1.2 リスキーママ


 

普段の私は、寒がりで少々冷え性だということ以外に、特に持病はない。便秘だって年に3回ほどしかしない。162 センチ、45キロのスリムな体型を維持している(こどもをひとり産んだので下腹部はゆるんでいるが……)。何をどれ だけ大食いしてもあまり体重が増えることもない。俗にいう“やせの大食い”なだけで健康だ。

つまりは、毎日体調に気を配ることもなく過ごしているお気楽な人生だ。

ところが、ふたごを妊娠したことで、とてつもなくたくさんのリスクを背負い込んでしまった。

まさかの“ふたご”宣言をうけたその日、私は、私より後に来た3人の妊婦さんをおいて診察室に向かった。げっそり して待合室に戻ったら、座るところもないほどになっていた。みんなが待っているところではサッサとする、とかいうこ とにわりあい気を遣う性格なので、どれほどの時間、先生の説明を聞いていたか想像してもらえるだろう。

ふたごを妊娠したことのリスクの度合いや内容には個人差があり、また、お腹の中のあかちゃんの成長や母体の状態に より常に変化するらしいので、検診のたびに先生に確認したり、質問したりが繰り返されることになる。

実際には出産までの間に、すこしずつリスクは減っていったのだが、頭の中は真っ白ながら意識だけははっきりしてい たので、先生の説明を聞いただけで大砲攻撃を受けた後に散弾銃を浴びたようになりフラフラだった。

  1. 高齢出産(35歳以上の妊婦)である
  2. ふたりのあかちゃんが平等に大きくならない場合がある

    胎盤からの栄養(血液)が一人にかたよって流れることがあり、その場合は、もう一人はしぼんでしまう。しぼんでしまった場合は自然に子宮の中で吸収される。また、極端に体重差のあるふたごになる可能性もある。ふたりがほぼ平等に成長しているかどうかがわかるのは5ケ月に入るまで待たねばならない。

  3. 7〜8ケ月になると、お腹が大きく重くなりすぎて妊婦自身が動けなくなる

    ひとりのあかちゃんを妊娠している通常の場合の約1.5倍速でお腹が大きくなる。出産を迎える頃の胎児の重さ はひとり2500グラムずつと考えておく。

  4. 満期産を38週とする

    通常の場合は40週をもって出産を迎えるが、ふたごの場合は、38週を満期と考える。36週の時点で、超音波診断に よるあかちゃんの体重が2500グラムずつあることが確認できれば、出産させる。

  5. ふたりの位置によって帝王切開になる可能性が大きい

    ひとつの羊膜にふたりが入っており、手、足が絡まっている場合や、ふたりとも逆子(頭を上にしている)の場合は自然 分娩は無理である。帝王切開手術になるかどうかは、出産間際まで子宮内のふたりの位置を超音波で確認する。

  6. 2週間ごとの検診が必要

    通常、28週に入るまでは4週間に1度の割合で胎児の様子を確認することになるが、ふたごの場合は状態により2週間 に1度の検診が必要

  7. 妊娠中毒症になりやすい

    母体に負担がかかるため、通常よりも妊娠中毒症になりやすい。貧血防止、減塩、高たんぱく等食事内容にも気を配る必 要がある。

自分の努力でなんとかなるものの何と少ないことか。すべてがなるようになっていき、なるようにならないものはどう しようもない(ちょっとわかりにくいか)。黙って大きくなるお腹を見つめ、かばい、支え、来たるべきその日を待つし かないのである。まさに「神のみぞ知る」状態だ。神妙にならざるをえない。

“ふたご”妊娠にむけた気力や体力はこの時にはぜんぜんなかった。ただ、ボーゼンとするのみである。

それにしても、「お腹が大きくて重くて動けなくなる」っていうのはナンダ?!長男がお腹にいたときも、半端な大き さではなかった、人がたくさんいる所ではお腹に何かがぶつからないように常に手でかばって歩いていた。ショルダーバ ックはとうの昔にリュック型バックに変えた。

料理をするときもお腹が出っ張っているために、エプロンのお腹のところだけよく汚れた。なんだか熱いな、と思った ら、鍋をかけているガスの炎に、お腹だけもう少しで届きそうだった。いったん寝転がれば、起きるのに一苦労だったで はないか。「はあ〜、ふう〜、よいしょ!、どっこらしょ!」の掛け声がないと何もできなかった。「動けなくなる」の が本当に「動けなくなった」らどうしてくれる?この身に起こることの重大さがひしひし迫る。

ただひとつ、救いなのは出産を経験したことがある(経産婦)ということらしい。自然分娩の場合、あかちゃんの通っ てくる産道は初産の人より開きやすいので、いくらか出産は楽であろうとのこと。しかし、この“救い”も裏を返せば、 子宮口が開きやすくふたごの重さが引力に逆らえず耐えられなくて出てきてしまう(ゲー!!そんなんなったらどうしよ う!インリョクということをこの時ほど重大に意識したことは今までなかったゾ)ということで、経産婦であることが必 ずしもいいとはかぎらないのである。

かくして、リスキーママはふたご妊娠生活をはじめたのである。開き直るより他はない(まな板の上は“鯉”ではなく て“開き”だったか)。

でも、今、お腹にふたごのあかちゃんのいるお母さんに声を大にしていいたい。

あきらめないで、おちこまないで、不安でどうしようもない気持ちは、周囲の人に話しをしたり、先生に質問したりす ることで、解決できる。夫にも、こどもにも、辛さやしんどさを話せばいいし、バクハツしてもいい。実家の親や義母義 父みんな、巻き込んで進んでほしい。

そして、どこかにふたごのお母さんがいないか、まわりをよーく見渡して!買い物の途中で二人乗りのベビーカーにふ たりのあかちゃんを乗せている人に出会わない?友達の中にふたごのお母さんを知っている人はいない?勇気を出して、 声をかけてみよう。「今、私のお腹にふたごのあかちゃんがいるのです」と。きっと、そのお母さんはあなたを勇気づけ てくださるはず。そして、絶対に祝福してくださるはず!

「大丈夫、ちゃんと産めますよ。大変だけどがんばってね。そして体を大切にね。」





                 

@nifty ID:NCC00753