妻が妊娠すると、
- 喜ぶ夫
- びっくりする夫
- 無関心な夫
- うろたえる夫
- おこる夫
だいたい、これくらいの種類の夫に分かれる。テレビドラマの夫を分類するとこうなる。
さて、妻が"ふたご"を妊娠すると
- びっくりする夫
- あ然とする夫
- 本当かと何度も聞き返す夫
- ひっくりかえる夫
- 妻の言うことを信じない夫
- お金の計算をはじめる夫
だいたい、これくらいの種類のリアクションを夫ひとりでする。これは我が夫を観察して並べてみた。ふたごができたとわかったシチュエーションのドラマを作るときには参考にしてもらいたい。(配役 夫:江口洋介 妻:松たか子 でお願いしたい)
私が"ふたご"を妊娠して夫が最初にしたことは、職場への報告だ。ふつう、夫たるもの、新婚旅行へ行くために休むので「結婚します」報告くらいはするし、「こどもが生まれました」報告もする。でも、「妻が妊娠しました」報告はしない。(ちなみに、夫は結婚休暇は結婚したらいつでもとれると思っていたので、式から2ケ月後に申請して却下された。)
だが、"ふたご"の場合、「妻が妊娠しました」報告は必要である。
事実、"ふたご"を妊娠したときに妻にかかるリスクの高さを聞けば、夫は、いつなんどき「帰ってきて!」とか、「入院した!すぐ来て!」と連絡されないとも限らない。一緒に仕事をしている人たちからはブーイングの嵐だろう。いきなりリスキーパパにしてしまった。
私が妊娠4ケ月を迎える頃、年度が新しくなり、某大学に勤めていた夫は、同時に他大学に異動になった。新しい職場でのいきなり「妻が妊娠しました、ふたごです」つまり「いつでも休むぞ」宣言である。日本の社会では、新しい職場へ出勤したとたんに「いつでも休むぞ」宣言などをしたら、「おまえ、来たばっかりやのに、いつでも休むってそりゃなんや!仕事する気あるのんかぁ?!」と、周りのひんしゅくを全部かってしまうばかりか、即リストラ対象人物になる危険性が大だ。
だが、サラリーマンのくせにまるでサラリーマンでない大学のセンセという職業はその辺がちょっと違う。融通がきかないようで融通がきくへんな商売だ。集まっている面々も少し変わった人が多い。
研究室の長である教授にまず報告。その教授いわく、教授の義理の兄のところもふたごのこどもがいるとのこと。「男、男、で、どうしても女の子が欲しいからと思ったら、エイヤッとふたごの男の子だった」そうだ。あらまあ、というエピソードを話してくださって、サッサと了解をくださった。
そして学部の事務所に「妻が妊娠しました、ふたごです」つまり、「保険証早くくれ!」のお願いだ。いつなんどき入院!てなことになるかわからないので、できるだけ早く新しい保険証を手に入れなければならない。
夫はそんな作業をさっさとやってのけた(ということにしておこう。4分の3くらいは私が「早よせい!」と脅した)。
私はといえば、マサミツを妊娠したときの、とにかくよく寝るくせが復活した(「ねむたづわり」というらしい)。当時は、夫の母が電車を乗り継いで1時間30分かかる病院に入院していたので、お腹にあかちゃんがいるにもかかわらず1週間に5日は義母を見舞う、という忙しい生活の中で本当によく寝た。そして、今回ふたごを妊娠して、同じく、いつも眠たい。
「なんか、ものすご眠たいねん。」といいつつ、朝食の支度もせずに朝遅くまで寝る。ごそごそ起きだしてマサミツと自分の朝食を済ませ、サッサと掃除をしたら、早くもウトウトしたくなる。マサミツのお昼寝のときに一緒に寝ようといつもたくらんでいるし、晩御飯を食べてお風呂に入ったら本格的にハイおやすみグーグー。そして、できるだけ朝寝坊する。グータラを絵に描いたような妻だ。
というわけで、夫は朝ごはんはひとりさみしく食べなければならない。(実は、ねむたづわりがおさまってからも、ヤレ育児疲れだ、ヤレ今日くらい休まして、とさみしい夫の朝食は続いている。ごめんな。)
夫の一日のはじまりは、"起きて着替える"というような自分のことはもちろんだが、"やかんいっぱいの番茶を沸かす"とか、"新聞を取りに行く"ということも平然とルーチンワークに入っている。その合間に大好きないちごヨーグルトを作ったり、天気予報をチェックしたりする。加えて、私がお弁当を作らなかった日は、朝からウインナーと卵焼きを焼いたり、プチトマトのへたをとったりしてお弁当箱に詰めるのだ。
そして、その後、ゆるい上り坂の道を30分自転車通勤するのだ。大学へ行って何を研究しているのか、さだかではないが、こんなに働いたら過労でダウンしてしまうかも知れない。リスキーな夫の生活はつづく。
おまけに、私のお腹はふつうの妊婦さんの1.5倍速で大きくなるので、妊娠初期から膀胱が押されてトイレに通う回数が急上昇した。夜昼問わず2時間おきくらいにトイレに行きたくなる。ひどいときには20分前にも行ったのにぃ!と自分でも恨めしくなるほどだ。夜中は上向けに寝られなくなるので、何度も寝返りをし、3〜4回トイレに起きる。その度にガタガタ音を立ててしまうので、当然夫もゆめうつつながら起きてしまう。私は夫のいびきで目覚めることも多いので、おあいこだと思っているのだが、毎夜のことなので少しかわいそうだ。
しかし、こんな虐待を受けても、夫は、だんだん身動きしづらくなっていく私を見て同情してくれる。(本当は、文句も言うのだが、「そんなん言うんやったら代わってぇさぁ。」と毎回言われるので、じっとがまんをしている。)これでは精神的にも参ってしまいそうだ。
だが、夫はわずかな自由時間を趣味を満喫するために遣い、エネルギーを充填をして復活する。リスキーパパは数日ごとに返上するのだ。私は、家事と育児で時間もままならず、おまけにふたごがお腹にいるリスキーママなので、行きたいコンサートや映画も指をくわえてチラシをながめたり、新聞の批評を読んだりして我慢しているのに、夫はなんて自由なんだ。もっと不自由に付き合ってくれてもいいじゃないか。
妻が高リスクをかかえていたら、夫だけでもリスクが少なく、ばりばり働いて、家事を手伝ってもらったりする力を残しておいてもらいたいのだが、夫があまり自由すぎると、うらやましくなり過ぎて、ええい、もっと手抜きをしてやれぃ!とまたケンカをしかける私であった。
「リスクの高い方が偉いんだぞ!」なんとも理不尽な攻撃だ。とにかく、妊婦は大変なんだ。夫も大変であたりまえなんだ。
だから、朝ご飯はひとりで食べてね。できるだけ早く帰ってきてマサミツの遊び相手もしてやってね。お皿もときどき洗ってね。土・日の掃除は必ずしてね。ゴミもときどきだしてね。………やることいっぱいあるんだぞ。
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