MFガイド塗装編追補2 筆
さて、今回は「塗装編補追その2」ということで、主にブラシ、つまり筆についてあれこれ書き込んで見ましょう。といってもいつもどうりに「役に立つ」、「立たない」は執筆基準に入っていませんのでご了承を。よもやま話だと思って読んでくださいね。
ブラシは千差万別
ブラシ(筆)は塗装上絶対の必需品。でも、一度使用し始めると、ずっとそのメーカーのを使っている人が多いほど、あまり重要視されていないのが現状。ま、それだけ日本のブラシメーカーの品質が平均的に向上しているということでしょうね。
ブラシはいろいろな種類がありますが、我々MFファンが主に使用するのはやはり面相筆でしょう。これは丸筆の一種で極細のもの。他には刷毛の小さいヤツみたいな平筆もわりと多く使用します。特に下地段階には必須なものです。
しかしながら、MF塗装のほぼ80%以上は面相筆によるものになるでしょう。コレは通例の模型用では細部用の、いわゆる「仕上げ筆」になりますが、サイズが小さいMFでは実際上これが主兵装。巨大なドラゴンでも塗らない限り、通常の丸筆は使用しません。
ブラシはその太さで1番、2番、3番……という呼び方で順に太くなって行きますが、面相筆クラスになると1番より細いので0番、00番、000番といった、ちょっと無理な名称の物もあります。まぁこれを何本か使って塗装が進行します。
人によって塗り方に特徴があるので「これがベストだ! この組み合わせで買え」というような明確な表記はできないのですが、私は0、1、000という順で多用しています。ま、参考までに。なお、参考ついでに、私は白用と肌色用(及びそれぞれの陰色用)は専用にしています。色が混ざると洗うのが面倒ですから。他に瞳専用のタヌキ筆も用意していますが、黄系と白系だけを専用にしている人もいます。これらは慣れたら考えてみればよいので、まず最初は2.3本面相筆があれば充分でしょう。
ナイロンブラシ
穂先が合成繊維でできているブラシを一般にナイロンブラシと呼びます。でも、正直に言うと、本当にナイロンだけでできてるのかは知りません。単に天然素材のものと区別するためにこう呼ぶのかもしれませんね。
一般的に言って筆の需要のほとんどは毛筆用でしょうから、ナイロンブラシは低単価な安物扱いされてます。でも模型業界ではこれが本流。町中の模型店にある筆のほとんどがコレで、この世界では大手を振ってまかり通ってます。わざわざ天然筆と言わない限り、筆といえばナイロンブラシ系を指すほどですから。
これだけ一般化したのは、確かに安いってのもその理由でしょうが、実は天然筆がシンナーに弱いからなのです。ですから、もしあなたが油性アクリルorエナメルを主兵装に選んだなら、筆の装備もナイロンブラシに決まり。水性系を選ぶのなら、天然でもナイロンでもOK。
さて、模型店にいろいろ並んでる筆(ナイロンブラシのことね)、どれを買いましょうかねぇ。刷毛の小さいやつ(平筆)やら書道に使ってた筆の小さいやつ(丸筆)なんかが並んでいるはずです。さて、どうしましょう?
分かんないならお店の店員さんに相談するのが筋というもの。店員さんはそのためにいるんですから(きっぱり)。
「予算は幾らくらいです?」と、店員さん。
「えっと、幾らくらいするんですか? あんまりよく知らないんで……」
「塗るのはプラモですよね、だったら……」
「あ、いや、メタルフィギュアなんですけど……」
ここであなたの運がものを言います。店員さんがMFに詳しい人ならラッキー。ま、MFをたくさん置いている店ならまず問題ないんですが、普通の模型店だったり、あなたの運が極端に悪かったりすると、店員さんの顔に驚愕の色が浮かぶでしょう。
「メタルフィギュアですか……。う〜ん、どんなのを使うのかなぁ」
さあ困った。店員さんも困ってしまった。ああ、やっぱりMFって弱小ジャンルなんだって実感してしまうさみしい瞬間……。
っていうにはあまりに悲しいので、簡単にレクチャーしときましょう。
まず用途によって考えます。塗装の段階をシミュレートしてみましょう。
まずは下地造りからですね。プライマーを筆塗りするなら、プライマー用がいります。手早く塗りたいので面相筆ではなく、平筆がいでしょう。それも一番小さいヤツ。(スプレープライマーを使うのなら必要なし)。
次は下塗り。明暗法ならツヤ消し白のスプレー。暗明法ならツヤ消し黒のスプレー。どっちにしてもスプレーだからブラシは必要なし。
基本塗装。ドラゴン級の大物ならともかく、普通MFの塗装面は1、2ミリ程度でしょう。で、ここで使うのは直径2ミリ程で長さが1センチ以下くらいの穂先の面相筆が便利かな?
細部塗装。最初から瞳を画きこもうといっても難しいもの。でもせめて唇や宝石くらいは色を付けたい。そういう箇所にはお店にある一番細いのを一本。
ベース。ただ塗るだけなら基本塗装と同じ。もしも鉄道模型用のシーナリーパウダーを使う予定なら、固定用に木工ボンドを使用します。んで、それ用に小さな平筆一本。
表面処理。ここは普通スプレーだから必要なし。
さて、上記をまとめてみましょう。基本塗装用に細い面相筆。そして細部用にすっごく細い面相筆。プライマー用と木工ボンド用は共用できるので平筆一本(これはあなたの塗装がどういう風に塗るのかで変わるので選択式。でもあった方が便利)。こうなれば簡単ですね。
さて、買う筆が決まったところで、ちょっと全体的な話題を。
模型工作には幾つか有名なテーゼがありますが、私の座右の銘にしているものの一つににこんなのがあります。
「道具は腕の延長」
これには二つの解釈がありまして、矛盾するところがまた模型の奥の深いところ。
1:「道具は腕の延長。だからなるべくいい道具を買えば腕も上がる。道具の差で完成品に差が出るのは愚の骨頂だ」
2:「道具は腕の延長。だから高い道具を買っても、あくまで自分の腕、技量が物をいう。道具に金を注いで技術が追い付かないのは浪費でしかない」
どちらも、ある意味真実です。一見すると相反しているのですが、模型にどっぷり染まるとコインの表裏のように一体化してるのが分かるんですよねぇ。
さて今号の話題はブラシ。同じ大きさでも120円から400円、ものによっては二千円とかいうのもあるでしょう。
「よっしゃ、俺は本格的に始めるから、兄ちゃん、一番高いのにしてくれや」という[1:派]の人もいるでしょう。
「MFをもっと買いたいし、塗料も一本なら安いけど、揃えるとかなりかかるし。筆はとりあえず一番安いのでいいや」
そんな人もいるはず。でも、ここはできれば後者の選択をした方が無難。
「え〜、俺は本格的にしたいんだ、高いのを買うぜ」っていうあなた。本格的にしたいのなら、なおのこと、最初は安いのにしましょう。筆塗りは塗装では基本中の基本。エアブラシを多用する人でも、最後には修正やスポッティングに筆塗り技術がモノをいいます。本格的にやりたい人も最初は筆に慣れることです。安物はいや、というなら400円程度のリセーブル(後出)で止めておきましょう。
筆や塗料は消耗品。惜しまずにどんどん使ってこそ技術も上がります。高い筆はその後で充分。「どうしても雑誌に載ってるのみたいに塗れないなぁ」という壁にぶつかった時にこそ、前記の[1:]が生きてくるのです。その頃には自分の癖に合ったブラシを自分で探せるようになってるはず。よい道具との出会いはその後でいいんですよ。まずは自分の指のように筆を使いこなすことが先決でしょう。
一方、とにかく塗ってあればいいや、という人なら安いのでOK。ってわけで、私が入門用に薦めるのは3、4本セットの安筆。4、5百円で買えるので経済的です。確かにこういう筆は安かろう、悪かろうで耐久性に難あり。でも丈夫でなくても購入当初はちゃんと使えるから、自分のPCだけでも塗れればいいって人にはこれでも大丈夫。それに本格的にやるって人がどんどん練習して使いつぶしてもあまり気にならないお値段だし。最初のを使いつぶし、二回目、三回目を買う時、ステップアップするかそのままか悩んでも間に合いますからね。
「いや、そんな安物じゃ俺のプライドが許さない。やっぱりウィンザーニュートンじゃないと」っていうブランド嗜好の人は、ま、画材屋さんにでも行って勝手に買ってちょうだい。貧乏人のあたしには理解できない人たちだからね。
セーブルブラシ
水性アクリルファンの皆様お待たせしました。いよいよ天然素材の筆、つまりセーブル系のお話しです。
シンナーとは無縁の水性アクリルなら、ナイロンブラシではなくセーブルブラシでもOK。ところが、セーブルは高い! 千円代はざら。ってわけで、あなたが初心者なら、やっぱり上記のナイロンブラシの安いセットをお薦めします。以上。
で終わっちゃうと少々さみしいので、ちょっと追加。ナイロンブラシにはセーブル並の品質を持つ高級品、リセーブルってのがあります。メーカーによって呼び名は変わりますが、セーブルほどじゃないけどちょっと高めの筆がそれ。これなら穂先の乱れも少ないし、まずまず丈夫。
でも、本当を言うと、水性だからってセーブルを使う必要はないんです。油性系の人にセーブルをあまり薦めないのはシンナーに弱いからだけじゃないんですね。油性系塗装技術の基本中の基本、「ドライブラシ」は筆を痛めやすいんです。だから丈夫なナイロンブラシが便利なんですね。一方、水性系の王道、「ウォッシング」はあんまり筆を痛めません。だからセーブルでもいいというわけです。「でもいい」ですからね、「じゃなきゃだめ」じゃありませんよ。慣れた人ならセーブルでもドライブラシをさっさとやっちゃいますし、シンナーもちょちょっとつけて手早くぬぐうならわりと大丈夫なものですから。
要はどっちに向くかという才能(?)の差だけで、練習でなんとでもなるんですが、やっぱり始めたばかりなら訓練も兼ねて筆を使いつぶす覚悟ってのがいいでしょう。そのうちいやでも、このブラシじゃ瞳は塗りにくい、って思い知る時期が来ますから。それまでは安い筆でいいですよ。その分、一色でも多く買って、一体でも多く塗りましょう。高い筆は塗料数本分、MF数体分はしますから。
習うより慣れろ。これが基本です。
さて、ちょっとここで横道ね。
ウッディフィット
広島に上野文成堂という、いかにも由緒ありげな屋号の筆屋さんがあります。書道用の高級筆が本業なのかもしれませんが、模型に便利な面相筆も各種あり、入門用に私が薦めている使い捨ての、いわゆる百円筆や三本三百円のセットなどもここから出ています。場所は広島ですが販売網は全国にあるので、気付かずに使っている人も多いでしょう。さらにここは針ヤスリの供給元でもあり、我々MFファンには特にありがたいメーカーです。
もうかなり前になりますか、ここの人がいつもどうり、にこやかに笑いながら、「今こんなのを作ってるんですが……」と大きな鞄から一本の筆を取り出しました。
「うわぁ太い筆ですねぇ」と私。
「通常、極細の面相筆は軽いのがいいというので、軸をなるべく細くしていたんです。でもこれは素材自体を軽いものに換えて、逆に軸を太くしてみたんですよ。こう見えてもすっごく軽いんです。持ってみませんか?」
文成堂さんはそういって笑顔で筆を差し出しました。言われるままに手にしてみると確かに軽い。白木のままの素材も手にしっくりくるし、取り回ししやすそう。
「逆転の発想っていうんですか、軽くて持ちやすいし、指が余らないはずなんです。細か〜いところを塗るのにどうですかね。何か試しに塗ってみてくださいよ。とにかく筆は塗ってみないと分かりませんからねぇ。筆おろしはしてありますから、このまま塗れますよ」
にこやかな文成堂さんに薦められるまま、私は当時RPGマガジンに載せるつもりで塗っていたMFが手元にあったので、修正にちょっと使ってみました。軸身が太いので逆に穂先の微妙な動きが調節でき、なにしろ短いので重心が定まりやすく、やっぱり取り回ししやすい。穂先は高級筆ならではの塗りやすさ。修正を終了した後も、いつもなら愛用のタヌキ筆で塗るはずの瞳を、そのまま、この筆で塗ってみました。
「こりゃいいですねぇ、買いますよ、幾らです?」
私の言葉にさらに笑顔のレベルを上げる分成堂さん。
「すみません、これはまだ試作品でね、お譲りできないんですよ。お値段は素材の関係上ちょっとお高くなるんですが……」
そういってなにがしかの価格を告げたのですが、正確に幾らだったのかは覚えていません。でも愛用の狸君より遥かに安かったので、「それならコストパフォーマンスはすごくいですよ。いい筆にならそれくらい何でもありません」と言った記憶はあります。結局量産化されたらすぐに連絡をもらう約束でその日は終わりました。それから一月おき程度で「あの太い細筆、どうなりました?」という会話を何度かして、半年以上経ってからでしょうか、やっと製品版が到着しました。

あの時の試作品と寸分違わぬ使い易さで、商品名は、材質の白木を示す「ウッディフィット」。お値段は800円と1000円。「コストを下げるのに手間がかかりまして」と言いながら文成堂さんは、いつもどうりの笑顔でした。
私も知人に薦めたりして愛用していましたが、そのうち雑誌などでライターの先生方が誉めているのを見て、「うんうん、そうだよね」と一人で納得してました。
ある時、モデルグラフィックス誌などで有名なAFVモデラー、土居先生と会ったので、私愛用のを見せて、「これ使いました?」と聞きますと「コレはダメ」とのコメント。
「ダメですか? 使いやすいですよ、どうしてです?」
「細すぎるんだよねぇ。ほんの少ししか塗料を吸わないから、何度も漬けなきゃいけないんで面倒くさいんだよ。この次の太さの奴、あれがいいよ。」
コレはダメというコメントの「コレ」とは筆の銘柄じゃなく、私愛用の一番細いもの、つまり商品ナンバー5のことだったのです。先生の発言は5じゃなくて4がいいとうことでした。結局土居先生もコレを使ってたわけですね。先生は1/35の戦車系が中心ですから、MFに向く一番細いのでは細すぎたようです。
(付記:1999年秋にさらに細いナンバー6が販売になりました)
ところでこの量産品には白毛の「玉毛」と茶毛の「コリンスキー」という二種類があります。仲間内でこれは一体何かという話題になり、「コリンスキーは確かイタチかテンだよ」と落着したんですが、玉毛が分からない。はて、一体何?
「タマっていうくらいだから、きっと猫の毛だよ」
「猫の毛〜!? んじゃミケ毛とかあるわけ?」
「やっぱ海外じゃ、ヒマラヤン毛とかアメリカンショートヘア毛とかがはやってたりして」
なんて馬鹿話に盛り上がったんですが、やっぱり分からないと気になる。そこで文成堂さんに電話してみました。土曜日の夜という無理な時間帯だったんですが、電話に出た方は親切に応対してくれました。
で、コリンスキーは予想どうりだったんですが、なんと玉毛も予想どうりというか……
「玉毛ですか、ああ、猫の毛ですよ」
その一言に茫然とした私。
でも、電話を切ってからすぐに立ち直り、「すごいなぁ。きっと中国かどこかに白猫ばっかり養殖してる牧場(?)があって、ウォンさんとかいう人が経営してて、猫がわんさといて、定期的にしっぽの毛を抜かれてるんだろうなぁ」なんて、空想の[ウォン・タマ養殖所」なんて話しでまた盛り上がったりしましたが。
それから大分経って、実はこれを打ち込んでる日の夕方、文成堂さんから新たに試供品をもらいました。どうやらヒット商品になったらしく、さらに需要拡大を目指し、各誌ライターに配付しているのだとか。
「RPGマガジンのライターでもらったのは私だけだろうなぁ」とか思いつつ、いつも使っている一番細いのを選んでふと見ると、軸身に大きく「G」と記されたシールが貼ってあるのに遅まきながら気がついたのです。通産省のグッドデザイン賞に選ばれたとかで、箱を見ると全部に貼ってあります。しかもきれいにGマークが表を向いており、総て同じ高さに揃っているのです。う〜ん受賞がどうやら配付の直接原因だったようですね。
実は私は商品に貼られてるシールやラベルが嫌いで、パソコンのインテルシールなんか購入後すぐに外してしまいます。まぁライカやMacなどお気に入りのメーカーのシールはそのままにしてあるので必ずというわけではないのですが、どうも売り言葉シールは苦手なんです。
でも、家に帰ってから袋を開け、何気なくGマークをはがそうとして手が止まり、考え込みました。文成堂さんはこっちに来れないから送ってきたけど、本当は例の笑顔で直接手渡したかったんだろうなぁ。「あのウッディフィットですけど、実はグッドデザイン賞なんてのを貰いましてね、いやぁ驚きました」とか言いながら。
「よっぽどうれしかったんだろうなぁ。」
そうつぶやいて、シールはそのまま、筆差しに差しました。
シタデルブラシ
話変わってこちらは海外製。シタデルがシタデルカラー用にと出したセーブル筆です。つまりMF専用の筆。すごいですねぇ、さすがはMFの本場イギリス。
一度改定されていますが、現在はドライブラシ用、下塗り用、ディテール用、ファインディテール用などの用途に併せた名称で販売しています。一時は普通に輸入されてたんですが、あんまり売れなかったらしく、今は入手困難なため、一般的にはほとんど浸透していません。外見上は赤い軸身が特徴(昔は普通に黒でしたが)ですが他に特に取り立てた特徴はありません。ただ、ドライブラシ用の腰の強い筆など、なかなかユニークな揃えです。ましてやMF専用の筆なので、愛用する人はこのシリーズしか使わなくなっちゃうほどの魔力があります。
海外ではセーブルにしては安いのが最大の魅力で、シタデル塗りの信奉者が愛用しているのですが、日本では輸入送料がかかるので高価になってしまい、価格は国産のセーブルに負けています。日本では安価という魅力がないので一般化しないのかもしれませんね。
ブラシ使用上の注意
ブラシ話しの最後に使用上の注意などを。
まず買うとき。当然ですができるだけ穂先の揃ってるのを選びます。ただし、筆は後で穂先を整えられるのであんまり気にすることはありませんが。これがニッパーなんかだとなるべくしっかりと歯の合っているのがいいんですけどね。まぁ後の作業が楽だから、穂先が揃ってるに越したことはありません。あと、筆についているサック(キャップ)も穂先ぎりぎりではなく、長目のがいいでしょう。
買って帰って来たら一度ぬるま湯に軽く漬けて、指先でそっと整えます。「筆降ろし」という作業ですね。
分かってるでしょうが、穂先は根元から先に向かってのみしごいてください。逆にやる人はいないと思いますけど念のため。
整ったら先端を見てみましょう。よ〜く見ると一本だけ出っ張ったりしてません? そしたらハサミでそれだけカットします。ちゃんとなっていたならそのまま乾かします。
面相筆ならあまり必要ないんですが、できれば筆を逆さにしたまま干せればベスト。私は机の上に付いている本棚の左右の柱に針金を渡してあります。それに小さめの目玉クリップを十個ほど通してあり、軸身の後端をクリップではさんで乾かしています。ちょっとした工夫ですが、筆の「持ち」が変わりますよ。
乾いたらサックをしっかりと差込み直して保管しましょう。
さて塗装時には穂の半分くらいまで塗料を付けるように心掛けましょう。筆の穂先は軸身に差し込んで固定してありますので、その隙間に塗料が入ってしまうと掃除が大変ですからね。塗る時にも穂の弾性を利用しますので、先端と、たわんだ一部だけをMFに付けて塗装します。
ベースなど広い場所を塗るときには面相筆と小さな平筆を用意します。まずMFの足の周りなど、「端」になる部分を面相筆で囲むように塗ります。すぐに今度は平筆で塗るべき面積の所々にちょんちょんと置くように塗料の「山」を乗せ、それをつなげるように塗って行きます。これは乾燥の遅いエナメル塗料に一番便利な方法です。途中で筆を外すことがなく、慣れれば「山」で塗料を補給しながら一筆でかなり広範囲の面積を一気に塗れますから、筆ムラの可能性がなくなります。水性塗料でも可能ですが、エナメル系以上に手早く処理しなければなりません。
ドライブラシなどの技法を使う場合もそうですが、筆の先端を立てて塗るのと寝かせて塗るのではかなりの違いが出ます。考えながら塗ってみましょう。また、これは筆とは直接関係ないのですが、瞳など細かい部分を塗るときは、MFを固定しておくと確実です。固定できない場合、MFを持った手とブラシを持った手の余っている指同士を押しつけあうように、あるいは両手を握るようにして固定すると効果的です。とにかく腕全体を動かすのでも、手首のスナップでもなく、あくまで指先だけの動きで穂先をコントロールするのが細かい部分を塗るコツです。また、直線などが必要な場合には逆に指先はなるべく固定して、腕の動きだけで描いたりする場合もありますから、一概に「これがベスト」とは言えません。単なる「コツ」です。もちろん私の場合のコツですけどね。一度やってみてください。
塗り終えたら掃除にかかります。水なりシンナー(薄め液or溶剤)なり、該当するもので洗うのですが、専用の小皿を用意しておくのがいいでしょう。筆洗い専用にシンナーを買っている場合でも、そこに直接筆をつけるのではなく、少しづつ小出しに小皿に移して使いましょう。こうしておけばシンナー(もしくは水)が汚れたら取り替えればいいのです。特にシンナーの場合、必須ですね。
小皿にちょっと漬けて、すぐに布かチリ紙で拭います。私は吸水性の高いクリネックスのティッシュペーパーを愛用していますが、一色拭くごとに捨てるので「なんてもったいない」と家内に不評です。これはティッシュの中でも高級品らしく、時折家内が「こっちを使え」とばかりに別銘柄のティッシュを買って私の部屋に置いて行くのですが、クリネックスが一番きれいに早くぬぐえるのでこっそり取り替えて使っています。
ぬぐう場合にも穂の根元から穂先に向けて軽くこするのは常識。ごしごしとこすってはいけません。必ず一定方向にのみしごきます。塗装終了後は最初同様、穂先を整え、出っ張ったのをカットして乾かしましょう。
余談ですが、私はハンブロールのシンナーをエナメル系塗料の筆洗い用やスミ入れ用に使用しています。成分の違いからか、タミヤのものより溶解度が高いからです。まぁお値段も高いんですがね。知人には「ジッポーのオイルが一番だ」と豪語するツワモノもいますが、私はあれは「作業後の一服」のためにしか使ってません。
(05年追記:ハンブロールのエナメルシンナーですが、どうやら内容が変わったようです。がっかり・・・)
あ、そうそう、タミヤ水性カラーには溶剤が出てますが、筆洗いや塗料の濃度調節には使用しないでください。そういう時には水で大丈夫です。水性アクリル用の溶剤はあくまで乾いてしまった場合の最終手段です。特にウォッシングを多用するシタデル塗りをする人には厳禁。これが入っているとせっかくの特徴、「下塗りが溶けださない」ってのが台なしになりますからね。必ず乾燥前に筆のお手当てを忘れずに。
ちゃんと掃除してさえあげれば、安い筆でもかなり持つものですよ。
ちょっと脱線しますが、タミヤ水性カラーの話が出たのでついでに。
98年7月から、タミヤ水性カラーに小ビンが登場しました。その名も水性タミヤアクリル・ミニ。今まで一色180円だったのを、量を減らし、120円にしたものです。一説によると、これから180円の方はなくなり、120円のミニが主流になるようです。今までは価格の問題で雑誌などでもグンゼの水性ホビーカラーを勧めていましたが、実は品質的にはタミヤの勝ちです。ネックだった価格も下がったことですし、これからはこのミニをお奨めします。ただし、タミヤにはない原色や中間色、つや消しクリアーやなんとサビ鉄色(!)なんかも水性ホビーカラーにはありますから、完全に無用になったわけではありません。要は、「初心者に勧めるならタミヤアクリル・ミニがよい」ということです。お間違いなく。
配色について
塗装は身に付いた、けど、どうもいい感じの完成品ができない。そういう段階の人は多いでしょう。塗装というものは以前書いたとおり、基礎さえしっかりしていれば簡単なものなのです。ところがその先、つまり人から尊敬されるような完成品を作るには様々な要素が必要になってきます。
第一はやはり「腕」。微妙な筆のタッチや細かい部分を塗り分ける技量などです。こういったコツなどは模型の作り方の本に場を譲るとしましょう。なにしろ基本的には同じ事なのですから。
次に大事なのは色彩感覚です。我々の愛好するファンタジーやSFのMFは自由に塗装できるものがほとんどです。たとえ「レッドドラゴン」のように「赤」というイメージカラーが決まっているモンスターでも、そこから先は自由に空想の翼を広げて塗装していいのですから。レッドドラゴンだって、ジェフ・イーズリーとフランク・フラゼッタ、それにボリス・バレイショーでは色が全然違うんですからねぇ。
色の合わせ方、といっても調合ではなく、色同士をどうやって配色するかという問題です。これはファッション業界のみならず、出版などのメディアに参加している人なら常に気にしている点です。配色事典なんてのを買って来て勉強してもいいのですが、自分のPCを塗るならまずイメージカラーを決めると早いでしょう。電光のタニア、赤焔のザシューなんて、持ちキャラのとうり名を考えて決めるとよいでしょう。初めのうちはその色に関する配色を中心にまとめるのです。
ただそれだけだと単調になりがちですので、ワンポイントを入れると映えます。ヨロイの肩当てだけとか、前だれとか、あるいは羽根飾りとか。どこか一ヵ所、目立つところにイメージカラーとは事なる系列の色を入れるのです。これだけで見栄えがぐっと変わります。また、逆に全体をニュートラルな配色にしておき、ワンポイントだけイメージカラーを塗るのも効果的です。灰色の服に灰色のローブ、でも帽子だけ明るい青の魔法使いとかですね。
他にもお気に入りのアニメキャラの配色を真似るという手段もあります。アニメはセルの都合上、普通2色で陰影を付けてますので、MFの塗装時に、明部と暗部の色をそれに合わせればいいのです。簡単にかっこいいMFができますよ。
逆に渋い色合いにするときには、各色に混合する統一色を作っておく方法もあります。通常は薄い灰色や茶色を使用しますが、塗る塗料全部にそれを少しづつ混ぜておき、全体の調子を整えるのです。水性カラーの場合には全体にすごく薄めたウォッシングをかけるという手もあります。
おまけのコーナー
(後記に代えて)
パソコンの利用
以前は塗っている最中に、「しまった、ここを赤にすればよかった」なんてことが良くありました。自分で絵を画いて、それに試しに色を塗ってみるという方法を始めてからそんなことも減りました。でも、これは結構根気のいる仕事です。なにしろ塗り直しが基本として効かないので、元絵はコピーしてあっても、配色そのものは最初からやり直さねばならないからです。
でも、今はパソコンという強い味方がいます。FM企画では時々MFの原画を発表していますが、こんな元絵を画像処理ソフトで色付けしてゆけばいいのです。選択範囲指定と色の入れ替え指定とで、何度でも修正が効きますし、コントラストなどの変更も簡単。絵が画ける人なら、お絵かきソフトでMFの大体の形態を画き込み自由に配色できます。
スキャナーがあればもっと簡単。最近はフラットヘッドでA4サイズくらいまでのスキャナーが安価に買えます。これでとりあえず似たポーズのイラストを取り込み、画像ソフトで装備を合わせ、色をつければいいのです。
私は安物のスキャナーで、とりあえずなにかしらのイラストを拾い、線画でそれっぽく直してから好きな色で塗っています。いろいろ遊べるので、これだけでも楽しいですよ。カラープリンターがあれば打ち出してもいいのですが、かなりモニター上と色味が異なります。修正する時間が惜しいのでモニター上のみを参考に塗装していますが。こうしますと、「ここは青の方がいいかな?」なんて時にはちょこちょこっとマウスで指定してやれば完成予定図がすぐに出ますからね。
もちろん本格的にCGをやるとなると大変な資材の投入(CPUスピード、そして大容量のハードディスクに高速接続)が必要になります。ましてや時間ときたら一日48時間あっても足りないくらいでしょう。
でも、とりあえず配色を考えるなら、ざっとでいいわけです。だれに見せるわけでもありません。自分が塗るときにイメージが分かればいいんですから。影なんかつけてたら大変なんで、ざっとその色に塗ってしまえばいいんです。最初に元絵を白黒で保存しておいて、随時適当に新規ファイル名で保存すればいいんですから。ちなみに、こういう利用法にはウィンドウズよりもMacの方が格段に便利です。でも、他にもインターネットやゲームもしたいというマルチ指向の方はやっぱり主流のウィンでしょうね。
私は気が向いたときに、その場でちまちま打ち込む人なので、ノートブック派です。これだと、机の上に載せて塗装しながら見れますし。ウィンだとシンクパットを、Macだと当然パワーブックを愛用してますが、画像系にはパワーブックばっかりになります。でも、DTPや画像以外はウィンドウズ中心ですね。
パソコン用の画像系ソフトはすっごく種類がありますが、私が愛用しているのはフォトショップという写真修正用のソフトです。ウィン版とMac版両方を使用しています。もともと写真が趣味なのでこれを常用してるのですが、かなり高価なので、MFの配色完成予想図に使うためだけに買うなら、他のソフトをお薦めします(なにせこれは10万以上しますから)。
もしパソコンがあってもお絵かきソフトがないなら、前出の安いスキャナー、これがいいですよ。大抵は簡単なOCRソフト(文字として認識するソフト)とお絵かきソフトがおまけで付いています。私が昔使ってたスキャナーは、お店にあった一番安いのを買ったんですが、これにもフォトショップの簡易版、フォトショップLEってのが付いていました。愛用の市販版よりも機能的に幾つかの省略がありますが、印刷やCGグラフィクスに凝っている人でないなら、おまけの「LE」(最近はフォトデラックスってのが付いてます)でも充分に楽しめます。
スキャナーに対するもう一つの入力方法、つまりデジカメには人間サイズのMFを画面一杯に取り込める、接写機能の充実した機種もあります。デジカメをミニ三脚に固定し、愛用のMac君につなげて、画像入力装置として使用しています。昔は当時の愛機ニコンF4にマイクロニッコールを付けて接写し、それをフィルムスキャナー取りしていたのですが、デジカメの方が簡単だし、フィルムスキャナー、かな〜り高いし。それにデジカメなら撮影現場で「う〜ん、+0.3EV」なんて露出補正も可能ですからね(まぁ現在の愛機、ライカM5にズミクロンだと接写が面倒という理由もあるんですが)。