1番ホーム004

心も風邪をひく


表紙へ 新着 目次

ここで興味を持たれ、さらに深く知識を深めたいと思われた方は、
より専門のホームページか、専門書籍等をごらんになられることをお薦めします。
ライン1

統合失調症 4

 幻聴

 統合失調症という病名から真っ先に思いつく症状と言うと、おそらく「幻覚」や「妄想」といったものではないでしょうか。実際にも「幻覚」と「妄想」が統合失調症という病気の代表的な症状であることに議論の余地はありません。ただし、「幻覚」と「妄想」という言葉を聞いて、「頭の中が分裂しきっている」というイメージを持たれるのであれば、それは間違っていると言えます。「幻覚」や「妄想」はその人のある一部の面にしか影響を与えていないし、統合失調症だからといって、常にこのような症状を持っているわけではないからです。このことだけは注意していてほしいと思います。

 「幻覚」とは目の前にないものが見えたり、するはずのない音が聞こえたりすることです。前者を「幻視」、後者を「幻聴」と言います。統合失調症者には「幻聴」を訴える方が多いので、「幻聴」の話を中心にしていきます。「幻聴」は単なる音の場合もあるし、ちゃんと話しかけられるときもあります。音だけの場合は耳鳴りとあまり変わりませんが、「話しかけられる」と事態は複雑になります。例えば「おまえはバカだ」とか「その食べ物には毒が入っているぞ」などと話しかけられるとどうなるか想像してみてください。「バカだ」「バカだ」と言われればイライラしてきて、腹も立つし、気が休まるどころではありません。「毒が入っている」と言われればハシを持つのもためらわれるし、テーブルの上を見て何かいつもと違ったところはないか、異常はないかと神経質にもなってくるでしょう。「幻聴」が聞こえないものにとっては、不思議なことなのですが、聞こえるものにとってはこれほど面倒なことはないのです。

 「幻聴」が耳で聞く音ではないことが、この問題を深刻化しているようです。人間は普通耳で音の情報を拾って、脳で解釈をしています。それが病気の作用によって直接的に脳に飛び込んでしまう音が「幻聴」だと考えてもらうとわかりやすいかもしれません。「幻聴」で困っている人にどんなふうに聞こえるかと聞くと、多くの人は耳から聞こえる音より「しっかりと聞こえる」というようなことを言います。「天から降ってくるようだ」と言った人もいます。この現象が「テレパシー」や「天の声」として本人に受け取られてしまうこともあります(もちろん、病気とは全く別な理由で「天の声」が聞こえる人もいますが)。声の主は親しい知人であることもあれば、全く聞いたことがない声の場合もあります。男性の場合も女性の場合もあります。どんな声で何が聞こえるかということは、個人によってそれぞれ違っています。ただ、どんな声が聞こえるにしても「幻聴」が大変なのは、その強さのせいでしょう。

 「幻聴」が自分でも無視できないくらいに強くなってきたり、この声で頭の中がいっぱいになってしまうと、普通の生活が難しくなってしまいます。「〜が俺をバカにしている」と感じると仕事に出るのが嫌になったり、近所の目が気になって家から一歩も出られなくなったりします。「ご飯が食べられない」と栄養失調を起こして自分の命を失うことにさえなるのです。テレビや新聞をにぎわすような攻撃的な行動に出る人は、実際には少数派です。統合失調症の症状の多くは基本的に他人よりも自分自身を傷つけたり、苦しめるような内容であることが多いからです。
 ただ、統合失調症という病気が家族や社会で問題になりやすいのは、病状が重くなると自分の力だけでは事態を収拾できなくなってしまうせいだとは言えるでしょう。閉じこもったり、食事をとらなくなった本人を心配して、家族が無理強いすれば「俺に毒をもって殺す気なのか」とケンカになるし、会社でも仕事に集中できず、時には本人にしかわからない奇妙な言動をとって周りの人を驚かせたりします。こうして統合失調症の問題はだんだん深く、病気ということよりも社会の奇人として見られるようになってしまうのです。幻聴はそれ自体だけの問題ではなく、幻聴を聞きながら生活するという二次的、三次的な困難を抱えた症状であるといえます。
(1999/4/21記)
上へ

ライン2

表紙へ 2番ホーム 待合室 伝言板 タブロイド
注意書 スタッフルーム

メールご意見・ご感想はこちらまで