2サイクルエンジンの可能性
 最近は、重量車は勿論、原付スクーターに迄、4サイクル化が進んでいる。最後の2st繁栄?生産国であったタイにおいても、情熱的な2ストロークスポーツバイクは続々と生産中止に追い込まれている。(驚いたことに、例外的にチョイ前のKR150SEというのが、名前を変えて復刻しているようだが、、、)市販二輪車に限らず、GP等の競技車両、ジェットスキー、汎用エンジン等々殆ど全ての分野において2ストロークエンジンは姿を消しつつある。この原因は、地球環境の保全という人類共通のテーマ実現において従来2サイクル機構型エンジンが悪者のレッテルが貼られ、社会から利益を得る企業においても2サイクルエンジンから決別し、4サイクル化を勧めるということが環境に優しい企業であることを印象づけるのに都合が良い風潮が生み出され、もはや2サイクルエンジンは工業製品としての将来性を考えると、製品としての寿命は風前の灯火のような状態となっている。
 2サイクルエンジンと同じく、内燃機関の中には時代の流れに苦戦しているモノも他には存在する。世界的にみるとそうでもないが、国内に限ってみるとディーゼルエンジンもそうであり、更に孤軍奮闘しているモノとしてはロータリーエンジンというものが存在する。2サイクルエンジンでもマリン用途等では未だ活路を見出そうと工夫を凝らしたモノも少数派ながら存在している。そして、これらのユニット自体はメーカー自体が諦めていないし、一応開発継続という形で生き残りを模索している。一方で2サイクルエンジンは主な用途である二輪車の大メーカーである日本企業からは、ほぼ完全に見放されているのが実状であり、これを延命させる取り組みを行っているのは、海外の極少数のメーカー、或いは、個人、二輪車とは離れた量的規制を受けにくい業種の極一部に限られているのが現状である。このような中で、現存する2ストロークエンジンで素人が効果を確かめられるようなモノを主に、後は将来的な希望を見込めるような技術を集めてみようと思う。


1.2サイクルエンジン、雑感

2.マスプロ製品における進化の復習

3.素人考えによる2サイクル考

4.実際の専門家、企業による取り組み


1.2サイクルエンジン、雑感
 始めに、工学の専門的な技術、知識は持っていないため、あくまでも、2ストロークユーザーとしての感想に留まる記述となるが、雑感を書き連ねてみようと思う。世間で云われている環境に優しいエンジン=高効率エンジン、ということになる。高効率ということは燃費性能が優れると同義であり、燃料中の取り出し可能なエネルギーを出来るだけ多く取り出すという意味であるので、未燃ガスの生ガス等の反応残物質も少ないということである。もっと簡単に言えば、供給する燃料を限りなく少なくし、そして完全に燃焼させることが可能なメカニズムが世間で云うところの優れたメカニズムということになる。そして、その優れたメカニズムを実現するのには、どちらかというと4サイクルエンジンが適しており、これを主体に開発を進めているのが製造業の趨勢となっているようである。この世間で云うところの優れたメカニズムの求める機能といえば、超希薄燃焼、完全燃焼である。これらの機能の実現に必要なのは、本質的に高圧縮しやすい構造であり、供給混合気を圧縮爆発の過程迄しっかり閉じこめる工程分離が得やすい構造である。そういう観点でみると、素人ながら、なるほど2サイクルエンジンは4サイクルエンジンに対して優れた構造的な特徴を持っているように見える。ただ、内燃機関の効率の評価でしばしば用いられる圧縮比という尺度について、一意的にカタログスペック或いは見かけの寸法上から4サイクルエンジンの圧縮比が2サイクルエンジンの圧縮比より高いというのは尚早であるように思う。小さなことは、さておいて、工程動作が構造的な機構により分かりやすく区分化された4サイクルエンジンに対して、2サイクルエンジンの大きな特徴といえば、何と行っても複雑な動弁系を持たず、非常にシンプルな構造でありながら、ピストンの往復毎に燃焼を行うという時間あたりの出力効率が極めて高いというものである。2サイクルエンジンの生き残りには、新たなるメカニズムで市場に問い掛ける方法と、既存の中古品に対する改善でゴミになりつつあるモノを救う方法があるだろう。大きな企業が市場に打って出るというのは、前者に相当する高度なメカニズムと緻密な制御を身に付けた新世代の機構となるだろう。仮に2サイクルという燃焼サイクルを守りながらも複雑な機構を用い、2サイクルエンジンの持つ大きな構造的な利点を失うとすればメリット>>デメリットを得るには非常に難しいとも思う今日この頃である。
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2.マスプロ製品における進化の復習
 エンジン構造によらず2サイクルであろうと4サイクルであろうと、高効率エンジンを追求するには、前述の希薄混合気の完全燃焼が実現されなければならない。そして、既存形態の2サイクルエンジンにおける優れたエンジンの獲得における阻害要素自体も把握されている。この阻害要素を排除する手法には各種存在するが、基本的な機械構造的な手法の進歩から始まり、昨今は制御技術、電子技術の進歩の上に成り立った手法が多く見受けられるようになってきた。補機類の知能化、複雑化によって2サイクルエンジンというのは、生い立ちの頃の簡単なものから複雑なものへ変遷している。そして進化の方向性は、2サイクルエンジンの大きな特徴である軽量高出力を全域で確保すべくの方向で進化してきたように見える。それらの手法の概略と実状を一ユーザーの感想としてまとめてみよう。

2-1).混合気吸気方式の変遷
 既存の2サイクルエンジンは混合気を一度クランクケース側に蓄えて掃気によってシリンダーに送るという方法をとっている。そして掃気によるクランクケースからシリンダーへの混合気の移動推進力はピストンの上下動によって生み出されている。ピストンの上下動によるクランクケース内容積の変化による圧力変化によって新気の吸引圧力を生み出し混合気吸引を行っているが、新気吸引口の設置箇所が時代と共に変化してきた。当初はシリンダーの下部にポート穴が開いているだけの構造であり、ピストンの移動によりポートが開口し、クランクケース側が負圧となっている時にのみ吸気を行う構造であった(ピストンバルブ式)。しかし、吸気時間を長くするために大きなポート面積を確保すると、ケース内の圧力状態によっては新気の吹き返し現象が発生することが問題として存在する。そこで、吸気時間を長くし、新気の吹き返しを抑えることと併せて混合気の充填効率を高めるために用いられた物がリードバルブである。これは新気の流れを一方通行化する板バネ式の開閉口であり長くに渡り使われてきた方式である(リードバルブ式)。その後、クランクケース内に混合気を直接的に、且つ、狙ったタイミングで吸入させ、ケース気密性を確保できるクランクシャフトと同調して回転するバルブを用いた方式(ロータリーディスクバルブ式)等が使われるようになった。ロータリーディスクバルブ式吸気エンジンは、ディスクバルブの開口面積とケース側の開口部が一致した状態が全開状態となるが、開口部の一部にリードバルブを部分的に配置することによって、吸気タイミングを可変化するメカニズム等が提案され、カワサキのAR125/KR250/SのモデルにR.R.I.Sという名称で採用されたのが最後である。後のクランクケースリードバルブ式エンジンとロータリーディスクバルブ式エンジンは共に新気をクランクケース内に直接吸入するが、クランクシャフトの軸側から吸入するロータリーディスクバルブ式エンジンは、吸入面積の拡大には限度がある。吸気をケース内圧力が負圧状態において常に行えて、吸入面積の確保に自由の利く方式であるクランクケースリードバルブ式エンジンが主流を占めるようになった。
 現在は、吸入負圧が発生している間は常に新気を取り組むことができるクランクケースへの直接吸気のエンジンが殆どであるが、吸入面積を確保しつつも、変動圧力への追随性の優れるリードバルブの発達に併せロータリーバルブは衰退し、クランクケースに大きなリードバルブを配した形式(ケースリードバルブ式)が主流を占めている。
 吸気ポートの機械構造以外にもインシュレータ部にサージタンクを設け、保持圧力を吸気に作用させようとしたもの、サージタンクを二気筒のシリンダーで共有させて一方の上昇圧力を他方の吸気に加えようとするもの、二気筒間の圧力変動の異相状態を利用するためにインシュレータ間をバイパスで結ぶ等がある。
 このような吸気形態の変遷から思うことは、2サイクルエンジンの高効率化にはクランクケースへの新気の吸入効率を如何に確保するかが重要であることを指し示しているように思える。クランクケース内に低損失かつ吹き返し無く新気を充填できるかが今後の発達の鍵になるものと思える。個人的な感想としては、リードバルブ自体の気密性、圧力追随性、開口時における吸気損失が気になるところではある。GPマシンでもアプリリア製等では、機密性に優れ開口時の損失抵抗の少ないロータリーディスクバルブが採用されており、吸気タイミングを正確に管理し、混合気の充填率を高めるこの手法の方が未来に生き残れるように思う。クランクケースの気密性というのは、2サイクルエンジンにおいては重要な課題であり、3気筒以上の並列配置ではロータリーディスクバルブの配置が難しいが、気密性を保ちながら3気筒分の長さのクランクシャフトを有する構造自体が精度管理上容易ではないと思われるため、並列多気筒化を進めないのであれば、ロータリーディスクバルブ式吸気エンジンは生き残れる可能性を持つように思う。

2-2).排気側の制御の変遷
 2サイクルエンジンの排気は、ピストンの下降にともなう排気ポートの開口による排気排出によって行われている。ピストンの下降が更に進むと掃気ポートの開口も始まり、クランクケース側からの新気の掃気が行われ排気を更に押し出す構造を持っている。運転状態毎の理想的な掃気、排気タイミングはシリンダー外周に開口したポート位置によって制限されているために、効率的な運転状態を全回転域に渡り確保することは非常に難しいものである。掃気による新気のシリンダー内充填効率を高めるためには、エンジンと一体となって役割を果たすチャンバーというものが存在するが、チャンバーとは排気の通過経路でありながらチャンバー内での排気反転と衝撃反射波を用いて混合気の押し戻しを行っているが、これも固定的な物であり、想定回転数以外では機能を100%発揮しているとは言い難いものである。このような機械的制約の範囲で発達したのが制御された排気デバイスの進化である。80年代以降の2サイクルエンジンの進化の中で最初に現れたのは、チャンバーが本来持っている新気の押し戻しに補助的な役割を担うサブチャンバーである。サブチャンバーは、排気ポート直後に設置された空間であり、この空間への排気の流入を回転数によって制限し、その充填圧力を利用することで新気の充填効率を高めようとする物である。例としては、ホンダのATAC、スズキのSAECがある。なお、この方式は最終期の2サイクルエンジンに用いられていない。カワサキでは似たようなもので、二気筒間の排気タイミングの違いを利用して一方の排気圧力を他方の充填圧力に利用するというKVSSというデバイスがあったがKR250S一代限りで消滅した。排気制御の次の段階としては、もっと直接的に排気を制御する排気ポートタイミングを可変化し、そのポート面積をも可変化しようとするデバイス群である。この先駆けとなったデバイスがヤマハのYPVSであり、その後、RCバルブ、ATEC、KIPS等各社のデバイスが同じ機能を有して登場している。高速高回転運転下において迅速なガス交換を行わせるために排気タイミングを早める必要があるが、そのままでは、低速低回転運転時においては吹き抜けによる新気の喪失等により十分な爆発力を取り出すことができない。そこで、高回転域に入ると排気ポートが上方向が可変バルブによって開口し、同時にポート面積を拡大させることによって高回転域におけるガス交換が迅速に行えるようにしたものである。逆に低回転域では、ポート開口部の上部近辺はバルブによって閉じられており、運転状態に応じた排気タイミングを維持できる構造となっている。
 排気側制御の究極としては市販車、レーサーの何れにも採用こそされなかったがHONDAが特許を出願しワークスNSR500への採用も検討したという可変チャンバー機構が存在する。確かに可変排気ポートタイミング機構もトルクバンドの拡大には有効に機能したと思われるが、経験上、YPVS等を殺して乗っても驚く程変化する訳ではない。2サイクルエンジンにおいて最も大きな変化を感じるのはチャンバー交換であり、排気性能の変化に最も影響度の高いパーツとしてチャンバーがあり、これを制御するということは大きな効果を得ることが出来る。チャンバーの形状、容積を完全可変にすることは困難であるが、容積を可変化することは或る程度可能である。ホンダの提案した可変チャンバーは、サイレンサー側のテーパー部分をアクチュエーターによって前後に動かすことによって内容積を可変化させるものであり、どのような変化が得られたのか非常に興味深い技術ではある。

2-3).点火、燃焼の制御の変遷
 燃焼においては、70年代においてCDI点火が採用されて以来大きな進化は認められなかった。しかし、排気デバイスの制御の緻密化にともない従来の点火時期以上に緻密な進角制御が為されるようになった。80年代後半のNSR250Rの登場では、様々な運転状態に併せて最適なタイミングで点火時期を制御するようになった。ここまでは、ガソリンエンジンの基本的な燃焼形態である火炎伝播による燃焼を前提にした技術の向上である。それに対して、ディーゼルエンジンでは、着火と火炎伝播による燃焼形態とは異なる自己着火による燃焼を行う機関も存在する。2サイクルエンジンにおいても旧式のエンジンではイグニッションを停止させても暫く廻ってしまう現象がしばしば見られた。この現象はイグニッションが切れている状態でも爆発燃焼が継続して生じるために発生する現象であり、従来は、この不整爆発は2サイクルエンジンのネガティブな現象として捉えられていたが、これを積極的に利用しようとする手法が生まれてきた。そういう意味では非常に革新的な着目点であり、不整と言われる発生条件を意図的に安定的に作り出す制御というのは、従来の2サイクルエンジンとは一線を画する技術だと思った。因みにこれは、NSRを生み出したHONDAの次世代型2サイクルエンジンとしてCRM250ARに搭載されて世に出たユニットである。先にも述べたが、2サイクルエンジンにおける自己着火による不整爆発を意図的に安定的に作り出すというものであり、不整爆発の発生条件を吸気側状態を情報として処理しながら排気側デバイスを駆動させながら作り出すものである。これによって、従来型2サイクルエンジンの弱点である想定回転域外における燃焼を確実にすすめ効率の向上と排気のクリーン化を実現することができた。しかし、その後のモデルにおいて、この燃焼機構が導入されることなくCRM一代限りで消滅したことを考えれば、コスト、労力を掛けても次代の規制に対応できず、市場における需要も喚起できないとメーカーは判断したのかもしれない。

2-4).材料技術の変遷
 エンジンの材質は、主として鉄とアルミから成っており、これは過去から現在に至る迄大きく変化していない。構造的に材質の影響度が高い部品としては、2サイクルエンジンの場合は摺動部分に各種ポートが存在し不連続摺動が為されるシリンダー内面がそれにあたるものと言える。シリンダーからポートを排除することは構造上困難であり、円筒形シリンダーに多くの開口部を有することで4サイクルエンジンのシリンダー以上に厳しい負荷を受ける宿命を背負っている。この問題を解決するために、80年代中盤以降に採用された技術としてシリンダー内面のメッキ処理というものがある。一般にエンジンシリンダーはアルミ製のシリンダーブロックに鋳鉄製のスリーブが圧入された構造であり、鋳鉄の優れた摺動性と相まって長きに渡りその構造が使われきた。しかし、シリンダー内壁に開口部を持つ2サイクルエンジンの場合、開口部の存在故の熱膨張時における等方性の欠如、或いはユニット自体の軽量化、摺動性の更なる向上を目的に、アルミシリンダーの摺動表面の表面処理によって摺動面を形作るようになってきた。なお、4サイクルエンジンに見られるようなウエットライナー式のスリーブへの直接冷却は、ポート穴が開口しているために存在しない。私見として、アルミシリンダーの表面処理によりスリーブレスの手法は、アルミという基材に対する硬化層を形成させるというもので、接合界面の出来不出来によって耐久性は大きく左右される。表面硬化という材料複合化の手法は、メッキ、溶射によるものが多く、その確実性というのは疑問が拭いきれない。特に、ポート穴か開口している2サイクルエンジンスリーブというのは開口部のエッジ部は確実に硬化層は薄くなるために、その部分における硬化層の密着性保持というのが難しそう。ピストンリングに対して潤滑油膜を介して摺動されるシリンダー内面は、本来摩耗するものという前提で考えれば、摩耗の進行によっても摺動特性に影響を及ぼす化学組成が均一という特性を維持するためには、ムク材の方が優れている。実際に、2003年のモーターショーではシリンダー内のメッキ処理を行わないでも摺動性が確保できるというアルミダイヤジルシリンダーなるものも発表されている。
 ただ、ムク材が完全に勝るかというとそうでもないようにも考えられる。2ストロークエンジンにおけるデメリットの一つに白煙を吐くことが挙げられるが、白煙の元は潤滑油であり、潤滑が要求されているのはクランク部とシリンダー部である。シリンダー部における潤滑性の向上のためには、表面処理方法、基材の摺動性確保の材料開発の面で技術革新が必要と思われるが、2ストロークと等しく燃焼室内で潤滑油を直接供給するモノがある。それは、マツダのロータリーエンジンであるが、この摺動面(ロータリーハウジング)にも2ストロークと同様にポートが開口している。そして、2ストローク以上にシール(アペックスシール)部分が摺動面に与える負荷は厳しいのにも拘わらず、RX-8等のロータリー車の白煙は殆ど見えない。ロータリーハウジングの摺動面の表面処理として、1982年に登場したコスモロータリーターボ、或いは6PI式のエンジンの頃に行われたメッキ技術が興味深いものである。このメッキはマイクロポーラスメッキと呼ばれるものであり、摺動表面に意図的な凹孔が存在し、その凹孔同士が運河のような形で接続されたものである。この方法により摺動面における潤滑油保持特性を大幅に高めることが出来た例がある。シリンダー式ピストンエンジンにおいては摺動面にはホーニング処理というのが不可欠であるが、これをメッキの形態に理想的に形成させるというのは、案外2ストロークエンジンにも適用できる手法かもしれない。
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3.素人考えによる2サイクル考
 20世紀末に掛けての2サイクルエンジンの進化の方向性は、より大量の混合気を吸気して、しっかり爆発燃焼できるような燃焼メカニズムの模索、排気系の見直しによる充填効率の向上という方向で進化してきたように見える。勿論、機械としての精度を高めるべく材料複合化技術、低摺動高気密材の積極採用という周辺技術も大きく進化しているようである。今後の方向性としては、制御の高精度化、精度レベルの向上が主となっていくようだが、それ以外にも内燃機関の効率追求の考え方に即した手法も生まれてくるだろう。
 素人の感想だが、自分が持っている2サイクルエンジンのメンテナンスにおいてエンジンの分解、組立を繰り返す中で見てきた構造に何らかの手法を取り込むことが出来ないか?そんなことを考えてみようと思う。

3-1).吸気周りについての感想
 現在主流になっているリードバルブ弁についてだが、吸気圧力最大時においてもリードバルブが存在するだけで抵抗になっているような気がする。まぁ、4サイクルエンジンのバルブ自体もバルブ開放時には抵抗になっているのだろうが、大きくは影響していないのなら神経質になる必要は無いのかも知れないが、直感的に、必要な混合気を必要な時に必要な量だけ取り入れるというタイミングを作り出すことができるロータリーディスクバルブ吸気方式の方が自然に見える。但し、内燃機関全体での効率云々で、ディスクバルブを駆動する損失論とかへの考察が必要だろうが、、、、。吸気方式については一長一短があるだろうが、それ以上に気になるのは、ケース内、キャブ前後における混合気の浸潤雰囲気だろうか?湿りの殆どは、混合気中の潤滑油成分かもしれないが、どうなんだろうか?2サイクルエンジンのキャブレターでは一般的なパワージェットというのがあるが、ジェットというのは名ばかりで、ノズルからは噴霧状態とは言いづらい液体状態の吸い出しが結構見受けられる。混合気の燃焼においてはガソリン分が気化した状態の方が着火性能も高いと考えられるが、2サイクルエンジンの場合、混合気自体は非常にリッチサイドとなっているのでは無いだろうか?混合気の移動の過程においては、大きなクランクケースに繋がる内容積内壁側において圧力変動に併せた気化凝結という状態変化が常に行われている可能性が高い。リッチサイドの燃料を適性量迄減ずるには、ケース内圧力雰囲気を保つか、状態変化の速度を高める方法が考えれる。ケース内圧力変動は、ピストンの上下動によって決まり、圧力差というのはストローク容積量のクランクケース容積に対する比率によって決まるが、その容積変化による最低圧力が一定の場合に蒸発速度を高めるには、蒸発面積を上げる方法が考えられる。凝結液化混合気の蒸発速度を高めるという考え方で、機械的に変更できるものとしては、ケース内壁表面形状の凹凸度を上げる方法があるが、凹凸度を上げて凹部に凝結混合気が溜まると却って蒸発速度は低下する。ケース内部に凝結混合気が滴下して溜まる部分の凹凸度を上げることは大きな効果を得ることは出来ないかもしれないが、ケース内壁の天井側の物理的に溜まらない部分における凹凸度アップは有効かも知れない。同様の手法として、吸気口内側に混合気が凝結滴下しないような網状の板材を接地するのも蒸発速度を高めるに有効だ。この場合も、網状の板材、多孔板を設置する場合には、吸気流れの抵抗を増大させないように、流れに沿った形で設置し、凝結混合気が薄膜状に保持される事に留意する必要がある。
 事実、クランクケース内壁のディンプル加工、吸気口内側への多孔板プレートというものが実際に存在しているが、これらは凝結混合気の蒸発面積確保、状態変化速度向上を目的としたものと推定される。ただ、ケース内面壁全面へのディンプル化は、凹部への溜まり上好ましく無いし、多孔板の設置においても吸気抵抗となるように流線を遮るような設置は好ましく無い。市販車への適応を考慮する場合、潤滑オイルを含んだ凝結液、即ち粘度を有する液体であることを考慮すれば、多孔板において穴を横断して凝結膜が形成される穴径というものは計算可能であり、その穴径は、ケース内圧力、凝結混合気液体粘度によって算出されるべきである。
 先人のトライを模倣して試す人には、穴径が根拠に基づかず、DIYショップ等での入手性によって穴径が決まる等する場合も少なくなく、この効果の評価には、改善策自体に数値的根拠を持たせて実施しなければ、必ずしも良い結果を得ることが出来ないかも知れない。

3-2).掃気、爆発周りについての感想
 2サイクルエンジンの掃気という機構は実に良く考えられていると思う。単純にピストンの降下によってクランクケース側の容積が縮められ、その容積減分がそのまま、掃気ポートを通って燃焼室に送られるというのは、実にスマートな混合気の移動方法のように見える。しかも、クランクケース上部とシリンダー下部が接続されており、送られる混合気自体は、混合気自体の燃焼成分は気化して存在している。掃気ポートはシリンダー内面にぐるりと取り囲むように配置されているが、現状は、掃気ポートのシリンダー内の水平位置はほぼ同じ位置となっており、シリンダー内のピストンの下降に伴い、相対的な掃気ポートの位置は高くなる構造となっている。掃気ポート位置を垂直方向に変化させ、レベルに併せた開口面積を与えることが可能ならば、吸気における混合気の流れに方向性をあたえることが可能かもしれない。4サイクルエンジンにおける混合気の流れは、スワール流を作ったり、タンブル流を作ったりして混合気の充填を高めるために利用されており、この考え方は、2サイクルエンジンにおいても利用可能と思われる。ただ、シリンダー内面壁に開口部を偏在させることによるシリンダーの潤滑性能との兼ね合いが問題となってくるかも知れないし、既存品の改造という意味では困難だ。無理ついでにケースからシリンダーへの掃気を掃気ポートではなく、ヘッド頂上部から行うことさえ考えられるが、その場合は筒内直接噴射+バルブのような構造(リード弁とか4サイクルのようなバルブ機構等々)になるかもしれない。掃気という観点から、初期掃気をエアのみで行うような補助掃気機構等の併用も考えられる。従来のクランクケースとシリンダーへの単純な接続とは異なり、空気、混合気に分けてシリンダーに送る考え方自体は、吹き抜け混合気の抑制、筒内直接燃料噴射、混合気の渦流制御等に有効性を発揮できるものと考えられる。
 爆発における不整爆発を制御させて利用するというホンダのAR燃焼技術は着目からして驚くべきものだが、不整といわれている現象を制御するというモノは、AR燃焼に関するレポートを読んでも制御方法等は力づくという感じであり、難しいということは判るが、何とも言えない感じだ。

3-3).排気周りについての感想
 2サイクルエンジンの排気においては、チャンバー内の排気圧力を利用して排気ポートから吹き抜けようとする新気の押し返しが主体であり、それに加えてチャンバー形状による衝撃波の利用回転域の設定による運転状態毎の混合気充填率の適正化というのが通常である。これらは、あくまでもシリンダー内の新気に対して吹き抜けを抑えようとするものであり、その作用は燃焼室と排気ポートが通じた状態で効果を発揮するものであり、排気ポートのみが開口した状態というのは、シリンダー内におけるピストン位置が高い状態であり、ガスの流れは絶対的に排出方向に向いている。ピストンの下降が進み、掃気ポートが開口してから新気が排気を押し出して行く過程でも排気ポートにおける流れは排出方向であり、ピストン再上昇の圧縮過程で排気チャンバー内の圧力がシリンダー内圧力より高い状態でのみ、新気の押し戻しが為されている。この排気ポート近辺における圧力関係を適正化しようとしたものが、過去に流行ったサブチャンバー式の排気デバイスである。既存形状の2サイクルエンジンは最終形態においても4サイクルエンジンに比較して燃費が悪く、排ガス中において未燃焼ガスHCが大きく含まれるということは、最終形態の制御された排気デバイスを与えたとしても新気が漏れて出力に変わることなく排出されていることの証明であり、漏れ出る新気を再循環させる仕組みが必要である。未燃焼ガスを含む排気を新気に一部循環させることが可能になれば、排ガス中のHC量を減らすことも可能となり、効率も向上すると思われる。
 このように考えると、既存の排気の押し戻しを排気ポート経由でシリンダーに対して行う方法は、シリンダー内圧力とチャンバー内圧力の関係から難しいが、シリンダー内圧力より低圧で新気が蓄えられているクランクケース内への押し戻しなら可能では無いだろうか?シリンダー内部は、爆発燃焼という化学変化後であり、内容分は排気チャンバー内と等価なモノであり、本質的にシリンダー内部の方が高圧気味となるが、クランクケース内部は化学変化前であり、低圧気味の空間である。排気中の新気を戻すのならば、クランクケース内部に戻す方が効率も良いし、チャンバー内圧力を利用することが出来れば、掃気効率も上げることが可能である。ところで、クランクケースとチャンバーを接続する配管、導通部は何処に設置すれば良いだろうか?これが問題である。単純に、チャンバーとクランクケースを接続する方法も考えられるが、高圧サイドのチャンバーと常時接続されていると、ケース吸気に影響がでる。そのために、ピストンの上下動に合わせた特定のタイミングでのみ接続させる必要がある。2サイクルエンジンにおいえて混合気、排気の流れを吸気、掃気、排気で考えると、排気についてはピストン上端面の下降により排気ポートが開放されて、ピストン上でガスの移動が生じているが、吸気ポートについては、その限りでない。特に、ピストンリードバルブエンジンでは、ピストンリング下部のピストンスカート部にも大きな開口部があり、その開口部から混合気を吸い込む。排気のケース内循環を行うには、チャンバーと接続した排気ポートをクランクケースに通じさせる必要があり、その方法としては、ピストンのピストンリングの下側に穴を開けることによって、ピストンが上死点近辺迄上昇した際に、チャンバーから排気ポートを経由してリング下部のピストンスカート開放部から戻せば可能となる。ピストンスカート下部に開放させる穴サイズは、チャンバー内の圧力変動、クランクケース内の圧力変動を計測し、排ガス中のHC量から戻したい容積を求めれば、その容積の排ガスを戻すに必要な開口面積は定まる。4サイクルエンジンにおけるEGR(排ガス再循環)とは多少異なるが、未燃ガスの再循環が可能となるのは間違い無い。因みに、穴あきピストンは、過去にRZ350Rでトライしたこともある。その時は穴径はトライアンドエラーであったが、ボア64mmのピストンで、直径5〜10mmの穴で試したことがある。耐久性等に問題は無く普通に動きますよ。穴が大きすぎるとダメですが、、。
この穴の位置は、通常の排気ポートが閉じた状態で全開となるような位置に開けて、その大きさは、従来の排気ポート開口面積の1/20〜1/10程度で確認したことがある。因みに、この開口面積の算出根拠は、従来の排気中におけるHC量からチャンバー内の未燃ガス容積率を求め、排気全体に占める未燃ガス容積比に従って定めた面積であり、そのために、排気ポート開口面積に対する割合で決めたものである。再循環ポートの効果としては、クランクケース内の一次圧縮を高めたりすることにも利用できるために、一次圧縮比率重視で求めるか、或いは、新気再循環率重視にするか、純粋な排気最燃焼による排ガスクリーン化重視にするかによって、大きさ、設置位置等は異なってくるが、一つの手法としては有効なものと考える。(4サイクルエンジンの遊びでも、シリンダーに2サイクル風の補助吸気ポートを開けてリードバルブ接続で二系統の吸気をさせて遊んだこともある。狙いは低速型エンジン+補助ポートで吸気角を広げて高回転迄回すというコンセプト。一応動きましたが、耐久性に難、、、、。)

 以上が、単純な理屈から思った各種方法である。勿論、既にトライされた方も居るだろうし、どこかの企業が既に採用しているかもしれない。でも、素人で思い付いただけでも、この位はイメージできるのだから、内燃機のプロが考えれば更に高度な対策案があるんだと思う。特に、ピストンへの穴開けとか、ケース内面壁へのディンプル加工、凝結燃料の蒸発用ネット等の設置は、やろうと思えば出来るものであり、穴サイズ、メッシュサイズは或る程度なら計算も出来るので、その内トライしてみたいと思う。
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4.実際の専門家、企業による取り組み
 現在、二輪車の世界では2サイクルエンジンは壊滅状態だが、船外機等マリンの世界では、未だ新製品の発表が為されている。これらのサプライヤーは、二輪メーカーとしても存在するメーカーであり、ヤマハ、スズキ、カワサキ、トーハツ等が新しい2サイクルエンジンを開発しているようである。ヤマハでは電子制御燃料噴射装置による1300ccの2st三気筒エンジンを搭載したマリンジェット等もあるが、何れも上位モデルは燃料噴射装置を採用したものであり、中には筒内直接噴射方式のモノも登場している。直噴式が可能となれば、燃費の大幅な改善も見込めるし、是非二輪車の世界でも登場願いたいモノである。最近の2サイクルエンジンの進化としては、下記のようなものを見つけることが出来る。

4-1).燃料噴射装置(キーワード:直噴、インジェクション)
 現代の4ストロークエンジンでは最小排気量として50ccクラスにも採用されているものだが、2ストロークエンジンが終焉を迎えた時期においては、4stの中大型排気量クラスで普及が始まった頃に相当するために、燃料噴射装置を市販採用した二輪車は限りなく少ない。採用例としては、当時のBIMOTA DUE、ピアジオ製スクーター等の極一部だったと思う。燃料噴射方法については、従来の吸気口からの燃料噴射と、筒内直接噴射が考えられる。吸気口からの燃料噴射については、供給燃料の微細化による効果、レスポンス向上等が望め、既存のエンジンへの適用もやる気になれば出来るかも知れない。実際、NSR250に手作りでインジェクションを搭載されている方も居る。但し、環境問題、燃費等々のシビアの規制をクリアするには、生ガスが排出されるという構造的な問題をクリアしなければならない。そこで、注目されてきたのが、筒内直接噴射による燃料噴射である。従来の燃料噴射はエンジン吸気口外部から行われてきたが、燃焼室に直接燃料を噴射しようとするものである。この場合、一時圧縮を司るクランクケース、掃気ポートといった空間は、純粋にエアのための空間となる。筒内直接噴射が可能となれば、従来の掃気/排気行程における新気の吹き抜けという現象も抑制することが可能であり、混合気中の燃料成分は純粋に燃焼室のみに存在するために、付着、漏れといったロスも抑制できる。

4-2).掃気システム(キーワード:層状掃気、複合掃気、ストラトチャージド)
 掃気方法も従来のシリンダー内壁からの掃気に拘る必要もなく、掃気による空気流をより積極的に利用することにより希薄完全燃焼、空気掃気による排気の押出し等が可能となる。このような渦流れ、押出し流れを創り出すには、掃気経路を工夫する必要があるが、従来の掃気経路を分岐させリードバルブ等を介してシリンダーヘッドから掃気させる方法、掃気ポート位置を段階的に変化させ面積をかえることによる押出し流れの送出等が考えられる。このような思想の先には、ストラトチャージドエンジンがあるが、これは、掃気ポート途中に空気吸入口を儲け、初期掃気において大気を利用し混合気の吹き抜けを抑制させるもので、層状掃気とかの名称で発表されている。旧来の新気による排気の押出し過程において排気中に抜ける混合気を抑制させることを目的にしており、排気中のHC濃度の低減等が計られるそうだ。燃費で30%の改善を得た等の報告もある。掃気流中の燃料濃度の解析等も実際に為されているようで、それなりに事象の解明は進んでいるようだ。
 このような層状掃気の思想、掃気経路の複合化、筒内直接噴射というものは、お互いに組み合わせることも可能であろう。

4-3).多孔プレート設置式吸気口(キーワード:多孔板、多孔プレート)
 これは、とある二輪車販売店の社長さんが考案されたデバイスであり、2ストロークスクーター等の公称燃費と実相燃費の大幅なずれを解消することを目的に開発されたもので、雑誌等で紹介されて数年が経過したものである。これに関するサイト、雑誌等によると多孔プレートを吸気近傍に設置して乱流化を促進し、燃料の霧化を促進する等の説明が為されている。その理由は、前ページでも紹介したが、開発者、紹介者の方々も、吹き返し等による混合気の凝結による燃料の滴下云々という現象に着目されているようだ。個人的な感想としては、2ストロークエンジンにおける吸気リード弁近傍の流れ自体には、近傍壁面の面粗度状態で乱流化が促進するとかしないとかの影響はどちらかという低いように思うが、結果として多孔式プレートを設置することによりHC量が減少し、CO2が増加するという完全燃焼化が計れているのは、別の理由ではないか?と思う。2ストロークエンジンにおいては、吸気口からクランクケースを経て掃気ポート、シリンダーという順に混合気は移動しており、その空間における乱流度と燃料霧化の関係というのは、良く判らないのが素直な感想だ。どちらかというと、空間内に滴下する燃料成分の再気化の差違による効果の違いではないか?と思う。吹き返し等で凝結した過剰燃料分の速やかな気化を助けるような滴下燃料の通り道における蒸発面積の拡大による気化率の向上というのなら、なんとなくイメージできるが、実際のところは、どうなのだろうか?仮にトライするならば、我が家ならマグナム80辺りを利用してインシュレーターとリードバルブケース近辺に形状、面積、孔径を様々に変化させたプレートを装着して実際の効果を確認してみたいものだ。

 他にも、同弁機構、補助圧縮装置を用いた各種の2サイクルエンジンが自動車メーカー等から発表されているが、レーサーレプリカのパワーユニットとして見ると、複雑で大型化しており微妙な感じがする。
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