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2003年04月14日掲載
ZENセンセの展示室1
ベルリン在住のZen吉本氏の作品を幾つかご紹介します。56Kとかの通信速度だとちょっとつらいかも。先にご了承下さい。
まずはZenセンセのレポートです。
○「指輪物語、旅の仲間」ペイント・コメント(…なのでしょうか?)

これを削りだしたのが去年のイースター休暇ですから、完成までに10ヶ月近くかかってしまいました。去年の夏ごろには基本色塗装と顔は仕上がっていたんですが、その後ダークエルフに取り掛かったり、仕事が多忙になったりで半年ほど放置していました。
2月2日がウチのディレクターの誕生日なので、そのプレゼントに間に合わせようと今年1月に入ってからスパートかけました(やっぱ、締め切りがないと完成しない体質は変わっていません)。
カッターと金属ヤスリでバリ取り後、軽くワイヤーブラシを当て、刃の部分はメタルの生地を生かすためにペーパーで400〜2000番まで上げたあと金属磨きでポリッシュ。ラウンドベースにエポキシ接着剤(5分間硬化の2液混合タイプ)で固定し、全体にメタルプライマー(グンゼのMr.メタルプライマーを近所の模型店で入手できたが、品薄で当時7,95マルク≒450円とかなり高価だった)を筆塗り。これが乾燥後、アーマーや装飾品等の金属部分以外にシタデル・ホワイトを筆塗り(水で2倍に希釈し、2度塗り)。以上で下地が完成。
本塗装は、僕の場合まず顔、とりわけ目から始めます。下地の白を白目部分として生かし、
1. 黒に近いこげ茶で虹彩の輪郭をやや上マブタにかかるように丸く入れる。
2. 虹彩部分に下地としてホワイトを乗せ、同時に輪郭のはみ出しをカバー。
3. 虹彩をキャラクターの目の色で塗装(例えばレゴラスならスカイブルー等)。
4. 虹彩中心に瞳をグロスブラックで点描き。
*このあと、通常は瞳の右上にハイライトの白点を飛ばすんだけど、今回は目が小さいのでパス。グロスブラックの反射で似たような効果が出ることを期待しました。
5.虹彩輪郭と同じ黒に近いこげ茶で上マブタのエッジを目元から目尻まで引く。下マブタは目元から虹彩輪郭の下端まで引き、そこから目尻までは白目と頬の肌色の境界をわざとぼかしたままにしておく。こうすると目全体がシールを貼ったように際立ちすぎることなく、自然な印象になります。
以上はエナメル系の塗料(日本ではタミヤエナメルを使っていましたが、こちらではレベル。なんと、ドイツではレベルカラーがハンブロールと同じ14ml缶入りのエナメルカラーなのです!)をコリンスキーの000番筆を使って塗りました。理由ははみ出してもエナメルシンナーで下地を傷めずに拭き取れるからです。
このあと、シタデルカラーで服や武器・装備品を塗り分けますが、やはり水で2倍希釈して2度ずつ塗ります。こうすることで厚塗りを避け、同時にムラも抑えられます。
…っと、その前にDVDで色をよくチェックしないといけませんね。僕は当然劇場で2回観ましたが、細かい色味はさすがに忘れてしまったので。3時間の大作を数回見直すのは大変だけど、楽しい。5.1ドルビー・デジタルは自宅で聴いてもいい音で、英語版・ドイツ語版を交互に観たりして。ドイツ語版ではバギンズがボイトリンになっていてがっくりしましたが(そりゃ、どちらも「小さな袋」って意味は同じだけど固有名詞まで訳さなくてもねぇ)。しかし、カザド・デュムの石橋でバルログと対峙したガンダルフの名ゼリフ「きさまは通すことができぬ!」(瀬田訳版)は
「 Du kommst nicht vorbei! 」(ドゥー コムスト ニヒト フォアバイ!)となり、原作の 「 You
cannot pass.」よりずっと重厚で迫力があり、むしろ好きです。僕が日本語にするなら世代的にやはり「やらせはせんぞ!」かな?
いかん、いかん。すっかり脱線してしまいました。えぇと、基本色の塗装が終わったとこからでいいんですよね?ここから僕は、油絵の具でグラデを付けていきます。絵描き言葉では「調子を付ける」と言います。日本ではウィンザー&ニュートンを使用していたのですが、ここベルリンでは驚いたことにほとんど入手できません。画材店そのものは多数存在するのですが、ほとんどがリキテックス等のアクリルしか扱っておらず、たまに見かけるプロ用の店は粉末顔料の量り売り専門なので、自分でメディウムを調合して絵の具を手練りしなければなりません。むぅぅ…いや、これはこれで、楽しいかも?体質顔料(コストを下げる為にメーカーが絵の具に混入する、いわゆる増量剤のこと)や酸化防止の添加物を一切含まない、世界で唯一の工房ZEN 特製オリジナル・フレッシュを調合するとか…。今度、時間を見つけて手練り用の石板と練棒を買ってこようっと。
で、何の話でしたっけ?そう、油絵の具ですよ。結局チューブ入りの油絵の具を扱っている店を画廊の近くで見つけて、やっと一通りの色を購入しました。ターレンス製ですが、2種類あって、1つは「ヴァン・ゴッホ、スーパーファイン・クオリティ」もう1つは「レンブラント、アーチストクオリティ・エクストラファイン」なのですが、どちらも寡聞にして知りませんでした。同じ色で後者のほうが高価なので「そーか、ゴッホよりレンブラントの方がエライのか。」と思って、エライ方に決めました。
油絵の具をプラモデルやメタル・フィギュアの塗装に使用する場合の注意点とコツを少々書いておきましょうか。
本来、油絵の具はメディウムに含まれるポピーやリンシード等の植物性乾性油が酸化・重合することでガラス状の堅牢な塗膜を形成し、この塗膜層内の顔料粒子に光が乱反射して油絵特有の深みのある美しい発色が得られるのです。しかし同時に表面は光沢仕上げになるため、ミリタリー系の模型やリアルなフィギュアの塗装には、そのままでは使えません。また油の性質上、チューブから出した状態では厚塗りになり過ぎます。
そこで、どうするかというと、使う分だけ練り直すのです。まず絵の具のチューブから厚紙(ガンプラの箱でプリントされてない側なんかちょうど良い)の上に1回に使う分(耳掻き1杯でシタデルのヒューマノイド・サイズなら10体くらい塗れます)を出して、少し塗り広げます。厚紙が絵の具の油分をある程度吸ったら(大体1〜2分ですが、絵の具の油分含有量によって異なるので一概には言えません。ガビガビになるまで吸わせてはだめです。塗膜内部に乾性油が残らないと意味がありません。この辺はカンと経験です。)、顔料分をかき集めてプラ板上に移します。(僕はシタデルのブリスターを愛用していますが、油を吸わない硬い表面なら石板でもガラス板でも構いません。)ここでテレピンやペトロールなどの揮発性油(こうした油はほとんど揮発して乾燥後に残らないため表面はつや消しになります)を加えて使用目的にあわせた硬さに練り上げます(といっても爪楊枝で混ぜ合わせるだけですが)。専用の油が入手できない場合はタミヤのエナメルシンナーで代用できます。添加する油分が少なければ塗ったとき刷毛目が残るので、これを逆手にとって、細かい毛皮や木目の表現ができます。油を多めにしてトロトロに溶けば、インク・ウォッシュやスミ入れと同様の使い方ができます。グラデにちょうど良い硬さ、はこれまたカンと経験ですが、コーヒーミルクよりちょっと濃く、練り板を傾けても流れ出さない程度が一応の目安です。
また、チューブから出した時点で顔料粒子の不揃いやダマが残っている場合、これも練りの最中にツブしたり除去したりしておきます。光の反射を見ながら均質になるように練り、表面のテリが変わって美味しそうな色味になったら完了です。
こうしてできた色を基本色の上に乗せるのですが、最初にシャドー側の暗い色とハイライト側の明るい色を用意しておきます。そしてシャドー側に色をさしたら、乾いた筆でこれをハイライト側に刷くように伸ばしていきます。次にハイライト側に色を乗せ、同様に乾いた筆でシャドー側に刷いていきます。僕はシャドーとハイライト用にコリンスキーの0番、刷き伸ばし用に1番の計3本の筆を使用しています。これだけだとグラデのかかりが薄いので、表面乾燥後、もう一段暗い色と明るい色を使って同じ工程を繰り返します。こうすることで基本色を含めて5段階のグラデがかかることになるのです。これ、実は以前ホビージャパンから和訳が出たシェパード・ペイン氏の「ハウツービルド・ジオラマ」がタネ本なのですが、今では入手困難でしょうか?
以上がおおまかな理論です。これが実践となるとなかなか頭で考えたとおりにはいかないものでして…。今回は初めての絵の具に苦戦し、特にツヤのコントロールとチタニウム・ホワイトの扱いが今一つでした。アイボリーブラックに含まれた乾性油が予想外に多かったらしく、これを使ったメリー、サムのマント及びガンダルフのローブがまだテカテカ光ってます。半年後くらいにはもっと落ち着くと思うのですが。ランプブラックに切り替えてからは、色味は多少くすんだ感じになったもののツヤは消えてくれました。茶色部分の最も濃いシャドーやチェインメール等の金属の影がそうです。
ハイライトはチタニウムの着色力が非常に強力な為、少量で急激に白くトびます。シルバーホワイトなら半透明でもっと深みのあるハイライトがだせるのですが、鉛を含有することからどのメーカーでも生産中止なのだそうです。ホワイトメタルの粉末を練って自作しようかな?
あとは、この画像ではほとんど判別できませんが、レゴラスの弓と背中の矢筒の表面に固練りのライトオキサイド・レッドで刷毛目を利用した木目を入れています。
また、ボロミアの立派なヒゲとアラゴルンの無精ヒゲの違いも表現したつもりです。前者は生え際やエッジの陰影を際立たせてくっきり見せ、後者は境界をぼかしてあごの先は地肌が見えるくらい薄くしました。
それから、半透明色を薄溶きして塗り重ね、同じ基本色から違う色味を引き出す効果も多用しています。例えば、ガンダルフのローブと帽子の基本色はどちらもシタデルのフォートレス・グレーですが、ローブは黒と白でグラデをかけたのに対し、帽子はフタロシアニン・ブルーを1層かけた後、スカイブルーからホワイトまでグラデをつけました。
フロドのチョッキとジャケットも基本色は同じベスティアル・ブラウンですが、前者はローアンバー、後者はカーマインがかかっています。
ベースはまさにホワイト・ドワーフ準拠な仕上げです。上面をボーミット・ブラウン、サイドをベスティアル・ブラウンで塗った後、シーナリー・パウダーとサンドを蒔き、ブラウン・インクを流してスネークバイト・レザー、フォートレス・グレーでドライブラシ、最後にスタティック・グラスを植えて完成。
今回の目標は、第一に映画の印象を大切に、リアルに仕上げること、ただし黒・茶・グレーを使いすぎることで汚くならないよう、原色に近い色もポイント使用して全体が明るい雰囲気になるように気をつけること、だったのですがいかがでしょうか?
○最後におまけでダークエルフのスピアユニットについて

これも手法は「旅の仲間」と同じです。違うのはプラ製品なので、バリ取り後にシタデルのカオスブラック・スプレーを吹いた点。理由は強い光を当てても透けないようにするためと、黒下地からはじめる手法を使ったことがなかったので一度やってみたかったから!ただ、肌やローブなどは発色を良くするためにスカル・ホワイトを塗り重ねたので、黒は輪郭部分にしか残っていませんが。また、アーマーや槍の刃はガンメタルとミスリル・シルバーのドライブラシですが、チェインメールは違った効果を出したかったのでガンメタ後にシャドーからハイライトにかけてブルー、グリーン、イエローの各インクをこの順でウォッシュしたあとシルバーでフィニッシュしました。
他には吉本印としてシールドの周囲にチェック模様を入れたこと。これだけ厚みがあると何か描きこみたくなりません?
○さらに付け足し

「工房ZEN im Berlin」 始動!ということで工房主の近影も添付します。ダークエルフのシュバルツェ・ライター(英語版だとブラック・ライダー?それともダーク・ライダーでしょうか?)10騎を製作中なのですが、いかにも恣意的なポーズと妙にこぎれいな卓上、だいたいよそいきのジャケット着て作業なんてしません。これはあくまで撮影用です。
「旅の仲間」完成を機に部屋の大掃除を敢行し、卓上のパソゲーも処分し、邪魔な20インチモニターは脇に追いやって広々としたスペースにシタデルのペイント台を据えて道具から塗料までほとんどシタデルで統一したので、まさにGWの回し者さながらです。ただし接着剤はレベル、パテはミリプットですが。それからティッシュと綿棒はクリネックスとくれば、汚れ防止のために卓上に敷く古新聞は当然「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」でなければなりません。
このような高級感溢れる(?)環境で、こだわりの完成品を生み出していく予定ですので、請うご期待!