妊娠中や出産にかかる費用が一体いくらなのか、漠然としすぎて不安になったことはないだろうか。
その要因は、「妊娠は病気ではない」という定義があるからだ。そう、誰もが加入している社会保険も国民健康保険も共済組合保険も適用されないのだ。
お腹にいるのが"ふたご"だと判明したときに、夫に「いつでも100万は出せるようにしといて!」と頼んでおいた。マサミツひとりを産んだとき、出産で入院した費用は40万から少し足が出た。だから、単純にその倍を想定したのだ。もしかして、切迫流産とか、切迫早産で予定外に入院するやも知れず、いつなんどきお金が必要になるかわからなかったので、とりあえずそれくらいは用意して、私が動けない状態でも払えるようにしてもらいたかった。
そして、生命保険の種類を変えた。生命保険ほど商品の差のあるものはないので、詳しくは説明しないが、某生命保険会社の「個人年金保険」という種類の保険に入ったのだ。実は、昔、同じ会社の別の掛け捨てのような保険に入っていたのだが、そこが、吸収合併され、担当者が変わって「これより別にいいのがある」と、薦められたのだ。
この保険に加入するとき、健康状態を自己申告した。驚くことなかれ、このとき私は妊娠23週だった。もちろんお腹の中のあかちゃんは"ふたご"だっていうことも判明していた。
普通、保険会社というものは、保険金を払わなければならない確率が高い人の掛け金は、高くなったり、加入するのを渋ったり、断ったりするもんだが、そうではなかった。
外交のおばちゃんは、"ふたご"なら、管理入院で出産にさきだって入院する可能性も高く、出産のときに帝王切開になる確率も高く、入院も長引くだろうことを知っていた。つまり、保険会社にとって私は損なお客さんだ。だが、おばちゃんは加入を勧めた。このタイプの保険は27週までなら妊娠していたって、"ふたご"だってOKなのだ。
「こんな生命保険って、有りか?詐欺ではないのか?第二の保険金詐欺おばはんにならないか?」
加入した頃、お腹は大きかったが、まだ、サッサと歩けたし、気持ちの上では、前もっての入院はしないゾ!と意気込んでいたが、これからまだまだ大きくなる"ふたご"のお腹を見つめて自問自答した。
結局ふたを開けてみれば、前もっての入院はなかったものの、入院が長引き、月払保険料14,053円で、「女性疾病入院特約」の分として140,000円戻ってきた。ジャラジャラチーン!ありがとう。
保険といえば、結婚した年に夫とふたりで加入した「郵便局の簡易保険」からも支払いを受けた。これは、満期保険金300万円の分で、返ってきたのは「疾病入院特約」の分、63,000円だ。ジャラジャラチーン!毎度ありがとう。
ちなみに、私が今回のふたご出産で入院した期間は17日間だ。いずれの保険も最初の何日間分は支払われないが、期間の大半の日数分を支払ってもらった勘定になる。
両保険とも「手術給付金」が支払われる特約がついていたが、手術関連の支払いは受けられなかった。「傷害特約、疾病傷害特約、簡易生命保険特約に掲げられている手術のいずれにも該当しないので、手術保険金については支払われない」と、ごていねいにお手紙つきだった。
私の受けた吸引・鉗子分娩は手術に属するが、生命保険の分野では支払いを受けられる手術には該当しないのだそうだ。帝王切開だと、出産で「手術給付金」がたいていもらえる。
だいたい、"妊娠と出産は病気ではない"という大前提がなぜかある。銭勘定をするにはここをしっかり押さえておかねばならない。つまり、病気ではない妊娠に関する部分を診てもらうには、自費でお金を払い、病気の分は自分の属している保険(国民健康保険・社会保険・共済組合保険のいずれか)が適用されるということだ。
35歳以上で出産する予定の「マル高(高齢出産)」の場合、京都市からは超音波診断の補助券を一枚もらえる。これは、自費で払うところを、一回分援助してもらえる券だ。
つまり、いくら高額な特約付きの保険に加入していても、私がマサミツを産んだときのように、自然に陣痛がきて、経膣分娩で出産し、1週間で退院したら保険請求のために入院証明書を先生に書いてもらう(うちの産院では証明書作成に1通4,000円かかる)だけで赤字になる。
「これで、保険金もらえへんやろか?」と思ったときには、「保険に入っているんですけど、支払いを受けられるでしょうか?」と入院している期間中に看護婦さんに聞いてみよう。病院ってのは割合そのへんにも詳しい。
その病院、自分の家とはどれくらい離れている?これも銭勘定に深くかかわってくる問題だと知っている人はかなり"ツウ"である。ちょっとお向かいの病院に検診に通っていた人は別として、産院に通うときに交通費がかかる距離なら要チェック!だ。
普段、歩くのが好きな私は、マサミツがお腹にいるときには、片道4キロの産院への検診に徒歩で通っていた。今回は"ふたご"なので大事をとって、毎回タクシーを利用した("ふたご"って、こういうところでも大事をとるので、お金がかかる)。
ポイントはここだ!通院のための交通費はできれば領収書をとっておくとよい。"検診に必要な交通費は医療費に含まれる"というラッキーな税法がある。領収書がなくても、「いつ、なんのために、どこからどこまで、いくらかかった」とメモしてためておくことだ。
ついでに、医療費としてどんなものを含めていいのか挙げておこう。まず、分娩費、入院の部屋代、定期検診費用、医師に指示を受けたガーゼや脱脂綿、入院に付き添ってきた保健婦さんの付き添い費用なども含まれる。
これらは、毎年1回の税務署での確定申告のときに、医療費控除の対象になるのである。自分の会社や夫の仕事場で年末調整をしてくれていても、検診に通っていた年や、出産した年は確定申告をチェック!
医療費控除とは"生計を一にしている家族全員の医療費の合計が年間(1〜12月)10万円を超えた場合、その10万円を超えた分が所得から控除される"ものなので、妊娠・出産に関すること以外の、夫のかぜ薬を買ったとか、こどもの病気で小児科に払った金額も当然合計していいのだ。
そこに、妊娠・出産で払う金額をプラスする。これは軽く10万円を超えるので、こーなったら意地になって領収書を集めよう。10万円に1円足りなくても控除対象にはならないのだ。
しかし、これには落とし穴がある。健康保険組合などから分娩費・出産手当金などを支給された場合や、生命保険などの給付金は、その額を必死になって合計した年間医療費から差し引かねばならないのだ。
わかりやすいように、我が家の場合を例として紹介しよう。
私は夫の扶養家族になっている。夫の属している保険は共済組合保険だ。職場から、所定の出生届出用紙をもらってきて、私の入院中に産院で出生証明をもらい、夫がそれを総務に提出すると、「配偶者出産手当金」が支給された。
さて、戻ってくるお金(うちの場合は「配偶者出産手当金」)は、"ふたご"だとどうなるか?
"配偶者"は"私"で、私"ひとり"が出産したのだが、出産の結果、"ふたり"のあかちゃんが生まれた"ふたご"の場合、この「配偶者出産手当金」は「ふたりぶん」支給された。これは、「およそ1ケ月の手取り給与×2」だ(我が家の場合。ただし法定給付として一児につき30万円が保証されている)。これこそ"ひと粒で2度おいしい"最たるものだ。ジャラジャラチーン!むちゃくちゃありがとう。
ともかく、何か戻ってくるかもしれない、とか、もらえるかもしれない、と思うものに関しては、恥ずかしがらず積極的に病院や会社、役場に問い合わせよう。これからオムツもミルクも洋服も、果ては食費も学費もぜーんぶ同時にふたりぶん出費となるのだ。貪欲にもらえるものはもらっちゃおう!
さて、ここらでトーンを落として、支出部門にうつろう。
先に出産後に儲けた(?)話になってしまったが、さかのぼって、妊娠中にはいくら払ったか計算してみる。
"ふたご"と判明したときには、"単胎"の妊婦さんが、普通4週間に1回の検診で済むところを2週間に1回の割合で受診しなければならない、と言われたが、まもなく、お腹の中のふたりがひとつずつの袋に入っていることが診察でわかったので、検診の回数は"単胎"の妊婦さんとほぼ同じ回数だと考えればよい。
全検診回数は16回。自費で負担した分は、合計96,000円。検査の結果、貧血が病気として発覚し、治療をしたのは共済組合保険(3割負担)で支払い、その分が合計20,750円。総計116,750円を妊娠中に支払った。ジャラジャラチーン!ゲッそんなになる?
この金額はあくまでも、個人差があり、病院によっても違うので、ほんの一例にすぎないことをご考慮いただきたい。
安定期と呼ばれる妊娠中期では病院が違えども検診する内容は大差がないので、例として挙げよう。
私の通っていた産院では、超音波診断・子宮底長計測・胴回り計測・血圧・体重・尿検査・問診が妊娠中期における検診のすべてであった。その費用は自費負担で毎回8,000円である。
某公立総合病院に通っていた友人の同じ時期の検診には超音波診断がなく、半額以下で済むそうだ。その病院では安定期のうちは20週と30週しか超音波診断がない。だが、マル高の私が超音波診断だけを1回分タダにしてもらえる券を使ったときに、支払った額は6000円だった。単純に考えて、超音波診断は2000円で、その他の部分が6000円ということだ。そうすると、某公立総合病院との受診料の差はなんだ?
私の通っていた産院は、京都市内で受診料や入院費が高い方から3本の指に入るというウワサだが、私個人の意見としては、決して高すぎるとは思わないでいる。
残念ながら私は1ヶ所の産院しか通院したことがないので詳細は不明だが、私と同じ産院で里帰り出産した友人の話によると、里帰りする前に通っていた産院とこの産院とでは検診にずいぶん差があった、ということだ。
まず、「先生がていねい」。そして、腹部超音波診断を受けるときにお腹にぬってもらうゼリー状の薬を、「前の産院ではティッシュペーパーを一枚渡されて、自分でなでなで拭いていたけど、こっちは、あったかいタオルでていねいに看護婦さんが拭いてくれはるねん。めっちゃ感激した。」と言っていた。そんなところに受診料の差が隠されているのかもしれない。
では、妊娠中にかかる費用は、お腹の中のあかちゃんが"ひとり"と"ふたり"とでは違う?これは、
「なあ、変なこと聞くけど、"ふたご"やったら、検診のとき2倍払うの?」という素朴な質問にすべてをゆだねよう。
答えは、「お腹にいるのはふたりでも、妊婦はひとりやし、ひとりぶん」。実に明快。
実はこの質問、妊娠中に何人もの人に浴びせかけられた。なんでそんなこともわからへんの?と半ば飽きて答えていた。しかし、よくよく考えてみれば、"ふたご"をお腹に持つ当事者だから、スラスラと答えられたまでだ。案の定、まだ妊娠進行中だったその頃、入院したときにいくら払うのかわからなかった。
さあ、銭勘定も佳境に入ってきた。いよいよ入院費の登場だ。チーンジャラジャラ!チーンジャラジャラ!(パチンコやありまへん!)
この"入院費"もお腹の中のあかちゃんが"ひとり"か"ふたご"かで変わってくる。分娩費はひとりの妊婦の分娩に関する費用なので、ひとりぶん。おかあさんの部屋代や食事代はもちろんひとりぶん。産院にいる間のあかちゃんの身の回りに関する費用(おむつ、洋服、各種検査等)はふたりぶん、である。それらはすべて自費払いだ。
ちなみに、2500グラム以下のあかちゃんの場合、"低出生体重児(俗に言う未熟児)"扱いされるので、保険が適用される。
私の場合、双胎出産の吸引・鉗子分娩が引き金となる貧血症状に関する費用は保険が適用された。毎日の静脈造血剤注射や血液検査がこれに含まれる。
さあ、お待たせしました。"ふたご"出産で17日間個人産婦人科病院に入院した私が、退院時に支払った金額は?!チーンジャラジャラ!
ズバリ、1,029,660円也。いつもニコニコ現金で支払った。
「なんとか安産本」に、産院を決めるとき、何をキメテにする?という「病院・産院選び」というページがある。
アンケートによると、小児科を併設している、母子同室、立ち会い出産ができる、同じ先生が診てくれる、親きょうだいの薦め、家に近い、評判がいい、等など、さまざまな意見が載せられている。その中で「お金」の問題は遠慮がちに息をひそめている。そう、妊娠・出産はお金で買えないものだから、「安かろう悪かろう、高かろう良かろう」なんて単純に考えられないのだ。
私なら、第一に先生への信頼感を挙げるし、今回は"ふたご"をいかに無事に産むかということだ最大の目的となったので、一気に100万を超える出費は覚悟の上だった。お腹の中であかちゃんを育てるのと同時進行で、出産費用も確保せねばならない。無理難題?でも、ふたりが私をおかあさんに決めてやってきてくれたのだから、銭勘定にも力を注がねばなるまい。
「何でもふたつ要るし大変ねー!」と言われたら「そうなんですぅー」と軽くかわして心の中で舌をペロッと出しておこう。
「お金で買えないのよ!こんなかわいい、ふ・た・ご!」