができないで足踏み状態を強いられているという人が実はたくさんおられます。私たちは奇妙で不可思議な陽性症状の面だけを見て統合失調症という病気を考えがちなのですが、実際にはこのような陰性症状も統合失調症の治療においては、長く尾を引く重要な側面の一つなのです。
(1999/5/15記)
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