名前は新しく、文部科学省・厚生労働省に変わったけれど、昔の名前で呼ばせていただこう。「文部省様、厚生省様」。
この度、3冊の冊子を手にして思うことを述べさせていただく。3冊の冊子とは、もちろん、
- 「家庭教育手帳」発行:文部省様、情報編問い合わせ先:京都府教育庁指導部社会教育課(最終章である情報編のみ都道府県が編集していると思われる)
- 「それでいいよだいじょうぶ 子どもとの暮らしを応援する本」発行:厚生省様、編集:子育て支援情報提供事業・小冊子編集委員会様
- 「ふたごの育児 ふたご・みつごの赤ちゃんを育てるために」発行:厚生省児童家庭局母子保健課
のこと。
1と2は、所轄の保健所で「妊娠しました、母子手帳をください」と届け出たときにもらった。無料である。いずれも美しいカラー印刷である。1は古紙100%で作られている。2にはその表示がなく、つるつるしたきれいな紙にオールカラーで印刷されている。
まず、「家庭教育手帳」。よく字を見てみよう。「家庭で(こどもを)教育(する時に読む)手帳」であるらしい。
おおまかな目次は、「家庭とは?、しつけ、思いやり、個性と夢、遊び、記録編、情報編」となっている。それにマンガとイラストがた〜っぷり描いてあって、ありとあらゆるところから、これは古すぎるのでは?と思われるほど昔や、割合最近のアンケート調査や意識調査の結果が抜粋され、グラフになって掲載されているページが、各章の最後に添付されている。
「子どもと一緒に過ごす時間」では日本、タイ、アメリカ、イギリスのたった4ケ国のデータが載っており、グラフの下にチクリと一言。
「日本の父親が子どもと一緒に過ごす時間は、他の国と比較して最も少なくなっています。」
各々の国の社会状況や経済状況は異なるし、気候や日照時間も違う。単純に比較しても仕方がないだろうに……。
また、「自然体験をしたことのない小・中学生の割合」として、大きな木に登ったことがない、夜空いっぱいに輝く星をゆっくり見たことがない、太陽が昇るところや沈むところを見たことがない、などの問いに、何%の子が「Yes」と答えるかを調査した結果もある。
これだって、全国の公立小学校や中学校の子ども10,000人を対象にしているだけで、「それがどうした?」という程度のものだし、大きな木を切って土地開拓したり、街を光だらけにして夜空の星を奪ったりしているのはすべて、便利な生活と引き換えに大人が売り払った代償なのだ。
この本で非常に腹の立つことがある。72ページで構成されているこの本の30ページにわたって、しつこくしつこく「○○○、と決めよう」と標語のような文句が掲載されていることだ。教育の押し付けもはなはだしい。
「会話を増やし、家族の絆を深める、と決めよう。」
「テレビやテレビゲームに浸らせない、と決めよう。」
「幼児には親が本を読んで聞かせる、と決めよう。」
「他の子との比較にとらわれない、と決めよう。」
誠にもってうっとうしい。なんでそんなことを文部省に決めてもらわねばならないのだ?それとも書いてもらわねば決められない親が多いのか?これはいい!と標語として復唱でもしている家庭があると思っているのだろうか?この標語を冊子に書いて妊婦にタダで配れば、少年犯罪は撲滅されるのだろうか?あんたたちの決めた通りにしたら、他国に誇れる総理大臣や文部大臣がやがて育つのだろうか?
書いたことで、無償で配ったことで、満足しているこの国の文部省が情けない。
裏表紙の裏に「文部省」とあり、Ministry of Education, Science, Sports and Cultureと英語表記されているのに、その他のページに一言も英語が出てこない(つまり、はなから日本語の読めない妊婦は対象外)マヌケさ。不親切さ。
ほんとに、文部省さん。あなたの管轄の義務教育はだいじょうぶ?
2の「それでいいよだいじょうぶ 子どもとの暮らしを応援する本」も、厚生省さんには申し訳ないが、これまた腹の立つ本なんだ。子どもとの暮らしを「応援」してもらうのはいいだろう。いっぱい応援してもらいたい。
おくづけに「家庭や子育てに夢を持てる社会を」と書いてあるのもすばらしい。社会を作っているのは今の大人で、これから作るのは子どもたちだものね。厚生省さんはよーくおわかり。まるで、現在は、家庭や子育てに夢を持って"いない"社会であるように聞こえるもんね。
この本の最高に腹立たしいのは、ほとんど絵であること。そう。絵本。描いた絵本作家やイラストレータが悪いといっているのではない。ひとつひとつの絵はとてもいいのだが、63ページから構成されている約半分が絵である。なにも絵をなくせと言っているのではない。文庫本のように文字だらけでも読む気をなくしてしまう人がいるだろうから、少しでも興味を持って読めるようにとの配慮は汲んでおこう。
しかし、「あなたを応援するため、友人や祖父母、保健や福祉にたずさわる方にどうしてほしいのかも書きました。まわりの方にも、読んでもらってください。この絵本がこころの支えになることを願っています。」と"はじめに"で書いているわりに、なんだかナメられているような気がするのは私だけか?
私の家には、一枚の絵が壁にかかっている。いわさきちひろさんの絵だ。チューリップを背景に、あかちゃんが裸でおすわりしてこっちを見ている。もちろん、本物でも複製でもない。単なる印刷の絵が額に入っている。
こんな頃の私のあかちゃんを覚えておこう、と思って買ったものだ。"えーんえん"と泣いていたり、"しかる""ほめる"を繰り返したりして"育つ"こどもを見ながら、裸でおすわりしているあかちゃんの絵が「こんなときもあったんだ」と幸せな気分にさせてくれる。私にとっては厚生省のお墨付きではないが、自分で買ったこの一枚の絵で十分だ。
大食・少食を気にしないでとか、いつかはおむつはとれる、とアドバイスしてもらうのに、"ぱくぱく"食べたり、"ちー"とおしっこしている絵を描いた絵本を、大金をかけて税金から作ってもらわなくてもいいような気がしている。
育児に困った時に「それでいいよだいじょうぶ」とこの絵本に言ってもらいたくて読む人はどれくらいいるのだろうか。疑問だ。
さて、最後にふたごの親として最も興味深く、発行を待ちに待っていた「ふたごの育児 ふたご・みつごを育てるために」。
「発行を待った」というのは、2000年2月9日の朝日新聞に、
「厚生省はふたご出産・育児のガイドブックを作成中で、4月から母子健康手帳と一緒に配る予定だ。10月からは外出などでベビーシッターを利用した場合、年1度は利用料の1部(9,000円)を助成することにしている」
と、掲載されていたのを私は見逃さなかったからだ。
その頃、リョウとタイはすでに生まれており、4ケ月を迎えたところだった。天下の厚生省が「ふたご出産・育児」に目をつけてくれるとは、なんてタイムリー!かつ、見直しましたで!と少々感動していた。
母子手帳と一緒に配られるそうだけど、ふたごを生んでしまった(生んだことを後悔している"しまった"ではなく、すでに生んだという過去形)おかあさんだってもらえるはずだ!と確信していた私は、もう発行されているはずの4月になってから、予防接種だ、検診だ、と、てんやわんや保健所に出向くたびに、
「厚生省からふたごの冊子が出るって聞いたんですが、もらえますか?」
と、何度となく尋ねた。
しかし、担当者のセリフは、
「なんですか?それ?そんなん知りません。まだ来てません。」と、つれない、そっけない、無関心。もしかして、あの情報はガセネタだったか?と思うほどだった。
最終的にこれを手にしたのは6月。ふたご出産・育児を応援してくれるのなら、せめて冊子が発行されることが本当だということを言って安心させてほしかったし、特に保健所に出向く用事のない、ふたご育児をしている人には郵送で即刻届けるくらいのサービスが欲しかった。だって、私がしつこく「ふたごの本!ふたごの本」と言い続けたから入手できたものの、新聞の記事を見逃していれば、本は手に入らなかったのだもの。
はっきり言ってこれはいい本。ふたごの親でなければこの良さはわからないかも知れないが、いい本。
必要最低限のイラスト、理解しやすいグラフ、表。単なる育児アドバイスだけでなく、ふたごならではの疑問に対して医学的な知識もちりばめられ、具体的な育児の知恵や、高リスクを背負った妊婦を安心させる書き方がしてある。
78ページからなるこの小冊子は、他の2冊に比べて貧相な色使いで、ペラペラの紙を使用。この本を手に取る人は、日本中の全妊婦の中のほんの一握りだろうから、カラフルで派手にする必要はひとつもない。そこがまたけなげで、作った人の一所懸命さが伝わって断然好感がもてる。
"はじめに"で書かれているように、
「産婦人科、小児科、母子保健の専門家や実際にふたごやみつごの妊娠、出産、育児をなさったお母さん方からなる検討委員会を設置し具体的な支援策について検討を行なってきました」
と、本を作成するにあたって、少しでもよいものを作ろうとした努力と意欲が感じられる。厚生省さんだって、やればできるやん!
文部省様、厚生省様。本当にいろんなことを取りしきっておられて大変ですねぇ。
文部省さんは、ゆとり教育とかで、だんだん授業時間が少なくなる中、円周率を"3.14"と教えるところを"約3"と教えることにしたり、英語を小学校から導入しようとしたり、コンピュータを指導できる先生が足りなかったり、苦労が耐えませんね。学校の先生の平均年齢が年々上昇しているのも考えものです。
厚生省さんは、O157でかいわれ大根に汚名を着せたり、まだまだ原因が究明できていない雪印乳業にサッサと安全宣言をさせたり。まったく、やっていることがちぐはぐです。
こどもを死なせてしまったり、怪我をさせてしまった無認可の託児所は、あなたの所の管轄ではありませんが、こういう悲しい出来事が一切なくなるようにするには、どうすればいいか考えてみる必要がありますね。働くおとうさん、おかあさんのために、安心してこどもを預けられる人材と場所を提供する施設や機関が少しでも早くたくさんできますようにご努力ください。
それにしてもインフルエンザの予防ワクチンはなぜ、毎年品薄なのでしょう?こどもを守る予防接種なのにね。
子育てに関する様々な疑問や質問に答え、妊婦や新米おかあさんの助けになるのは、育児書であったり、インターネットからの情報であったり、周囲の人の助言であったり、口コミで広がるうわさ話であったりする。
だから、文部省様、厚生省様、どうせなら、共同で1冊、もうすこし充実した本をお作りになったらいかがでしょう。
ふたごに関する本は、ふたごのおかあさんだけでなく、ふたごのおかあさんをヘルプする可能性のある人にも配れるようにできればいい、と個人的に考えます。ふたごちゃんのおじいちゃんとかおばあちゃんとかね。
自分の娘がふたごを産むのに、相当のリスクがかかることを知ったら、居ても立ってもいられなくなるのが親心です。ふたごのあかちゃんの世話を買って出る、うちのばばちゃんのような人もいるでしょう。お腹の中にいるときから、本を読んで妊婦共々勉強してもらうのも一案です。
それから、ふたごのおかあさんでなくても、希望者には是非ともタダで差し上げて欲しいですね。ふたごのいるおかあさんやおとうさんって、こんなふうなんだ、って理解しようとしている人に、配布できません、なんて間違っても言わないでくださいね。保育園や幼稚園の先生方には行き渡っているのでしょうか。是非、読んで理解してもらいたいところです。
不妊治療の結果、ふたごやみつごを授かるご夫婦も増えてくるでしょう。きっと、計り知れない心の痛みと身体の痛みを越えてのことでしょうが、ふたごを育てることになるかも知れない可能性は高い、と希望を持って勉強してもらいたいです。
名前が"文部科学省"に変わった旧文部省様、"厚生労働省"に変わった旧厚生省様、全冊配布してしまう前に、名前が変わったので、"奥付け"の発行省庁名のところには、シールでもお貼りになるのでしょうか?まさか、残部は捨てて、印刷し直しってなことはないでしょうね!やることいっぱいありますね!!!頑張って下さい。
(2001年初頭に、省庁編成が変わり、ある大臣は、余っている名刺にシールを貼るってニュースでやっていました。ここで挙げた冊子たちの奥付けがどうなったか、ものすごく気になっている筆者です。だれか、新しいのもらった方、教えてください。)