岸本知佐子   (大学院2年 国語教育専攻)

インターネットを使った古典の授業

1 内容
 東京学芸大学附属大泉中学校で、インターネットを利用した古典の授業を見学する機会があった。見学した後に、授業をした工藤哲夫先生にお話を伺うことができたので、授業を見学して感じたことや問題点などをまとめてみた。

2 事前指導
附属大泉中学では「総合T」で情報の授業を受けている。
@ コンピューターの基本操作(1時間)
A 文字入力タイピング(1時間)
B 文章を作り、保存する(1時間)
C 絵を描く(2時間)〈コピーと貼り付け操作、画像操作を含む〉
D グラフを作る(1時間)
E プレゼンテーションをする(2時間)
F インターネットのアドレスを保存する(1時間)
生徒はとても上手にパソコンを使うことができる。キーボードを打つのもとても早い。

3 授業のポイント
目標は「古典に親しむこと」。インターネットから情報を得ることで、「竹取物語」の秘密にふれ、更に古典に関心を持つということが、この古典の単元の中心である。情報を収集する結果になるので、「子供の問題意識→情報の収集→情報の享受→情報の再構成→情報の発信」ができればよいと考えている。そして特に「情報の再構成」「情報の発信(他の生徒の前で発表)」ができればよい。

「竹取物語」でパソコンを使った理由
・帰国子女クラスだから
・古典の導入だから、古典の楽しさを知るため
・生徒に見せたくないホームページに行き当たってしまう可能性が少ないから

「情報カード」「意見カード」を作る(活動の手順C)
ホームページから得た情報を取捨選択するためにカードを作って整理する。
得た情報を要約することで、ホームページの内容を丸写ししてしまうことを避けられる。情報が自分にとって必要なものかどうかを考えることができる。
アウトラインを作る時に入れ替えたり、追加や削除がしやすい。(自分の考えを整理することができる)

自分の集めた情報について、友達の意見を聞く(活動の手順E 本時)
ほとんどが個人作業になので、ひとりよがりになってしまいがちだが、友達の意見を聞くことで、自分では気づかなかったことに気づけたり、疑問に答えることで、自分の考えをより明確にできる。

楽しむことを重視しているので、生徒に自由に調べさせて、教師はあまり口出ししない。


4 生徒が利用したホームページ(よく使われたもの)
奈良県広陵町のホームページ
「かぐや姫」の町、広陵町に伝わる「かぐや姫」の物語とゆかりの場所を紹介している。竹取翁の名前についての話、5人の求婚者が住んでいたところの話など、生徒には興味深かったようで、最も生徒に使われたホームページ。マンガ家の里中満智子が絵と文を書いている。
http://www.town.koryo.nara.jp/kaguya/index.html

NTT西日本静岡支店ホームページ「静岡民話劇場」
富士市に伝わる「かぐや姫」の物語を紹介している。
http://www.city.fuji.shizuoka.jp/k_hime/k_story.htm

富士市「かぐや姫の里」のホームページ
富士市に伝わる「かぐや姫」の物語を紹介している。富士市教育委員会編『富士市の竹取物語調査研究報告書』(1987)から抜粋したものを載せている。
http://www2.wbs.ne.jp/~kaguya/himena4.htm

物語学の森2000 上原作和編著『竹取物語事典』ハイパーテクスト版
http://www.asahi-net.or.jp/~tu3s-uehr/taketori-dic.htm

九州大学附属図書館所蔵貴重資料画像データベース
「竹とり物語」(近世中期写)上下2巻2冊
http://herakles.lib.kyushu-u.ac.jp/nara/taketori/txt/contents.htm


5 授業を見学しての感想
・ 自分の疑問を調べるということを楽しんでいる様子だった。生徒なりによく調べていると思った。
・ ホームページの情報が正確なものであるかどうかの判断を生徒に任せていたが、教師がある程度方向づける必要があるのではないか。
・ 生徒が利用したのは、研究で利用するものとは違うホームページが多かった。また、知りたいことはそれほど載っていないようであった。
・ 友達の意見を聞いて自分の考えを深める授業のはずだったが、他の子のテーマにはあまり関心がなく、意見はほとんど出なかった。意見を求めるための中間発表であることを理解できてないようであった。
・ ホームページで得た内容を、自分なりに取捨選択してまとめているようであったが、どうしても集めた情報を鵜呑みにして、ただ並べているという印象を受けた。

せっかくたくさんの情報を集めても、それが「読む」ことに生かされていないことに問題がある。インターネットを使えば調べることが楽しいので夢中になり、発表につかうPower Pointを工夫することに夢中になってしまう。調べたホームページの文章をそのまま写してしまったり、情報を自分の中で消化することなく使ってしまう。だから「竹取物語」を読むために調べるという意識が必要だと思う。

この授業では、生徒がそれぞれ違うテーマで取り組んでいたが、それをクラスで1つのテーマにして話し合う時間を設ければ、調べっぱなしということは避けられるのではないだろうか。

加須西中学校の藤間先生に中学校では「竹取物語」をどのように指導するのかを伺ったところ、すらすら読めるように何度も音読させたり、教師が音読するのを聞いたりするのが一般的ということだった。耳から古典に親しむことが必要だということである。だから、無理にインターネットを使うことはないのではないかとおっしゃっていた。


6 子供用サイトについて
工藤先生の授業では、検索のやり方も生徒に任せていたが、子供向け検索エンジンもある。

〈Yahoo!きっず〉
「竹取物語」で検索すると、國學院大學図書館デジタルライブラリーで「竹取物語絵巻」が見られる。http://kotodama.kokugakuin.ac.jp/digital/diglib/taketori/page001.html でも、1件だけ。
〈こねっとgoo〉
「竹取物語」で検索すると262件。教科のページでは「万葉集」「源氏物語」現代文など100件ほど。
〈じゃぺっと(JAPET)〉
99年版教育素材リンク集。中学国語では、現代文・古典・語彙・総合など80件ほど。

教科書出版社のホームページにもリンク集がある。
〈光村図書〉
「大人のためのリンク集」という教材関連のリンク集があり、「子どものためのリンク集」もできる予定。
〈教育出版〉
小学校国語、中学校国語の部屋に「教科書教材リンク集」がある。

7 まとめ
工藤先生「古典に親しむこと」を目標にこの授業を行った。生徒は「調べる」ことを楽しそうにやっているようであった。パソコンを使うのも上手だったし、生徒なりによく調べていたと思う。「竹取物語」ゆかりの町があったり、「竹取物語」関連のホームページがたくさんあることを知ることができて、古典に対する抵抗感は持っていないようであった。ただ、これから2年生、3年生の古典の授業で「読む」ためにパソコンを使う必要があるのだろうかと思った。


トップページに戻る