#26   友情は育てるもの   “The Depths”  (00/07/28放送)


フェリシティが部屋で鏡を覗き込みながら自分の目のデッサンをしていると、寮の新入生のカールがやって来た。カールはフェリシティの絵を褒めるが、「ルームメイトのチャックの電話での会話が偶然留守電のテープに残ってたんだ。でも僕は変わってるって悪口ばっかり!!」と怒り出してしまう。そこにミーガンが帰って来るなり「あら、いたの!変人!」と言ったためカールはさらに怒り出してしまう。
カール「ほんと頭にきちゃうよ!!この心の中の激しい怒りをどこにどう向ければいいかわからない!!」
フェリシティ「落ち着いて・・・人がどう思おうと放っておけばいいじゃない」
ミーガン「・・・そう言ってられるのも今のうちよ」
フェリシティ「え?」
ミーガン「別に!」
カール「そう言ってくれると思った・・・だから仕返しせずにここへ来たんだ。僕、君を尊敬してるから」
フェリシティ「ありがと・・・ねぇ、『そう言ってられるのも今のうち』ってどういう意味?」
ミーガン「エプスタイン・バーに行ったらジュリーが歌を歌ってたの!知らなかったわ〜、ジュリーったらあんたとベンがドライブ旅行に行くって内緒話を偶然聞いちゃったんですってね」
フェリシティ「ジュリーから聞いたの?」
ミーガン「違う。彼女の歌を聴いただけ」
フェリシティ「じゃ、彼女私の歌を歌ってるわけ?」
ミーガン「そういうこと。ご丁寧に『フェリシティ』なんてタイトルまでつけてね」
フェリシティ「最低・・・」
カール「僕、これからどうしよう・・・君に習って冷静沈着なリアクションってのを僕の新しい信条にしようかな・・・」
フェリシティ「(カールの言葉は無視して)どんな歌だったのよっ!!!」
ミーガン「全部は覚えてないけど・・・ああ、そうだこんな歌詞だったわね。あんたは親友だったのに、私がベンを好きなことを知りながらベンを奪って私の幸せを横取りした悪女だとかなんとか・・・」
フェリシティ「私が悪女ですって?!作り話でしょう!」
ミーガン「ああ、あんたの髪のことも言ってたわね・・・『ジャンヌ・ダルクにでもなったつもり?』だったかな・・・けっこうキツかったわよ。あんたはまるで・・・ワシントン・スクエアの娼婦だって。曲は良かったけどね・・・二度も歌ってたわ」
フェリシティ「殺してやる!!」
フェリシティは上着を取り、そのまま部屋を出て行ってしまった。残されたカールは豹変したフェリシティを呆然と見送り、ミーガンに「やっぱフェリシティより君の方が頼りになる」と笑うが、ミーガンからは「出てけ!!」と追い出されてしまう。

「親愛なるサリー。ジュリーが私は悪女だって歌ってるらしいの、人前でよ?!信じられないわ!頭にきちゃう・・・本当に私が手をだすとは思わないけど彼女をぶん殴ってやりたいわ!!」
怒り心頭のまま寮を出たフェリシティは、ジュリーのアパートへ直行したのだがジュリーは留守・・・フェリシティはショーンに「至急話がしたいから連絡してって伝えて」と伝言を頼むのだが、フェリシティの穏やかでない様子に気づいたショーンは「歌のこと聞いたの?」と尋ね、かえってフェリシティを怒らせてしまう。
フェリシティは翌朝になってもエレナとノエルのアパートでジュリーの歌への怒りをぶちまけていた。ノエルは「君とジュリーだって仲直りできるよ。僕とだって元に戻れたじゃないか」と言うのだが、フェリシティは「ジュリーと私の関係はあなたと私の友情とは違う」と受け付けない。そして、フェリシティはノエルと午後に美術館で待ち合わせの確認をするのだが、ノエルがルビーも誘ったと知り少し動揺してしまう。

「・・・シャーマン先生から出た宿題は、美術館の写真展を見ること・・・それでノエルと見に行くことにしたの・・・それから、多分ルビーとも・・・。」

エレナのアパートを出たフェリシティが地下鉄に乗り空いている席に座ると、ドアが閉まる間際にギターを抱えたジュリーが乗り込んできた。フェリシティがいることに気づかないジュリーだったが、空いている席にすわり一息つくと目の前にフェリシティが・・・ジュリーは目をそむけて溜息をつくのだった。

その頃、ベンはディーン&デルーカでバイト中。店の外で携帯電話に向かって激しく言い争っているブロンドの女性を見つめていた。すると、その女性はいきなり店に入ってきてベンに向かって「ちょっと!!5時までにブラウニーを125個用意できる?パーティのケータリングをやってるんだけどうちのシェフが急病なの。それで?用意できるの?」と横柄に尋ねてきた。ベンは少し押されてハヴィエさんに確認の電話をするのだが、そんな間にもブロンドの彼女は携帯電話で話をしている。ベンは「用意できるそうです」と伝えるのだが、彼女は名刺を手渡し「忙しいから早くね!」とニコリともせずに一方的に言って帰ってしまう。

地下鉄で気まずい思いをしていたフェリシティとジュリーだが、そこに車内での物売りがやって来た。「ヨーヨーに電池に傘に懐中電灯に裁縫セットに・・・、すべて5ドル!」と見せてまわる物売りの男にうんざりしたフェリシティは、席を立って向かいのジュリーの隣りに座り話しかけた。
ショーンからの伝言を聞いても連絡をしてこなかったジュリーにフェリシティは「あなたずっとそんな態度をとり続ける気?」と尋ねるが、そっけなく「ええ」と答えられてしまい、またもとの席へと座りなおすのだった。
「その時の私にはあと4つで電車を降りることだけが救いだったの。憎らしいジュリーとそれ以上顔をつきあわせてるのはうんざりだったから!」

しかし、フェリシティがそう考えた途端、激しい揺れとともに一端車内の電気が消え、電車が緊急停止してしまった。そして、電気はついたもののまた動き出す気配はなく、くぐもった声で「お急ぎのところ・・・しばらく停車いたします・・・そのまま静かにお待ちください・・・」というアナウンスが流れる。

「なんとか聞き取れたのは「静かにお待ちください」って言葉だけ・・・でも、その後どうなるか知ってたら静かになんてしてられなかった!ほんと・・・あんなおかしな一日って生まれて初めて!」

地下鉄が停止して1時間が経過した午後2時36分・・・ノエルと現地集合で待ち合わせをした時間はとうに過ぎてしまっていた。フェリシティはスケッチブックを取り出し自分の目のスケッチをしていた・・・相変わらず物売りの男は「全部4ドルにまけておくよ、これも何かの縁だ!」と声を張り上げ、乗客の一人は「日本で起きたアレだよ、神経ガスだ!大人しく待ってないで逃げ出そう!!」と動揺して叫び出す。するとそこに物売りの男がジュリーのギターに目をつけ「音楽やるんだろ?ハーモニカはどうだ?」と売りつけようとしたため、フェリシティは黙っていられずに「彼女迷惑してるじゃない」と追い払ってしまう。そしてフェリシティはもう一度ジュリーと話をしようと隣りに座った。
フェリシティ「ねぇ・・・歌のこと聞いたわ」
ジュリー「どの歌?」
フェリシティ「とぼけないでよ!怒ってる理由を知ってるくせに。私を極悪人みたいに歌ってるそうじゃない!」
ジュリー「聴いてないでしょう?」
フェリシティ「聴かなくてもわかるわ」
ジュリー「わかってないでしょう?私にはあなたへの恨みを歌ではらすくらいしかできないの」
フェリシティ「へぇ〜、でもちっとも晴らしきれてないみたい!」
ジュリー「・・・」
フェリシティ「聞いて、ジュリー。ベンのことは本当にごめんなさい。あなたに責められても歌に歌われてもしょうがないと思ってる。でも、そういう歌を皆が集まる場所で歌うのは私への消極的攻撃な攻撃じゃないかしら?
ジュリー「違うわ」
フェリシティ「そうね、積極的な攻撃だわ。でもとにかく・・・怒りを感じるのとそれを公表するのは別じゃない?」
ジュリー「言論の自由があるわ。それにあなたに咎められるほど歌ってないし」
フェリシティ「私たちの間にあったことを皆に宣伝しないでもらいたいの!」
ジュリー「なんでそんなに気にするの?うしろめたいから?」

物売りの男「何が機会の故障だよ!大嘘つきやがって・・・人身事故だ!!」
乗客1「え?!じゃ、この下に?電車に飛び込むなんてよっぽど落ち込んでたんだろうな・・・」
物売りの男「どうせ“モグラ”のうちの一人だろうさ!」
フェリシティ「“モグラ”って?」
物売りの男「地下のトンネルに住み着いてる物好きな奴らさ!この街の下に暮してる。知らないのか?下にも別の文明がある!何故かは知らないけど追いやられた奴らがいるがほとんどの奴らは好きで住んでる。この暗闇が奴の家だ・・・ここはまともじゃねぇ!」

その頃、ディーン&デルーカではバイト休憩中のベンにショーンが自分の新しい発明品になんと命名するかをアツく語っていた。
すると、さっき名刺を置いていった女性マギーが現れ「さっきのブラウニーと一緒にクッキーもお願い」とベンに言ってきた。ベンは「じゃ、店長に聞いてきます」と返答したのだが、マギーは間髪入れず「すぎに聞いて!時間がないのよ!」と命令口調だったため、ベンはついにキレてしまいマギーに「人が話してるときにいきなりやってきてその言い方はないでしょう!俺は今休憩中なんです、協力して欲しいならもっと丁寧に言ったらどうですか?!俺はこれでクビになったって平気です!」と怒鳴りつけてしまう。マギーは怒りもせずに冷静になり、改めてベンに丁寧に用件を伝えるとベンは笑顔を見せ素直に「今聞いてきます」とキッチンの奥へ向かうのだった。

あいかわらず動く気配の無い電車の中で、腕を組んで考え込んでいたフェリシティはもう一度ジュリーの隣りに座りなおす。
フェリシティ「後ろめたいんじゃないわ、私はあなたに怒ってるの。いくら話し合おうとしても無視してたでしょう?なのに私の歌を歌うなんてねぇ、悪かったわ・・・ベンと旅行したことは謝る」
ジュリー「どう悪かったの?」
フェリシティ「あなたを・・・とても傷つけてしまったから・・・」
ジュリー「じゃ、今だったら旅行しない?」
フェリシティ「・・・」
ジュリー「答えないのね、やっぱり一緒に行くんだ!そういう人よね」
フェリシティ「あなたたちがまだ付き合ってたら行かなかったわ!」
ジュリー「正当化しないでよ!私の気持ちを知っててそれでも行ったくせに!」
フェリシティ「だってあなたがノエルに告げ口したから!」
ジュリー「だからベンと行ったっていうの?!」
フェリシティ「私は最後まで迷ってたわ!」
ジュリー「それは、私があなたがベンとこっそり会ってるところにたまたまいたからじゃないの!」
フェリシティ「あなたを傷つけたくなかったからよ!」
ジュリー「なのにベンと旅行に行ったわけ?笑わせないで!」
フェリシティ「いつも正しい決断ができるとは限らない・・・」
すると、斜め向かいに座っていた黒人男性がフェリシティの言葉をさえぎって「もうやめろやめろ!」と怒鳴り出した。シーンとした車内で言い争っていたフェリシティとジュリーの言葉は皆に聞こえており、その黒人男性も「友達に彼氏をとられて傷ついたんだろ?そんなのたいした問題じゃないよ、贅沢な悩みだ!俺はこれから家族を食わせるために借金に行くところだったんだぞ。甘ちゃんの言い争いを聞くのはまっぴらだ」と言ったためフェリシティもジュリーも黙り込んでしまう。

しかし、その途端乗客の中で「俺は紫の女の子(ジュリー)に同情する」と言い出したり弁護士を名乗る男性が二人にもっと詳しい事情を聞こうとして同じ車内中で論議が始まってしまう。そして、問題である“ジュリーの歌”を聴いて判断したいと言われジュリーは『フェリシティ』を歌うのだった・・・。
歌が終わり、喝采が起こった後も議論はやまず、弁護士が二人に質疑応答の真似事をして「私の解釈に間違いなければ、君は今もベンと暮してるということは、君はベンは許したのに親友は許せないってことだな?」と更に話は複雑になってしまう。そして、電車が止まって3時間半が経過した頃、車内はすっかりフェリシティとジュリーの話で持ちきりになっていた。
「閉所恐怖症か酸素欠乏症か・・・それとも変な人たちが集まっちゃったのか・・・とにかく気づいたら大論争になっちゃってた。見知らぬ他人が私たちのことを分析しはじめたの・・・」
ジュリーはフェリシティを許せない理由を「私は高校の時山ほどボーイフレンドがいて女の友達はあまりいなかったの。フェリシティは私のはじめての親友だった・・・だから彼女のとった行動がものすごくショックだった」と言い同情を集めるが、フェリシティは「私なんてニューヨークに来るまで女友達はおろかボーイフレンドもいなかったのよ!」と反論する。
そして、隣りの黒人女性が「あなたたちが偶然同じ車両に乗り合わせたのはただの偶然じゃないんじゃない?きっとあなたたちのために電車が止まったの。そして私たちがここにいるのもあなた達を仲直りさせるためなんだわ」と真剣にいうのだが、そこに「おい、“モグラ”だ!」という声がした。一斉に車内の皆は電車の窓からトンネルを集団で歩く柄の悪い“モグラ”を凝視するのだが・・・フェリシティは“モグラ”の中にミーガンの姿を見つけてあっけにとられてしまう・・・

バイトを終えて帰ろうとするベンだったが、ちょうどマギーがやって来てベンを引きとめた。ベンは笑顔で「今度はマフィン?」と尋ねるが、マギーは丁寧にさっきの非礼を詫び、「親友のパーティだから成功させたいって焦ってたの」とベンもそのパーティへと招待する。

美術館中を見た後、ノエルとルビーの話は笑い話で盛り上がっていた。そして、食事をした後ルビーはノエルのアパートで美術の話で盛り上がっていた。しかし、向かい合って接着剤の話をしているうちに二人は近づいていってそのままキスをして床に倒れ込んでしまう。

電車が止まって既に5時間半が経過・・・もう地上も日が暮れようとしていた。車内は相変わらずフェリシティとジュリーの問題で白熱しており、肝心のフェリシティとジュリーは何も言えずに黙り込んでいた。しかし、その時電車の端っこに座っていて今まで一度も口を出さなかった年老いたの黒人の紳士が立ち上がり、それに気づいた皆はシーンとなって彼に注目する。
黒人紳士「私から見れば・・・その二人は・・・最初から親友じゃなかったんだ」
フェリシティ「でも・・・実際に親友だったんです」
黒人男性「ああ・・・私の解釈がもし正しいとしたら多分・・・君たちはどっちも孤独な時に出会った・・・落ち込んでたのかも知れん。だから親友が必要だったんだ。いろんなことを一緒にやり、次第に互いを親友と呼び始める・・・しかし早すぎたんじゃないか?実は親友と呼び合うほど打ち解けちゃいなかった。
・・・私と親友とは・・・63年の付き合いだ。共にマイナー・リーグでプレイし、戦争にも行った・・・63年だ。私が思うに・・・友情は空から降ってくるものじゃない、育てていくものだ。一年や二年で親友ができるはずもない。友情っていうのは・・・奥深い山や谷を越えていってこそ強くなる・・・それを一年くらいで判断するとは、例え何があったとしてもそんなものは野球で言えば二回表に試合の結果を言うようなものだ。君たちはもともと親友なんかじゃなかったのさ」
フェリシティ・ジュリー「・・・」
黒人紳士「これからは二つに一つだ・・・。この試練を乗り越えて今度こそ互いが本当の親友になるか、あるいは思い出になるか。思い出は次第に薄れていって・・・消えてしまう」
車内中が老人の言葉の重みに黙り込み、しばらく沈黙が続いていたが、その時アナウンスが流れ電車が動き出した。
目的地に到着して電車を降りると車内の雰囲気にも明るさが戻り、皆がフェリシティとジュリーを激励して散り散りになっていく。地上にあがるとすっかり表は暗くなっており、フェリシティとジュリーは少し気まずさは残っていたものの、険悪だった雰囲気は無くなり互いに帰宅するのだった。
「・・・私たちは・・・何時間も一緒に地下鉄に閉じ込められていた・・・でも・・・やっぱりジュリーとはそのまま。彼女にしたことを考えたら私は「許して」って言うだけ・・・待つしかない。ただ、やっぱり親友であろうとなかろうと・・・やっぱり彼女が懐かしい・・・」

帰宅したフェリシティがサリーへのボイス・テープを吹き込んでいると、美術館に来なかったことを心配したルビーが訪ねて来た。フェリシティは事情を説明するのだが、ルビーは「お陰でノエルと二人きりになれたから感謝するわ。彼って最高!あんな人滅多にいないわ・・・それにノエルってすごくキスがうまいの」とのろけはじめ、フェリシティは戸惑ってしまう。フェリシティは微笑んで「良かったわね」とルビーに言うが、何も知らないルビーは屈託無く「来ないでくれてありがとう」と嬉しそうな笑顔で言い出て行ってしまった。

その晩、ベンはマギーから誘われたパーティに行きドレスアップしたマギーと談笑していた。すっかり打ち解けた様子の二人は、楽しい時間を過ごしパーティも成功だったよう・・・

日を改めて、行き損ねた美術館の写真展覧会に向かったフェリシティは、会場の中の写真の前で立ち止まってしまう。こちらに向かって広げた左手を前面に出しストップをかけているかのような男性の写真・・・すると、フェリシティとは別の方向から、やはり同じ写真展を見に来たジュリーがやって来てフェリシティに話し掛けるが、フェリシティはジュリーに気づいても目をふせてしまう。
ジュリー「・・・あの歌、ひどかったわ・・・」
フェリシティ「ええ・・・少しね・・・。でも、言論の自由があるから」
ジュリー「もう、二度と歌わない」
フェリシティ「ありがとう・・・」

ジュリー「・・・力強い写真ね・・・」
フェリシティ「ええ・・・」
そして二人は二人の中の何かを象徴するような目の前の写真に釘付けになっていた・・・

 

  [ 出演 ]
  フェリシティ ベン ジュリー ノエル エレナ ミーガン ショーン ルビー マギー(日野由利加)

Back