MFガイド 小物自作編

 

 今回の目的は「ゲーム用のアイテム作成」です。流用パーツなしでの完全自作、いわゆる「フルスクラッチ」に挑戦してみましょう。
 あ、難しく考えないでね。人間のように形態が複雑でなくとも、「机」、「扉」と分かればよいのですから。極端な話、アイコンのようなものですから、デッサンの狂いなどは二の次。ゲーム中に「それが何だか分かる」事が主目標。つまり、造形の基礎があれば誰でもできるわけです。ってことで上級編の中では最も簡単ではないかと思われまする。
 ですが、大抵の人はまず自分のMFの改造やら自作といった方が先で、アイテム類の作成というのはその後になりがちです。ま、MFそのものを楽しむ人はずいぶんいますが、ゲームに使う小物を自作しようという人はあんまりいないので当然ですが。流用は皆さん考えるみたいですがね、自作となるとあんまりやらないようです。

 でも、実はプラモ作成の技術があれば簡単に出来ることです。あまり難しい事ではありませんので、ぜひチャレンジしてみてください。そんじゃ、いつもどうりに論より実戦(!?)ってことで、早速本題に行きましょう。


何を作ろうかな?

 RPGでビジュアルダンジョンを行う場合、まずは冒険者のMFで隊列表示をするのが最初のステップ。ついでモンスターのMF(もしくは代用品のダイスやガシャポン)がそれに立ち向かいます。で、より本格派になるとフロアタイルを使用して移動、重量のルールを具現化するわけです。
 しかしながら、自称本格派、というグループでも大抵ここまで。この先の3D化、つまり壁や家具調度の類を立体で再現しようという人はあまりいません。ま、全部を3D化すると配置に時間がかかりすぎ、逆にセッションプレイング時間が減ってしまうので限度というものも必要です。どんな物があると便利ですかね? 短時間でできて、効果的なのがいいですよね。

 登場するキャラクター(モンスター含む)以外、まずどんなものがマーカーになっていると便利でしょうか。
 そうですね、移動する可能性のあるものや、距離に関するものでしょうか。移動する物は当然その正確な場所が分からないと困りますし、距離に関する物は到達時間、射程にからんでくるので視覚的に見えていると便利です。いちいち、「マスター、ここまでどれくらい?」と何度も聞かれては正直面倒ですし(面倒がっちゃいけないんですけどね、ホントは)。
 移動する物の代表例は馬車とか船です。ま、これだけ大きいとフロアタイルをその大きさに切って、ひっくり返しておけば代用になります。その上にMFが乗ったりしますから、安定性も考えると2Dの方が安全です。もっと小さい物、例えば浮遊する球体なんかだと、毎回セッションに出てくるわけではないので、ダイス等の代用品でいいでしょう。ま、それがキャンペーンアイテムでずっと出てくるのなら話は別ですが。そう、物ではないんですが、使い魔(ファミリア)なんかはMFがあった方が便利ですね。ま、これもキャラクターですから。
 また、本来移動するわけではないのですが、移動する可能性のあるものもあると便利です。例えば机や茂みですね。身を隠すのに使える物です。ま、ファイアーボールでどっかーん、と吹き飛ぶ可能性もあるので、これも「移動するアイテム」に含めておきましょう。
 距離に関する物の代表例は段差。崖や壁など、直接移動に時間がかかるものです。また沼地や底なし穴などもそうですね。こういったSLGで言うところのテラインエフェクト(地形効果)があるものは一目で分かった方がいいでしょう。

 こういったゲーム使用の便利さを目標にしますと、難関となるのが使い回し。同じ物が毎回出てくるわけではないので多少は変化できるようにしなくてはならないということです。
 「これは高さ10フィートで横幅40フィートの崖です」
 「ああ、いつものやつですね」
 「・・・・・」
 ってことになりますから。ま、あたしがお奨めするのはペーパークラフトですね。紙製ですからすぐに作れます。翌日のセッションのために作るってのも可能ですから。

 さて、以上の方向性とは別の方向性もあります。「便利さ重視」ではなく、「インパクト重視」です。
 やはり怪しげなゲートや鉄の大扉は目の前にどどーん、とあった方が迫力ありますし、ルーンサークル(魔法陣)もちゃんと置かれているとPの目に真剣味が増します。そういったインパクトを求めるにはシナリオ中にキーとなるアイテムや家具調度はあった方がリアリティを増すわけです。
 んじゃ、そんなインパクト重視の中から、定番アイテムの一つ、井戸を作ってみましょうか。
 ダンジョンへの入り口になったり、モンスター(特に幽体系)のうおうちだったり。回復の泉なんかでもいいです。特に迷路のようなダンジョンだと、良い目印になります。一度撤退してこれが置かれた部屋に戻ると、なんか安心したりしますね。見知った場所って感じがして。

よし、井戸を作ってみよう

 じゃアイテムは井戸に決まり。どんな使用法かはセッション毎に異なるので、あからさまにステレオタイプの「見るからに井戸」というのにしましょう。大きさはタイルに併せて2センチ角なり、1インチ角なりにすればいいのですが、今回はうちのフロアタイルに併せて2センチ角に入る物で。高さはまぁ、PCの膝とか腰程度ですか? 簡単に実寸大のラフスケッチを描いて考えてみましょう。使用時の強度もよく加味しましょうね。

 今回は以前平井が描いてくれたフロアタイル用の原画があったのでそれにしました。いかにも「井戸」って感じで好きなんです。ああ、絵描きがいるって幸せ。らくちんらくちん。
 でイラストができたら作成手順を考えます。
 一言で言えば、「どれだけ手を抜くか」です。
 粘土細工みたいなものですから、どんな方法でも形にはなるでしょう。ましてや自分のセッションに使うだけなら複製もいりません。だからほとんど制約はないんです。ただし、今回の目標は「魂の籠もった造形」ではなく、あくまで「ゲームが楽しくなる造形」です。あえて言いますと造形そのものは課程に過ぎません。それによってどこまでゲームが楽しくなるか。それが目標ですから。しかも、大抵こういったアイテムを作成するのはDM本人です。PCデータ管理、シナリオ作成、ワールド構築と、いくら時間があっても足りない状況ですから、いかに「手を抜いて」いかに「効果を出すか」という、コストパフォーマンスならぬ、「タイムパフォーマンス」が重要な要素になるんですね。
 最初にも書きましたが、アイテムはアイコン代わりです。デフォルメされていようが省略されていようが、それがそれだと分かればいいんです。で、2Dよりもインパクトのある3DになっていればOK! 井戸一つに一月かけてすごいのを作るより、ぱぱっと作っちゃってから、次は扉とか、生け垣とかを作った方が楽しいプレイングにつながります。
 実を言うとあたし自身原型師なんで、「手抜き」という言葉にすごい抵抗感があります。でも同時にゲーマーでもあるので、「モデラー」と「ゲーマー」のどっちよりの物かで考え方を180度変えることにしてます。
 んで、今回はゲーム用なので、どうやって簡略化するかを考えてみました。

骨組みの作成

 いつもながらエポパテで作るわけですが、実際にはパテだけでほとんどの形状が作れます。もちろん目に見える物なら、ですが。でも、全てパテですと時間もかかりますし、なかなか腕が必要です。井戸みたいな簡単な形状でも「円」にするのはかなり面倒な作業なんですよ。真円にする必要はありませんがね、やっぱり見た目が大きくゆがんでいるとさみしいでしょ?
 今回の形状は筒。これにあったものがあればどんどん流用しましょう。飲料のキャップなんかそれっぽいですね。材質が塩ビ系やABS等、そのままでは塗れないものでも、パテで覆ってしまえばOKですから。食いつきが多少悪くても、包んでしまえばいいんです。で、そういった流用品が見つからなかった場合、やっぱり基本はプラ板による骨組み作成でしょう。
 これは模型工作の基礎の基礎。プラ板とプラ棒で大まかな形を作り、それにパテで形状を乗せてゆく方法です。正確な形が出せますし、なにしろ中空にできるので、ムクになる全パテ製よりもだいぶ軽く、さらに丈夫にできます。接着もプラ用接着剤が使用できるのでとても便利です。プラ板で一枚数百円、プラ棒なら一本百円しませんから、模型店に行ったら一つづつでも買っておきましょう。
 さてプラ板。タミヤのが有名で代名詞と化してますが、他にもエバーグリーンの似たようなのがKYOSYOさんによって輸入されてます。今回は手軽に入手できるタミヤのプラバン。曲げやすさと強度から中間の0.5で行きます。まずは円筒にする治具を探しましょう。なんか直径1〜2センチ内で丈夫な筒状のは……と。ありました。あまりに当たり前すぎて忘れかけそうだったエグザクトの2番ナイフ。この柄がぴったりそう。プラバンは希望する高さに合わせて長方形に切っておきます。ついでに2番ナイフの柄のはじっこの円をプラ板に鉛筆で移しておいて「底」になる部分を切り出しておきます。あたしは強度を考慮して接合部(いわゆるノリシロ)を用意するので円形にとってがついたような形で切り出しました。

これが今回の材料一式。

まずは円形にしやすいように、一回、もっと細い軸線に巻き付けて巻きクセを付けておきます。これをやっておくと実作業が簡単になります。

とりあえず手近にあった家内のボールペンに巻きました。

で、クセが付いたら実際に治具に巻き付けてみます。

これも輪ゴムで仮固定するのですが、こういった「巻き作業」時でのコツは二つ。

一:輪ゴムは広げて止める
  一カ所に重圧がかからないようになるべく分散して固定する事
一:外側にカバーを付ける
  端がめくれ気味になるため、一回り大きいサイズのプラバンをさらに巻き付け、その上から型押しする感じで固定

 この二つをしておけばまず問題ありません。今回は巻き付けた段階で2ミリ程のノリシロを残してカット、接着力の強力な流し込み式接着剤で固定しました。ただ、この接着剤は流動性が高すぎて余計なところまで流れてしまう危険性があるので、普通のでも瞬着でもできます。で、その上に大きめのプラバンでカバーするのですが、接着剤がはみ出していると危険なので、一回ビニールで巻いてからカバーを巻いています。で、その後で輪ゴムで簀巻きの刑。
 一晩置いてからカバーを外し、むき出しにしてさらに半日。こうしないと接着剤のシンナー成分が抜けきらない可能性があるからです。さて、これで骨組みは完成。いよいよパテの出番です。

パテ盛り開始!

 まずは準備。骨組みをまた2番ナイフに差し、移動しないように両脇にプラバンを巻き付けて輪ゴムで止めます。きつめに挟んでおけば回転もしません。その状態で作業スペースを用意します。パテがこびりつかない物なら何でもOKです。今回は残ったプラバンをそのまま使ってます。よーくパテを練っておき、一時硬化の間に広げたスペースに水をまいておきます。

パテの量を目算し、盛りつけます。作業面の水滴、見えます?

 へらで大まかな円筒を作ったら、うどんを伸ばす要領でころころ転がし、平面を出します。完全な平面にしてもいいのですが、不細工なでこぼこの方が楽しいのであたしは大まかに平たくする程度で止めました。
 その後で左右に出っ張っちゃった部分を押し戻すなり、よく切れるナイフで切り出すなりして形状を出します。

こんな状態ね。

 まだパテはべとつくほどなので、さらにでこぼこ感を出すべく、小さなへらに水をたっぷりつけてからとんとんと不規則に叩き、へこみを作ってあります。

即座にモールド開始!

 あたしはさっさと愛用の歯科技工士用のスパチュラで彫刻を始めますが、慣れてないならまずは一周する横線を引いてから縦線を引くとずれが出ません。さらにまずは外周部分に縦線の入る大まかな位置を指定しておきます。二分割、四分割、八分割って言う感じで軸線方向から確認しながら軽くあたりを入れておくと、全体が平均的な大きさの煉瓦に見えます。

モールドを彫り込んだ影響で全体にゆがみが出ます。それを修正しましょう。

 斜めにならず、平行に転がせるように左右にブリッジを作っておきます。で、作業スペースにまた水をたっぷり付けてころころ……。
 かーるく転がすだけで十分でしょう。

で、こんな感じになりました。

 ついでに表面のざらつきを出すため、水を付けた耐水ペーパー(紙やすり)の上で転がすのも手です。荒目(木工用程度)の上で転がすと梨地状になります。

さらに彫り込み続行!

 さっきの段階でもOKなんですが、使い古した古井戸っぽさを出すためにさらにでこぼこを演出しました。ま、これは個人の自由ということで。

外周出来上がり!

 完全硬化を待ってはずしたもの。まだ内側は出来ていませんが、立派に「井戸」してます(よね?)。

 次いで内部。
 通常の井戸にするなら底面は特に必要ないかもしれません。このまま内側にパテを盛ってちょっと陰影を付けやすい様にでこぼこを加えればいいでしょう。
 ただし、今回の場合、ちょっと「お遊び」があるので底面が必要です。しかも中間に。この中間ってのがポイント。本当は水面は地面よりもさらに下なんで「底」は変なんですがね、色を塗りたいモンで。 

さっきの軸芯、2番ナイフに再び差し込み、動かない様に固定します。

 で、軸線(ナイフ)の底の位置を調節して底面用のプラバンをはめ込みます。底面ののりしろ部分を隙間に差し込んであるので微動だにしません。今回はすぐに作業に入りたいので瞬着で仮止めしました。ありがたいことにエグザクトナイフの端っこはアールがついているのでくっつく心配もなし。
 で、底面にパテを盛り、内側にもほんの少しだけ盛ってモールドを入れます。あたしは量産するので抜きの都合上面倒な横線を無視、縦線のみにしました。しかも外周は互い違いになってるのに、直線。端から徐々にモールドを浅くして底面部にはモールドなしにしてあります(型抜きしやすいからね)。

 で、出来たモンに色を付ければ完成です。あたしの場合、ここで製造担当の今野に原型を渡し、待つこと数日。出来てきたMFの表面を修正してサフェーサーを吹きました。


で、こんなん出来ました。隣のLV3は大きさ対比用。

 なんとかPC一人通れる程度の大きさかな。もう少し大きい方がリアルなんですが、これより大きいとタイルに入らないんで。
 ちなみにサフェーサー吹いただけなんですが、これにスミ入れするだけで井戸になりそう。

ま、そのままってのもなんだな、ってわけで塗ってみました。

ちなみに左が表、右が裏です。リバーシブルなのね。さっき書いた「中央の底板」の謎はこれで解けたでしょう。
片方を水があるように塗り、片方は空井戸用に真っ黒に塗ってあるんです。両方に使えて便利でしょ? ゲーム中。

 さて、後は使うだけです。以上で完成! お疲れさん!


終わりに

 今回の作業は乾燥時間を除いて準備も含め3時間くらいですね。簡単でしょ?
 わたしはMFにしちゃいましたが、個人で遊ぶためのアイテム作りなら、パテのままでもいいわけです。いろんな小物を作ってみるといいでしょう。造形の基礎はそういった積み重ねで養われていきますからね。

 では次回は、いよいよ究極のMFガイド、フィギュア自作編です。