7.3 毎日が立食パーティ


 

"ふたご"がこの世に出てきてから、日々の食料は京都生活協同組合(生協)の個別配達を利用して手に入れることにした。

3人以上のグループを作って配達をお願いする共同購入に比べて、京都の場合は400円の手数料が毎回かかる。しかし、前の週に注文しておいたものを玄関まで届けてもらえるのだから、我が家にとっては許せる範囲の手数料だ。

注文は、毎週の物品配達時に一緒についてくるカラーの冊子の中から選び、マークシート方式でチェックシートに書き込んで、次回の配達時に渡す方式である。食料以外にも洗剤やトイレットペーパーなど、重いものかさばるもの、本やCDまで購入することができる。

カラーの冊子には「250グラム198円お買い得!」とか「1個増量!」などと書いてある。すべて写真が掲載されているのだが、実際に届いてみると「あれ、こんなに小さかったっけ?」とか「これなら3個でよかったのに」ってこともあるので、日頃から、スーパーに行って、ものの相場や重量のめやすを学んでいると失敗しない。

食品には、産地や添加物の表示もされている。届いた物は、あかちゃんの離乳食にも活躍するので、確かめて購入できるのがいい。

買ったものの代金は、金融機関から自動引き落としされるので、買いすぎに注意することが必要だが、便利さには勝てない。留守をしている時には、ドライアイス入りの箱に詰めて約束した玄関前に置いておいてくれる。

"ふたご"のあかちゃんがいる家庭にとって、食料の買い出しは死活問題だ。ふたり乗りのベビーカーはある。しかし、一歩も外へ出られない要因は山積みなのだ。

台風、強風、雨、雪、カンカン照りなどの気象条件。ふたりのあかちゃんの、まるで正反対の眠りと覚醒。どちらかの病気、両方の病気。おかあさんの電池切れ。

「行くぞーっ」と、意気込んでベビーカーに乗せたけど、片方がうんち。おむつを換えて気を取り直して「今度こそ行くぞーっ!」と、再度玄関口へ。そしたら、もうひとりが案の定うんち。そうなると、おかあさんはプンプン!げっそり「あーしんど、もうやめや!」

マサミツがまだ寝返りもできない、ほとんど生まれたばかりの頃、ためしにカタッ!と音を立ててみて起きないのを確認してから、大急ぎで50メートル先の八百屋さんに買い物に行ったことがある。それでも「どうか、起きんといてー」と祈るばかり。なにかの拍子で布団が顔にかぶさっていたりしないかどうか、気が気じゃない5分ばかりの外出だ。

あかちゃんが"ふたご"だと、それも危うい。本人は寝ているのだが、夢を見ているのか、鶴の一声「アー」で、もうひとりが完全に起きてしまうことがある。

寝返りができたばかりの頃はさらに大変。がんばって寝返りの練習をしてくれるのはいいのだが、元に戻れないわ、首を持ち上げるのはしんどいわ、で、「ウーウーウー」とうめき声が後をたたない。そのまま布団に顔をうずめて窒息してはいけないので、すぐに仰向けにもどしてやらねばならない。外出などは不可能の頂点を極める。

そんな中で、玄関まで必要なものを運んでくれるサービスは本当にありがたい。加えて、調理しなくては食べられない食材ばかりではなく、半調理済みの"衣の付いたフライ"だとか、味付けされた"ごぼうサラダの素"などもある。もちろん、パックをめくれば食べられる"玉子とうふ"や"こんにゃくの白和え"などもあるので、料理する時間を毎日やりくりしている身としては大助かりである。

考えてみれば、昔からお寿司や麺類、お酒やお米は出前や配達をしてくれていた。やがてそれがピザやお弁当にまで広がって、今や食料に至ったまでだ。

私の家は、5分歩けばスーパーがあり、食料品から雑貨までなんでも揃う立地条件にある。15分歩けばデパートがあり、それこそなんでも手に入る。車の往来が激しく、窓の外の音がうるさい欠点はあるが、街のド真ん中の我が家は、コンビニやスーパーをやっている家には負けるが、食べ物を手に入れるには恵まれた究極の場所だ。それでも、家族に小さい"ふたご"がいると、玄関から一歩外へ出るのが限りなく不可能に近い。おかあさんの性格にもよるだろうが、小回りが利かなくなるのは誰でも同じだろう。

「買い物どうしてんの?」と、友人たちは口を揃えて聞く。私もリョウとタイがお腹にいるときには、たぶん外へ出るのが無理だろうと想像して、あれこれ考えた結果、生協の個別配達に落ち着いたのだ。冷蔵庫に今晩のおかずになるものがあるときには、一日中家で本を読んだり、手紙を書いたり、たまった家事を片づけたりするのが好きな出不精者なのがバレているので、友人は続けて「外、出ぇへんかったら、ストレスたまらへん?」とは聞いてこない。

ところがどっこい、別のことが原因でストレスがたまる。

専業主婦は「3食昼寝付き」と、仕事を持つ女性と比べてお気楽に見られるが、今の私は3食が2食になることもあり、その貴重な食事はキッチンでの立食(「りっしょく」でなはない。「たちぐい」)であることが多いのだ。食べることで体力を保持し、なんとか"ふたご+3歳やんちゃ坊主"の育児と手抜き家事をやってのけている身としては、非常にツライ。

マサミツのおやつを盗み食いするのも至難の業だ。奴は、減った分がわかるようになってきた。袋を開けるカサカサっという音で母の素行をつきとめ、現行犯逮捕される。

おいしいものが口に入っているのに、口をモグモグさせながらウンチのおむつを換えたりもする。夫にはマネのできないワザである。

昼寝はできない。3人のこどもたちが同時に寝付くことは奇跡に近く、同時に起きることはいとも簡単にやってのける奴らである。3人が寝ている、かろうじて重なっている貴重な間に夕食の下準備をし、新聞の見出しだけチェックし、洗濯物をとりこんだりたたんだりするのだ。

まあ、あかちゃんが"ひとり"でも、たいていのおかあさんは立食(何度も言うが「たちぐい」)を余儀なくされているので、"ひとり"よりも"ふたり"の方がちょっと大変という程度の問題だ。

だが、あかちゃんの離乳食がはじまると、"大変さ"は計り知れぬほどにまで増長する。ふたりのあかちゃんに、ゴックンできるトロトロのおかゆや、モグモグできるつぶしたじゃがいもなんかをあげるのは、熟練のワザが必要だ。さらにマサミツにもごはんを食べさせ、自分も何か食べるのを同時平行でやるのは、熟練の腕と品格を捨てる覚悟がいる。

「はい、リョウ、あーん」と、言っている間に、タイのスプーンにもおかゆを乗せておく。リョウの口におかゆを放り込んだら、すぐにタイのスプーンに持ち替えて「タイ、はい、あーん」と口に突っ込み、その間にテレッと汁のついたリョウの口をガーゼで拭く。これの繰り返しである。右手も左手も両方利き手だったらどんなによかったか。

もうちょっと離乳が進むと、かためのおかゆが主食になり、とうふの玉子とじなんかがおかずにつく。

「はいはいはい、待って待って、ほら、もうすぐあげるってぇー。マサミツ早よ食べや!」と、リョウに言いながらタイの口におかゆを入れる。「あーん」はものすごく上手になったが、私の持っているスプーンをなんとかしてとろうとする。途中でマサミツが「おかあさん、ここに落ちたー」と、言うのでふきんを渡したりしていると、必ず「ギャーギャーギャー(ぼくの分はないのか?早くほしい、お腹へったんやー)」とリョウが待ちきれずに抗議する。抗議はものすごくしつこい。

わかりやすく言えば、ツバメのヒナである。親ツバメがえさを運んでくるのを、ピーピー鳴いて、我さきに欲しいと口を開けてウルサイこと。そして、一口もらったら、間髪いれずにもう一口ほしいのだ。ツバメの親は本当に偉い。たいてい巣には5〜6羽のヒナがいるではないか。それに比べてうちはたったふたりだもの、がんばらなくっちゃ。

最初の子の離乳食には気を使う人が多いだろう。今の世は、レンジでチンすれば、月齢にあわせた硬さの、さまざまなメニューが用意できるレトルト食もあるので、おかあさんは楽チンだ。しかし、一皿はほんの70グラムぐらいで、メニューにもよるが100円以上し、しかも一食で二種類ほど必要になると、敬遠してしまう。

私が家には、外出時のお弁当代わり、来客で用意が間に合わなかった時、おかあさんのストライキの時だけの非常食として買い置きしてある。

意外だろうが、上の子で離乳食作りを体験していることを差し引いても、"ふたご"の離乳食作りは思ったよりも楽だ。作り甲斐がある、というべきか。ひとりぶんのトロトロおかゆは、製氷皿で凍らせた作り置きのおかゆ1食分を解凍し、さらにお湯を足して火にかける。そうすると、鍋の底にこびりつく分の方が多くて、食べさせる分がなくなったりするのだ。腹立たしいやら、疲れるやら。

その点、2回目の離乳食体験で作るふたりぶんのおかゆは、あらかじめ鍋にこびりつく分も勘定する賢さも身についている。玉子とじを作る時も、ひとりなら、半分の量を残すところ、ふたりぶんで1個の玉子が使い切れる。量が2倍になると、がぜん作る意欲が出てくるのは不思議なものだ。

おまけに、リョウとタイはよく食べる。ここで食べなければ、一生食いっぱぐれると言わんばかりにガツガツしている。だから、3人前くらい離乳食を作っても平気で食べ尽くすのだ。デブにならないか心配なくらいだ。

リョウとタイが、あんまりたくさん食べるから、3歳違いのマサミツの体格を追い抜いたらどうしよう、というのが目下の悩み。

そういったわけで、私の離乳食作りは簡単だ。

よく、「お弁当を作るのなら、ひとりぶんもふたりぶんも同じ」と、いうが、まさにそれを地でいく離乳食作りだ。ただし、何年後かに私が「お弁当を作るのなら、ひとりぶんも4人分(夫はお弁当が要る)も同じ」と、言っているかどうかは保証できない。

食事の用意にたくさんの時間を割くことができず、片手間な夕食になってしまうことは、ただただ"ふたご"のあかちゃんが家にいるからだと、半ば責任転嫁をしている。インスタントや冷凍物の出番も少し増えた。それでも、このお膳で5人がそろってごはんを食べられる日が、そう遠くないと思うとがんばれる。そんなもんなんだ。

ああ、お膳は狭くなるから、もう一つ横に置ける同じ高さのお膳を探さねばならない。

食べ盛りになったら、年に3回くらいは高級ホテルで立食パーティ(これはまぎれもなく「りっしょく」!)としよう。ケーキの食べ放題もついているバイキングがいいな。それに"ふたご"割引はないだろう(あたりまえか)。

毎月25日は、「ふたごの日」とかいって、"ふたご"のいる家族は、食べ放題が半額になったりするサービスを、どこかのホテルでやってくれないだろうか。強く強く希望しまーす!!!





                 

@nifty ID:NCC00753