公明党の「中選挙区制」
案を批判する

 中選挙区制は日本独自の選挙制度です。それを「非移譲式単記大選挙区制」などと欧米風に言い換えることに、私はさほどの意味を認めません。ここでは、何より、この制度が、選挙制度としては、世界でもまれな長寿を保ったことに注目したいと思います。それは、この制度が、欧米の一部の学者も注目しているように、「巧まざる比例代表制」だったからです。定数が3〜5もあれば、小選挙区制のような大政党による独占は起きにくくなります。小さな政党にとっても、力を限られた地域に集中できるという点では、比例代表制以上に有利な面もあります。しかし、選挙区の規模が限られているため、比例代表制よりは大政党に有利であることは否めません。いわゆる共倒れは、中選挙区制の明瞭な欠点のように思われていますが、実はこれも比例代表的効果をあげるには一役買っていたのです。考えてみれば、一つの選挙区に複数候補を立てられるのは大政党に限られます。大政党の議席獲得の共倒れによる制約がかかることが、大政党に有利な選挙区規模の小ささの補償になっていた面もあります。

 もっとも、政党候補者の票が、同じ政党の他の候補者の当選にはまったく役立たず、むしろ他の政党の候補者の票と同じく対立するものとなるのは、確かに中選挙区制の欠点だったとは言えるでしょう。これがたまたま政権交代がないことと相まって、同士討ちの激化を招いた面があったことは否定できません。中選挙区制に改良の余地があるとすれば、まずこの点です。公明党が選挙区定数を原則として3とする「中選挙区制」を唱えたのは、3人区なら同じ政党の候補者の数が限られ「同士討ち」が緩和されると考えたからでしょうが、これは、かつて1つは社会党の指定席とされた多くの3人区で、激しい同士討ちが行われた事実に反します。選挙区規模が小さい分だけ、その争いは熾烈だったはずです。

 かつての3人区では、自民党が独占するか、自民2と社会1という当選パターンが多かったと思います。それ以外の政党が割り込むことは至難でした。これでは、「巧まざる比例代表制」としての中選挙区制の利点がまるで活かせません。公明党としては都市部で若干割り込めるから満足なのかも知れませんが、そんな党派利害だけで選挙制度を決められてはたまりません。

 公明党は、はじめ選挙区定数を一律に3とするようなことを言っていました。中選挙区制の重要な利点の一つは、定数に差があることで、選挙区の再編によらず、定数の増減だけで格差が是正されることにあります。定数を一律に3にするのでは、それが1でないこと以外には、小選挙区制と何らの変わりもありません。それどころか、はじめに定数を都道府県に配分する段階ですべて3の倍数にすることになるのですから、小選挙区制よりさらにひどい格差を生むことになります。さすがにこの点には公明党も気づき、「原則として3」とし、都道府県に配分される定数が3の倍数でないときに限って2人区や4人区を認めてもいいと表現を変えています。

 私は、選挙区定数を一律に3とすることは、百害あって一利もない改悪であり、政党候補者の票が同じ政党の他の候補者に役立たない「非移譲式」に何らかの改良が加えられるなら、そんな改悪をする必要はないと考えています。