7.2 ふたごとワイシャツとピンポン


 

大人になってもこどもの時からの癖はなかなか直らない。

夫婦として生活をはじめても、今までの癖はなかなか直らない。

こどもが生まれたら、今までの癖は直る?直りにくいけれど直すのだ。

たとえば、テレビと新聞を見ながらの食事、お風呂上がりに裸でウロウロ。他人を起こすいびき、バターン!という寝返り、水を出しっぱなしのハミガキ……。

忘れてならないのは、裏向けに脱ぐシャツ!

夫はシャツを裏向けにしか脱げない。脱ぐ時にちょっと工夫すれば、ちゃんと表になるものを、どうでもいいこととして努力しない。くつしたはちゃんと脱げるのになぜだ?

「たたむ時にひっくりかえすのに手間かかるし、脱いだ時に表を向けてといて!」と、下手に出て頼んでいるのに、それがどうしてもできない。

世の夫の中には玄関から、ネクタイ、くつした、背広、ベルト、ズボン……と延々脱いで部屋に入ってくる人がいるらしいので、それに比べれば、こんなのは話にならないだろう。

だが、"ふたご+3歳やんちゃ坊主"の相手をしている私は、夕方までエネルギーを持続させるのがやっとこさだ。胸のランプはお昼を過ぎるともう"ピコンピコン"と点滅しはじめる。本当なら3分で倒れてしまうところを、冷蔵庫に隠しておいたチョコレートや、頂戴ものの最後の1個のプリンなどをマサミツに見つからないように食べて、夜まで無理やり体力を持たせるのだ。並々ならぬ努力の毎日といえよう。

結婚したら、女は家事だけをしなければならないとは考えていなかったので、結婚してからも仕事を持っていた私だが、家事を嫌っているわけではない。義母の闘病がはじまるのと、クライアントとの契約が終了するのが同時だったので、いったん介護と家事に専念したところ、マサミツがお腹にいるのがわかったという次第だ。だから、専業主婦が苦手だとか、なるべくやりたくないとかいい訳はしない。

洗濯物を干したりたたんだりする家事は、好きな方だ。冬のアイロンあては大好きだ。掃除もやるときゃ徹底的だ。だが、家の中に"ふたご+3歳"という怪獣がいる場合は勝手も違う。新聞をきっちり読みたいと思えば、一刻も早く、とりあえずの家事を片づけてしまわねばならない。万が一、届いたばかりの通販のカタログを見ようものなら、家事はズレ込み、もう少し寝ているはずのリョウがタイを起こし、マサミツも同時に起きてしゅうしゅうがつかなくなり、そのツケは夜中にまで及び……延々。

つまり、いかに家事を効率よくこなし、コレをしながらアレもする同時並行進行テクニックをフルに活用することが大切なポイントなのだ。あかちゃんがひとりだと、頭で考えながら手を動かすくらいで追いつくが、"ふたご"になると、さらに、足でも仕事をし、口で何かを言い……とそれは忙しい。毎日、ワザをみがくのに命をかけているといっても過言ではない。

そのなかで、夫のシャツ裏向け攻撃はものすごく腹が立つ。毎日のことなので、「こんな簡単なこともできひんの!」という怒りが、洗濯をたたむたびに押し寄せてきて、キレてしまう。

夫は、帰宅するなり、「今日もシャツ裏向けやった!どういうつもり!」と、詰問され続け、やっと改心して私の一手間が減った。

"ふたご"のおとうさんの中には、スーツを着用して出掛ける種類の仕事をしている人もいるだろう。ワイシャツはもちろん必要。その場合は、形状記憶のシャツを勧める。洗って脱水をかけたら、干すだけでおおよその形が整う。少しシワが残っていてもあまり気にせず、ハンガーにかかっているのをそのまま着て出掛けてもらおう。そうでなければ、1週間分まとめて自分でクリーニング店に持って行ってもらう。

高価なワイシャツは下手に自分で洗ってアイロンをかけると、繊維の目が狂ってしまうらしいので、長く着用したいお気に入りのものは、むろんクリーニングに出す方がいいくらいだ。

クリーニング店の中には、集配可能な店があるが、妻は夫の留守中に、そんなしょーもない客の相手はできないので、夫が持っていき、もらって帰って来てくれることを切に望む。

不意の「ピーンポーン!」ほど憎らしいものはないのだ。静かな部屋に鳴り響く「ピーンポーン!」で、こどもたちが一斉にお昼寝から起きてしまうことだってありうる。あかちゃんといえども眠りのリズムがあり、どんなに大きな音でも眠りこけている場合もあるが、「カタッ」という音で目覚めてしまうこともある。"ふたご"の場合は、寝返りをすると、隣の子の頭をキックしたり上に乗っかったりして、相棒を起こすことを頭に入れておかねばならない。

不意のピーンポーン!でも、こどもたちが機嫌良く起きて遊んでいる時なら、なんら問題はない。その時においしいお中元やりんごのおすそ分けや、とうの昔に忘れていた懸賞のアタリ賞品なんかが届くと「おおきにぃー(ありがとう)」と、ゲンキンに受け取ることができる。

しかし、「○○化粧品です」とか「書き留めでーす、ハンコお願いしまーす」と、夫の歌舞伎鑑賞のチケットが届いたりすると、「化粧して出掛ける余裕はないんじゃー!」とか「また、遊びに行くのか!」という怒りがこみあげてきて、いきおいぶっきらぼうになる。

ついでに、電話についても憤慨しておこう。

近頃の電話って呼び出し音が大きすぎる(昔の黒電話には、音を小さくするための座布団があったなぁ)。広い家ではないので、3人が同時にお昼寝している奇跡のようなひとときに、間違い電話がかかってきたりしたら、一発で怒り心頭バクハツは避けられない。うんちのおむつ換えの時も最悪のタイミングだ。仲良くしている友人からなら、「ごめん、うんち換えてるねん。掛け直すわ!」と勢いよく切るが、一瞬で何者か判断できない場合には、一応オクサマ気取りで、片手であかちゃんの足を高々と持ち上げているにもかかわらず、応対しなければならない。

何も、全部の電話をとらなくても、鳴りっぱなしにしておけば、やがて留守番電話に切り替わることになるんじゃないのか?とお思いだろうが、そうはいかないのが"ふたご"のいる家なのだ。スヤスヤ眠っている奴がひとりでもいたら、とにかくソイツを起こさないように最大の努力をはらう。だから、電話の子機を肩とあごの間にはさみながら、おしりを拭きつつ、とりあえず鳴る電話を止めなければならない。

マサミツは、不意のピーンポーン!と電話には必ず起きてしまう子なので、ある時期、お昼寝突入と同時に電話の線を抜いたことがあった。2ケ月も続けた頃、ばばちゃんからは、電話が壊れたのではないか?と苦情をもらい、友人はハガキで無事を確認してくれる始末となった。これではいけないと思い、以後、線を抜くことはしなくなったが、呼び出し音を鳴らさずに留守番電話に切り替える機能も、「ただいま留守にしておりますっ!」という応答メッセージが大きすぎて気に入らない。

昼間のそんな悪戦苦闘ぶりを聞いた夫がひとこと言った。

「テレビで見たことある、耳の不自由な人が使う機械で、ホラ、玄関のブザーが鳴ったり、電話がかかってきたら、パトカーの上についているクルクルの赤いランプが家中で光る、アレ!育児用品であったらいいのにな。」

想像できる?見たことあるでしょ?ホラ!あれ!

アレがあると、あかちゃんのいる家は、みんな丸くおさまるのにな。あかちゃんのいる家にも遠慮せずに電話できる。でも、「いつか光るゾ!」と思ってこどもたちはお昼寝をするのを嫌がるかもね。

おーっと、ワイシャツのクリーニングの話からおもわぬ方向へ話がそれてしまった。軌道修正をしてあかちゃんの服の話もしよう。

秋生まれの"ふたご"本人たちは、最初は短下着と長下着の重ね着で、昼間も夜も過ごす。お風呂の時と、汗をかいた時、ミルクやおっぱいで濡れた時に着替えさせればいい。

あかちゃんは3000グラム程度で生まれたときには、サイズ50の服を着て、6ケ月にはサイズ70くらいにまで成長するのが普通サイズだ。

お腹に"ふたご"がいる友人から、あかちゃんの服はどんなものを揃えたらいいか、と相談を受けた時、私は言い切った。

「おめかしのかわいい50や60の服はいらん。」

彼女はきっと内心怒っていただろう。これから生まれてくるかわいい我が子は、下着だけ着ていろというのか!と。

意図するところは、そうではないのだ。おでかけ用のレースぴらぴらでお揃いの小っちゃい服を用意したい気持ちはわかるのだ。しかし、50や60のおめかし服を着せても、誰かに見せに行くことが"ふたご"の場合困難である。季節が冬に向かうのであれば尚のこと。そういう服は、お宮参りをするときの分だけでいい。

我が家に"ふたご"を見に来てくれた友人は、いったいいつ訪ねたらいいか、ずいぶん迷ったそうだ。"ふたご"の親からの意見としては、3ケ月をめどにしてもらいたい。だから、ちょっと大きめの、サイズ70くらいの服をお揃いで用意しておけばいいだろう。

ただし、体重が足りなくて生まれたあかちゃんや、おっぱいやミルクの飲みが悪くて、ちょっと小さ目に育っているあかちゃんは、サイズ50や60の"お客様披露用おめかしお揃い服"が必要かもしれない。

「ふたごの服!」と、いうと、それだけで色めきたってしまうのが女性というものだ。ふたりがほとんど体重差や身長差がない場合は、お揃いのものを着せたくって仕方ない。

色違いのシャツ、同じ色のズボン、青色と黄色の帽子、くつしたは当然!……。コーディネートしなくてどうする!というほどはりきってしまう。上にお兄ちゃんがいようものなら、バーゲンなどでは、同じ縞模様の色違いTシャツをサイズ違いでさがすのに血まなこになる。ふたごたちが女の子のご家庭では、きっとさらに過激に白熱した洋服選びが展開されていることと推察する。

リョウとタイが生まれてから、マサミツの服は、色違いで同じ物を2枚揃えて買うことが多くなった。常に3年先を見越しているのだ。

しかし、ちょっと計算違いのことも出てきた。リョウとタイの肉付きは、見た目にものすごく差があるわけではないので、適当に色や柄を揃えておけば、ときどき取り替えっこしてワードロープも2倍になるやん!というもくろみが外れたのだ。

リョウは比較的なんでも似合う(かわいいえ!リョーチャン!)。女の子のお下がりの赤いTシャツだって無難に着こなす。しかーし、タイはどうもおかしい(ごめんな、ターイチャン!)。ばばちゃんの買ってきてくれた紺と赤のパジャマは、色を逆に着せるとタイはプロレスラーにしか見えない。他の服も万事あてはまり、ふたごなのに、こうも似合う色が違うか、嘆くやら、面白いやら。

こどもの服というのは、大人の"L・M・S"ほどおおまかでなく、成長の仕方にも個人差があるので、買うのが割合難しい。最初のお誕生日を迎える頃までは、あわてて先々の物を買ってしまうと、夏物・冬物に関しては大きさはバッチリだが、季節に厚さがあわない、なんてこともありうる。

誰かのお下がりをもらうのなら、生まれた季節がほぼ同じである人のをもらうといい。1歳を過ぎると、少々袖が長くても、少々首周りが開きすぎていても、"ダボダボ"程度の印象を与えるだけで、それもまたかわいい。

「ふたごだったから、生まれた時に小さかったの」と、嘆いていても、グングン成長して"ひとり"で生まれてきた子を追い抜いてしまうかもしれない。同じ性別で体重差が大きかった場合は、ひとりの子のお下がりを、ふたごのもうひとりが着る、ってなことも可能かも。

服に関しては、とりあえず、生まれてから洋服を調達してくれる人材がいると安心だ。誰もいないと悩むことはない。自分や誰かが動かなくても通販で購入することもできる。

おーっと、通販で購入すると、「ピーンポーン!」って配達してくれるんだ。ややっ!これはやはり、あの、パトカーの上のクルクルの赤いランプが必要だ。それはどこかで売っていないか?通販にあるか?ああ、堂々めぐりだ。ガックリ。





                 

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