発酵なし人工飼料の実験(途中経過)

菌糸瓶の自作以外にも、クワガタ幼虫の餌についていろいろな添加物の実験を行っています。このところ模索しているのは、予備発酵なしに与えられる人工餌作成法です。これはニフティの昆虫フォーラムに参加していて気がついたのですが、クワガタの飼育を始めたばかりの人にとって、発酵マットや菌糸瓶の自作はかなり難しい事の様です。そこで、定量的にただ混ぜて与えれば幼虫の成長促進に効果がある添加物と混ぜ方を調べ始めたものです。

特に白色腐朽菌に侵されて白腐れ状態になった朽ち木に良く穿孔しているオオクワガタ属の幼虫は、同じ白色腐朽菌であるヒラタケやアワビタケの菌糸瓶でたやすく大きくなります。と言うことは菌糸ないし菌糸に含まれる栄養に近いものを与えれば、同じ様な効果が期待できると考え、以下の3点のマットの実験を始めました。以下に掲げる画像は、同じオオクワガタの♀が9月末の1週間以内に生んだ卵から孵化した♂幼虫を選別して、初令幼虫を約6ヶ月飼育したものです。まだ予備的な実験のためN=5で実験中の内容です。

白色腐朽菌の菌糸は生木や枯れ木に侵入すると、木質に含まれる炭水化物や窒素酸化物を分解して、その栄養分を菌糸のネットの中に一時蓄えます。この備蓄物質としてはグルタミン酸が知られ、これは本来子実体であるキノコを発生させるために、栄養体である菌糸が必要とする以上の養分が贅沢消費と言う形で蓄えられています。野生のクワガタ幼虫がこのグルタミン酸を食べていれば、それに変わる化学物質で容易に手に入るものを与えれば、効果がありそうです。また幼虫が積極的に取り込んでいる菌糸の主成分はキチン質で昆虫の外骨格と同じ様な構成になっています。このあたりを参考にして発酵させずに使える添加物のリサーチから始めてみたところです。


味の素添加マット:

ajinomoto-ashuurei.jpg (25036 バイト)まず菌糸が蓄えている栄養の代替候補物質として化学調味料が考えられます。グルタミン酸ナトリウムまたはグルタミン酸ソーダは、食べ物のうまみ成分を合成した化学調味料で、グルタミン酸のナトリウム塩です。通常調理の際に振りかけて使用するのに便利な様に、細かい結晶状で販売されています。画像はこのグルタミン酸ソーダ(この場合は手持ちの味の素)を、容量比1%以下マット(ミタニ社製くぬぎ純太君)に混ぜて与えたオオクワガタの亜終令幼虫です。

この実験では死亡幼虫はまだいません。また以前オオクワガタに使用した場合でも、個体変化幅は大きいものの最大68mmの♂が羽化していますので、現状では一番期待している人工餌です。それを裏付けるように幼虫たちも順調に育っているようです。

 

 

 


ブラン添加マット:

buran-ashuurei.jpg (24011 バイト)同じグルタミン酸は小麦にも大量に含まれています。通常胚乳にグルテンと言うタンパク質の形で含まれていますが、このグルテン含有量によって、薄力粉と強力粉に分類されています。昨年10月に菅野さん主催のWEB月刊誌「クワガタ狂いの大馬鹿者達」で、亀有カブトさんが発表して話題になった「矢内スペシャル」は、専増産フスマと言う家畜用に特別に製造されたフスマ(麦の脱穀粉)を市販の昆虫マットに添加して発酵させるマットでした。このフスマは家畜専用と言うことで、一般には入手が難しいため、今回は昆虫フォーラムの女性会員にしてお料理の達人あのよろしさんから、菓子材料用の食用フスマ(ブラン)を分けてもらいました。専増産フスマと違い胚乳成分がほとんど含まれない、お米の米糠の様なものです。

burannmatto02.jpg (25226 バイト)フスマの成分は主にセルロースのはずですが、専増産フスマには小麦粉に含まれるデンプンとグルテンが含まれているはずです。強力粉添加マットはこのデンプンのせいで、しばしば放って置いても発酵してしまいますが、デンプンが少ないフスマではどうでしょうか?

実はフスマを添加したマットを発酵させずに加湿して放置すると、瞬く間に何かの菌糸がのびてきます。子実体が発生しないためはっきりしませんが、表面だけでなくマットに均等に発生しているため、マットの原材料である廃ホダの中で休眠していたシイタケ菌糸がのびて来た様に思われます。このためブラン添加マットは、軽く容器に詰め込んだだけでも、画像の様に1週間ほどで型取りができるほど固まってしまいました。この実験では1/5の幼虫が死亡しましたが、他はそこそこ育っているようです。

 

 


キトサン添加マット:

kitosan-ashuurei.jpg (25961 バイト)菌糸や昆虫の外骨格の主成分であるキチン近い添加物を与えて見たらと言うことで、ニフティFPAで活躍中のラッキイ軟骨さんに分けていただいたキトサンも、実験的に単体でマットに混ぜて与えてみました。この実験はラッキイ軟骨さんご自身の手でもすでに実施されており、小麦粉発酵マットの追加添加物としてこのキトサンと加えたが、有意の効果は見られなかったと言うものです。私の実験は容量比5%以下でキトサンだけを添加したものですが、画像の様にマットは内部までカビに覆われてしまい、その影響のせいか幼虫の成長もあまり良くありません。

またこのマットに関しては2/5の幼虫がすでに死亡しています。どうやら幼虫たちは菌糸そのものの類似成分を添加しただけでは、うまくそれを吸収する事ができない様です。

キトサンマットはその後死亡率があまりに高いので中止しました。

 


味の素マット(グルタミン酸ナトリウム添加マット)によるツシマヒラタ羽化個体例

画像はオオクワガタではありませんが、ミタニ社の市販マット「クヌギ純太くん」に容量比で水10%・味の素1%を混ぜた餌で飼育したツシマヒラタの♂成虫です。まだ羽化直後のため腹部が少し伸びていますが、80mm前後の立派な個体に育ちました。手間もこつもいらない味の素マットですが、栄養価が高ければ簡単に大きくなるオオヒラタクワガタの系統には特に有効な様です。

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最終更新日 : 2000/07/04.