MFガイド 接写編

 最近のカメラは非常に発達しており、写真撮影が本当に楽になりました。なにしろほとんどの作業がオートですから。でも、幾つか特殊な撮影シーンでは、思った様に撮れない場合があります。実は接写もその一つ。
 ここでは自分のMFを撮影したいという方への「接写方法」をご説明したいと思います。
 まずは、写真撮影の基礎知識編。通常のフィルム使用のカメラの仕組みや種類をご紹介します。あなたがデジカメしか持っていなくとも、必ず読んでおいてください。レンズを通して被写体の形を結像する以上、デジカメでも「被写界深度」「絞り込み」「露出補正」「パララックス」といった言葉なしに接写をこなすことはできませんから(逆にこれらの言葉にもう慣れ親しんでる人には、このページ、意味ないなぁ)。

 あ、そうだ、言っておかないと。ここでのカメラ、は基本的にフィルム使用のです。デジカメじゃないよ〜。


カメラは単なる箱

 ちょっとカメラ屋さんを覗いてみましょう。別に新宿に行かなくても、近所のカメラ屋さんでも、幾つものカメラが並んでいますね。フィルムの大きさや、メーカーなどで、数え上げたらきりがないほど、カメラはたくさんの種類があります。
 しかし、実はカメラは単なる箱に過ぎないんです。写真は被写体、フィルム、レンズ、シャッターと絞りで結果が決まります。カメラは被写体を除く各パーツを正確な位置に固定し、撮影者の意図に合わせてそれらを組み合わせる道具。結局は150年前、世界で初めて誕生した撮影機械、カメラオブスキュラと変わっていないんです。

これはライカの一型と呼ばれるものの一種。これにはレンズ取り付け部、フィルム配給装置とシャッター関連しか付いていません。ピント合わせの距離計も、露出計も、それどころかのぞくための窓(ファインダー)すらありません。かわりにカメラ上部にアクセサリーシュー(ストロボとかを付ける取り付け部ね)が二ヶ並んで付いているので、ここに好きなファインダーや距離計とか露出計とかを選んで装着します。
 でも、何もなくてもちゃんと撮影できます。カメラは箱にすぎませんから。


 というわけで、たくさんのカメラがあっても困る必要はありません。あなたが何を求めているか。それさえはっきり分かっていればいいんですから。しかも、それらはすべて、先ほど挙げた「フィルム」「レンズ」「シャッター」「絞り」に集約されますから、基本は簡単なんですよ。

シャッターと絞り

 写真撮影で一番大きな要素、それが「露光」シャッターと絞りの二つの要素でこの露光が決定されます。簡単にいいますと、シャッターはどれだけの時間、光を当てるかを決定し、絞りはどれだけの量を当てるかを決定します。シャッターは時間的量、絞りは面積的量。この両者が絡み合って、実際の光を捕らえるわけです。
 まず分かりやすいのはシャッターの「時間的量」でしょう。1/60秒とか、1/2000秒とか、どういう意味なのかは読めば分かるはずです。実際に二千分の一秒ってのがどんなのかはちょっと感覚では理解不能ですが、意味は分かりますね。ちなみに1秒というのは結構長い時間で、簡単に手ブレが起きてしまうほどです。一般的に手ブレが起きないのは1/60以下とか1/30以下だとか言われます。つまり、それより長いスローシャッターは三脚に乗せて撮影するということですね。


 一方、絞りはちょっと概念的に難しい存在です。外見からしますと、映画007のオープニングに出てくるような何枚もの板を重ねて円形を型どるものが絞り羽根。つまり、レンズの太さを一時的に細くする効果があります。

  

レンズの中に注目! 左から、絞り込んだ状態/中間/絞り解放

 この量の変化を「F値」というもので現します。F2.8とか、F8とかいう数値ですね。例えばレンズの説明で「50ミリF2.8」とか書いてあったら、そのレンズは開放F値(絞り羽根が出ていない状態)でF2.8の明るさがあるということです。F値というのは小さければ小さいだけ設計が難しいので高級品になります。ちなみに、F1というのが基本数値なんですが、これは本当に特殊なレンズでないとできない数字です。ライカとキャノンくらいからしか出てません。しかもカメラ本体が幾つか買える程のお値段。通常はF1.2が一番明るいレンズですね。AFレンズだと高級品でもF2とかF1.8くらいからでしょうか。ただ、ズームレンズだと設計思想が異なるので、F4とかF5.6といった暗めの開放F値のものが多いようです。まぁ、最近はその分、フィルムの性能が上がりましたから、それでも十分、通常撮影はできますが。

 さて、話し戻しまして、この「絞り」。これの役割をちゃんと理解するには実は光学的な基礎知識が必要です。光の屈折率とか、透過率とかいうジャンルですね。ここでは入門用ですからそういった部分ははぶきます。単に絞りを開放に(数字を小さく)すると絞り羽根が出てこない状態で、絞り込む(数字を大きくする)と、絞り羽根が大きく現れ、レンズの有効径を狭くするという点だけを覚えてください。
 言い換えますと、F値が小さいと光の量が増え、F値が大きいと減るというわけです。
 ちなみに絞り羽根、昔のカメラだと、数値を変えるとちゃんとせり出して来るのを確認できました。先ほどの写真のように眼で見えたんです。ところが一眼レフだとF値を変えても何も起きません。実は一眼レフの絞り羽根はシャッターが下りた瞬間にだけ動くようになっているからです。
 一眼レフはその名のとおり、フィルムに露光する「目」と、ファインダーから覗く先の「目」が一つに統一されています。

こういう感じで、普段は水色の位置にある鏡(ミラー)が光りを反射させ、上部にあるプリズムで覗く部分に光を通しています。

で、シャッターが切れた瞬間だけ、ミラーが跳ね上がり、紫色の部分にあるフィルムに光が直進するのです。

 昔は一眼レフでも、絞りを絞ると羽根が現れ、光量を減らしていました。でも、そうしますと絞りを絞れば絞るほど、どんどんファインダーの中が暗くなってしまったんですね。その結果、ピントが合わせづらくなってしまいました。そこで絞り羽根が瞬時に現れ、そして消えてゆく装置が開発されたのです。ですから、今の一眼レフでは絞りを動かしてもレンズ内に変化がないのが当然になっています。ちょっと前のカメラや、一眼レフ以外(ファインダーの窓がレンズとは別についているタイプ。大抵のコンパクトカメラがそうです)ではちゃんと絞りが動くのが見られます。

 露光量はシャッタースピードと絞り数値で決定されます。例えば1/60でF8という明るさがあったとします。これは露光量だけでいえば、シャッターを一段早くして(量を減らして)、絞りを1段開けた(量をふやした)もの、1/250でF4と同じです。つまり、シャッタースピードと絞り値という両者は歯車のようにかみ合っているんですね。
 ちなみに、絞り値とシャッタースピードは1/2段階刻みになっていますので、1段ズラす、というのは2目盛り分ずらすということです。ただし、最低(開放)や最高(絞込み)の数値はカメラなり、レンズなりの限界が個別にあるので、総てが1/2刻みではありませんので念のため。
 さて、露光量が同じなら、さらにずらして1/1000でF2というように極端にシャッタースピードを早くしておけば、飛んでいる鳥や、走っている車を瞬間的に固定することも可能。ですから、シャッタースピードを早くしたいのは良く分かります。でも、それは単に露光量だけの問題。さきほどの1/60&F8で撮った写真と、1/250&F4で撮った写真は出来上がりが異なるのです。もちろん動体を撮った場合、シャッタースピードを変えれば止まって見えたり、流れているように見えたりするので写真の仕上がりが異なるのは当然ですが、MFのように固定されている被写体でも違いが現れます。それはピントの出方です。
 簡単に言いますと、絞りが開放に近ければ(数値が小さくなれば)、ピントの合う幅が狭くなり、絞りを絞り込めば(数値を大きくすれば)ピントの幅が広がります。
 例えば観光地で友達の記念撮影をするとしましょう。友達の笑顔も大切な被写体ですが、バックにそびえる雄大な山もちゃんと写したいものです。ところが1/60&F16で撮った写真ではちゃんと両方ともくっきりと写っているのに、1/1000&F2で撮った写真では友達にしかピントが合っておらず、バックの山はぼんやりとピンぼけ状態。こんなことが起こるわけです。これは露光量は同じでも、ピントの合う幅が異なるために起きる現象です。レンズの焦点距離によって合う幅は異なりますが、概念的には下の図のように、絞りを大きくすればピントの合う距離が長くなる、と考えてください。


 このピントの幅を「被写界深度」といいます。ピントの合う幅を深さと表現しているわけです。つまり「被写界深度がすごく浅い」とは、ピントを合わせた一箇所のみがくっきりと写り、それ以外はぼやけるという意味。逆に「被写界深度がすごく深い」とは、距離に関係なく、写真全体にピントがあっているという状態を言うわけです。主題、たとえば女性の目にだけピントを与えたい場合には「浅い」状態がベスト。そこだけが浮き出るように見えますからね。逆に風景写真のように、近くにある木の枝と遠くにある城、そしてさらに遠くにある夕日の全部をはっきりと納めたい場合には「深い」状態にするわけです。



 単焦点系レンズでは鏡胴に深度指針が付いています。自動でピントを出すAFが主流になってからは省かれている場合がありますが、撮影者が自分でピントを合わせる際、この指針は重要な存在でした。
 写真左。一番下の32〜3.5が絞りリング。その上が深度指針です。で、その上がメートルとフォートでの距離指針。この場合、ピントは深度指針でのオレンジマークのとこ、つまり18メートルくらいのところにありますが、f32なら無限遠〜8メートルくらいまで合焦しており、f8なら15メートルから25メートルくらいまで合焦している、という意味です。つまりこのレンズの場合、右に絞りリングを回すと合焦幅が広がり、被写界進度が深くなる、というわけですね。
 写真中央はニコンの物。中央の銀色の帯に注目。絞り値と同じ色分けの線が入っているの、分かりますか? ニコンは絞り数値を色分けしてますが、それは被写界進度を確認しやすいようにという配慮なわけです。この場合、f22(オレンジ色)なら無限遠から0.38メートルまで(事実上写真全体に)ピントが合っている事になります。
 写真右のはライカの中望遠レンズ。一番上が絞りリング。一番下は深度指針ですね。望遠レンズだと距離が長くなるため、深度もかなり浅くなるのが分かるでしょう。逆に広角レンズだと簡単に深くできるわけです。
 一眼レフでは、シャッターを切った瞬間だけ、絞り羽根が動く、と先ほど書きましたが、実際に絞り羽根を動かすことでどこまでピントが合っているか見る事も可能です。入門用を除く、ほとんどの一眼レフでは絞りレバーなどと呼ばれる機構が付いており、絞り羽根を指定している狭さまで絞ることが可能です。ただし! 絞れば絞るだけ画像は暗くなり、肉眼ではさっぱり、になっちゃう場合が多いです。そこでこの被写界深度指針で、大体の合焦距離を知ることになります。

 ここらで簡単にシャッタースピードと絞り値の関係をまとめましょう。
 動体をちゃんと撮るためにはシャッタースピードを上げ、絞り値を小さくします。一方、ピントの合う幅を広げるためにはシャッタースピードを下げ、絞り値を大きくするというわけです。これを言い換えますと「被写界深度を浅くする」「深くする」というわけですね。
 さて、我らが愛するMF。この撮影にはスピードはあまり関係ありません。動きませんからね。大事なのは被写界深度を深くすることです。ましてや接写では被写界深度がもろに出ます。距離を離して撮影すれば、MF全体にピントを合わせることができます。でも、それではMFがちょこんと写っているだけ。接写すれば画面一杯に迫力あるMFを撮影できますが、ピントの合っているのはごく一部になってしまうのです。
 それを防ぐため、接写では可能な限り絞り込みます。F32など、そのレンズの限界まで絞り値を大きくすれば、それだけ被写界深度は深まりますから。でも、そうしますとシャッタースピードが極端に遅れます。2秒とか10秒とかになってしまうかも? 
 というわけで、接写には三脚など、カメラを固定するものが必要になってくるのです。
 また、色再現の問題で、数秒もの露光をしますと、実際の色とは変わってくる事が知られています。それを防ぐには新たな要素、つまりフィルムの感光能力が関わってきますが、それより簡単なのは、被写体を明るくすることです。明るければ明るいだけ、シャッタースピードが上がりますから。被写体の明るさを表す数値は「EV値」という単位で現します。この数値が大きければ大きいほど明るいというわけです。最近のカメラはマイナスEVという明るさ、というか「暗さ」でも写真が撮れるほど進化していますが、とにかく少しでも明るくすれば通常の写真に近くなりますので、できるかぎり明るい方がいいんです。
 で、第二の必需品がカラー撮影用のライトというわけです。ストロボで代用も可能ですが、ストロボ光はあまりに強力すぎ、変な所に影ができてしまったり、逆に真っ白に写ったりしますので、慣れないうちはライトで十分に照らしてあげた方が確実なのです。それにストロボ光は瞬間なので、出来上がりが予想しずらいものです。プロでもポラロイドなどを併用して確認するほどですから。でもライトなら見ている状態で写りますからこっちがお薦めです。けど、家庭用のライトなどは色温度の問題でオレンジ色っぽく写ってしまいます。また蛍光灯だと青っぽくなってしまいますので、本当はカラー写真用のライトが一番なんですが、500ワットのを2本使うと1キロワットにもなるので、あっけなくブレーカーが飛ぶかも? ご家庭の電気状態とよく相談して買ってくださいね。

フィルムの種類
 
 フィルムは写真そのものを記録する大事な部分。しかも、化学的な要素で光を固定しますので、実は写真世界全体で、一番変化しやすい部分です。化学の進歩による変化を一番受けやすいんですね。サイズ、撮影手法、感度といろいろな要素で決定されます。まずサイズでは現在、簡単に入手できるものはこの3種でしょう。

ブローニー版
35ミリ版(ライカ版)
APS

 この他にも、例えば110(ポケット)版、ミノックス版なども各種生産されていますが、これでMF撮影する人はあまりいないと思いますので先の三種を説明しましょう。

 まずブローニー版。120版とか220版とか呼ばれるタイプ。これはずいぶん昔からあるサイズですが、現在でも雑誌等、詳細な撮影には欠かせないもの。紙製の筒状になっており、巻取りながら使用します。様々なサイズの写真撮影に使えるので便利ですが、多分ご家庭には普及していないでしょう。結婚式での記念写真など、商業写真世界ではあたりまえで、これを使うのを「中版カメラ」と呼び、普通の35ミリ版を「小型カメラ」と呼んでいます。ま、ブローニーを使う人はここで扱うような入門レベルは卒業してると思いますので、簡単に紹介だけでおしまい。

35ミリ版 
 単に「フィルム」と聞いたとき、まず浮かぶのがコレでしょう。金属の筒に入っているアレです。もともと、このサイズはライカが採用したサイズです。ライカの開発者、バルナック氏が、山歩きや散歩に持ち運べる超小型(当時)のカメラが欲しくなり、映画用のフィルムを転用し、映画の1フレーム(コマ)を2つつなげて、このサイズを決めたと言われています。つまり、最初は映画用フィルムの転用だったんです。後にドイツコダック社が自社カメラ「レチナ」の普及を目指し、筒状のケース(パトローネ)に入れたフィルムを売り出してから、簡単に買えるようになりました。感度など種類が豊富で、さまざまな撮影現場に対応しているのが魅力。

APS
 アドバンスト・フォト・システム。略してAPS。写真技術、特にフィルムの発達は、今までの35ミリ版よりもずっと小さい面積で、同等の情報量を収められるようになりました。そこで、それに合わせて、フィルム業界の数社が提唱、スタートしたシステムです。ま、LDがDVDになったみたいな感じですかね。
 小さいながら、その写りは大した物です。しかし、初級レベルのカメラが多く、簡単なメモ程度には十分ですが、雑誌掲載レベルになると、ちょっと大変。いつでも持ち歩けるメモカメラ的に使用されています。それを反映してか、APSフィルムも簡単な撮影用のものにさらに集中。接写など特殊撮影用のものはあまりありません。もちろん、これでMFをきれいに写せる機種もあるのですが、あまり一般的ではないので、結果として手軽に、なおかつちゃんとMFを写すフィルムとなると、35ミリ版が主力でしょう。

ネガVSポジ

 今度はフィルムの大きさではなく、その種類の区分。
 フィルム上の色が反転しているのはご存知ですね? 特にモノクロフィルムでは一目で分かります。白黒反転してるわけです。
 写真を印画紙に焼き付けるとき、フィルムを通した光を印画紙に感光させますが、印画紙はもともと真っ白です。光が当たった所が化学反応を起こし、黒くなるのです。フィルム上で黒い部分はあまり光を通しません。結果、白のまま残るわけです。逆にフィルム上で白っぽい所は光をたくさん通しますので、結果印画紙上で黒くなるのですね。
 というわけで、フィルム面では光の量に合わせて反転した色になっています。こういう通常のフィルムを「ネガフィルム」といいます。ネガティブのネガですね。この方法は簡単に色を写し取れるので、普通フィルムと言えばネガを指すほどです。
 これに対して、「ポジ」、ポジティブのポジですね、この名のフィルムもあります。これは印画紙上に焼き付けるものではなく、スライド写真のように、直接通った光を見ることに多用されます。映画などが代表例ですね。フィルム上で、実際の色と同じだったら、それはポジです。
 印画紙に写すことも可能ですが、ダイレクトプリントという技法になり、ずいぶん高くつきます。基本的には直接目で見るためのフィルムです。
 このポジはサービス版に焼きましてみんなに配る、という使用法には向きません。しかし、量産向きがマイナスな分、プラス要素もあります。それは「色再現」です。ポジは基本として実際の色を忠実に再現しやすいので、微妙な赤のグラデ、繊細なタッチの表面仕上げといったものを正確に写し取る能力は、ネガの追従を許しません。そのため、雑誌撮影などではポジが主力で、ネガは取材といった用途以外ではほとんど使用されません。それだけ色再現が信頼されているわけです。
 しかし、正確に写す、ということは、正確でない場合はうまく写らないという意味でもあります。確かに、ぴったりと露光があっているポジは、同様にしっかりと露光があっているネガよりもずいぶん綺麗に写ります。しかし、逆に多少ずれた露光の場合、ポジでは全然だめでも、ネガならそこそこ見れます。ま、極端に言いきってしまうと、ポジはカメラマンの腕がモノをいい、ネガは結構アバウト、ってところですね。
 ではどうしてポジは正確さを要求されるのでしょうか。それには幾つか要因がありますが、一番大きいのは「ラチチュード」の差でしょう。

ラチチュード

 あなたが地下鉄の改札口を出て薄暗い階段を上がっていたとしましょう。踊り場を曲がると、階段の上にさんさんと陽光のさす地上があり、そこで一瞬目がくらんだような気がします。でもそれはほんの一瞬。すぐに回りの階段の様子、そして外の青空、さらに道路の向かい側にある、ビルの屋上についている看板まで見ることができます。
 ごく自然な光景。のはずなんですが、これがカメラだったらそうはいきません。踊り場に三脚を構えて何枚か写真を撮ってみたとしましょう。階段の内部に露光を合わせた場合、外の看板は文字が読めないほど白っぽくなり、陽光さす青空など、青どころか「真っ白」。まったくお話にならない結果になります。逆に青空に露光を合わせると、今度は看板は暗くて外見しか分からず、階段内部に至っては「真っ黒」。これもお話になりません。
 今度は看板に露光をあわせてみましょう。青空はなんとか青くは見えますが、やはり白っぽいことには変わりありません。階段も段くらいは認識できますが、壁のタイルなどは黒っぽくてよく見えません。
 どこに露光を合わせたかによって、写る場所と写らない場所が出てきてしまうんですね。他の例を挙げると、確かに見えていたのに、写真にしたら逆光で友達の顔が真っ黒。こんなことありませんでした? それは光があたっている部分に合わせて露光してしまったからです。
 人間の眼。これはじつにすごいものです。瞳はどんな高級カメラでもかなわないほどの「絞り」を有しています。瞬時に絞りを入れ替えるんですね。猫の目が明るい所だと絞り込まれた状態で、暗いと開放絞り、ってのと同じです。しかも脳もあります。先ほどの例ですと、まずあなたの目は今までいた階段の周囲に合わせて露光していますから、その明るさに沿って情報が記憶されます。ついで瞳孔が開き始め、看板に露光が合うとそれを記憶、最後に陽光に合った状態でも記録。そしてこの三種の映像を合成して認識させるわけです。これは瞬間的な光を写し取る静止写真ではかなわないこと。瞳並みの性能のデジカメと、脳並みのコンピューターをつなげてCGでやればなんとかなるかもしれませんがね。
 この問題を静止画像で解決するには、フィルム上の場所ごとに露光を変えるという方法はありますが、これはデジタルならぬ、アナログではちょっと無理。最後の手段は合成となるわけです。映画でもCG合成がまだ一般的でなかった頃、例えばオーソン・ウェルズ監督が画面全体にピントを合わせることに躍起になり、被写界深度を深くすべく、出演者全員がライトで汗だくになりながら撮影したという「市民ケーン」。これでさえ客席を見下ろす天井桟敷からのショットなど、桟敷のフィルムと客席のフィルムを一枚の写真にし、それを連続して両方にピントと露出を合わせています。こういった手の込んだ方法ならなんとかなりますが、通常ではほぼ無理と言っていいでしょう。
 そこでもう一方の解決策が、フィルム面で記録できる光の幅、というか量を増やせばいい、という考え方です。つまり、さっきの例ですと、中間の明るさの看板。ここへ露光を合わせても、青空が白として認識されず、「まだ純白じゃないよ」とばかりにフィルムが余裕を持てばいいんですね。階段も同様。「この程度の暗さじゃ、真っ暗とはいえないね」って感じで色を再現する幅が広ければいいんです。この幅を色再現要素、「ラチチュード」と言います。
 言いかえれば、「ラチチュードが広い」とは、光の多い、少ないをより広く受け止めることができ、「狭い」とはごく一部の色のみに対応し、それより明るいと「白」、暗いと「黒」として写ることになります。

 もうお分かりですね。ネガはラチチュードが広いんです。ですから、多少露光がズレても、なんとかそれっぽく見えるんですね。逆にポジはラチチュードがずいぶん狭いんです。そのため、露光にはとってもシビア。ほんの少し、光が少なかっただけで暗く写り、多すぎると真っ白になってしまうんですね。もちろんドンピシャの露光なら、すごく綺麗です。フィルムの全能力をそこにつぎ込んで写すわけですから。この特性から見ても、ネガが一般的なのはお分かりいただけるでしょう。

 写真用フィルムにはこのネガ、ポジといった種類分け以外に光源に対応している種類分けなど、いろんなものがあります。有名なところでは赤外線フィルム。暗視用のアレです。ま、これはずいぶん特殊ですが、他にもタングステン用とかがあります。日本のほとんどのフィルムが「デイライト用」から発達しています。日本での室内撮影は大抵の場合蛍光灯下で行われますので、その状態で撮影すると色温度が原因で微妙に色が異なります。ポジの場合、これは致命的なんですが、ネガの場合にはフィルムの進歩のおかげと、焼き付け時の「暗室作業」で大抵なんとかなってしまいます。補正というのをかけますと、それらしい色になるんですね。同時プリントを頼むと、大抵の場合、現像するラボの側で自動的に補正して仕上がってくるほど一般的です。
 ちなみにヨーロッパでは使用光源の温度が異なるので、日本から持っていったフィルムが、ドイツでは「?」な色に仕上がることもあります。ちゃんとそれ用のフィルムも日本で売ってるんですが、すっかり忘れて愛用のフィルムをまとめて持っていっちゃったんですねぇ。おばか。
 ま、あなたが通常のカラー写真撮影用ライトを使うとか、デイライト、つまり屋外で陽光頼りにするといった場合には別に普通のでかまいません。ただ、ポジフィルムには光源を限定するものもありますので、一応店員さんに尋ねた方がいいでしょう。

フィルムの感度

 フィルムには感度で400とか、100とかの種類があります。これらはかつてはASAという単位を使いましたが、現在はISOという単位を使います。どちも同じ数値になりますので、両方混在している観がありますが、正式にはISOを使います。あたしなどは未だに「ASA感度」略して「アサカン」と言ってしまいますが。
 で、この数値、大きい方が感度が敏感です。100よりも200の方が暗い所でも速いシャッターが切れ、それよりも400、1600というようにどんどん高感度になってゆきます。先ほど、シャッタースピードと絞りが歯車のようにかみ合っている、という話しをしましたが、実際にはそれプラスこのISO感度がかみ合っています。ISO100のフィルムで1/60&F8という明るさがあったとします。ISO400のフィルムなら、1段階可変できますので、シャッターを1/250にするか、あるいは絞りをF32にする等の組み合わせを選択できます。まぁ、フィルムは一度入れたら普通は交換できないので、撮影状態に合わせて最初に選ぶことになります。ですから、実際の撮影時にはほぼシャッタースピードとF値のみで露出を決定すると言っても過言ではありません。ただし、専門的には意図的にISO感度設定を狂わしたり、感度を仮想的に上げて現像したり(増感といいます)することも、写真世界では一般化したテクですが。
 さて、この感度。もちろん数値が高い方がシャッタースピードが上がるので便利に見えます。しかし、実際には感度が上がっている分、写真の質は下がっているのです。フィルムの面積は同じですから、感度が低い、言いかえればゆっくりと反応する方が、微妙な色彩変化に対応できるんですね。大きな写真店なら、多分ISO「3200」というような特殊フィルムも売っているでしょう。これなら室内でも手持ち撮影可能ですから、ストロボも三脚もいりません。でも実際にこれで撮ると、まるで点画のように見えるんですね。サービス版程度ならなんとかなりますが、大きく引き伸ばすとハッキリと分かります。この状態を「粒子が荒れる」というような表現で現します。つまり、反応速度を上げるため、フィルム面の粒子を大きくしてあるという感じです。これでは折角塗ったMFがよく見えません。
 では逆に遅い方はどうでしょうか。ISO「6」というようなコピー専用のフィルムも売っているはずです。これは絵画とか書類とかをコピーするためのフィルムで、かなり詳細な部分まで、つぶれずに残せます。でも、その分シャッタースピードは・・・。
 よく映画でスパイがミノックスタイプ(横長で細い、極小カメラ)で機密書類をパチパチ撮ってますが、あれじゃ、何が写ってるかすら分からないのが真実です。考証にこだわっている映画では、スパイ役の主人公が書類を明かりの下に伸ばし、持参したコピー用の引き伸ばし式4脚で撮ったりしていますが、それでも文字が判別できる程度です。ま、ISO6とか25なんていったら、よっぽどライティングシステムを完備したスタジオ用になってしまいますね。
 「中庸が肝心」というわけで、一般的にはISO100、200、400程度がフィルムの主力です。100だと色再現に優れ、200は可もなし不可もなしの万能、400がスピード重視、というような宣伝がされています。一昔前、400なんていったら雑誌などではまず使い物にならない粒子の荒れ方でしたが、この10年、フィルムの進歩は目覚しく、ポジなら400でも十分に誌面を飾れます。まぁ、ライトが用意できるなら100をお奨めしますが。ちなみにあたしはずっと400を愛用していますが、あくまでポジ、しかも雑誌では小さく写る中間説明写真程度だからです。ずいぶんフィルムもよくなりましたが、未だにネガで400はちょっと使わないですね。でもメモ用に持ち歩いているAPSカメラはいつも400のネガです。ストロボなしで室内でも撮れますからね。ま、要は使用方法でしょう。
 昔、「無題」というMFのコーナーを雑誌で連載していましたが、あの写真はほとんど全部あたしが撮影していました。その時にはポジフィルム、コダックのエクタクローム100が主力でしたか。時には64のも使用していましたね。もちろん色再現重視だったからです。おかげでライトが4,5本必要で、設置するだけでも大変。夏場など、汗だくで撮影してましたっけ。そのうちストロボ間接光を利用し始めたほどです。
 ま、統括しますと、サービスサイズ程度なら100から400までならOKということです。MF撮影にはできれば100を奨めたいんですが、ライト使用が前提になってしまいますね。

 とまぁ、こんなところがフィルムの話しですね。サイズ、種類、感度といった主要素で決定されるわけです。専門的には「あのメーカーのは赤みが強い」とか、「切れがいい」とかいろいろ言われています。「アグファのしか使わない」とか、メーカーで分類する方法もあるんですが、雑誌掲載とか、新聞サイズまで大きく引き伸ばすとか言うんじゃない限り、好きなのを使っていいと思います。これも筆や塗料と同じでね、使っているうちに自分の好みが分かりますから。んで、いろんな好みの人がいるんで、たくさんのフィルムメーカーがいろんなのを出しているわけですからね。最初は近くの店でいつも買えるのを選ぶのが一番いいと思いますよ。フィルムは生ものです。使用期限がありますからね。なので、普通に売ってるフィルム買った方が新しい物の可能性大。

 ここまでで、露光については大体説明しました。「シャッタースピード」「絞り」「ISO感度」「フィルム」、そして被写体の明るさで露光は決定されるわけです。しかも、それらは全てがかみ合っており、何かを重視すると、別の何かが損なわれてしまうという、秤りのような微妙なバランスであることがご理解いただけたでしょうか。
 では、いよいよカメラ本体についてです。

カメラの種類

 カメラは単なる箱にすぎません。しかし、それなのに何と種類が多いことか! もちろん、それぞれ何らかの理由があって分岐していったわけですから、まずはその原因から全体像を割り出してみましょう。

 写真機発展の歴史ではいくつかの軸があります。細かく言い出すと切りがないので、今からMF撮影を始めるのに必要なところだけ挙げますと、まず「露出決定」に関するもの。シャッターと絞りがここに関わります。一番大事な部分ですね。次が「ファインダー」関連。覗く所(眼に接するので「接眼部」といいます)とレンズの関係ですね。ついで自動化の関係。オートフォーカスなどが代表例です。他にもフィルム平坦度とか配給システムとか小型化とかいろいろあるんですが、ま、それは写真の本でも読んでください。ここまでの知識があれば、「何書いてあるんだかワカンナイ」ってことはないでしょうから。

露出に関する違い

 シャッターは普段フィルム面を覆っていて、瞬間的に光を通すもの。このやり方にもフォーカルプレーンシャッターとか、レンズシャッターとかがあります。前者は幕のようなものを横なり縦なりに走らせるタイプ。前幕と後幕の二種を微妙にずらして走らせ、その隙間から露光するのが一般的です。金属製とか布とか、いろいろありますが、一眼レフはほとんどがコレ。この利点はフィルムの寸前で幕をかけてあるので、光がカメラ内部に入ってもOKなこと。つまりレンズを外す事のある、レンズ交換式のカメラには最適というわけです。
 一方、レンズシャッターはボディ側ではなく、レンズ側にシャッターがあるもの。絞り羽根のそばにもう一種羽根を用意し、それを開くことでフィルムに露光します。この利点は設計が簡単で耐久性に優れていることと、円形にシャッターが動くので、露光が均一になることです。欠点はレンズとフィルムとの間に「壁」がないため、ファインダーが別位置にあること。そしてそのままではレンズを外せないこと、ですね。
 よく、テレビ画面を一眼レフで写すと、縞模様が写ることが知られています。これはブラウン管に走る走査線が、フォーカルプレーンシャッターの幕の隙間と干渉してできるもの。言いかえれば、隙間ではなく、全面に光をあてるレンズシャッター式はブラウン管撮影向きということでもあります。あたしはブラウン管撮影専用に「コンタフレックス」という昔のカメラを用意しています。これは撮影途中でフィルム交換できたり、レンズ交換できたりと、昔の廉価版カメラとしてはなかなか凝ったもの。これを愛用しているのは1眼レフなのに、レンズシャッターだからです。ブラウン管を接写するのに最適なんですね。それ以外にもストロボ光など、瞬間的な光源にもレンズシャッターの利点が生きてきます。
 レンズにシャッターがついているということは、レンズそのものがフィルムの蓋を兼ねているということ。そのため、この方式のままではレンズ交換ができません。ですから、一部のプロ用カメラなどではレンズ交換時、フィルムの前にカバー代わりの板(遮蔽板)を差し込んだりして解決しています。この板をはめないとレンズが外れず、逆に差し込んだままだとシャッターが切れないという構造のものがほとんどですから、ミスはないでしょうが。
 なにもそこまでしなくとも、フォーカルプレーンにすれば、と思うかもしれませんが、レンズシャッターには、それだけの利点があるということです。

 一方、絞りは基本的に1種類です。なかには2重構造になっていて、中心にレンズシャッターがあったりする、構造上の違いは若干ありますが、基本的には同一と考えていいでしょう。ただし、どうやって光の量を調節するかという具体的なところはレンズによってかなり違います。大抵は何枚かの薄い板を組み合わせ、円形に近い状態にして絞り込みます。その絞り板(幕)が多いと円形に近くなり、少ないと角張ったりします。コンパクトカメラの中には、小型化&軽量化のために絞り羽根が2枚しかなかったりするものもありますので、絞り込むと妙な仕上がりになったりするものもあるようです。ま、これも逆光でないならあまり問題ありませんが。

 露出が合っているか否かを知るには露出計が一番便利です。カメラが誕生した頃、撮影者は別に露出計を持ち歩いていたものですが、そのうちカメラにくっつくようになります。でも、単にくっついているだけで、その数値を読み取って、絞り目盛りとシャッタースピード目盛りを動かしていたんですね。これを非連動露出計とか、単独露出計内蔵とかいいます。

戦前のドイツ高級カメラを代表する銘機、プロミネント。戦艦についているような距離計が上部で左右に延び、レンズに連動。さらに光学式露出計付きという当時の「夢のカメラ」。でも露出計は「付いている」だけです。こう言うのを単独露出計内蔵といいます。ちなみに左の写真はレンズ等をたたんでしまった状態です。



こちらはぐぐっと年代が下がって、ハーフ版の大ブームを作ったオリンパスのペンシリーズの一つ、ペンD(初代)。大口径F1.9レンズ付きでハイアマチュア向き。レンズのすぐ上の蜂の巣状のでこぼこ部が、当時主流だったセレン光電管式露出計の受光部。



でも、これも「付いている」だけ。しかしながら、設計には凝りまくったこのカメラ、すごく便利にできています。露出計の窓から被写体の明るさを読みとり、その数値にあうように絞りとシャッタースピードを調節するのが基本ですが、このカメラでは「2」の場所にある小窓に「1」の数値を合わせるだけでOK。
 これをカメラが歯車なり、バーなりで連携させるようになると「露出計連動」になるんですね。絞りかシャッタースピードを動かすと、それに合わせて露出計の針が移動するものです。便利になりましたね。でも、まだその時代、レンズと露出計の「目」は別の場所にあったので、レンズにフィルターをかけたりすると、折角の連動露出も狂ってしまうことが多々ありました。そのために露出計の目をレンズのすぐ上(フィルター口径の中)に付けるなどの工夫を各社こらしていたのです。


 それを根本的に解決したのがTTL。聞いたことあるでしょ? TTL、スルー・ザ・レンズ、つまりレンズを通して露出を計るという仕組みです。露出計の目をレンズの中、フィルムのそばに仕込んでしまったんですね。こうして、レンズの露出と、露出計の露出は完全に一体化しました。さらに進んで、フィルム面から反射する光をとらえることで、シャッターが降りている、いわば露光している瞬間の露出を計る「ダイレクト測光」にまで発展しています。これならストロボ光の明るさにも対応できるわけです。


 ただし、TTLにも意外な欠点があります。それは接眼窓からの光も計算しちゃうこと。接写の場合、ケーブルレリーズ(写真屋さんが手にしている、紐のようなシャッター延長コードね)やセルフタイマーを使用することが多いのですが、これだとアイピース(接眼窓)を覗いていない状態です。普通は撮影者の頭の影になるので関係ないんですが、覗いていない間は、ここからも光が入り、中の露出に影響します。特に接写の場合、撮影者の頭上後方からトップライト(主光源)をあてることが多いので、もろに光が進入しやすいのです。これを防ぐにはアイピースにゴム製の覆いを付けるか、いっそのことピントを合わせたらミラーを上げてしまうことです。初級機以外、たいていの1眼レフには「ミラーアップ」という機能があります。これをしておくと、シャッターレリーズ時の衝撃も減るので一石二鳥。なお、高級1眼レフには、ちゃんと「アイピースシャッター」という、接眼部を閉じる機能がついているものもあります。(写真右の赤いのがそれね)

 もちろん、レンジファインダーやコンパクトカメラには関係ありません。あくまでTTL1眼レフだけの問題です。

ファインダー関係による違い

 さて、話変わってファインダー。本来、カメラはレンズが付いているだけで撮影できます。でもそれじゃ、どこが写っているのか分からない。ということでファインダーが登場するわけですね。初期の頃は単なる筒がちょこんと付いていたり、四角い針金で撮影予定方向に見当をつけたり、小さなプリズムがレンズの脇に付いていて、これを上からのぞいたりしてました。ファインダーを昔「見当器」と訳していたのは名訳ですね。目見当くらいにおおらかだったわけです。

 


 ファインダーの付きかたでカメラ自体の形態が変わったのは、有名なローライフレックス系からでしょうか。撮影レンズの上にファインダー用のレンズを付け、上からのぞくタイプ、いわゆる二眼です。この上部のレンズ部にはミラーが組み込んであり、逆像ながら、撮影レンズとほぼ同じ光景が見れる、素晴らしいカメラです。前から見ますと、二つのレンズが上下に並んでおり、内部に反射版機能、つまりレフレックス機能があるので「2眼レフ」というわけです。
 ついで主流になるのがコンタックス、ライカといった高級コンパクトカメラ(当時はブローニー版が通常のカメラで、35ミリ版はコンパクトカメラだったんです)。特に距離計を組み込み、ピントがあっているかどうかを即座に分からせる、レンジファインダー機、つまり「距離計連動機」が出てから、単なる携帯用カメラから、写真業界の主役に踊り出ます。それまでは目測か、別に距離計を持ち歩き、その数値を移していたんですから、距離計連動機の発明がいかにすごかったかが分かるでしょう。


 写真はミノルタがライツ社から正規に許可を得て作った「和製ライカ」CLE(まぁ、あたしは勝手に色塗り替えちゃってますが、本来は真っ黒なカメラです)。上部にある三つの「窓」のうち、向かって右の一番大きいのが実際にのぞいている窓。真ん中が明かり取り用。ここから入った光が中の表示部の文字や線をくっきりと浮かび上がらせます。そして一番左の小さいのが距離計用の測距窓。左右の窓が離れているので、人間の眼のように距離を算出できます。もちろん連動。ちなみにこのカメラはTTLの自動露出。で、もひとつちなみに、天辺についている「筒」は差込み式の単独ファインダー。


 ついで登場するのがいよいよ一眼レフ。はじめは2眼レフの反射版を、撮影時に移動して、その後ろにあるシャッターへと光を送るというような形態でした。でも、そうしますと、一枚撮ると、接眼レンズ内の光景は真っ黒。で、ミラーをまた動かして、やっと前が見えると言うものでした。でも、この方式なら、距離計連動なんて面倒なことは必要ありません。だって、本当に見ているんですからね。ミラーを自動的に、しかも即座に元の位置に戻す、「クィックリターンミラー」とか、さらには絞り込むと暗くなってしまうのを防ぐための工夫等が次々と開発され、現在に至っています。

 技術が進むと、結果として昔に戻る部分もあります。最近のコンパクトカメラは全てカメラ任せのため、人間は素通しファインダーをのぞくだけ、ってのも多いんです。「見当器」の時代に戻ったみたいでなんか、おかしいですよね。
 写真の「ニコンミニ」では上部に幾つもの小さい「窓」が見えますが、人間がのぞくのは一カ所だけ。後はカメラの自動露出用とオートフォーカス用です。つまり、結局昔の素通しファインダーに戻ってるわけです。撮影者が長年培ってきたカンが頼りだった昔。そして全てがカメラにお任せの今。人の眼だけは同じものを見ています。




自動化に関する違い

 現在のカメラはほとんどがシャッター、正確にはレリーズを押すだけでちゃんと写真が撮れます。自動化のおかげですね。で、この自動化、大きく分けるとこうなります。

フィルム配給の自動化(AW)
露出の自動化(AE)
ピントの自動化(AF)

 フィルム配給のことをワインディングといいます。巻き戻しはリワインディングね。この自動化は実は一番早く実現していました。ゼンマイを中に仕込み、その力でフィルムを1枚、1枚送るのです。後にこれがモーターに変わったわけですね。もちろん、現在でも外付けで自動化するワインダーやモータードライブ、略してモードラもありますが。ちなみにワインダーはシャッターが切れると次のフィルムを用意するもの。モードラはその機能+連写ができるもの、といった区分けになっています。ま、最近はプロ向き1眼レフでも、モードラ内臓がほとんどですが。
 AE、つまりオート・エクスプロージャー(自動露出)もずいぶん前から実用化されていました。リコーオートハーフとか、覚えています? タバコの箱くらいのかわいいカメラで、下部に大きなダイヤルがあり、これで内部のゼンマイを巻くことで、何枚か撮れるAW機能がついており、さらにレンズをぐるっと取り巻くセレン光電管で露出を調べ、それに絞りを自動的に同調させるという、当時としては本当に「全自動化」カメラでした。
 このAEは、単に被写体の明るさを調べ、それによって設定された絞りなり、シャッタースピードなりに合わせるものです。この両者はかみ合っていますので、カメラによっては絞りのみを人間が決めるとシャッタースピードをカメラが勝手に決めてくれる、「絞り優先」と、その逆に絞りをカメラ側がコントロールする「シャッタースピード優先」がありました。この両者でも、結局は人間がどちらかをコントロールする必要があったのです。これを完全に自動化したのが「プログラムAE」。被写体の明るさに合わせて、最初からシャッタースピードと絞りをプログラム化して登録してあり、レンズを被写体に向けるだけで露出が決定するという便利ものでした。現在のコンパクトカメラはほとんどがこのプログラムAEタイプです。しかも、室内などの暗い状態、つまり低輝度ではシャッタースピードを下げるように、逆に高輝度状態では上げるようにといった指示まで自動化されています。
 また、一部の機種では決定された露出値を撮影者が動かせるものもあります。先に述べたとおり、シャッタースピードと絞りは相関関係にありますので、1/60&F8を1/250&F4に動かす、つまりシフトさせることもできるということです。これをプログラムシフトと呼びます。これによって、同じ露光値ながらも、撮影者の意図に合わせ、被写界深度をコントロールできるというわけです。

 近年になってようやく実用化されたのがAF。オート・フォーカスですね。一方、人間が自力でフォーカスリング、つまりピント環を回すことをMF、マニュアル・フォーカスと呼びます。(でも、MFじゃ、メタルフィギュアとまぎらわしいんで、マニュアルフォーカスはmfと書きますね、これから)
 オートフォーカスを本格的に実用化したのが、懐かしい「ジャスピンコニカ」。「ジャストのピントが自動で出る小西六(メーカー名。現コニカ)のカメラ」の略です。すごいネーミングですね。まぁ、「ライカ」ってのも「ライツ社のカメラ」の略ですから、こういった呼称はよくありますが、それにしてもすごい名前です。ここのカメラは「ピッカリコニカ」とか「ビッグミニ」「現場監督」「KANPAI」などなど、個性的なのが多いんで好きです、あたしゃ。
 AFにもいろいろな方法があるのですが、基本として赤外線なり音波なりを出して、その反射を読んで距離を測る、レーダー式(こうもり式?)のと、実際にカメラに向かってくる映像を分割し、その差を出して距離を測る光学式が主流です。
 こうしてカメラは本当に全自動になったわけです。ま、実はまだ改良の余地はあるんですが、現在では自動化はこの辺までですね。

カメラの分類

 ここまでの、「露出」、「ファインダー」、「自動化」の違いを様々に組み合わせて各種のカメラが作られています。

これは1954年に登場したフォクトレンダーの「ビトーB」。当時の技術で可能な限り小さく作ったコンパクトカメラでした。いぶし銀と黒のコントラストや流線型のボディなど特徴がありますが、特にあちこちに小型化のための創意工夫が凝らしてあり、からくり箱のようなカメラです。
もしこれがプラ製で黒かったら、今のコンパクトカメラみたいでしょ。これに電子技術が加わっただけで、カメラそのものはあんまり代わってないのが分かります。

ここまでの説明を読めば分かると思いますが、これはのぞき窓式のファインダーのみで、距離計も露出計もないシンプルそのもののカメラ。で、この写真はこれに純正距離計を付けた状態です。もちろん連動してないので、距離計の文字を見て「8メートルか」とつぶやきながらmfリングを回すわけですw

で、これが連動距離計を組み込んだ改良型のビトーBR。測距用の小窓が見えるでしょ? RはレンジファインダーのRでしょうね。本当はドイツ語ではエントフェルヌンクスメサーと言うんですが、輸出目的か、あるいはかっこよさを選んでか、英語にしてるのかも? ファインダーも改良され随分明るく、大きくなったのが分かります。50万台も製造されたビトーBに比べ、これはたった一万台ちょっとしか生産されなかった「幻のカメラ」なんで、製造開始年は1957年ではないかと言われていますが確認はできてません。
この他に単独露出計付きのビトーBLがあります。Lは多分露出計を示すLightのL? 露出計ってドイツ語ではベリヒトゥンクスメサーというんですけど。これも対米意識かな?

さらに露出計を連動にして、完成の域に達したビトマチック2a。本体上部にファインダー、距離計窓、露出計の窓が見えますね。ファインダー内で露出のズレも、ピントのズレも分かります。これはその中でも高級レンズ・ウルトロンを装着した、少数派。ほら、レンズがでっかいでしょ? 
このシリーズの生産開始は1961年。大体あたしとおない歳なんですが、隠居同然のあたしと違って現在でも十分現役です。ありがたやありがたや。

続いてこれがビトマチック系の最終形態、2b。レンズや露出計違いで幾つか種類がありますが、大体、外見はこの2bと同じです。2aまではカメラ上部にあったシャッターレリースがレンズ脇に移動。X接点付きでストロボもそのまま取り付けられるなど、モダン化したもの。ファインダーはさらに一歩進化し、のぞきながら絞り値とシャッタースピードが読めるように小さなミラーとプリズムが付いてます。でもあたし個人としては前のデザインの方が良かったな。おかげであんまり持ち歩いていません。

一気に新しくなって、これは現行のビトーC。ミノックス同様、バルダ社で作ったOEM品。素通しファインダー式です。よーく見るとレンズ周りにAE用の「小眼」がありますが分かります? 

さて、どうですか、あなたもなんとなくカメラが見分けられるようになってきてませんか? 名前やメーカーまでは分からなくとも、「あ、これは距離計連動機で、ここが露出計の眼だな」みたいな部分は分かってきたでしょ? もし何の知識もなかったら、上の写真のカメラはぜーんぶ同じ「銀色の古いカメラ」で、見分けが付かなかったかもしれませんよ。

 ってわけでカメラの分類はここまでの説明が理解できていれば実用十分です。例えばあたしの愛機、ライカM5(絞り羽根の説明にあったヤツね)は「フォーカルプレーンシャッター」、「距離計連動」、「全て手動」です。もう一種の愛機(群)、フォクトレンダー社のビトーBは、「レンズシャッター」、「距離計なし」、「全て手動」。ビトマチック2aは「レンズシャッター」、「距離計連動」、「全て手動」。雑誌用に使う愛機、ニコンF4は「フォーカルプレーン」、「1眼レフ」、「全自動(可)」。いつも持ち歩いているドイツ版イクシ、フォクトレンダーのビルタスなら、「レンズシャッター」、「ファインダー素通し」、「全自動(のみ)」ということになります。こういった組み合わせの中から、自分に合ったものを選ぶのがカメラ選びの基礎ですね。
 ちなみにカメラはここに挙げたタイプ以外にも、フィールドカメラとかエレクティングカメラとかがありますが、MF撮影に使う人はあまりいないと思いますので割愛させていただきました。あたしゃ好きなんで残念なんですが。


パララックス

 さて、無数にあるかのようなカメラ。それでも大体分類はお分かりになりました? で、ここからは接写には切り離せない、パララックスという問題に焦点をあてましょう。
 パララックス。パラドックスじゃありませんよ、これはフィルムに写る場所とか、ファインダーで見えている場所など、見えている範囲のことです。「視野」と訳します。
 レンジファインダー(距離計連動機)も2眼レフも、素通しのコンパクトカメラも、撮影レンズとは別の場所にファインダーがあります。通常の撮影では別に問題がないんですが、接写の場合、これが難物。
 ちょっと右目をつむってください。で、この文章の文字をしっかりと見つめてから、今度は左目をつむって右目を開けてください。ほら、文字の場所がずれたでしょ? 左右の目が離れているから当然ですが。目の間隔が10センチあったとしましょう。
 100メートル先の電柱を見るなら、左右の目の距離、たった10センチはほとんど影響されず、大体同じ場所に見えます。


でも目の前10センチだったら? それどころか1センチだったら? まったくMFが見えないかもしれません。
 というわけで、接写にはファインダーとレンズの距離が大問題になることがお分かりでしょう。通常、レンジファインダーの高級機は、写真が写る範囲を示す線が、距離計に連動しており、距離が近づくと自然にレンズの方向(たいていは右下)に移動します。これを「パララックス自動補正機能」といいます。ちょっと廉価版になると、自動的に変化させるのではなく、最近接距離(一番手前にピントが合う距離)での場所が別に書いてあったりします。コンパクトカメラで視野を示す線の上の方、2重になってたり、線のちょっと下に、ちょっこっとした棒や点がありません? それが最近接距離での上端になるということです。
 2眼レフの場合、ファインダー側にも大きなレンズがついており、通常ピントグラスで見るので、自動補正はできません。そのため、上端部に視野補正用の印がついているのがほとんどです。撮影レンズのすぐ上にあるので、左右方向へのズレはないわけです。自動補正ではないので最近接距離でない場合、撮影者がカンで推測するしかありません。


 ただ、2眼レフ総てが諦めたわけではありません。フォクトレンダーのスパーブという2眼レフがあります。これは当時2眼レフの主流だったローライフレックス系に真っ向から勝負を挑み、呆気なく破れた(さ、さみしい)カメラです。ただ、実に独創的な機構をいろいろと盛り込んでいるので今でもあたしのように愛好家が多いんですが。
 で、このカメラ、ファインダー用のレンズとミラーなどが全部ゴンドラのようなものにすっぽりと納まっています。で、下の撮影レンズが近距離になると巨大な歯車がそれを伝え、それに沿ってゴンドラ部が移動します。その結果、上のレンズが「うつむく」んですね。つまりパララックス自動補正なんです。


 

左が距離無限大時。右が最近接時。青の矢印の先に注目!


 こういった努力で、なんとかこの「パララックス補正」を行ってきたのですが、それを端から蹴散らした存在が「1眼レフ」。なにしろレンズは一個です。パララックスのずれなんか出ようはずがありません。
 というわけで、かつて「ヴォーグ」誌の表紙を写し続け、ファッション界の変動を目の当たりにしてきたローライの2眼レフも、キャパがノルマンディ上陸を記録したり、最期にインドシナで持っていたコンタックスやニコンSも、エリザベス女王ご愛用のライカM型も、グレン飛行士が宇宙まで持っていったミノルタハイマチックもぜーんぶ、お母さんが子供の運動会を撮るAF1眼レフに呆気なく敗れ去るんですね、接写の世界では。
 もちろん、それらのカメラでも接写できますよ。大変だってだけです。挑戦したいなら止めません。

レンズ

 レンズはカメラ以上に種類がありますが、基本的には「焦点距離」「開放f値」の二つの要素で決定します。例えば「f300 F2.8」、略して「サンニッパ」。これは望遠レンズの代表みたいな奴。すごく大きな、いかにも「望遠!」って感じのレンズです。逆に広角だと「f16 F8」などがあります。これは「焦点距離16ミリ、開放F値8」をを示すのですから、レンズ名自体がその内容を示しています。ちなみに、専門的な解説では「f16(3群4枚) F8」というように「群」「枚」という文字が入ります。これはレンズ構成を示すもの。この場合、4枚のレンズから作られており、そのうち2枚が密着して配置され、あたかも3枚のレンズのようになっている、ということです。3群3枚なら、3枚が総て独立しているという意味ですね。まぁ、参考までに。

 では解説に戻ります。
 F値はもうお分かりでしょうからはぶきますね。焦点距離というのはレンズの焦点がどれだけ離れているかという意味です。つまり16ミリならすぐそば、逆に300ミリだとずいぶん先ということです。しかしながら写真用レンズは複数のレンズの集合体で、しかも、焦点は一つではありませんから本当にその距離で焦点をむすぶというわけではありません。そういう数値だと覚えてください。この焦点距離が示すもの、それは「画角」です。つまりどれだけの範囲の光を集光させるかという角度ですね。その範囲がフィルムに写るというわけです。当然広角は画角が広く、望遠は狭いわけです。写真レンズの場合、数字が大きければ画角が狭くなり、小さければ広くなります。
 一般的に50ミリが標準レンズになります。で、28ミリ程度なら広角、20ミリなら超広角といった感じです。一方、50ミリ以上の85ミリは中望遠、135ミリ、200ミリが望遠、500ミリといえば超望遠ってわけです。メーカーによって多少呼称が異なりますが、50ミリを中心にしているのは変わりません。ただし、画角はフィルム面積に比例しますので、35ミリ版で50ミリは標準ですが、面積の広いブローニーでは広角、狭いAPSなら望遠になりますのでご注意を。ま、大抵のカメラメーカーは親切で、カタログに「焦点距離25ミリ(35ミリ版換算で50ミリ)」というように注記をつけてくれているので、35ミリ版で覚えておいていいでしょう。

広角の特徴

28ミリ以下の焦点距離
 広角レンズは広い場所を一枚におさめてくれるもの。でも、それだけではありません。他にも被写界深度が深いという特徴があります。同じF2.8の開放絞りの標準レンズよりも、広角レンズの方が被写界深度が深いため、よく町中でのスナップ撮影に使用されます。焦点距離が短いためにレンズ全長も短く、持ち運びに便利ですし、被写界深度のおかげでF8くらいに絞り込んでおけば1メートルから無限遠まで、全体にピントが合ってくれたりするありがたいレンズです。特に一部のカメラでは、最短距離から最遠まで全体にピントが合う様に、絞りを固定してある「パンフォーカス」というレンズまで存在します。ピントも絞りも変えることのない、簡単カメラのはしりのようなものです。
 欠点としてはあまりに広い角度を写すものは端の方が暗くなったり(周辺光量不足)、ゆがんだり(歪差)してしまうことです。特に超広角はなかなか使い方が難しいレンズです。魚眼レンズが歪みの代表ですな。
 なお、20ミリや21ミリ以下を超広角と呼びます(一部メーカーでは24ミリ以下)。ひろ〜い景色や、部屋全体を撮るといった場合に使いますが、普通は使わないかな?

準標準の特徴

35ミリ〜40ミリ程度
 広角はこのようにピンぼけが少なくなるので、小型化という特徴と合わせてコンパクトカメラによく使用されます。今やコンパクトカメラ世界では35ミリ搭載が「標準」化しているのはそのせいですね。旅行先の風景写真や記念写真などが50ミリより広角気味の方が写しやすいという理由もあり、35ミリや40ミリを「準標準」としているメーカーも多いです。

標準の特徴

50ミリ前後
 特徴ないのが特徴(爆)。人間が見ている光景に一番近いらしいのが50ミリ。なので自然に見えます。ただ、屋外撮影だと、広い景色を写したいので35ミリなどが主力になり、結果、最近のレンズ固定式カメラでは50ミリ、減ってます。

中望遠の特徴

85ミリ、90ミリ程度
 50ミリは人間の目に近い画角。で、人間が何かに注視している時には画角は狭まると言われています。ぼ〜っと眺めてるのが50ミリ、じっと見つめるのが90ミリって感じ? 50ミリだと人間全体、90ミリだと胸中心の、いわゆるバストショットになるって感じですね。そのためポートレイト(人物写真)には85や90ミリが大活躍。標準より望遠気味なので被写界深度が浅くなり、背景が自然にぼけるので、被写体が浮き上がるのもその特徴。135ミリの望遠などよりも大口径で明るくできるので、被写界深度を浅くする時に便利。モデルのおね〜ちゃんの瞳だけにピントあってる、なんてのも可能。

望遠の特徴

135ミリ以上
 遠くのものを引き寄せる、望遠レンズには「圧縮効果」というものがあります。被写体を大きくするだけでなく、背景までの距離を縮めてしまうような効果です。これで撮ると、広い大ホールも、ちょっと大きな部屋程度にしか見えなくなりますよ。よく野球中継で、投手が大写しになっている時、後ろの観客席がすぐそばにあるように見えたりしません? 本当はごっつ広い野球場なのに、まるでその辺の体育館程度に見える、なんて事。これはTVカメラが超望遠を使用しているので、圧縮効果が出まくっているからです。オリンピックの鞍馬とか、相撲中継やプロレスなんかでも分かりますよね。
 欠点としてはちょっとカメラが揺れただけで手ブレが起きやすいこと。そのため、三脚使用がお勧め。最新技術を駆使したAF望遠レンズには「手ブレ補正機能」がついていたりします。他には長くて重くなりやすいことが欠点でしょうか。暗いのもそうですね。
 300ミリ以上だと超望遠と呼ばれます。鳥とか撮る人でないと、あまり持ってないかな? 昔MFファンサークル、INITIATIVEにいた本ちゃんは車の写真が趣味。500ミリ付いたニコンF3持って歩いてたっけ。それもモードラにコマ間データパック付き・・・。体力に自信ある人専用レンズですな。

単焦点VSズーム


 「f50、F1.2」というように一つの焦点距離を持つレンズを「単焦点レンズ」といいます。一方、複数の焦点を持つものもあります。ライカの「バリオエルマー」などですがごく一部ですね。デジカメではかつてイワサ博士やあたしの御用達だった「リコーDC−2系」には元々広角レンズが付いていて、望遠用にスイッチを動かすと、レンズにアダプターがはまり、望遠になります。こういったアダプター式も、一応複数焦点です。
 他には今やレンズの主流になったズームレンズがあります。
 ただ、こういったレンズの場合、開放F値が使用する焦点距離によって変化することが多いので、「f28−105、F5.6(28ミリ時の場合)」とか、「f35−135、F4〜F8」いうような表記になります。
 昔は「ズームなんて素人さんの使うもの。プロは明るい単焦点を使え」というような印象がありました。ズームだと単焦点よりも構成レンズ枚数が多く、設計が困難だったため、確かに画像描写力が軽視されていたものです。しかし、かつては計算室で熟練の職人たちが計算尺片手に何ヶ月もかけてしていたレンズ設計を、コンピューターがぱぱっとやっちゃうこと、非球面レンズなどの新技術が発達したこと、レンズに使用するガラス素材そのものが改良されたこと、そしてなにより、ズームレンズが当たり前のAFカメラ普及で大量生産が可能になり、コストががくっと下がったことなどが相互に影響しあい、現在ではズームでもほぼ遜色なく使用できます。確かに画面の外周付近では劣化が残りますが、サービス版はフィルムの中央90%くらいしか焼き付けませんからズームの方が便利です。ま、F値が暗いという欠点は残りますがね。

 ズーム以外にも、特殊レンズとして、デフォルメされて全周が写る「魚眼レンズ」などがあります。まぁるく写る、アレですね。他にも「マクロレンズ」というのがあります。これがMF撮影に多用される接写レンズですね。

マクロレンズ

 複数の焦点距離を持つレンズで、通常撮影にも、近接撮影にも使える便利なもの。大体2系統に分かれており、一つは標準レンズに近く、もう一種は中望遠に近いものが主流。例えばニコンの「マイクロニッコール60ミリF2.8」などはほぼ50ミリですから標準レンズの代わりとしても使えます。各社から定番になっている、「90ミリマクロF2.8」(キューニッパマクロ)は中望遠として使用できるというわけですね。
 現在のマクロレンズは単体で「等倍撮影」可能なものが主流です。いいですか、プリントしたサイズが等倍、じゃありませんよ。フィルム面に、実物と同じ大きさの像を写しこめるということです。雑誌掲載にしろ、サービスサイズの焼き増しにしろ、大抵フィルムよりも大きく引き伸ばしますから、そういった意味では「拡大」になります。ですから、これで撮ると、「で、でかい!」と、うなりたくなるほどで、新たな感動が生まれます。(ま、実際には、「しまった、ここ塗ってねぇや」なんて新たな感動が生まれるかもしれませんが・・・。とほほ)


  

 標準マクロ系はずいぶんレンズ長が伸びます。ぐぐぐぐって感じで。マクロレンズを知らない人の目の前で、フォーカスリングを回してみせると、大抵驚きますよ(中にはげらげら笑いだしたのもいましたけど)。写真はあたし愛用のAFマイクロニッコール55@F2.8を付けたF4。レンズがほぼ倍の長さにまで伸びるのが分かるでしょう。
 (上の写真が標準レンズとして使う状態。んで下がマクロの最近撮影状態ね)


 このお陰でレンズの先端から「1cm!」なんて近くにまでピントが合います。つまり、撮影者はファインダーをのぞかないと、レンズに隠れてMFが見れないってほど近くです。あまりに被写体に近寄りすぎるので、ライト使用時にレンズの影(!)が出ちゃったり、ちょっと向きを変えようとカメラをずらすと、レンズ先端がMFを叩き飛ばしちゃったりもします。また、あまりに近すぎるため、斜め上から撮影したりすると、あたかもデフォルメされたかのごとくに頭でっかちになったりもします。逆に胸の位置に高さを合わせると、標準の強みで本当の人間のように自然な感じに写りもします。


 一方、中望遠マクロ系はずいぶん離れないとピントが結像しません。そのため狭い場所では等倍は無理ということになります。しかしながら、望遠系のため、圧縮効果があり、ディオラマの一部を切り取って撮影したりすると、まるで映画の1シーンのように迫力ある写真が撮れます。また、離れて撮影すること、これをワーキングディスタンスがある、といいますが、この利点もあります。旅行中など、ちょっと離れたもみじの紅葉を画面一杯に写したり。もちろん普通の中望遠にも使えるので旅行の定番とも言えるレンズです。


 標準マクロと望遠マクロ。どちらにも魅力があります。
 もしどちらか一本なら予算的に買えるというなら、他のレンズとの組み合わせで決めちゃうのも手です。開放F値が3.5とか5.6といった小型ズームレンズ(AFカメラとセットで売っているアレです)しか持っていないなら、標準マクロがいいでしょう。開放F値が大体2か2.8が多いので、室内で標準レンズとしても使えますから。
 一方すでに明るめの標準レンズがあるなら、もうこれは望遠系しかありませんよね。
 昔、学生時代にオリンパスのM−1(後のOM−1)を愛用していたので、その後継機、OM−3も購入しました。で、その頃お気に入りだったのは、24ミリF2.8、40ミリF2、100ミリマクロF2の三本でした。旅行とか、この3本があれば何でも撮れるような気分で常用していましたっけ。レンズは集め出すとキリがないので、組み合わせで選ぶのが普通です。今だったら標準が入った広角系ズームと中望遠マクロの二本で、旅行が楽しめますね。
 でも最近は常用カメラがレンジファインダーばっかりになっちゃったので、1眼レフの出番は取材や商品撮影中心です。で、見本市会場などはブースにわんさと新製品が並んでいるので、十分なワーキングディスタンスが取れません。ということで、今の常用マクロは標準系です。ま、標準か望遠か、悩むのはとっても楽しいことです。「こういう時はこっちが便利だな、でも、もしこうなら」ってヴァーチャル・フォトをしながら悩んでください。

 なお、一部のマクロレンズはベローズ(後出)専用だったり、接写専用で普通の写真は撮れない、なんてのもあります。

これはミノルタの「AFマクロズーム3×−1×  F1.7−2.8セット」。AFマクロの頂点ですが接写しかできません。なんと等倍は当たり前、3倍まで拡大できます! フィルムの大きさに三倍で写せるんですよ! 名前だけ見てもすごさが分かります。等倍から3倍までの倍率で、F値はなんと暗い方でも2.8! MFの「ポートレート」も「プリクラ(笑)」も余裕で撮れちゃうという信じられないシロモノ。専用のマクロフラッシュが標準で付属しており、無影撮影可能という、学術用と思ってもいい高性能。なにしろ開放F値が標準レンズ並みの明るさ。離れても等倍までしか撮れませんから、もう完全にマクロ専用です。これが出た時写真業界は大騒ぎでした。それまでアルファーは特にマクロを重視していたわけではありませんから。(発表当時、これだけのために、先にミノルタのボディを買ったキャノン派の男がいましたな。はてさて、彼は結局このレンズ、買ったんだろうか?)

 レンズの種類については、ま、こんなところで。引き続いて、マクロレンズ使用以外の接写方法を。


接写法の分類

 まずは、マクロレンズですね。これは大体理解していただけたでしょう。その他にも幾つかの選択肢がありますが、それは被写体を大きく写す方法によります。

追加レンズをつける
レンズの長さを増やす

 この2種の方法で接写ができます。追加レンズを付けるのは、簡単に言ってしまえば、レンズの前に虫メガネをつけると思えば早いでしょう。ではレンズの長さを増やすと、どうして接写できるのでしょうか?
それはレンズの焦点が一つでないことが原因です。レンズは幾つもの結像を結びますので、長さを増すことで、レンズの焦点距離、つまり画角を調節できるのです。長さを短くするのは、いきなりノコギリでも持ち出さないと不可能ですが、長くするのは簡単です。スペーサーをかましちゃえばいいんです。
 た・だ・し!
 レンズの前面にかましても全く効果ありません。だって、まだ光がレンズを通ってないんですもの。かます場所はレンズ後端とフィルム面との間ということになります。というわけで、レンズ交換できないカメラではこの方法は無理。先の虫メガネ方式しかありません。
 スペーサーにも大きく分けて「中間リング」「ベローズ」という2種類があります。中間リングは、なんのことはない単なる筒。カメラボディとレンズの間にこれをはめるんですね。こうしますと、あら不思議、いつも使っているレンズが接写専用レンズに早代わり。でも、無理やり焦点距離を変えていますので、ピントの合う幅がめちゃくちゃ狭くなり、レンズ前面3センチから12センチ、みたいに固定されてしまいます。さらに光が減るので解放F値がくらくなったりもします。撮影可能範囲も「接写専用」で、ずいぶん融通の利かない子になっちゃいます。これを少しでもカバーしようと、たいていのメーカーは3種類の幅の中間リングを販売しています。長、中、短ですね。一個だけつけることも、合体させることもできたりするので、かな〜り自由度を増しています。ま、接写専用であることは変わりないんですがね、コボルトとドラゴンじゃ、全然大きさ違うでしょ? そういう時には便利ですね。

写真はニコンの旧タイプ、Aiマイクロニッコール 105mmF2.8Sと専用の等倍アダプター。こんな風にメーカーが純正の中間リングを用意しているものもあります。付けると接写専用ね。

 一方のベローズは、幅を自由に変化できます。レールの上にレンズ取りつけ部とカメラ本体取りつけ部がついており、レンズ取りつけ部がレール上をスライドして、自由に幅を変えられるんですね。そしてその間は伸び縮みするジャバラ(蛇腹)でつながっています。
 この方法ですと、中間リングよりもさらに自由度が増します。ただし、ずいぶん大きなもの、もう機材と言っていい大きさになりますのでスタジオ撮影が基本ですね。まず大型三脚が必要でしょう。
 中間リングとベローズの利点は、すでに持っているレンズで接写できること。でも、そういったお手軽な利点だけでなく、もっと能動的な利点もあります。つまり前にはめるレンズはどの焦点距離でもいいということ。マクロではどうしても単一焦点距離になりますが、スペーサー系なら、標準、望遠などなど、さまざまなレンズで撮影できます。これによって、マクロレンズでは出せない、各種の効果をもたらすことができるのです。

 一方、虫メガネ系は通例、フィルターの形で販売されています。レンズ前面のネジにネジ込むだけで接写用に早代わりという便利もの。しかも安い。ものによっては2,3千円です。これもレンズの「度」によって3種類ほど出ているのが通例です。
 これは一番簡単に接写の世界が楽しめるので、とりあえずやってみようという人にはお奨め。でも、結局は折角設計したレンズに無理やりネジ込んでいるので(文字通りにね)、本来のレンズ性能が発揮できなかったり、最悪の場合、妙にゆがんだりします。所有MFの記録になら十分実用的ですが、塗装色の記録とか、鑑賞用にはちょっとツライかな。
 この「接写フィルター」も、ネジ込むレンズが自由に選べるので、そういった意味では自由度があります。ただし、レンズマウント(レンズとボディの接合部)はたいていメーカーごとに統一されているので、中間リングやベローズは一度買えば買い足しはないんですが、この「接写フィルター」はレンズ前面の口径に合わせなければならないので、同じカメラでもレンズによって異なる口径を買わなければならないのが欠点といえば欠点です。でも、レンズ口径はだいたい種類が決まってますので、52ミリといった、ある程度汎用の口径なら、メーカーが違っても共用できます。あたしのように各社のいろんなカメラを持ってる人には逆に利点かな?

 スペーサー式の欠点の一つが、レンズとボディとの間の情報伝達が途切れる場合があること。歯車が離れちゃったり、電気接点が離れたり。そのためAFはもちろん絞り値のデータがこないため自動露出もダメ、ってのもあります。まぁ、露出計は大抵ボディ側だけでコントロールするし、マクロ撮影ではAFはあまり使わないのでいいんですけど。一方、虫眼鏡式なら、レンズとボディはしっかりくっついてますので、そういった問題はありません。

 マクロレンズ、スペーサー、接写フィルター。この3種のどれを取るかは自由です。本格的に接写を始めるならマクロレンズですが、とりあえず写して見よう、という人はフィルタータイプの接写レンズですかね。で、等倍じゃものたりない、頭部だけを目一杯大きくしたい、って人にはマクロレンズでも無理ですから、ベローズになります。
 でも、あなたのカメラがレンズ交換できないなら、最初から選択肢は一つしかありませんけどね・・・

マクロ領域

 近年のレンズ設計技術向上は、常用ズームという新しい「標準レンズ」を生み出しました。しかも焦点距離を変えるだけでなく、レンズの繰り出し量を増すことで、最初からマクロ同様の効果を与えることが一般的になりました。このマクロ用のピントを「マクロ領域」とか、「マクロ機能」と呼びます。
 この利点はいつも使っているレンズで手軽にマクロ撮影が可能なこと。あなたがAF1眼レフを買うと、もれなく付いてくる(?)小型常用ズームレンズにも、多分マクロ機能がついているはずです。さあ、これですぐにMFが撮れるぞ、と思うかもしれません。でも、そう簡単には行かないんですね。
 確かにマクロではあります。でも、それは通常焦点距離より短い結像を使用するという意味のマクロであって、決して「等倍マクロ」ではないんです。普通に撮るよりは大きく写りますけどね。フィルム面一杯に写すのは無理でしょう。まぁ、サービス版に引き伸ばした状態での「等倍」ならできるかな?
 ワーハンマーのファンなら、あなたのアーミーを一堂にかいして記念写真、って感じならマクロ領域使用でちゃんと写ります。一度レンズ、調べてみたらどうですか?


接写に向くカメラは?

 あなたの手持ちのカメラはレンズ交換できますか?
もしできないのなら、クローズアップレンズを利用するしかありません。しかしながら、レンズとファインダーが別の場所にあるカメラなら、クローズアップレンズだけでは大変です。撮影レンズが拡大されているのに、ファインダーがそのままでは実際にどこが写っているのか、そしてピントが合っているのかも分かりませんから。何度も試してみるしかありません。

 というわけで、やはり接写に向くカメラといえば、1眼レフです。ほとんどの1眼レフはレンズ交換できますからね。中間リングという手軽な手段もありますし、本格的にはベローズという選択もあります。しかしながら、特にMFに特化するのなら、やっぱりマクロレンズが一番です。MFの大きさを等倍に写すのならマクロレンズの描写が最も向いていますから。

 「え、1眼レフなんて持ってない」というなら、仕方ありません、頑張ってやってみましょう。でも、残念ながら、シャッターも絞りも調節できないタイプでは非常に困難です。被写界深度の調節ができないということですから、ごく一部にしかピントがあっていない写真になってしまいます。さらに、AFオンリーのカメラはさらに大変です。大抵の場合、AF機構は1眼レフのようにレンズ内あるのではなく、専用の「目」が付属しているものがほとんどです。人間が見ているわけではありませんが、カメラのコンピュータがここから見ているようなものなので、レンズ前にフィルターをかけただけではピント検出が合いません。AF測距窓にも同じフィルターをセロテープ等で固定するという方法もあるのですが、赤外線射出式などの場合、フィルターに反射しておしまい。位相差式でも正確な計測は期待できません。
 ですから露出やピントの調節ができることが最低限の必要条件といえるでしょう。もちろんそれでもできないことはありませんが、その苦労とは、並々ならないものです。特に露出はともかく、AFを解除できないタイプが多いので、これも諦めるしかありません。
 昔のカメラの方が逆に接写に向いているのは不思議かもしれませんが、便利になるということは切り捨てられるものもあるわけです。接写のような特殊な撮影は後回しにされてしまったのですね。

 さて、コンパクトカメラであっても、露出、ピントをマニュアルで調節できるタイプのカメラなら、フィルタータイプのクローズアップレンズで撮影可能です。
 これを使用した場合、確かに撮れますが、ピントの合っている場所を確認することが困難ですので、いっそのこと、固定してしまいましょう。
 別に接着する必要はありませんよ。記録しておけばいいんです。まずは再近接状態にカメラのピントを合わせます。その状態でクローズアップレンズをはめ込み、カメラを机の上に置きます。次いで物差しをレンズの真正面に起き、フィルター端に物差しの端を合わせて撮影します。その写真の出来上がりを見れば、何センチでピントが合うかが判明します。ちゃんと目盛りが読める所がピントの合っている場所というわけです。もちろん、こういった実践方法だけではなく、ちゃんと計算して出す方法もありますが、ま、実際に確認してみるといいでしょう。毎回その状態を再現すればいいわけです。

 マクロとなれば、やはりフィルムはポジになります。ラチチュードの狭いこのフィルムでは難問である露出の問題も、始めに何度か試しておけば同様にクリアできます。ライトを同一の場所に置けば、大体同じEV値ですから、後はMFの色と影の量によって多少の露出補正をすればいいのです。補正がよく分からない場合、「ブラケティング」という最後の手段があります。

ブラケティング

 「露出をバラす」ことをブラケティングといいます。カメラが「これで露出OK」、と言っている数値をベースと考えます。これは写真全体の明るさを平均化していますので、背景などの「不要」な明るさも入ってしまっています。ですから、MFのみの明るさを探さねばなりません。ベース数値の側に、探している露出があるはずです。ということで、それを探すのは「カン」と「経験」で見つけるしかないんですが、もう一つ方法があります。「絨毯爆撃」ですね。
 カメラが告げているベースが1/30&F5.6だったとしましょう。で、この近所を手当たり次第に叩き潰せばいいんです。この状態で露出を記録しておき、マニュアル露出に切りかえます。露出のプラス、マイナスで同数撮るのですが、まずは2枚づつバラすとしましょう。露出変更はシャッターでも絞りでもいいんですが、シャッターにするとこれ以上低速では三脚が絶対必要になりますので、絞りにしてみましょうか。まずは絞りを2クリック開けてF2.8にします。これで撮影してから、今度はF4にしてパチリ。次にベースの数値F5.6。そしてF8、F16というようにずらしながら撮影するのが、ブラケティングという手法です。この方法ですと、一枚のために5枚も浪費します。24枚撮りでも、たった5ショットしか撮影できないということになります。勿体無いですか? でもブラケティングは撮影の基礎。プロなら大抵やってます。なにしろこれなら「直撃」でなくても、大体は「至近弾」の一発はヒットできますよ。
 この時に、どれだけズレればドンピシャだったかを覚えておくと、次からは5枚までいかなくても3枚で十分になります。カメラ毎にクセがあり、明るい方向にシフトしやすいもの、暗い方向にシフトしやすいものなど、千差万別なので、実際に何本かフィルムを無駄にしてでも、そのクセを掴んでしまうのが早道です。ただし、フィルムにもクセがありますから、試写に使用したのと同じフィルムを使いつづけることが前提になります。もちろん、ライティングや背景紙の色なども同じにしなければなりません。

 結果的に言うと一眼レフなら大抵接写でき、コンパクトカメラ系では難しい物が多い。こうなります。

1眼レフ

 あなたがもし、これからカメラを買うのならやはりレンズ交換などで接写用に組めるシステム一眼レフが一番です。大抵のメーカーからマクロレンズが出ています。ま、MFのためだけに買うことは少ないでしょうから、あなたの他の趣味に向いているカメラや、好きなメーカーブランドで選んでも大丈夫でしょう(ハッセルブラッドやローライがいい、なんてことを考えない限りは、ですがね。なぜなら中版カメラは描写的に35ミリとは比べられないほどの性能ですが、大きくなったフィルム面積に比例し、レンズの焦点距離が変わります。その結果、一番大切な被写界深度が35ミリ版よりも狭くなってしまうのです。もちろんこれを補正する方法、シフトレンズとか、蛇腹使用とかもありますが、ここまでくると、決して手軽なものではありません)。

 もし、もう1眼レフを持っているのなら、フィルターで有名なケンコー社から便利なリングが出ています。標準レンズで1/2倍まで映せるので一万円くらい。さっき写真で紹介した結構本格派の3枚セットでも数万円程度です。メーカー純正品と比較して購入を考えてもいいでしょう。他にも、レンズの向きを逆にして、強制的にマクロ用にしちゃうリバースアダプターなんてのも安く入手できます。ま、望遠鏡を逆さからのぞくのと同じ原理ですね。

 でも、これらは入門にはよくても、性能的にはマクロレンズにはかないません。

 結局マクロレンズを購入するのが長期的に見て一番利回りのいい投資です。でも、安いもんじゃありませんから、ちょっと悩みますよね。

 で、もし「デジカメ持ってるけど、フィルムカメラでも接写してみたい」とか「接写専用にフィルムカメラを買いたい」というのなら、お勧めするのは中古のマニュアル一眼レフ。AFもAE(自動露出)もないのでOK。なぜなら接写では両方使わないからです。
 マニュアル一眼レフはなが〜〜い歴史を持っています。そのため、その機種は国産だけでかる〜〜く百を超えますので、以下に選択の要点を挙げておきましょう。もちろん「MF接写」に絞ったものです。

中古マニュアルフォーカスカメラ選びのポイント

 マクロレンズで選んじゃう
 よほど大きな中古カメラ店でない限り、マクロレンズはあんまり出ていないでしょう。入手可能なレンズに合わせてカメラを選択しちゃうのも手。

 フォーカス(ピント合わせ)は手動でok
 AFはいりません。あっても接写では使いませんので。AF式の場合、必ずマニュアルでピントを合わせられる様な切り替え式にしましょう。

 AE(自動露出)専用機は避ける。露出計なしも避ける
 露出は基本的に自分で合わせます。なのでAEはあってもなくてもいいのですが、一部AE専用機があります。それは避けた方が無難。ただし、先ほどのブラケティング機能がついているなら大丈夫。オートブラケティングとかABCとかメーカーによって呼称がいろいろありますので、店員さんに聞いてみましょう。さらに、最後の手段としてISO(ASA)感度をずらしてしまうという手もありますが・・・。やはり自動ではなく、手動で露出を決める方が楽です。

 三脚は必須
 三脚穴のない一眼レフは滅多にないのですが。中古で三脚ねじ山が破損してる、とかいうのはパスですな(実際ひどい目にあったことが・・・)

 クラシック機は、やめとけw
 いかにも古そうなのはやめときましょう。レンズ設計も古いので性能もちょっと不安ですし、付属品が見つからなかったりしますので。ペンタックスのSマウント系やニコンの非Ai系は修理もできなかったりしますので・・・。

 レリーズ穴を確認
 撮影時、シャッターを切るために押すボタンがレリーズボタン。で、その中央にねじ山があり、そこに延長レリーズケーブルをねじ込みます。こうしてやると、レリーズを押し込んだ瞬間にカメラが動いちゃったってミスがなくなります。接写ではカメラが1ミリ動いただけで写真はパァ、ですから。なお、一部カメラでは専用の電子式レリーズケーブルしか付かない、とか、ボディ側面にケーブル用のネジがある、というものもあるので店員さんに確認しましょう。ま、セルフタイマーを使うことで代用もできますが、本体内蔵のセルフタイマーをセットしようとして、カメラが動いちゃった、ってこともよくあるので、ケーブルレリーズは必須です。




赤丸のように、この子にはシャッター付近に穴ありません。ないのかな〜っと思ったら・・・

こんなとこにw

 次いで、あると便利な機能です。あると便利ってだけなのでなくてもいいですよ。その辺はお財布と相談で。

 ミラーアップ
 一眼レフは鏡を使って光をファインダーに向けています。で、シャッターが切れた瞬間にミラーが跳ね上がり、フィルムに露光するんですね。その後、瞬時にミラーは元の位置に下がります。これをクィックリターンミラーと呼びます。で、この一連の動作。ミラーが上下するショックで、カメラも微妙に動いちゃうんですね。そこでそれを避ける方法がミラーアップ。ピントを合わせ、露出も合わせ、構図も決めて、さぁ、後はシャッターを切るだけ、って時。このミラーアップを作動させて、鏡を手動で上げてしまいます。こうすればシャッターが降りる時には振動が最小限に抑えられるわけ。しかしながらミラーアップした後、ファインダーの中は真っ黒。なので、「後はシャッター切るだけ」って時だけ、作動させましょう。

 自動巻き上げ
 最近のAFカメラでは当たり前ですが。フィルムを自動で巻き上げてくれる(オートワインディング)機能です。で、これがあると結構便利。なにせレバーでフィルムを巻き上げてるとカメラ、向き変わっちゃったりするので・・・。巻き上げの逆、自動巻戻し(オートリワインディング)もあると便利。フィルム交換時にカメラを動かす心配が減ります。
 別売りのフィルム巻き上げ装置、ワインダー(基本として1枚づつ巻き上げるもの)やモードラ(モータードライブ。1枚づつ巻き上げる他に、連写もできるもの)がある機種も多いのですが、ギアの回転で動かしているので、古い物だと故障が心配。充電池も入手できない、って可能性もありますし、なにしろお値段張ります。

 オートブラケティング
 ブラケティングはさっき説明した様に、露出をバラして数枚撮ること。高級機になると勝手に絨毯爆撃してくれる、「オートブラケティング」なんて機能もあります。どれだけずらすかを指定しておくと、シャッターを切るたびにモードラでちゃっちゃと複数枚撮ってくれるとかですね。

 ファインダー角度変更
 一眼レフというのは人が覗く窓(ファインダー)と、フィルムとに向かう光が一つの目(レンズ)から入る、レフレックス(プリズムや鏡などで反射してファインダーに光を導く)カメラという意味です。で、このファインダー。カメラ後方から覗くことになりますが、これだと、机上に置いて撮影する、マクロ撮影だとちと不便。なにしろ中腰になるか跪かないと覗けません。その不便を解消すべく、ファインダー交換式の機種もあります。

カメラ背面から覗く、普通の状態

で、標準装備のファインダーを外して・・・

別売のウェストレベルファインダーを付けると、上から覗くことになります

 ファインダー交換式は高級機にしか採用されていません。しかし、普通の一眼レフでも、同様の事が出来るものもあります。それがアングルファインダー。

これはあたしが高校時代に愛用していたペンタックスMX。ファインダーの交換は出来ません

別売のマグニファインダー(アングルファインダー)で上や横(縦位置用)から覗けます

 メーカーによってファインダー基部の仕様が違うので、各社から出ています。(ま、全部のカメラに付けられるわけではないのですけど・・・) 上はコンタックス用、下はペンタックスM系用。
 視度調節が出来たり、中央を拡大できるレンズが入っていたりと、若干異なりますが、内部のプリズムでファインダーの角度を変えるのは同じです。
 こういった補助装置があると、冒険者のMFをMF目線で撮ったり、ドラゴンをあたかも冒険者が見ているような角度でアオったりといった撮影に便利です。

 ところでこのアングルファインダー。一個あるとなかなか重宝します。カメラを設置していなくても、これを覗くだけでMFの構図を考える時に大変役に立つのです。
 基本的に我々人間は両目で物を見ています。そのため、MFも肉眼で見ている場合と、写真など2Dになっている場合とで、かなり印象が異なるのです。そこでこの器具。これを覗いてMFを見ると、当然2D。しかも三脚付きカメラで見るよりも自由に、あちこちから見ることが出来るわけです。特に巨人や竜などを見ると迫力満点w

 スクリーン交換
 ファインダーを覗くと、中央に○など、ピントを合わせる場所がありますね。これが刻印されている板をフォーカシングスクリーンと呼びます。で、これが交換可能なものがありまして。ピント合わせは二重像合致式(コンパクトカメラに多い)や上下分割など、いろんな方法があるので、それを交換できる、ということになります。
 マクロでは視野全体でピントを合わせることのできる「全面マット」が有効です。通常は素早いピント合わせのために、中央に○部分があるのですが、「全面マット式」だとどこでもピント合わせ可能。欠点は詳細なピント合わせに時間がかかること。でもMF撮影では素早いピント合わせ、なんて不要です。また、中央にMFの顔が来る構図は珍しいので、全面、どこででもピントが合わせられるのが便利。全体に方眼が入って、構図決めしやすい「全面方眼マット」なんてのもあります。

  
 ま、中古カメラ用のそういった細かい交換パーツが入手できるかどうかは微妙ですが・・・。


等倍 VS 1/2倍

 次なる話題は拡大率の問題。マクロ系レンズでは等倍マクロ(フィルム面での等倍)と1/2マクロが多いです。

 普通のフィルムは35ミリ版というくらいですから、長辺が3.5センチ程度。で、ベース込みの冒険者サイズMFが大体それくらいですよね。ってことは等倍マクロなら、長辺を縦方向にすればほぼ画面一杯に写せるわけです。サービス版に焼いても、実物の数倍という大迫力ですな。

 一方、等倍までは至らない、1/2マクロだと、そこまででかくはなりません。通例、望遠マクロなども1/2程度の倍率です。そういったマクロレンズの場合、二体並べてツーショット状態ですかね。その場合には普通に横長でいいでしょう。
 当然ですが、オーガやドラゴンなど、3.5センチ以上ある被写体だと、等倍マクロの必要はありません。1/2マクロで十分です。ま、ドラゴンの顔だけどアップにしたい、というのであれば等倍の方が向きますが。
 あ、等倍というのは最大倍率が等倍(フィルム面の大きさで)という意味なので、もちろん1/2にも1/3にもピント調整可能です。つまり等倍は1/2マクロの能力も含んでいますので念のため。

 あたしにはマクロは商売道具ですから等倍マクロになっちゃいます。新製品を単体で写し、サービスサイズにして「こんなん出しますぅ」と取引先に配るわけですから。

 ま、そういった特殊な例は置いておいて、MFファンに本当に向くのはどちらでしょうか。等倍の方がやはり高級品っぽいですが、実は等倍って、ちょっと問題があるんです。
 まずはフィルム形状の問題。ご存知のようにほとんどの1眼レフは横長の状態でフィルムを配給します。ごく一部、縦のもありますが、ほぼ99%、フィルムは横長です。で、これ一杯にMFを写すとなると、カメラを90度寝かせた向きになります。この状態でのホールディングで水平面を維持するのは結構大変ですし、しかも被写界深度を深くしたいのでスローシャッター利用になりますし。つまり三脚が必需です。ところが三脚で90度向きを変えて固定しますと、意外と安定しないんですね。大型のがっしりしたヤツなら大丈夫なんですが、普通にカメラ屋さんで売っているタイプですと、今やお手軽ビデオカメラ用が主流。そのため重心がずれている上にネジ止めですから、微妙に角度が変わってしまったりします。
 もう一つの問題点がディストーョン。いわゆる歪みです。マクロレンズは歪みが極力出ないように特に設計されているのですが、撮影距離が近すぎるだけに、全体にデフォルメがかかるのはどうしようもありません。離れればいいのですが、そうしますと等倍は無理になります。
 一方、1/2マクロの場合、横長のフィルム面ですから、2体並べて撮るのにぴったりです。この方が歪みも減りますしね。

 さてさて。レンズは基本的に円形で設計されてますよね。レンズは円。でもフィルム面は横長ですね。つまりずいぶん使用していない部分があるわけです。レンズに入った光は直進しませんから、まったく無駄というわけではありませんが、多分数割は使用していない部分があります。レンズ設計では中央の性能を高めるよりも、周辺の性能を高める方が困難です。そのため、一つのレンズでも、中央部の描写のほうが周辺部の描写よりも優れているのが通例です(ずいぶん大きく引き伸ばさない限り肉眼では分からないことが多いんですが)。
 また、特に周辺部では「歪み」が大きな問題になります。特に直線が含まれていた場合、サービス版程度の大きさでも肉眼でハッキリ確認できるほどの歪みがでます。その対策にはなるべく主題を中央部に寄せて撮った方がいいということですね。
 さて、フィルム面は横長。ということは、縦横で考えますと、横の端、左右の方が上下の端よりも問題が起こりやすいということになります。特に四隅。ここは円の外周と最も重なりやすい部分ですから、ここでの歪みは中央部とは比較にならないほど大きいものになります。


 そのため、縦位置にカメラを構え、単体で等倍撮影しますと、MFの頭部と足部に歪みが出やすいという結果になります。厳密に言いますと単体等倍撮影でも、MFをフィルム面一杯に撮影することはあまりお薦めできる手法ではありません。まぁ、ほとんどのマクロレンズは通常レンズに比べて周辺部対策がしっかりしているので、気にするほどではないのですが、理論的には避けた方が無難です。


 一方、カメラを通常状態、横長ですね、この状態で単体撮影する場合、MFは中央に来ることになり、左右がぽっかり空いてしまいます。もったいないんですが、この方法ですと、レンズ性能の一番よい所しか使いません。そのため矮曲、湾曲等の問題も回避しやすくなるのです。もちろんMF自体が小さくなりますので、その意味では画像は劣化しますが、これも雑誌に大きく引き伸ばすというような利用法でない限り、目立ちませんので、歪みよりはよいでしょう。ということで、レンズ性能の観点から見ても、別に等倍マクロである必要はないのです。特に1/2マクロでしたら、2体並べて通常の横位置で撮ることで、フィルム面の無駄を避けることができます。サービス版程度にしか引き伸ばさないのでしたら、こちらのほうが形が正確に出ますよ。
 でも、ここにも実はおとし穴が。
 AFは便利なんですが、大体レンズの中央に測距スペースがあるので、「2人並んで記念写真」状態ですと、あっけなく背景にピントが合ってしまいます。中抜け現象というんですが、これを防ぐにはフォーカスロック機構が大抵付属してますので、これを利用すれば大丈夫です。でもやはりmfに切り替えて撮った方が確実です。

注:プリントを頼む場合
 フィルム現像と一緒に同時プリントとか、焼き増しとか。ラボにプリント頼む場合の話しです。実はプリントはフィルム全体を写すわけではありません。フィルムの外周部、縁の部分がすこ〜しだけ焼き込み対象外となり、プリント時には無視されることが多いのです。なので、記念写真で、みんなの顔をちゃんと入れたはずなのに、プリントしたら、端の人の顔が半分しか入ってない、ってことが起きるわけです。
 これはマスクと呼ばれる、露光時にフィルムを挟む器具のせいなのですが、プリントを頼むつもりなら、画面ぎりぎりまで被写体を入れるのはやめましょう。レンズ性能の件もあるので、ちょっと余白が出来るつもりで撮影する事をお勧めします。

 ってわけで、あなたがマニュアルでピントの「山」をつかむのに慣れたなら、1/2倍で2体並べて撮るのが一番楽だと思います。商業写真の世界では商品を可能な限り大写ししておくのが常識なんで一応等倍マクロが定番なんですがね。予算の問題もありますし、MFの人間サイズなら1/2倍マクロでもOKですから、あなたの好みで買っていいと思いますよ。予算が合うなら、1/1でも1/2でも1/3でも、自由に選択できる等倍マクロがいいんですが、安価な1/2倍で標準と望遠の2本を購入するのも捨てがたいですよね。
 とりあえず、次は冒険者MFの定番品の等倍マクロで解説します。こっちが基本ですから。でも1/2倍マクロでも同様に撮れますのでご安心を。


MF撮影の定番。マクロレンズで撮ってみよう

道具の準備

 さて、あなたがマクロレンズを入手したとしましょう。次ぎに光源が必要です。
 光源には「自然光(太陽光)」、「室内灯(蛍光灯など含む)」、「撮影用ランプ」、「閃光(フラッシュやストロボ)」があります。このうち、「室内灯」は色温度の関係で接写には不向きです。デジカメですと勝手に補正してくれるのでいいのですが、正確な撮影が出来るポジフィルムでは、正確な露光が必要になります。そのため、蛍光灯や裸電球での撮影は避けましょう。

 ストロボを使用することも可能ですが、いかんせん強力すぎ! そこで直接当てずに、白い天井などに反射させて撮る「バウンス撮影」が必須。中型ストロボだと、光源部分をクリックで角度可変できるものがありますが、それはこのためです。また、接写用に光を柔らかくする専用のパーツも販売されています。

中央部から曲がるタイプのストロボ

接写用バウンスデフューザーを付けた状態。45度の反射版で光が曲がり、白いビニールを通して光が拡散される。

 他にも、マクロレンズ専用のストロボもあります。形状からリングライトとか、無影撮影光源とか呼ばれます。


 レンズをはさみ、左右からストロボ光を照射するため、影が出ないのが特徴です。一番右の写真は専用デフューザー(後出)を付けた状態。
 しかしながら。これでもMFには強力すぎます。医学や美術、機械系の記録写真には最適なんですが・・・。なんと言っても、影が出ないというのは「人形」であるMFに、あまり向かないのが欠点。陰影を考えて塗ってあるわけですから、やはり光の方向があってほしいのです。

 
 ストロボ使用は接写用に工夫できますが、基本としてMF撮影にはあまり向かない、というのが私の感想です。MFはあまりに小さすぎ、そういった接写用品を駆使しても、なかなか綺麗には撮影できません。形状を記録するにはいいのですが、色の再現という点では問題が多すぎ。移動先で、記録用に撮影するにはすごく便利なんですけどね。(模型見本市で新作のプラモ撮影するとか、コンベンション会場などで、MFの写真を撮らせて貰う、という場合ね)



 ということで。結局は撮影用ライト一式が必要です。ライトには家庭ビデオ用のやモノクロ撮影用のなど、各種ありますが、必ず「カラー写真撮影用」を準備しましょう。


 まずライトスタンドが必要です。これは卓上用のスタンドではなく、撮影用の長いもの。下が三脚のように広がって脚になり、伸ばすと2メートルほども伸びる写真専用のスタンドです。大きなカメラ用品店のプロコーナーにあります。購入する際は必ずブームと呼ばれる「腕」が付けられるのにします。ただ垂直に伸びているだけでなく、先端にジョイントがあり、自在に向きを変えられる伸縮自在のアームが付けられるものです。写真がそれを付けた状態。ちょっと値段は高いのですが、これがあると格段に写真がきれいになります。スタンドは大体1万から2万、ブームは1万ほどです。写真はKing社のもの。この項目執筆当時、セットで¥26、300でした。他にも同額でLPL社のもあります。これが二本必要になります。でも一本はブームなしでもいいかも。それだけでずいぶん安くなります。撮影用ランプは消耗品なので、多めに買っておいた方がいいですから。

 今回はなるべくお安く、ということでスタンド一本だけで解説しますが、ブーム付き一本、なし一本と二本あると便利です。

 それに付けるライトのソケットはクリップ式のにしましょう。光源は最低でも二カ所用意しますので、二個必要です。本当は専用の脚のついているスタンド式が一番便利なんですが、ブーム付きスタンドが一本あればなんとかなります。後から補助光用に別のスタンドを買っても、クリップ式ならそれにも止められますから、無駄にはなりません。大体三千円から五千円程度。幾つかのメーカーから出てますが写真は同じくKing社のもの。下部のクリップで固定します。
 電圧の低い、白黒(モノクロ)用ってのや、ビデオ用のも出ていますので、必ずカラーランプ用を購入してください。


 ランプ(電球)本体も同じく必ずカラー写真撮影用のを買います。白黒専用のとかもありますのでご注意を。運が悪いとすぐに切れてしまいますので、予備も忘れずに数個買っておきます。極度に明るいので、極度に熱を持ちます。一時間撮影すると最低一つは切れる覚悟でいてください。ちなみに昔あたしの助手だったA君は、買ってきたばかりのライトを、スイッチオンの瞬間でおしゃかにする名手でした(?)。予備は多めに用意しましょう。
 また電源も考慮しなければなりません。撮影ライトのソケットについているコードはわりと長い気がするんですが、実際に使うと「コンセントに届かないっ」ってな場合もあります。延長コードとかタップが必要になる場合が多いんですよ、実際。あたしの実家の三階はMF工場と化していたんですが、ここでは4面それぞれに独立したコンセントを設けていました。コンプレッサーとかドレメルとか、この撮影ライトとか、ずいぶん容量のでかいのを使うのに、距離があっては面倒だからです。他にも机の目の前に換気扇をつけて、コンプレッサーから噴出すシンナー分を総て強制排出するとか、いろいろ設計段階から要望を入れたので工務店の人に「???」な顔をされましたが。
 それでも、やっぱり撮影時には電源、届かない事が多々ありました。念のため、延長コードも用意しておきましょう。

注意:熱の火傷も大変ですが、ご家庭のワット数によっては、呆気なくブレーカー、飛ぶかも。500wのランプ二灯でそ結構食いますよ、電気・・・

 ポジフィルムの鑑賞にはダイレクトプリントという焼き付けもできますが、高いので、大抵はフィルムそのものを見ることになります。で、マウントが必要になるわけです。スライドに使うフィルムは白い外枠に入ってますよね。これをマウントと言います。小さなカメラ屋さんでも大抵は置いてますからフィルムを買ったときでも「マウントはありますか」と聞いてみましょう。紙製のとかプラ製のとか種類があるんですが、まぁ、安いのでいいでしょう。500円しないと思いますよ。もちろんライカ版(35ミリ版)を買ってください。で、ついでにルーペも買いましょう。もしもないなら文具屋さんなどでも扱ってます(あたしのはフジカラーの5、5倍で二万くらいするヤツですが、もらいもんです。はは)。すっごくたくさんあるのでいろいろ見てみましょう。3倍以上ならOKです。値段は1、2万ってとこですが、もっと単純な編集作業用のだと4、5千円もあれば買えます。写真のは近代インターナショナル社の4倍ルーペで¥12,800。


 それと、予算があればビュアーも買っておきましょう。ポジフィルムを鑑賞するための道具です。下面に電球が入っており、ポジフィルムを入れて見るもの。いろんな商品が出てますが電池式の小さいので十分です。フィルムをさし込む形式のと、マウントをはめる形式のと、両方に対応しているのがありますが、両対応が便利。あたしはドイツ製の携帯ビュアーで両対応のを使ってます。
 お値段はこれこそピンきりで、写真左の薄型携帯用はハクバ社の製品でなんとお値段¥6、000のもの。単四電池で光り、マウント2枚を並べて比較できる他、上部の透明カバーでフィルムのチェックも可能。これは欲しいぞ。右のはマイネッテ社ので¥8、800。
 本当はセル画とかを描くようなライティングボックスがあれば一番なんですが。これも小さいのなら一万円くらいで買えます。でも電池式のビュアーだと、オフ会とかに持って行って仲間に見せられるでしょ。それが楽しいかな。
 一方、ライティングボックスがあると原画とかいろいろ使えるので、一長一短。
 ボックスもビュアーもないと窓とか蛍光灯とかに透かして確認することになります。光が平均的でないので、慣れるのにちょっと時間がいるかも?

 他に背景紙として、文房具屋さんで一番大きなラシャ紙を買ってきます。色は好きでいいんですが、最初は一番目立たず、露出の邪魔にならない、薄い灰色がいいでしょう。慣れてきたら、白っぽいもの、黒っぽいものといろいろ買ってみるといいですよ。
 あと、文房具屋さんに行ったなら、一番大きなトレーシングペーパーも数枚買っておきましょう。これはデフューザー(詳しくは後出)にするので厚い方が効果的です。

 他には三脚とカメラ一式、そしてもちろんフィルムが必要です。
 三脚は大きく分けて二種類あります。携帯用の小型と、スタジオ撮影用の大型。MF撮影には大型がいいんですが、すごく高いんで、とりあえずは小型ので我慢しましょう。なにせ大型のは「機関銃固定台座兼用」なんてすごいのもありますから。
 で、小型にしても、できるだけ重いのにしましょう。三脚について語ると終わりがなくなるので、それはスリックさんにお任せして、お店で使用目的と予算を告げ、選んでもらうといいでしょう。大体2万円ってとこでしょうかね。あ、そうそう、カメラを縦位置にした時に、なるべく丈夫なのを店員さんに選んでもらいましょうね。

 フィルムは正確な色再現の出来るポジ(リバーサル)フィルム。これは決まり。ISO感度は基本の100でいいでしょう。本数は撮る予定のMF数の5、6倍は必要です。10体撮るのなら、60枚として、36枚撮り2本ってところですかね、予備も含めて。24枚撮り2本に12枚撮り一本でちょうど60枚。その方が無駄がないような気がしますが、実際には買う本数が多いので高くつきます。フィルムは冷蔵庫に入れておけばしばらくは持ちますから、数本まとまって、あるいは一箱まとまって買うと安いものです。冷蔵庫に36枚撮りを数本、常に用意しておきましょう。(奥さんに怒られないようにちゃんと説明しておいてくださいね)
 また、本数を減らすのは経済的要素のためだけではありません。フィルムチェンジは慣れていてもなかなか時間がかかります。それに、強い光の中でフィルムチェンジするのは、ちょっとした拍子に光がパトローネ(フィルムの入っている金属の筒)の中に入り込み、フィルムを駄目にする可能性もあります(これを「かぶる」といいます)。撮影はライトの寿命の問題もあり、撮影者自身の暑さ対策の意味もあって、スピーディに進むに越したことはありません。36枚撮りで計算する方がいいでしょう。もちろん、途中でフィルム交換しないほど少量のショット数なら別ですが。また、バラしている最中にフィルムチェンジして、「はて、どこまで撮ったっけ」ってなことにならないように、長めのにしておきましょうね。

セッティング

 さて、準備が揃ったとしましょうか。
まず机を用意します。コタツでも、何でもOKなんですが、必ず1面は壁に付けられるようにしてください。その反対側から撮影することになります。
 背景紙の短辺側の一端を手前側(撮影する側)の端に固定します。そしてそのまま机を横断させ、壁にもう一方を固定します。手前30センチくらいまでは机の上面に接し、それからなだらかな山のように上面から離れ、壁のできるだけ高い部分までしわなく伸びている状態がベスト。こうしますと、背景に余計な線が出ず、MFが綺麗に撮れるのです。
 次いでスタンドを用意します。MFの真上(できればちょっと手前)側に主光源(トップライト)を置き、ほぼ真横手前側に補助光(サブライト)を配置しますので、まずはカメラ予定位置よりちょっと後方、左右どちらかにスタンドを立てます。左右のどちらかにするかはMFの向きとあなたが考えている構図によるのですが、実際にはあまり広いスペースがとれず、必然的にどちらかに決まってしまうことが多いですね。


 ついでブームを伸ばし、トップライトの位置を確保します。クリップでブームに固定。ついでサブライトをスタンドの脚、ほぼMFの高さくらい(気持ち上の方がいいかな?)の場所にこれもクリップで固定します。この時、ライトのコードをブームかスタンドにうまく巻きつけ、なるべくライトから離してたらすようにします。ライトの熱は非常に高く、コードのビニールなんか簡単に溶かしてしまいますから。電源をいれないままで、ライトの向きを調節します。逆光にならないようにするのが基本ですから、カメラよりも後方、つまりあなたに近い位置から、MFに向けてライトを固定します。
 図は真横からみたものと、真上から見たもの。薄茶色が机、その上にあるのが背景紙。赤いのがMFね。
 さて、最後に三脚に固定したカメラを用意したら、やっと主役、MFの登場です。
 まずはMFを置く場所を簡単に決めておきましょう。1体置いたら、それを実際にレンズで捕らえてみます。ライトを付けていないので室内光だけではちょっと暗いかもしれませんが、頑張ってピントを合わせます。ピントあわせはフィギュア撮影の鉄則、「目」にしておくのが無難です。ファインダーを覗き、構図を確認しながら、被写界深度も考慮して、なるべく横に広がるようにしましょう。奥に伸びている手や尻尾はまずピントが合わないと覚悟してください。左右に伸びているのなら、フィルムからの距離はほぼ等間隔ですから、被写界深度がわりと浅くても合焦します。

デフューズ

 次はデフューズ。撮影用ライトは本当に明るいので、触るとヤケドどころか、焼肉状態になれます。近くにいるだけで、髪のてっぺんだけアフロになったことも。そんな強さですので、直接MFにあてたら、それはワイキキビーチで日焼けを楽しむ人たち状態。光が当たっている部分は真っ白。影は真っ黒。ラチチュードの狭いポジでは二原色化しちゃいます。ですが、ぐっと離してしまいますと、今度はシャッタースピードの関係で被写界深度が浅くなってしまいます。バランスが問題ですね。そこでライトを微妙に調節できるようにブーム付きスタンドを購入したんです。でも、それでもやはり影が強くでてしまうと思います。そんな時にはデフューザー
 光を和らげることで解決するのがこの方法。何のことはない、買ってきたトレペを光線に垂直に置き、その「影」の中で撮影しちゃうんです。こういった緩和方法をデフューズといい、使用する材料をデフューザーといいます。先ほどの図では横から見た方に緑の線がありますね。あれがデフューザーを意味しています。
 デフューザー、この場合トレペですね、これをいったん通ったおかげで光の量が若干少なくなります。そして半曇りガラス状態のトレペの表面がいい効果を及ぼし、光が微妙に乱反射され、影の「くっきり」感が薄れます。こうすることで、太陽光のように全体が照らされ、最輝部と最暗部とのラチチュードも緩和されます。
 た、だ、し!
 トレーシングペーパーは「紙」。光源に近づけすぎると燃えちゃいます。十分に離しているつもりでも、撮影中にこげ臭いにおいに振り向くと、トレペがこげてる、なんてことも起こり得ます。火事にならないよう要注意。
 対トップライト用にはカメラの天辺、ペンタプリズム部と壁の間に紐なりガムテープなりをはわせ、その上に乗せるというのが一番簡単でしょう。よくファインダーをのぞき、視野総てがトレペの影に入るように調節します。慣れればライトを付けていなくても大体分かるんですが、最初は仕方ありません、ライトを実際に点けて確認しながら固定しましょう。
 サブライトのデフューズには、今度はカメラ側面と机の端を利用して固定しましょう。その結果、MFが置かれる場所はトレペに完全に囲まれ、ファインダーをのぞかないと見えなくなります。MFを手で持てるように、サブライトの反対側はなるべく開けておきましょう。そこが唯一の出入口ですから。

レフ板

 さて、こうして光は加減できたわけですが、やはりライトのない方向とか、下部は暗いままです。ここにも少し明かりがほしいところ。そこで登場するのがレフ板
 よく写真撮影現場で、アシスタントが銀色の大きな板を持って、光を反射させてますよね。あれがレフ板。反射板という意味ですね。これを使用すると、好きな所に補助光を与えられます。でも、あんな大きいのを置く必要はありません。アレは実際の人間サイズ用ですからね。MFの場合、大雑把に言えば、MFとほぼ同じくらいの大きさがあれば十分です。それに銀色である必要はありません。普通のコピー用紙で十分。真っ白で多少厚みがあればいいんです。これを写真のように三角形になるように折り、一面をレフ板にするんですね。置けるように三角形にしてあるわけです。MFのそばにそっと寄せてみましょう。効果的なのはサブライトの反対側。トップライト、サブライトの両方の光があたる部分からMFに寄せることです。こうしてトップ、サブの両方から影になる部分で、カメラの方を向いている場所を照らします。写真では赤がトップライトを、黄色がサブライトの光線を意味しています。



 この2枚の写真ではライティングは同じです(!)。レフ板だけでここまで違うんです。もちろん、右の写真はわざとレフ板が見えるように撮っていますが、実際にはMFを中央に寄せてレフ板が写らないようにします。これだけ違いますから、ぜひレフ板は使うべきです。置き方でずいぶん違うので、実際に肉眼で見ながら調節してみましょう。三角形の角度と、紙自体の向きでずいぶん明るさが変わるのが分かります。ちなみにこの写真のアリスちんの場合、レフ板の効果が出すぎなんで、もうちょい離した方が自然に写ったみたいですね。あるいは反対側にも置くとよかったかな? ま、レフ板効果の確認ということでお許しを。
 この調整には実際にライトを点灯して確認することが必要です。そのため、この辺かな、という所にとりあえず置いてみて、いったんセッティングを終了します。

露出


 さて、セッティングが終了したらとりあえずMFを置く予定の所に一体置いて、一度ファインダーを覗いてみましょう。もちろんライトを点けて。まるで本当に陽光のように、空(にあたる上部)全体から光がおちているように見えるはずです。そう、光のドームにいるように。この時にレフ板の効果も確認します。フィルムに写らないように微調整しながら、一番効果的な場所を探します。
 で、決まりましたらMFをいったん外し、その場所に手を伸ばしてみましょう。で、ピントを合わせてみますと、ほら、指紋までくっきり。
 「ほう、こうなっていたのか」なんて関心している時間はありません。ライトが次の瞬間切れちゃうかもしれないんです、すぐに露出を計ってみましょう。
 人間の皮膚はこういう場合、一番分かりやすい露出サンプルを出してくれます。本当はちゃんと専門のグレー紙というのがあるのですが、やはりMFは人形。顔が命です。肌色に合わせた露出も考慮すべきだとあたしは思っています。
 で、この時の露出が、実際にMFを計った露出より明るかったら、多少明るめの方に多くバラしてブラケティングします。暗かったらその逆ですね。もしフィルムに予備があるなら、念のため、この時記録した露出でも撮影しておきましょう。

露出補正

 露出を調節するには、基本として絞りなり、シャッターなりをいじることになります。他にもむりやりフィルム感度をだます(例えば本当はISO400のフィルムなのに、100に設定したり、1600に設定したり)という方法もありますが、この場合でも微調節はできません。しかしながら、ラチチュードの狭いポジの場合、「もうちょっと明るかったら」というように微調節が必要な場合もあります。
 もしあなたのカメラに露出補正機能が付いていたなら、より詳細に修正できるかもしれません。カメラによって単位が違うのですが、たいていは1/3ステップ程度で修正できます。他の方法ですと1EV、もしくは1/2EV単位ですから、この方がより細かく調節できます。カメラによって補正方法が異なりますので、詳しくはカメラ付属のマニュアルを読んでください。

MFの用意

 構図が決定したら、今度は撮影する順番を決めます。大抵撮影場所は即席で作ることになります。そのため、終了後には片づけますよね。そこでできれば一度に全部撮影してしまった方がいいので、撮影予定MFを並べて考えましょう。総て単体で撮るにしても、大きさがずいぶん違うはず。横や縦など、カメラの向き、被写体との距離も変化するはずです。それが二度手間にならないように、まずは小さいのを全部撮影し、次いで大きいの。あるいは露出補正の関係で、まずは白いの、最後に黒いの、など、撮影する順番をよく考え、手早く進行できるようにしましょう。
 あなたが記録用にMFを撮影しているのなら、同寸で撮影した方が便利です。この場合にはマクロレンズにたいていついている「倍率スケール」を利用します。
 まずは一番大きなものを「ステージ」に置き、カメラの位置を調節して構図を決定します。その時の「倍率」をメモしておき、以後、その倍率に合わせておきます。この場合、他のMFに交換したら、レンズのフォーカスリング(ピントリング)をいじるのではなく、MFの方をドンピシャのピント位置に微調節します。
 ちょっと面倒ですが、MFの台座の位置に目立たないように鉛筆でしるしを付け、毎回そこに置けば大抵は支障なく撮影できます。こうすれば、ポジフィルム上で同寸に記録されています。
 この方法の欠点は、やはりMFの大小が還元されていないこと。小さいMFは小さいまま、大きいMFは大きいままですから、写真としての面白みには欠けます。でも記録には一番、向く方法でしょう。ドラゴンなどの大型用の倍率と、人間サイズの倍率を固定しておけば後々のデータ作成に便利です。

 撮影前に、あたしは机の上で被写角に入らない場所に未撮影MFを撮影順に並べ、撮り終えたら机の下に移動するという方法を使ってます。MF同士がぶつかって、折角の色がはげたら大変ですし、少しでもライトの寿命を延ばすため、手早く作業し、短時間で電源を落とすに越したことはありませんから。

外光

 ライトの話ついでに、外光について。
 撮影用ライト以外の光源はなるべくなくした方が色再現が正確になります。色温度が原因ですね。蛍光灯ですら正確な露光には邪魔になります。そのため、大抵のスタジオは地下など、陽光がささない場所にあります。窓があってもカーテンで覆っているのは余分な光源があると、露出が変化してしまうからですね。もちろん色も変わってしましますし。
 というわけで、撮影場所は密室、しかも簡単に天井光が消せる場所が一番です。また、壁などに乱反射するほど撮影用ライトは強力なので、壁の色も白(オフホワイト)か薄いグレーのような場所がベスト(って、そうはないなそんな場所。あくまで理想ね)。
 昔雑誌の仕事をしていた時のこと。締め切り近いのにスタジオが使用できず、仕方なく編集部で深夜に撮影したことがありました。オフィス街だったので、カーテンを全体にかけるとなんとか暗室を確保でき、結局朝までかかって表紙用のを撮影しましたっけ。周りに歓楽街さえなければ、深夜に撮るのも手ですね。
 あと、知人ではトイレで撮影している奴もいます。壁は真っ白で手ごろな狭さ。便器の蓋の上に木の板を置き、ラシャ紙をタンクの上部で固定して1/35の戦車を撮影してましたね。撮影ライトは天井に固定。トイレとして使ってるのかどうか、質問したくなったほどです。

 逆に外光のみで撮影する方法もあります。もちろん、この場合の外光とは太陽光のこと。実際に屋外で撮影すると、模型が実物のように見えると言うのはよく使われる方法で、某有名模型雑誌ではこれをメインにしているほどです。
 太陽光の場合、夏場のよほど厳しい直射光でないかぎり、デフューズなども必要ありません。必要な場合でも、薄いトレペ一枚で十分。レフ板はあった方がいいですが、これも必須条件ではありません。要は自然に写すことです。ディオラマなどを組んだ場合には最も効果的に全体に光を回せる方法です。
 朝日や夕日だと色温度のせいで赤くなったりしますが、日中の普通の光なら、陽のあたる室内でも撮影可能です。窓にトレペをはったりできるので結構楽(くもりガラスならそれだけでデフューズ効果があるのでその必要もなし)。ただ、撮影者の影が入らないようにするのがちょっと大変かな? 

 さて、話を戻しましてMF撮影。
 露出をバラシながら進行し、完全に終了した段階でもしもフィルムがあまっているなら、今度はお気に入りの子のどアップとか、背面とかも一応撮ってみましょう。また、もしも今後も撮影する可能性があるのなら、ライティングした状態で、セッティング全体を1枚撮っておきましょう。どの辺にスタンドがあり、ブームのどこにライトを付けたか、影はどのように伸びているか等々、記録を残しておくと後々便利です。もし今回失敗していたら、その状況を参考に次回のセッティングを修正すればいんですから。こういう時にはマクロ撮影も通常撮影もできるレンズは便利です。


「処理ノーマルのスリーブで」

 さて、撮影が終了して後片付けができたなら、早速フィルムを現像に出しましょう。ポジフィルム(リバーサルフィルム)の場合、大抵専門のラボ(現像所)が行いますので、多分近所のカメラ屋さんに出すと「3日後になります」とか言われてしまいます。それがいやなら自分で新宿なり渋谷なりのラボに持っていっても、ちゃんと受け付けてくれます。この場合、特急仕上げで頼めば2時間くらいで上がります。
 でも、大抵の場合は近所のカメラ屋さんで頼むでしょうから、ま、数日の間は我慢しましょう。なにしろこのフィルムの使用者はそれなりのプロ系さんばかりですから、使用頻度が少ないんで、いきおい、取り扱い店も減っちゃいます。それに、なによりほとんど総て手作業ですから。
 普通のフィルム(ネガね)は大抵同時プリントですが、ポジの場合には前出のマウントという形になります。スライドに使う白いフチに1枚1枚入って帰ってくるのです。そのため、そのまま映写機にかけて楽しめますが、露出をバラして撮っているなら、36枚のスライド中、必要なのはたった5、6枚。後は「ゴミ」です。で、このマウント代って結構高いので(実はマウントよりケースの方が高価)、ちょっと無駄にした気分になるかも。お店によってはサービスで付けてくれますが、大抵は別料金で加算されてます。
 それをふせぐには、フィルムを現像に出すときに、こう言えばいいんです。
 「スリーブでお願いします」
 こう言えば、カメラ屋のおばさんは「はいはいスリーブね」とか言いながら、書いていた紙に印刷してある「スリーブ」というところに○をつけてくれます。で、仕上がったフィルムはスリーブ状態、つまり普通のネガフィルムのようにシートに入った状態で返してくれます。場所によってはフィルムを切断せずに、丸まったまま返してきますがw

 また、ラボなどの専門的な所に出した場合、「現像処理はどうします?」と聞いてくる場合がります。ポジは印刷に使用することが多いので、現像処理という方法で最初から最適なフィルムを作る、いわば修正をしておくことが多いのです。そういう場合には慌てず騒がず、こう応えましょう。
 「ノーマルで結構です」

 場所によってはビュープリントしますか? と聞かれるかも。カラーポジの現像時にのみ受け付けてくれる特殊な「同時プリント」です。幅82.5ミリのロールプリントに全写真をそのまま連続でプリントしてくれます。ビュワー使用のチェックなしでも最適露出が抽出できます。お値段は数千円なので頼んでもいいでしょう。

 あ、そうそう、初めてポジを頼んだのならマウントも買っておきましょうね。

最適露出の摘出

 さて、家に着いたらじっくりと出来あがったフィルムを確認。一番最初に撮影した写真をビューワーで覗いてみましょう。露出をバラしたので、同じ写真が明るいの、暗いのといろいろ並んでいるはずです。この中に隠れている「最適露出」を探しましょう。しっかり見ませんとフィルムが小さいので確認しづらいため、ルーペも併用して確認します。露出が合っている物はMFの色に近い発色になっているはず。特に白や黒のグラデーションなどで確認できます。で、一番気に入ったのが決まったらそれをハサミで丁寧に切り落として買っておいたマウントにはめ込み、白フチ部分に名前を描き込んで1枚あがり。
 ついで2枚目、3枚目と続けて行くのですが、ライティングが統一してあるなら、大抵同じ露出補正がぴったりのはずです。たとえば「カメラのいう適正露出より一つ明るいの」とかですね。その位置の写真を確認すれば、わざわざ5枚全部見る必要はありません。
 で、もしもその適正露出が5枚撮ったうちの真ん中にあった場合。カメラのいう適正露出が正しかったということになります。撮影したカメラ様を机に押し頂き、丁重に謝罪をささげましょう。「疑って悪かった!」と。


 ただし、MFの配色によって、適正露出の位置が異なる場合があります。ほとんど黒のデーモンと、ほとんど白の天使様では反射率が異なるため、暗すぎたり、明るすぎたりして、一つ隣のコマの方が合っているように見える場合があります。
 記録を残しているのでない限り、あなたの感性で選んでOKですが、基本的には同一露出補正を行ったものを選ぶことになります。そうしないと背景紙の色が変わっちゃいますので。でも、ま、個人の趣味で撮影してるんですから、ご自由に。

 この適正露出のクセを覚えておけば、次回からのバラシは3枚で済みます。明るい方にずれるのならずらしたものを中心に、半段暗いもの、明るいものを撮っておけば大抵はちゃんと撮れているはずですから。ただし、セッティング、特にライトの位置とかデフューザーの厚み、あるいは背景紙を変えたりしたときには5枚撮った方が無難でしょう。背景が黒なら、カメラは全体を明るくしようと自動補正しますし、白なら暗くしようとしますので、背景紙は共用の方が安全です。
 もちろんモンスターは黒、PCは白、というように背景を変えるのなら、毎回5枚づつ撮っておきましょう。

フィルムの保存

 フィルムは生もので、賞味期限ならぬ使用期限があることはご存じでしょう。でも、撮影後のフィルムも生きてるって知ってました? 化学的に変化するフィルム、実は撮影後、つまり現像後にも若干ですが変化し続けます。特にポジフィルムは特殊なフィルムなのでその変化によって色が微妙に変わってゆくことがしられています。そのため、撮影後のフィルムはなるべく早く現像し、保管も温度変化のなるべく少ない、そして湿度があまり高くない場所に置くのが一番です。メーカーによっては撮影後のフィルムも冷蔵庫への保管を推奨しているところもありましたからね。

 まぁ、最近のフィルムはずいぶん「丈夫」になってきましたからあまり気にすることはありませんが、直射日光の当たる場所とか、真夏に車の中に放置するとかの極端な温度変化場所だけには置かないようにしましょう。
 また、折に触れ、ビュアーにかけて鑑賞してあげるのが結果として空気の入れ換えになりますので、大事にしまっておくよりも、遊びに来た友達に自慢する方がいいでしょう。ははは。

 他の鑑賞法として、折角のポジです、スライドにしてみましょう。映写機は5、6万しますが、写真のキャビン社製のように¥17、000というお手頃のもありますので一度ご検討を。

 ビュアーで一枚一枚見るのは面倒だとか、額に入れて飾っておきたい、という人はポジフィルム専用の焼き増し、ダイレクトプリントを頼むことになります。これはずいぶん値段が張ります。サービスサイズに準ずるL版とかちょっと大きめのカビネ版とかの、小さめの大きさでもずいぶん高いものです。しかし、その発色たるや見事なもの。
 最近はデジカメをフォトプリンターで印刷したのも写真並にきれいですが、一度ダイレクトプリントを見てしまうと、「あくまでネガ写真並だよな」なんて思ってしまうほどきれいですよ。一度近所のカメラ屋さんで確認してみては? 
 ちなみにポジの確認にはライトを浴びせて見ているので、明るく見えています。その状態でベストと選んだコマはビューワーではいいんですが、焼き付けますと多少暗めに仕上がることが多いので、少し明るめのを持っていった方がいいんですね。もしも「超お気に入り」のがあったら、一つ明るめの補正したコマも取っておきましょう。いつかダイレクトプリントする時のためにね。

 こうして一回の撮影は終了しました。お疲れさま。