EATON製MP45スーパーチャージャーのトラブル備忘録
1.S/Cオイル漏れ
 ブロアケーシングとベアリングハウジングの合わせ面からの漏れ。これは、スーパーチャージャーの駆動軸部のギアオイルの漏れだけど、本来は密閉オイル部故に漏れは想定されていないのだけど、ジムゼのキットでは、ハウジングをケーシングに固定するネジ部を利用して純正のオルターネーターブラケットを共締めする構造となっている。共締め構造故に、本来のボルトとは異なる長いボルトが使われており、その長さも長く、材質も異なっている。一度、スーパーチャージャーの本来のボルトを外し、別のボルトを使って組み立てる構造なのである。
 それ故に、その新たなボルトの締結力が不足していると、その合わせ面から内部オイルが漏れる事がある。
 このボルトはM8ボルトであり、本来なら22[N・m]以上で締め付けられる筈だが、スーパーチャージャーの取り付け作業を行う人によっては、トルクが15[N・m]以下となる場合もある。そうすると、その合わせ面から内部オイルが漏洩する可能性も否定出来ない。
 このトラブルは自分以外にもジムゼさんのBBSに書き込みをされた方にも発生しており、或る意味、持病的な問題とも言える。
 問題の対策は、粘着性の高い液体ガスケットを利用してトルク管理してボルトを固定する事だ。因みに、MP45のマニュアルによると、当該ボルトのトルクは31[N・m]と、通常のM8ボルトの概念的上限である22[N・m]を大きく上回っているので留意が必要だ。
 なお、液体パッキンは高粘度タイプの半硬化性のオキシム系のモノで作業されたようだ。こんどの液体パッキンは最初のパッキンと違い半硬化して流動し辛いタイプのようだ。

丁度、この部分だけキャップボルトとなっています。矢印部分からオイル漏れします。
この部分の既定トルクは31[N・m]です。
拡大します。ハウジングをケーシングの合わせ面から結構漏れます。

2.ブースト不良(ホース側)
 通常のブーストホースでは最短で一年程度でホース劣化を来たし過給不能な状態となりうる。症状的には過給圧が掛かっても低い状態という感じとなるのだが、、、、こういうアナログ的な不良は圧力漏れの可能性が高い。
 因みに、ジムゼのキットでは直結式で過給調整はダイヤフラムで行う構造である。それ故に、スーパーチャージャーの上流下流部、スロットル部等々から数多くのホース配管が必要であり、ホースの取り回しによっては熱の影響を受けやすい状態にもなりかねない。特に、エンジンのシリンダーヘッド近傍にホースを通し、その部分でジョイント分岐等を行えば劣化が加速する。
 ホース材質を耐熱シリコーン(耐熱で200℃級)のバキュームホースに交換するだけでなく、ホース取り回しはエンジンヘッドから遠ざけてエアクリボックス近辺を迂回して配管する事が良いだろう。新型のMP45モデルではキットを装着すると純正のエンジンカバーは無加工では装着できなくなるのだが、カッティング処置等を施してでもエンジンカバーは装着して、カバーで熱遮蔽した上でホースを取り回す配慮が必要だ。ホースはブルーになっているけど、ホントは普通に黒色のホースの方が好みだ。

ホースはシリンダーヘッド上をはしりますので、エンジンカバーはあった方が良いです。ブローバイパイプ、燃料ホース近辺を通すのが良さそうです。 室内のブーストメーターに送るラインの途中にフィルターを入れますが、これはバルクヘッド側に沿わせて設置します。宙に浮かすより良いでしょう。

3.バイパスバルブ動作不良
 過給はスーパーチャージャーに組み込まれたバイパスバルブによって行っている。このバイパスバルブはリンケージを介してダイヤフラムによって駆動されているのだが、このリンケージの接続部にはピロボール等は使われていない。リンケージ端部が折り曲げられて穴に引っかけられているという非常に簡単な構造である。それ故に、リンケージは駆動方向、穴への差し込み方向の双方に大きなガタがある。
 過給不良でも過給圧が立ち上がりにくいという症状から、全く過給出来なくなってしまう症状迄様々だけど、過給が或る程度掛かるけれど、セットした本来の最大過給が掛からない状態の場合、それはホース裂けや差し込み部劣化漏れが原因だけど、過給が全く出来なくなったり、突然復帰したりというような過給有無がハッキリした症状の場合は、スーパーチャージャー内部のバイパスバルブの駆動不良が原因である。バイパスバルブがフルオープンで引っ掛かってしまうと過給ゼロとなる。この原因は、圧力漏れとは異なり、バイパスバルブの動作不良の可能性が高い。
 この動作不良の原因は、ダイヤフラムとバイパスバルブを接続するリンケージのガタであり、アイドリング状態でバイパスバルブフルオープンの状態に戻った時に囓るのが原因だろう。
 その対策には、スロットルオフ状態でバイパスバルブがフルオープンになりきらないように、リンケージをバイパスバルブに押し気味にセットするようにダイヤフラムボディの位置をスロットル側に移動する事で対処できる。こうすれば、スロットルオフでもバイパスバルブが限度以上に押しつけられる事が回避出来る。事実、ダイヤフラムの固定は長穴加工してあり位置で4mm程度の自由度がある。言い換えればリンケージの長さ調整が4mm程度可能ということである。他には、リンケージ端部の折り曲げた部分のリンクに通す部分が6mm程度の幅を持っているので、リンクに通した後に残る3mm程度のガタを取り除くように、動作を阻害させないようにワッシャ、Oリング、インシュロック等を利用して処置する事が可能だ。
 こういう理解をジムゼの金子さんに尋ねると、このような対処で調整を行った事があるそうなんで、この理解で間違いは無い筈だ。

リンクのガタ取りはインシュロックを入れる事で取りました。Oリングでもワッシャでも良い筈ですが、一番安直な方法です。 赤丸のダイヤフラムを右に移動することで、リンクの遊びがなくなり、ガタが減ります。なお、バイパスバルブ全開の囓りも解消する筈です。

4.ラジエターホースとの干渉
 純正ラジエターのキャップアッシーの位置の関係で、ホースとスーパーチャージャーの本体のクリアランスは2mm以下である。このままでは高温でホースが膨張し、エンジンが動くと干渉してホースに穴が開きかねない。
 対策としては、ラジエターキャップアッシーを15mm程度、スロットル側にオフセットさせる事である。ジムゼさんのキットには入っていないので、その部分はワンオフでアダプターを製作すれば対処可能だ。自分はジュラルミンの10mm厚の板を加工してアダプターを製作して対処している。ディーラーに取り付けを御願いした際は、車体側に穴を追加工してキャップアッシーを10mm程度オフセットしていたけど、格好悪いので部品製作で対処した。

キャップアッシーを右側に15mmオフセットさせるジュラルミンのアダプターです。

5.プーリーの変形
 これは直接的な持病とは無関係。但し、プーリー自体はSS材で軟質材。柔らかいので簡単に修正可能。これ、スーパーチャージャーを脱着発送の段階で運送時に衝撃を受けてプーリー端部が変形していたのだけど、割と簡単に修正できた。硬い材料だったら割れていたので柔らかくてラッキー。将来は交換するかもしれない。
 あくまでも推測だけど、トヨタでスーパーチャージャーを外してジムゼさんに送る際、スーパーチャージャー本体だけでなくマニホールド〜スロットルボディ迄ごっそりで発送された模様、、、理由は、スロットルがスーパーチャージャーと密着して外すのに難儀したからだという、、、、そこで思ったのは、その状態の発送では梱包された荷物の端が、LLC漏れをきたしたスロットルのアイドルコントロールバルブカバーから出たホースの差し込み口、反対の端がプーリー、この両端に衝撃を受けたのだろう。結果、一方の端のホース差し込み口側がカシメ不良となってLLC漏れとなり、反対の端はプーリをぶつけて変形したと言える。
 このストーリーで間違い無い筈。そして、一回目の装着時にディーラーで組み付けられたオイル漏れ部のキャップボルトのトルク測定を行うと8[N・m]しかなかったけど、それが原因で漏れが治らなかった訳だ。実際、一回目の車両返却後に増し締めを行うと漏れが激減したので、明らかに組み付け時のトルク不足が原因。因みに、二回目の締め付けでは、トルク指定で念押しした上に車両返却後に自分で確認するとトルクは最低でも22[N・m]以上だった。
 此処だけの話、、、、トルク管理ぐらいしろよ、、、、発送の際は、端部の出っ張りを保護するぐらいの梱包の配慮をしろよ、、、、、というのが自分の感想。
 車の整備に限らず、見ないでも作業の状態がどうか?っていうのは、或る程度想像付くものなのだ。
 取り敢えず、部分的には無意味な傷が付いたりしたけど、、、、結果的に、自分自身の手で修正したり、ワンオフパーツを製作したり、或いは、微調整したりして、結果的にやっと自分の車という実感が湧いてきた。これは単車でも一緒の感覚。買ったまま何も手を加えていなかったら、、、、モノと自分の距離感が縮まらない。そういうモンである。

左から大きな力を受けたのでしょう。塗装が剥げてエッジが0.5mm溝側(ベルト側)に出っ張る様に変形しています。 ベルトを抜いてSSTで拡げました。目視上、変形は完全に取れています。ただ、塗装が剥げているので、タッチアップしました。

6.容積式ブロワと遠心式ブロワ(ブログから転載)
 無限のCR-Zのスーパーチャージャーの記事が目に留まった。無限に限らずホンダからも登場する噂があるようだが、CR-Zのスーパーチャージャーというと、HKSさんもリリースしている。このスーパーチャージドCR-Zはモードによるけど、175PS仕様、200PS仕様が選べるようで、かなりの高過給のようだ。
 そんなスーパーチャージャーだけど、このスーパーチャージャーはジムゼさんのモデルとは大きく異なるのである。そう、これは遠心ブロワを用いたモノで、世間一般の認識でいうターボチャージャーみたいなモノである。ブロアの駆動を排ガスの流れで行うのでなく、クランク回転を10倍程度に増速して行っている。
 それでも、ジムゼさんのルーツ式のように大きくないのがメリット。小型で軽量というのが大きなメリットとなっている。
 さて、そんな過給器というか送風機だけど、自動車マニア系のサイト、ブログでは、今からは新世代の遠心式スーパーチャージャーだ!という意見が多数派を締めている。

 理由は、ベルト駆動でファンを回すだけだから抵抗が少なく騒音も少ない等々だ。しかし、誰も触れていないけど、遠心式というのは負荷によって風量等が大きく変化するので定量性が確保出来ないというデメリットも少なくない。特に低回転域では、その傾向が顕著。圧力変化が在ればサージング現象なんかも来す事がある。

 なる程、、、、

 ただ、チョット別の視点から見てみよう。どちらも流体輸送機械である。

 原理的にはROTREXさんのは遠心式ブロワであり。それに対して、小倉クラッチ、アイシン、EATON製のルーツ式っていうのは容積式ブロワである。

 さて、容積式ルーツブロアの特徴は何?って上げると、、、

1.圧力変動があっても風量変化が無い。
2.吸入温度変化があっても軸動力変化が無い。
3.風量は回転速度と完全に連動する。
4.基本、圧力変化を伴わないからインタークーラーは不要。

 負荷に寄らず必要な風量が全回転域で供給出来るというのが最大のメリット。ブロワの駆動をエンジン動力からダイレクトに取り出すならば、遠心式よりもレスポンスが優れ、低回転域、アクセルオンの瞬間における過給効果が高い。
 しかし、ルーツ式でも二葉式タイプでは駆動抵抗、空気流の脈動等で欠点もある。この欠点を小さくするために、三葉式等も存在し、低騒音、低振動、高効率ながらも、製作難度が高く割高故に多くはない。

 そう言う事で、スーパーチャージャーとしてどちらが良いか?というと、一般的な解答としては用途次第と言う事になりそう、、、、しかし、送風機の駆動形態がエンジン直結で回転数連動という事なら、、、、、それ系の業界人としては、容積式の方が合理的には感じる。

 理由、遠心式の場合、、、、基本は定回転で運用するのが大前提。吐出流量の調整は吐出抵抗(弁の開閉等)で行うモノ。それが抵抗になり負荷になったりするのである。と言う訳で、エンジン回転連動の直結駆動以外でモーター駆動等で定速運転が可能ならば遠心式か?という気がするのがだ、エンジン回転と連動させる遠心式の場合、送風機の効率が確保できる最低回転数に達しないと厳しいというのが印象。もしかしたら、衝動タービンによるターボチャージャーの方が原理的に正解という気もする。ROTREXの場合、増速は10倍速。エンジン回転最高回転数時がコンプレッサーの最高回転数となるだろうから、アイドリング近辺では、その回転数の1/10以下となる。その域での遠心ブロワの効率を考えると、責めて想定回転数の1/3は欲しい。つまり、2500〜3000rpm以上で能力を発揮すると考えるべきだろう。言ってみれば、極低回転域では過給効果は殆ど期待出来ないという事。CR-Zのようにモーターアシスト前提で低回転域はモーターバックアップという構成でなければメリットは少ないだろう。アフターマーケットで通常のNA車両にポン付けする過給器としては、遠心ブロワは、安価なターボチャージャーという位置付けと考えるのが道理なのだ。実際、ROTREXユーザーの多くはドッカンパワーという印象を持つ人が多い。

 まぁ、自分がROTREXと三葉ルーツのどちらを選ぶ?って決めたのは、こういう考え方に従うモノ。

 ROTREXの遠心式ブロワはアイドリング近辺からの過給効果とかでは、チョット厳しいかな?というのが自分の感想だが、逆に容積式ブロワではアイドリング近辺〜1500rpm程度でも十二分にトルク増大を感じる事が出来ている。勿論、回転数が上がり風量が確保されて行けば、遠心式ブロワの低抵抗性と高効率が生きてくるのは言うまでもない。要は走り方なのである。市街地〜実用的な登坂性能、最大トルク発生回転数の2/3以下の領域でのトルクを重視するなら容積式ブロワがお奨めだし、最大トルク発生回転数以上の領域で出力を重視するなら遠心式ブロワがお奨めで、言ってみればスポーツ走行重視なら遠心式ブロワの方がメリットが大きいかもしれない。

 個人的には街乗り性能を重視しているので、今の選択通りに容積式ブロワの方がスーパーチャージャーとしては好みだ。三葉ルーツ、四葉ルーツ、リショルム式コンプレッサ(マツダのミレーニア)、スクロール式コンプレッサ(VWコラードのGラーダ)辺り。因みに、VWコラードのGラーダは一度運転した事あるけど、過給器っぽさは皆無。

 但し、、、、ROTREX系の遠心ブロワはモーター駆動でコンプレッサーを回したら面白そう、、、、つまり、低回転域で高過給、高回転域で低過給という仕様。これなら、全域でトルクを確保出来るし、特に低回転域でトルク増強出来るのはメリットではないだろうか?エンジン回転数に反比例で過給を変える、、、、こういう過給器は存在しない。でも、そうなると、純粋な動力モーターアシストとどっちが効率が良いか?という点で微妙なんだろうなぁ、、、。でも、こういう意見は少数派ってか、殆ど見ない。

 取り敢えず、駆動側の回転数が変動するってのに、みんな遠心式ブロワにマンセー、、、不思議だ。この系統、少なくとも過給がガンガンに掛かる域でしか効果無いだろう。

 余談だけど、個人的にはルーツ式ブロワは結構自分でオーバーホールしている。しかも、、、十数年で故障した事は皆無。実に高性能で安定している。

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