青空のルーレット (光文社文庫)



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青空のルーレット (光文社文庫)
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コドモの「純粋さ」と大人の世界

今度映画化された「青空のルーレット」と、第16回太宰治賞を受賞した「多輝子ちゃん」が所収されています。

「青空のルーレット」は、テーマが明確に台詞として出てきます。「夢を見るから、人間なんだっ」「夢を叶える事よりも、夢を見る事で、人間は人間になれるんだっ」と。
窓ふきを世過ぎとしながら、音楽であったり、文学であったり、様々な「夢」を持って生きている若者達がいます。そんな彼らの中に中年になっても「夢」を諦めない萩原さんがいます。彼らは、「夢」が簡単に実現できるとは思っていません。ですから、自分たちの未来として萩原さんを賞賛を持ってみています。それ故に、大人の汚い世界の罠にはまった萩原さんに手を差し伸べようとするのでしょう。

「多輝子ちゃん」は、青春のある一時期の不安定な時期に、彼女の人生を救った一曲の歌を描いています。その曲は、若者の手になるものでしたが、彼はその純粋さ故に大人の世界に対応出来ず、若くして亡くなります。その曲自身も結局レコードにはなりませんでした。でも、そのキャンペーン中に流された曲が、彼女を死から救いました。それが、彼が生を受けた意味であるかのように。

二作品とも、人間の本来持っている純粋さと、大人達の妥協の世界の対立を描いています。誰も最初から大人であったわけではなく、純粋さを持ちあわせていた筈で、その心を忘れたくないものです。
夏ですね

表題作は窓拭き男たちの話。
「命がかかっている」ということで、
他の仕事より連帯感なんかが育まれるお仕事なんだと思う。
そして彼らには、共通して「夢を持ってる」ということで、
他の仕事よりことさら友情が育まれるのだと思う。

だからって、夢のない人を別物と考えるわけではなくて、
一緒に窓を拭いたやつらはみんなつながってるんだな、と。
作者あとがきの「受け取りやがれ」がなんともいえず。

「多輝子ちゃん」は女の子の恋と成長のお話。
ありふれてる感がないわけではないのに、
なぜだかきちんとまとめられてる。
多輝子ちゃんの描き方が等身大で嫌味がないからか。

暑いのも悪くない、
こんなのも悪くない、と思わせてくれる2つのお話。



雲一つない青空

萩原さんの「人間はな」から始まるあのセリフは、頭から離れません。
感動・爆笑とは無縁ですが、読んだ後に心が晴れます。気持ち良く読み終われます。
僕は高校の模擬試験中にこの話にであったのですが、一部抜粋だったので気になってしまい、試験が終わっった後買って帰りました。

読み終わった気持ちが、温かい

人と人との関係というか、つながりのようなものが伝わってくる作品でした。ありそうな題材を、辻内氏ならではの表現法をもって「なんか他とは違う…」
そんな心温まるすばらしい作品になっています。『青空のルーレット』も好きですが、個人的に『多輝子ちゃん』好きです。
ある歌手の件はせつないですが、ただせつないに留まらず、最後にはほんわかした気持ちにさせてくれるあたりが辻内氏の作品の魅力ですね。
いい作家が、また一人。

 心に染みる作品が二つ。
 ちょっと出来過ぎかなというところが所収2作のどちらにもあるんですが、それは気にしないでおこう、そう思えました。
 こんないい作品なんだから、そんなのいいじゃない。
 きっと寅さんが好きなこの作者。
 あったかい物語が書きたいという、とてもシンプルなこだわり。でも、ちゃんと人間を深く見つめ、そして、・・・深く愛している。
 「多輝子ちゃん」もいいですよ。太宰賞を取ってデビューすることになったこの作品。受賞しても、作品発表はムックの形で、月間文芸誌が継続的な作品発表の場を準備してくれそうにもない、太宰賞。作家として手っ取り早く注目を集めるなら他の賞を狙った方がいいんじゃないだろうかと思うのに、あえて太宰賞。でも、太宰の名が着いていて、宮本輝を排出して、・・・この人なら、この賞にこだわるのかなあ。成功よりも、この賞で世に出たい。そう思ったのかなあ。だとしたら、いいなあ、それって・・・。でも、この人だったらそうかもね。勝手にそんな想像をして、嬉しくなってしまったりする。そういう人だから、こんないい作品が書けるんだよなあと、これまた勝手にそう思わせてくれる。そんな作品集です。
 乙川優三郎のデビュー作の本の解説に、「時代小説大賞は良い作家を一人世に送り出した。」とありました。では辻内氏のこの最初の作品集には、「太宰賞は、また一人、本物の、とても素敵な小説を書く作家を世に送り出してくれた。」と記したいなあ。ごめんなさい。内容の詳細な解説より、ただ褒めて、信じて欲しい。そんな思い、伝わりますでしょうか。



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