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心も風邪をひく


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統合失調症 1

「統合失調症」という病気について・疫学

  「統合失調症」という病気をご存じでしょうか。知っている人も初めて聞いたという人も、この病名には何かとてもヤバそうな雰囲気があると思いませんか。この病気のことなんて本当は何も知らないのに、この名前を聞くだけで何かとんでもないことがそこには隠されているような気持ちに私たちはなってしまいます。
 このような誤解は、この病名が社会を騒がすような事件と一緒に報道されることが多いせいもあるでしょう。だけど、たぶん、なによりこの病気が「気ちがい」とか「気が狂っている」というお粗末で短絡的なイメージによって長く語られ続けてきたことに大きな原因があるのではないかと僕は思っています。

 本当のところ、こうしたイメージは統合失調症という病気のほんの一部しか見てはいません。たとえば、精神病院が日本にどれくらいあるか、どれくらいの人がこの病気にかかっているのかということはあまり知られていません。この数字を聞くだけでも、僕たちがいかにこの病気について関心がなかったかがわかると思います。

 厚生省の資料を見ると平成9年10月1日現在、日本の精神病院数は9413にのぼります。これは日本の全病院数の約1/9にあたる数字です。病院が9軒あれば、そのうち1軒は精神科の病院ということになります。これをさらに入院者数ということで調べると話はもっと変わってきます。平成8年10月現在の数字になりますが、これによると精神科の病院に入院している人は日本の全入院者数の22%にもおよぶのです。入院している方の5人に1人は、実は精神科の入院患者ということになります。ほかの病気と比べると循環器系の疾患(心臓病など)で入院している人がほぼ同数いて、この二つが日本の入院患者別に見る代表的な疾患になります。これにガンでの入院者数11%を加えれば、全入院者数の55%をゆうに越えてしまいます。日本人の多くが心臓病やガンで亡くなってしまうことを思えば、どれほど多くの人々がこの病に苦しんで入院生活を余儀なくされているか想像しやすいでしょう。

 統合失調症の発病頻度は0,8%弱と言われています。おおよそ130人に1人程度の計算になるでしょうか。日本全体では約70万人強の人がこの病気にかかっています。
 日常の生活の中ではまず聞くことのないこの病気は類縁の妄想性障害などを含めると、その総患者数は肝臓疾患にかかっている人とほぼ同程度の人々が、あるいは骨折している人のほぼ2倍に近い数の人々がかかっている病気なのです。どうして、私たちはこれほどポピュラーで、よく見られるはずの病気について何も知らないでいるのでしょうか。

 正直に言うと僕も病院で働くようになるまで、こういう現実があることさえ知らないでいました。精神科の仕事というのは医療の世界では、ほんの片隅にある小さな特別な世界だと思っていたのです。しかし、本当はそうじゃありませんでした。
 人間をもっとも人間らしい存在にしてきたのは「心」や「精神」という働きがあったからでしょう。その大事な部分が病気や事故で障害され、うまく働かないということは、とても恐ろしいことだと僕も思います。ただ、それでも私たちがこの病気をヤミクモに恐れ、拒否し、その存在を忘れてしまうのはどうでしょうか。「気違い」とか「気が狂っている」などと誤解したままで、自分とは違う別世界の出来事であるかのように振る舞うことが許されるのでしょうか。私たちが気づかずに生きているその中にも、人知れずこの病気と闘い、自分の一生をまっとうしようとする大勢の人々が存在するのです。私たちはせめて肝臓病と同程度には、この病気について知っていてもおかしくないのです。そして、私はわずかでもこの病気に対する誤解や偏見がなくなってくれるとを願わずにはいられません。
(1999/4/1記)
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